感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2023年01月29日
完全に打ちのめされてしまった。
震災後のいつかの日本という設定はフィクションだけどフィクションじゃない。
物語から漂うやるせなさを私は知っている。
これからの日本のことを考えながら読んだ。
表題作は勿論、「彼岸」が凄かった。
どうして原子力発電所の上に飛行機が落ちてこないと言い切れる?
鈍器で殴ら...続きを読むれたような衝撃があった。
Posted by ブクログ 2022年11月15日
多和田葉子氏の著作は初めてです。「震災後文学の頂点」という売り文句に惹かれ、そのまま読過していました。
著者はノーベル賞の時期になると村上春樹氏と共に名前が挙がる程、海外では評価されている方。私はかなりハードルを上げていましたが、それを容易く超える作品でした。1つ1つの美しい表現の洪水に感動し、そ...続きを読むの度に友人にその文を送りつけるほどです。
私のお気に入りは大厄災に見舞われた日本列島に暮らす家族を描いた表題作『献灯使』と、人類滅亡後の世界を戯曲で描いた『動物たちのバベル』です。
「当たり前」は「当たり前でない」ということが認識されつつある現代で、両作品は輝きを増してゆくでしょう。
Posted by ブクログ 2022年02月18日
友達にお知らせしてもらった多和田葉子の作品。
独特な表現と底知れない不気味な感情が押し寄せてくるんだけど、惹きこまれてどんどん読み進めてしまった。
5編あったけど、全部が表題作に結び付いていて、色んな視点から震災後、鎖国状態になった日本というものを描き出していて、とても面白かった。
Posted by ブクログ 2019年03月05日
東日本大震災が起きる直前の、2010年の夏は、とても暑かった。2009年の夏も暑かったけど、2010年の夏の暑さは異常だった。本当に毎日、夜遅くまで、休みなく暑かった。コンビニで棚卸をしていると、真っ黒に日焼けをしてぐっしょりになった作業服のおじさんが、「ガリガリくん、無い?」と言って空になったアイ...続きを読むスケースを見ていた。そんな2010年の夏を、「人生でいちばん涼しい夏だった」と村上春樹さんが言ったのを知って、それは震災前に言ったんだけど、まるで震災直後に言ったかのように、嫌悪した。その嫌悪は、大災害前夜に生まれたので、私の中で固まって、溶けることがない。
多和田葉子さんの文章は、今回も楽しく、無名は魅力的に描かれている。無名が献灯使となって、世界を旅することができたら、それはそれは楽しい冒険譚になりそうだ。でも、たぶんそれはかなわない。無名は、献灯使になることは出来ずに死ぬだろう。私は、忘れかけている。震災後の、壊れた信号や、ストーブのご飯や、スタンドの渋滞や、節電の街や、崩れた塀や、テレビの木支里予やシーベルトや、南三陸の娘と連絡が取れずに静かになって便秘になった母や、パンとコーヒーしか口にしない伯父と東北に行ったことや、琵琶湖で高笑いしながら左に曲がった友人を。
夜中に、思い出そう。
Posted by ブクログ 2023年07月27日
終末期の淵に立たされた世界の中で、生きる力をすでに見失った子ども達と相反して現実世界を生き抜こうとする老人達。
表現というのはこんなにも多様なのかと驚いた。
読み終わった後に私自信がこの小説の言葉や世界から抜け出せなくなりました。
Posted by ブクログ 2022年11月10日
これまでに読んだ多和田葉子の本は
『犬婿入り』
『ゴットハルト鉄道』
『ヒナギクのお茶の場合/ 海に落とした名前』
ファンタジー成分が多いけれど、わりと女性である作者に近い感覚の作品群だと思っていた。
本書『献灯使』は5つの作品を含む短編集。
視野が広がったためなのか、女の子っぽいところはなくなっ...続きを読むている。
フクシマ以後の核汚染の怖れを濃厚に映し、現代社会への風刺に満ち満ちている。
『韋駄天どこまでも』が唯一ひとりの女性が主人公でその内面を書いているのだけれど、その視点はものすごく遠く高くにあるように感じられる。この作品は漢字をゴシック体で読者の目につくようにしかけ、漢字のダジャレのような遊びが入っている。
『献灯使』は地球が核物質?で汚染され、日本が鎖国していて、子供の生命力はお粗末なものというディストピア。世界のありようが面白いけれど、ダジャレめいた言葉遊びが少々くどい。世界観の構成が少し弱い気がした。少年が何を考えどう生きたかもっと見たかった。
『不死の島』これは日本だけが核で汚染されている話。
『彼岸』巨大原発に飛行機が墜落し、日本民族が避難のため移民を余儀なくされる。
『動物たちのバベル』三幕の戯曲仕立て。動物たちが人間のような姿で役者を務める。人間の悪口を言いながら人間の悪いところに似てしまった動物たち。
Posted by ブクログ 2022年08月23日
読み進めるにつれて、未知の世界に引き込まれる感じがした。風景や様子など表現が細やか。義郎が荒廃した都心を想像していたが、とても寂しい風景なのにどこか幻想的に感じた。気持ちの揺れに対して潮の満ち引きなど、素敵な表現だなと思う。
義郎は、曾孫に知恵や財産を残してやろうとするのは傲慢だ、今できるのは一緒に...続きを読む生きる事。その為にはずっと信じていた事を疑える様な勇気を持たなければならない。と考えていて、歳を重ねるにつれて考えが凝り固まってしまう人の方が多いと思うが、そういった考え方の更新は、義郎の世界だけでなく、今の私達の世界でも必要なことかもしれない、と思う。
下心をもって結婚し、そんな自分を軽蔑したこともあったが、色々な事がありすぎて、今では間違いと正解の境目がぼやけて見えない。という文が何故か印象的だった。
無名の子供らしい発想は読んでいて楽しかった。
義郎の曾孫に対する愛情と葛藤が苦しい。
2人の日常を綴っているが、どこか切ない気持ちになる。
明日でなくても、今後数十年後、本書の様な世界に変貌しているかもしれない。そう思うと、今ある普通をもう少し噛み締めないといけないと思う。あの頃は良かったと思うことも多いだろうが、葛藤しながらでも未来を見つめられるだろうか。
Posted by ブクログ 2022年01月06日
前回の本と同様なかなか読み進められなかった.
でもこれは面白かった.
面白いというより読みすすめるたびに色々考える事がある内容.
言葉遊びと言い回しと独特なテンポがあるので本を読み慣れてない私にはググっと入り込めないけどジワジワとくるものがある.
献灯使の最後は え??なに??ここで終わり??え?ど...続きを読むういう事??ジョジョ並のぶった切りのような終わりに困惑したけれど 他4作の短編を含めて1つの作品という印象.
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Posted by ブクログ 2021年10月03日
大地震によって大陸から遠く離れ、原発事故の影響で放射能に汚染された日本。政府は鎖国政策を取り、往来での外来語使用はなんとなく憚られる空気のなか、人びとの生活と共にことばも形を変えていく。震災後に生まれた体の弱い曽孫・無名の看護をする"死ねない老人"義郎の物語「献灯使」ほか、大災害...続きを読むと原発という二つの〈爆弾〉を抱えた列島の物語五篇を収める短篇集。
あらすじを書きだすと真面目な反原発小説のようだし、実際真顔で書かれた反原発小説そのものなのだが、表題作の構造自体はSF。〈変わってしまった世界〉の姿が霧の向こうから少しずつ見えてくるのが楽しくもあり、恐ろしくもあるディストピア小説だ。ボリス・ヴィアンを連想させる生温かい終末観は、真綿で国全体が静かに締め上げられているような今現在の皮膚感覚にあまりにも肉薄している。
面白いのは言葉の異化作用をフルに使ってディストピアに順応してしまった人びとの暮らしをユーモラスに描くところ。開始2ページ目から「ジョギング」が「駆け落ち」と呼ばれるようになった経緯が語られるのを皮切りに、「四国スタイルのドイツパン」「若い老人」「老人がんばれの日」「子供に謝る日」など、おかしいけれど実際に使ってる人もいそうな絶妙なラインを突いて、鎖国日本の新語が畳み掛けてくる。作者の持ち味であると共に、ことば遊びの諧謔とSFの組み合わせに酉島伝法っぽさも感じた。
他の収録作について。「韋駄天どこまでも」は生け花教室で知り合ったというちょっとバブリーな設定の女性二人が、大地震によって非日常に逃げこむ破滅願望シスターフッド小説。漢字の解体と再構成によって視覚的に「一つだったはずのものがバラバラになっている/バラバラなものが一つになる」を表しているのが特徴。
「不死の島」「彼岸」の二つはより明白な風刺小説で、特に「不死の島」は「献灯使」の世界を海外移住者の視点から書いている。3.11後にヨーロッパへ移住すると言った人がどんな目で見られていたか、個人的な記憶が蘇った。ラスト一行の切れ味が鋭い。
「動物たちのバベル」は人間が滅んだ後の世界を生きる動物たちのおしゃべりを描いた戯曲。「ボスではなく翻訳者を選んでみたらどう? 自分の利益を忘れ、みんなの考えを集め、その際生まれる不調和を一つの曲に作曲し、注釈をつけ、赤い糸を捜し、共通する願いに名前を与える翻訳者」というリスの台詞が印象に残った。
ぼんやりとした不安を諦念で塗りこめた先に待つ未来。「献灯使」ということば遊びのなかに隠された〈灯〉を絶やさぬように、優しく揺すぶり起こされるような小説たちだった。
Posted by ブクログ 2021年05月30日
あいまいな描写、設定、言葉が続く本。その場面を想像できて、思いもよらない広がりに驚き、登場人物に想いを巡らすのが読書の醍醐味だと思っていたけど、そういう前提が全くない世界観の中に投げ出されて彷徨うのも案外心地よかったです。
Posted by ブクログ 2021年04月29日
近未来の日本。
汚染物質の漏出で東京に人が住めなくなる。
あるいは大洪水の後、人間がいなくなってしまう。
そんな設定で書かれた中短編が並んでいる。
やはり表題作の「献灯使」に最もひかれる。
日本の大災害の後、世界も自分の国のことにしか構っていられない状況となり、日本も鎖国政策を敷く。
汚染物質のた...続きを読むめ、若い世代ほど体に障害があり、寿命が短い。
生涯のうちに性別が変わってしまうこともある。
主人公の義郎は90代後半だが、曾孫の無名の介護を献身的にする。
外国語を口にできない社会に、何より体がむしばまれるような社会に怒りを覚えながら。
曾孫の無名は、むしろ淡々と自分たちの境遇を、澄んだ諦念をもって受け入れている。
優秀な子どもをひそかに海外へ送り出す「献灯使」というプロジェクトに無名が選ばれるが…。
恐ろしい社会ではあるのだけれど、義郎や無名の人柄のせいか、どこかすがすがしい。
それから、現代の社会の価値が転倒されているのも面白い。
例えば性別や性役割、老人の社会的な地位。
ここまで危機的な状況になると、否応なく社会が変わらざるを得ないのか。
いろいろと考えさせられる。
「韋駄天どこまでも」。
小さなとげが刺さった時のように、ずっと刺激が残る作品。
夫に先立たれた東田一子が、生け花教室で知り合った浮世離れした束田十子に惹かれる。
二人でいるときに大地震に遭い、一緒に避難所の身を寄せた二人。
名前からして対になる二人だが、災害の混乱で日常の論理から切り離されて、新婚のような避難生活を送る。
やがて十子は親族に引き取られ、一子は再び一人になる。
もともと家族の縁が薄い人が、災害で家も失うことの重大さを思う。
唯一の救いは一子が十子が戻ってくるのを待っても悪くない、と思いなおせるようになることか。
Posted by ブクログ 2021年03月19日
献灯使の一貫したディストピアの世界観が描かれた短編集です。表題作はとてもフィクションとは思えないくらいの肉感、リアリティがあり、とても読み応えがありました。けれど他の短編は私の理解力の無さ故か分からない部分もあり、難解でした。
Posted by ブクログ 2023年11月26日
多和田葉子さんは「地球にちりばめられて」を読んで世界観に圧倒されたのだけど、これも凄い世界観だった。
震災以後の日本のようで日本でない。でもいつか有り得るかもしれない日本。
「献灯使」はまだブラックユーモアにニヤつきながら読んでたんだけど、それ以外の4篇を読み進めるうちに気持ちが沈んでしまった。特...続きを読むに「彼岸」。
Posted by ブクログ 2023年02月05日
震災の数年後を描いたデストピア小説。表題作では、何か起きてこうなったのか、は描かれておらず、短篇4篇のうちの、『不死の島』と『彼岸』を読んで、漸くどういう設定かを理解できた。
全米図書賞(翻訳部門)受賞作品、ということで、期待して読んだが、ひたすら暗い、というか、救いがない、というか、自分が読書に...続きを読む求めているものとは全く違う内容だった。だが、強烈なインパクトはある。
鎖国状態での言葉狩りの状況が一番ピンとくる箇所
“「勤労感謝の日」は働きたくても働けない若い人たちを傷つけないために、「生きているだけでいいよの日」になった。”
Posted by ブクログ 2022年12月02日
あり得ない(はずの)設定なのに、嫌に絵が浮かんで読みながら疲弊してしまった。日本に山積する問題という問題を詰め込んで、その先にある救いのない世界を見せてくれた。
子供は元気が1番。公園で騒いでいても是非苦情をいれないでやってほしい。
Posted by ブクログ 2022年11月25日
多和田葉子(1960年~)氏は、早大第一文学部ロシア語学科卒、ハンブルク大学大学院修士課程修了、チューリッヒ大学大学院博士課程修了(ドイツ文学)。1982年から2006年までハンブルク、2006年からベルリン在住。1993年に『犬嫁入り』で芥川賞受賞。谷崎潤一郎賞、野間文芸賞ほか数々の文芸賞を受賞。...続きを読む紫綬褒章受章。ドイツ語でも20冊以上の著作を出版し、それらは英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、中国語、韓国語などにも翻訳されている、本格的なバイリンガル作家で、ドイツでも、ゲーテ・メダル、クライスト賞等の有力文芸賞を受賞。今や日本人で最もノーベル文学賞に近い作家とも言われる。
本書は、2014年に出版され、2017年に文庫化された(表題作以外に「韋駄天どこまでも」、「不死の島」、「彼岸」、「動物たちのバベル」の4つの短編を収録)。マーガレット満谷による英訳版『The Emissary』は、2018年に全米図書賞翻訳部門を受賞。尚、多和田氏は、本小説には日本語による言葉遊びが多いため、受賞は翻訳家の功績が大きいと述べているという。
私はノンフィクションやエッセイを好み、小説はあまり読まないのだが、以前、仕事上の要請でドイツ語圏に長く駐在し、ドイツ語を使って生活をしていたことがあるため、多和田氏には関心があり、これまでに読んだエッセイ集の『エクソフォニー』、『溶ける街 透ける路』も面白かったことから、今般初めて小説を手に取った。
『献灯使』は、大きな災厄に襲われた後に鎖国政策を取る日本に住む、100歳を過ぎても元気な義郎と、体の弱い曾孫の無名を巡る作品で、執筆のきっかけになったのは間違いなく東日本大震災と福島の原発事故であり、それに、少子高齢化などの現代日本の問題を絡めて描かれる世界は、いわゆるディストピア小説であると評されることが多い。しかし、松岡正剛氏は伝説的書評サイト「千夜千冊」の中で、本作品はディストピア小説でも未来小説でもなく、言わば「現在(めまい)小説」であり、多和田氏が現在日本に抱いている違和感・不審に対する柔らかい異議申し立てであると書いている。
また、多和田氏が国際的に高く評価されているのは、「エクソフォニー」(母国語の外に出た状態。特に,母国語以外の言語を用いる社会で生活したり,母国語以外で言語表現を行うこと)を実践し、そこから生まれ、広がる様々な発見、疑問、洞察が、作品の中にこれでもかと散りばめられているからなのだと思われるが、そのセンスは本作品でも遺憾なく発揮されている。
と、こう書きながらも、私は正直なところ、期待したほどの面白さを感じられなかったことを白状しなければならないが、それは、もともとノンフィクションを好む、私の合理主義的な嗜好性に拠るのかも知れない。
フィクション性が強い(「ファンタジック」とも言えようか)が故に、好みの分かれる作品のような気がする。
(2022年11月了)
Posted by ブクログ 2022年10月29日
自分に教えられるのは言葉の農業だけだ。子供たちが言葉を耕し、言葉を拾い、言葉を刈り取り、言葉を食べて、肥ってくれることを願っている。
献灯使 より
普通なら「暗殺」のニュースが流れるはずなのに、マスコミはなぜか「拉致」という言葉を使った。
若返ったのではなく、どうやら死ぬ能力を放射性物質...続きを読むによって奪われてしまったようなのである。
不死の島 より
初めて読む作家さんでした。
ハシビロコウの表紙に興味を持ち、前情報なしに読みました。震災後の壊れた世界、同一線上にある世界を舞台にした中短編集。
一般的に小説は、ひとつふたつの矛盾やおかしみを無視して構築されているものが多いかと思いますが、壊れた未来の日本は、言葉も生活様式も身体もおかしなところばかり。今、日本が鎖国したら、という現象には科学的とは言いがたい変化の数々。最後の話まで行くと、キャロルのナンセンス風なストーリーテリング。かと言ってそこまで寓話的でもなく、淡々と文学的なアプローチがなされた作品だと感じました。
刊行から数年経って、現実の日本と世界といえば、はたしてどちらが残酷で生きづらいのかと考えさせられます。小説に反して、世界は原発を中心に活動していくという方針も出ていて(当然、温暖化反対の活動家も原発は肯定的です)、事実は小説よりも奇なりじゃないけれど、そんなことになるはずがない、という認識もいつか現実を侵食してくるかも、と悲観的な想像をしたりもします。短編では不死の島がお気に入り。人民大移動もうっすら描かれていて、帰る場所をなくした人々が難民になるというのをどこか他人事のように感じながら生きている人は是非。
Posted by ブクログ 2022年05月09日
なんだこれ、なんだこれ、なんだこれという気持ち。こんな世界観は初めてでわくわくしました。世界観に呑まれるってこういうことかと思いました。あと5回読み直せしても筆者の意図の端さえ掴めないような気がする。読解力不足、でもだからこそまた読みたい。
Posted by ブクログ 2022年03月21日
震災後の災厄を機に鎖国状態の架空の日本を描いた小説など5編。
「献灯使」では、外来語が禁止されたため言葉の音だけを拾って当て字した名称が頻出しますが、多和田さんの言語感覚の鋭さにドキリとしました。積極的な誤読が繰り返される感じ。
多和田作品は4冊目ですが、読むたびに動揺します。他に読んだのは『雪...続きを読むの練習生』『球形時間』『穴あきエフの初恋祭り』。
言葉遊び、もしくは意図的な変換ミスによって思考や連想が強制的に目の前のページからあらぬ場所へ飛ばされる感覚がします。ああまた誤配された、と思いつつも楽しいです。
Posted by ブクログ 2022年01月06日
死ねない老人、反対に子どもたちの生きづらさ、本当にかわいそうになってくる。
表題作を補完する形の短編は、災害のリアリティと空想が混じり合ってこの世の終わり感が強い。とりとめなく続くディストピアな日本の話に絶望がひたひたと押し寄せてくる。随所にある言葉遊びも、時にゾクっとする不気味さを連れてくる。
終...続きを読む末期はかえって穏やかで、地に還ってゆくような静けさを感じるが、そこに至るまでの壮絶さは言葉も出ない。
全体的に難解だった。政治的な皮肉、風刺が効いていて、ぐうの音も出ない。人間というのは愚かな生き物だ。
Posted by ブクログ 2021年11月08日
談社文庫)
環境破壊され、農作物も採れない近未来。 ありそうで怖い。昭和半ばに生まれた世代は長生きで平成令和に生まれた子は弱くて薄命。昭和の中頃は放射能の汚染などの自然破壊は少なかっだと言う事なんだろうな。読みやすい本ではなかったけど読んで良かった。
Posted by ブクログ 2021年08月18日
鎖国を続ける日本。老人は100才を過ぎても元気で死ねず、子供たちは歩くことすら儘ならない。
風景も、時代も、経緯もその全てが霧に包まれたようにぼんやりと描かれていて、読み手側の想像だけを膨らませるような手法。原発や戦争や、災害や温暖化など、さまざまな要因を思う。
体力のない無名は着替えることすら非常...続きを読むに難儀するのだけれど、それを楽しんでやっている。その光景は退化なのか進化なのか、人間のゆく先は果たしてどちらなのか?考えながら読みました。
Posted by ブクログ 2021年06月14日
短編五編が収録された作品であり、ディストピア小説。全体的に世界観が暗めなので、深みにはまっていくような感覚に陥った。表題作「献灯使」では無名の幸せを願わずにいられないし、義郎の無名への想いが辛い。
なんとなく、光の届かない、底が見えない、深く暗い海の底に落ちていくような。足元に地面がない、不安感に...続きを読む苛まれた。色々と考えさせられる作品。もしこれから読まれるなら、元気な時(不安に呑まれてしまわなそうな時)がおすすめかな。
Posted by ブクログ 2021年05月19日
この小説は多和田葉子さんが2013年に放射性物質に汚染されて人の住めなくなった地区(福島県)を車で回った時に見た風景から感じたことを元に書かれた作品です。
2011年の大災害の数年後に関東近海で太平洋大地震が発生し、東京および関東一帯が津波に直撃されます。
さらに再稼働した富士山近くの原発へ爆弾を積...続きを読むんだ戦闘機が墜落し関東・東海地方を中心に日本は広範囲に渡り放射能被害に見舞われます。
「献灯使」はそんな滅びゆく姿に変貌した都市東京の西域で生きる近未来の人達の物語です。
想像を絶する劣悪な環境で生きていることは伝わってきますが、人間も街の様子もボヤーっとしか語られないので頭の中でうまく映像化できません。
元気な老人が極端なまでに貧弱で病弱な若者を介護する社会になっており、未来への希望はなく絶望的な生き様しか見えない不気味な世界です。
生活不適地域として不動産価値が無くなった東京での生活は苦しく、地方への移住も受け入れてもらえず、生き延びる手段は日本から難民として脱出することのみとなる。
このような話は苦手ですが、直面している問題や、はっきりと見えてきている近未来の問題に正面から立ち向かわない現在の日本を強烈に風刺しており考えさせられる点は多かった。
Posted by ブクログ 2021年05月03日
一冊の本の中に3遍入っていて、はじめての構成に戸惑いながら読み終えた一冊だった。
日本語のニュアンスや漢字の組み合わせにもたらされている意味などに、著者は敏感なんだと感じさせられる表現がいくつも見られた。
読み終えた感想は、日本のまだまだ閉鎖的で、所謂グローバル化が遅れている点に、警戒しろと投げかけ...続きを読むているように思った。
Posted by ブクログ 2021年03月20日
放射能で汚染された、とは書いていないがそれを思わせる状況の日本。
東京23区は人が住めない。子供は痩せ細り、歯が抜けたり、とても健康とは言えない。逆に年寄りは元気で犬とジョギング(と言ってはいけないので駆け落ちという)したり。
世界観は伝わってきてゾッとしたが、何となく肌に合わず途中で読むのをや...続きを読むめた。
Posted by ブクログ 2021年02月03日
好きな世界観
どうなんの?ってとこで終わるのも好き
しかしなぜだか全体を記憶できない
細部は強烈に焼きついてるのになー
カバーのハシビロコウを
ハシビロコウと認識せずに
なんかいい感じーって買った本
家族にハシビロコウだね
って指摘されて
あ!ハシビロコウだ!って気づいたのが
一番の衝撃
Posted by ブクログ 2020年04月30日
大災害によって社会の仕組みが変わってしまった世界と日本
地域というディストピアの中にある
母親という小さなディストピア
きっとここでモデルとされていたのは東日本大震災だろうけど、コロナウイルスでてんやわんやになっている今のほうが、この先の未来にとても起こりうる話に感じてしまう
どの話も、どうなるの...続きを読むかわからない
ドラゴンヘッドは好きじゃないけど
ドラゴンヘッド的なところがよい