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大災厄に見舞われ、外来語も自動車もインターネットもなくなり鎖国状態の日本。老人は百歳を過ぎても健康だが子どもは学校に通う体力もない。義郎は身体が弱い曾孫の無名が心配でならない。無名は「献灯使」として日本から旅立つ運命に。大きな反響を呼んだ表題作のほか、震災後文学の頂点とも言える全5編を収録。
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Posted by ブクログ
他の言語から、日本語の外から日本語を捉えないと 見つけられない言葉遊びが随所に見られた。 今後の日本、超高齢化社会の行く末を過度に強調することで多少のポップさ、滑稽さを交えつつと将来の日本に危機感を覚えさせられた一作。 名作。
大災害が起こった後の日本。 「無名」という名の首が細く身体がグニャグニャして、膝から下が鳥のように内側に曲がって上手く歩けず、食べ物もなかなか咀嚼出来ず、栄養も上手く吸収出来ない弱々しい子供を曽祖父である「義郎」が世話している。 大災害の後、子供はみんな「無名」のように弱い老人のようになり、逆...続きを読むに老人は死ぬことが出来なくなり、義郎のように100歳を超えた老人がピンピンしていた。 野生動物は殆ど見かけなくなり、本州では安全な食べ物は殆ど無くなってしまった。義郎は運良く1万円で手に入れることが出来た四国産の一個のみかんを無名がなんとか食べられるように包丁で切り刻んでジュースにするのだが、無名はなかなか飲み込めないのだった。そんな無名を見て義郎は悲しくなってしまうのだが、無名は義郎を不思議そうに見て「僕たちの世代は「悲しい」とかあんまり感じないんだよ」と笑顔で言う。「僕たちは美味しいとかもあまり関係ないから」とも。 政府は民営化され、外来語が禁止され、例えばジョギングのことは「駆け落ち」と呼ばれるようになっている。「駆ければ血圧が落ちる」と冗談で使われていた言葉が定着したらしい。 ピクニックの出来る野原も無ければ、自動車も走らなくなり、都心にもビルや信号だけが残り、人はいない。国会議事堂などの建物も空っぽ。民営化された政府が「鎖国政治」をしているので、飛行機も飛ばない。作家である義郎は「閉鎖された空港に国家機密が隠されている」ことを想像し、小説として出版したいが、かりにその創造が現実と一致した場合、逮捕されるかもしれないので、無名の唯一の保護者である以上、危険な橋は渡れない。 沖縄には果樹園があるので、沖縄に職を求めて移住する人が殺到している。けれど保育園などが整備されておらず、子供が出来ると困るので、「女性は55歳以上」という年齢条件がある。顔に皺を描いて、髪を白く染めて若い女性が紛れて移住しても、耕運機のスイッチの「on」「off」の意味をわからないことで英語教育を受けていない若者とバレてしまう。義郎の娘も張り切って沖縄に移住したが、便りでは果樹園のことしか書いていない。何となく「果樹園」と言う名の楽園ではなく「工場」で「強制労働」させられていることが想像される。 ジョージ・オーウェルの「1984年」を彷彿とさせる見事なデストピア小説。 南海トラフのことを念頭に置いているのだろう。首都直下型地震が起きたら、建物だけでなく機能としての政府も壊れ、今までのことを覆すような政治あるいは政治とも言えないことが行われるようになることを想像しているのだろうと思って読んでいた。そして地震だけではなく、終わらない戦争やインフラの老朽化、世界のあちこちにケンカを売っているトランプによる株の大暴落やインフレなどそんなあらゆるマイナス要素が近々一気に押し寄せて、想像出来る日本の未来を小説にしているのだと思って読んでいた。 「老人が死ねない」というのは科学的な思考ではなく、経済成長期に子供時代を過ごし、甘い蜜を吸って生きてきた私の世代への揶揄だと思って読んでいた。 だけど、ここで言われている「大災害」というのは自然災害ではなく「人災」だと「遣灯使」の中盤以降で書かれている。それが何であるかは別の短編「不死の島」に書かれている。そして、「老人が死ねなくなった」のは何故かが分かる。ああ、この災害のことをここしばらく忘れていた。バカだった。災害と言えば「南海トラフ」のことしか思い浮かばないように政府に仕向けられているのかもしれないが南海トラフのような大地震が起こったらこのことはまさしく生態系を変えるくらいの大問題になるはずだ。 紙が不足していて、トイレットペーパーも紙おむつも無くなっていたり、洗濯機は海の底に沈んでしまい、手洗い生活になっていたり、お金の価値が殆どないので、沖縄の果物は魚と物物交換出来る東北か北海道に優先的に運ばれたり、インターネットが無くなった日を祝う「御婦裸淫の日」という祝日が出来ていたり…一々時代が逆行している。 だが、逆行ではないこともある。例えば、乳児には母乳は絶対飲ませない。母乳は汚染されているからだ。全ての乳児は粉ミルクを飲む。だけど、牛のミルクは使われていない。はっきり何が含まれているかは分からないがコウモリのミルクは混ざっているのだそう?? 発想が一つ一つ面白い。ニヤリと笑ってしまう箇所も沢山。だけど、決して冗談ではない小説。現代人必読のデストピア小説。
震災後文学の頂点とはよく言ったもので、川上弘美が書ききれなかった、何か大切なものが剥ぎ取られてしまった世界を不思議な文体で描写しているように思われた。表題作も面白かったのだけど、「韋駄天どこまでも」は技法的にもクィア的にも面白かった。あと装丁の堀江栞って堀江敏幸と関係あったっけ。
厄災のあと体が変わってしまった日本人。 とても脆い子どもと、その子の世話をする元気な高齢者。脆い子供たちは、自分たちを不幸だとも思っておらず、弱い身体を受け入れている(転び方が上手なので倒れても怪我をしない、というところなど、面白い)。そして、国を出て新たな働きをするかもしれないのも彼等。 善悪を言...続きを読むわないところ、私(たち)の基準だと悲観しそうなことでも、新たな展開があるところが好き。
完全に打ちのめされてしまった。 震災後のいつかの日本という設定はフィクションだけどフィクションじゃない。 物語から漂うやるせなさを私は知っている。 これからの日本のことを考えながら読んだ。 表題作は勿論、「彼岸」が凄かった。 どうして原子力発電所の上に飛行機が落ちてこないと言い切れる? 鈍器で殴ら...続きを読むれたような衝撃があった。
多和田葉子氏の著作は初めてです。「震災後文学の頂点」という売り文句に惹かれ、そのまま読過していました。 著者はノーベル賞の時期になると村上春樹氏と共に名前が挙がる程、海外では評価されている方。私はかなりハードルを上げていましたが、それを容易く超える作品でした。1つ1つの美しい表現の洪水に感動し、そ...続きを読むの度に友人にその文を送りつけるほどです。 私のお気に入りは大厄災に見舞われた日本列島に暮らす家族を描いた表題作『献灯使』と、人類滅亡後の世界を戯曲で描いた『動物たちのバベル』です。 「当たり前」は「当たり前でない」ということが認識されつつある現代で、両作品は輝きを増してゆくでしょう。
友達にお知らせしてもらった多和田葉子の作品。 独特な表現と底知れない不気味な感情が押し寄せてくるんだけど、惹きこまれてどんどん読み進めてしまった。 5編あったけど、全部が表題作に結び付いていて、色んな視点から震災後、鎖国状態になった日本というものを描き出していて、とても面白かった。
東日本大震災の"if"の世界を描く5作品収録。デストピアの雰囲気漂う中に、どこか浮遊感漂う不思議な作品。紡ぐ言葉は柔らかく、描かれる世界は退廃的。各話の主人公たちの視点の切り替えの機微が素晴らしい。おそらくジャンルとしてはSFに分類され、捉えどころのない作品ではあるが、文学の新境...続きを読む地を感じさせる作風。
一年以上前にNHKで多和田さんがニュースで取り上げられてて初めて知った作家さんで、ずっと一度は読んでみたいと思っていた。 ニュースの内容は記憶にないけど、ノーベル文学賞に近い日本人の一人(もう一人は村上さん)として紹介されてたのではないか。 この本は2013.2014位に世にでていて東日本大震災...続きを読むの影響がとても強い作品だと感じた。ドイツに在住されてる多和田さんの俯瞰的日本像というのか近未来小説というのか。世界観が、テーマは重いながら、不思議とページをめくる手は止まらない。 非常に風刺が効いてるんだが、人はこうあるべきみたい説教くささはなく、読者に判断は委ねられている。 短編小説が5つ収載されているんだけど、設定が面白くて、「韋駄天どこまでも」は何故かある漢字のみ太字で強調されたりの文字遊びあり、「動物たちのバベル」は、動物たちが出演する舞台台本なんだけどシュール。セリフだけで、なんの解釈もなしでここまで見せる凄い。出演は、リス、ウサギ、クマ、ネコ、イヌ、キツネ。ノアの方舟が設定かな。
終末期の淵に立たされた世界の中で、生きる力をすでに見失った子ども達と相反して現実世界を生き抜こうとする老人達。 表現というのはこんなにも多様なのかと驚いた。 読み終わった後に私自信がこの小説の言葉や世界から抜け出せなくなりました。
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