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Posted by ブクログ
彼女は言語学者ではない。
小説家であり詩人だ。
それも日本語とドイツ語で小説を書く小説家だ。
だからなのか言語への深い理解と探究心と遊び心にあふれている。
言葉と歩く多和田さんの日記の言葉を
もらすことなく読みたくて時間をかける。
折しも今日は3月11日
私のすぐ横に職場のブラウン管テレビが
落下してきた日だ。
彼女は「ベルリンにいて地震を経験していないという穴があまりに大きいので、人の話がその穴にどんどん吸い込まれていく。共有ではなく、むさぼり喰うような感じ」と語る。そして次の日のアサヒ・コムの「炉心溶融」は危機感が薄く、「メルトダウン」の方が危うく感じられると述べている。そして、多和田さんなら「『ピカドン溶解』という言葉を創ったかもしれない」と書いている。
言葉一つ選ぶにもその人のスタンス、価値観が表れる。パニック回避のための言葉選びが、事実を隠すことにつながることもある。
今日は祈りの日。あの日、日本は変わると実感していたが。
Posted by ブクログ
多和田さんが好きなのは、独特の感性と鋭い批評眼があって、なおかつ明るさがあるから。小説でもエッセイでも。
この本は書店で平積みになってて、新しい本かと思って買ったら10年前の再版だった。けど読んでなかったのでノープロブレム。
2013年1月から4月15日までの日記で、1日分は短いので隙間時間にちょっとずつ読もうと思ったのに、面白くて一気に読んでしまった。
こむらがえりを起こすとドイツ人に言ったら、皆口々にそれはマグネシウムが足りないせいだと答えた、という話のあとに、
「「こむらがえり」はとても古い単語なので「マグネシウム」という単語と出逢って、かなり驚いたみたいだった。」(P69)
(「こむら」はふくらはぎの古語。)
トルコ語と日本語は同じウラル・アルタイ語族だと言われていた時期があった。しかしそれはインド・ヨーロッパ語族を中心とした見方である、といった内容のあとに、
「これは、鍋が自分中心に世界を見て、「ミシンとコウモリ傘は似ている」と主張するようなものではないか。鍋から見れば、ミシンとコウモリ傘にはいろいろ共通点がある。まず蓋がないこと、そして仕事中熱くならないこと、更には調理の役に立たないこと」(P159)
(「ミシンとコウモリ傘」のワードの選択もいい。)
「リアリティ」「クリエイティヴ」といった言葉について、伊藤比呂美の詩について、ワーグナーの文体についてなど面白いだけでなく刺激的で、読んでいる間、本当に幸せな時間を過ごすことができた。
立て続けに二回読んだ。
Posted by ブクログ
2013年、日本語で書いた自著『雪の練習生』を自らドイツ語に訳している最中、多和田葉子が言語について考えたさまざまな疑問や気づきを書き留めた日記。
めちゃくちゃに面白い。日独だけでなく、多和田さんが講演などで旅した先で出会う言葉がどんどん思索を豊かにしていく。逆に翻訳作業の話は「手」の訳語にまつわるエピソードくらいだけど、多和田葉子という作家が日常的に言葉や文字とどう触れ合っているか知れるのが面白い。
レガステニーという学習障がいをめぐって「言語を文字で記すことが根本的に人間には困難」だと笑って見せたり、移民由来の乱れた言葉とされてきたキーツ・ドイツ語に惹かれてラップを書いてみたいと言ったり、これまでの西洋基準な言語学に物足りなさを感じたり、多和田さんは常に勉強熱心だ。「言語はべったりもたれるための壁ではなく、壁だと思ったものが霧であることを発見するためにある」。学べば学ぶほど深くなるのかもしれないその霧のなかを、悩みすら楽しみながら歩いていくように見える。
そして楽しむと同時に、常に言葉と自分との距離を冷静に測る目を大切にしているのだと思う。嬉しい言葉も悲しい言葉も鵜呑みにしないで、付き合い方を自分の頭で考えること。多和田さんの歩みを見せてもらうことで、私も歩き方を一度じっくり考えてみようと思った。
Posted by ブクログ
単なる「ドイツに住んでいる小説家の日記」ではない。
言葉と歩いている多和田葉子さんの日記、なのである。
多和田さんは小説を
日本語で書き、ドイツ語で書く。
日本語作品をドイツ語に翻訳もする。
自作品を日本語、ドイツ語、英語で朗読し
さまざまな言語に翻訳された自作品を聞くために
世界各地を旅している。
そんな人生があるとは。。。
まさに理想的な人生である。
それができる才能が実に羨ましい。
あまりに面白いので
私が勤める日本語学校の先生たちに
熱烈推薦してしまった。
何が面白いか、その面白さを説明すると
多分すごくつまらなくなるので書かないが
言葉に興味ある人はとにかく読んでみてほしい。
この本の中で多和田さんが読んでいた本も
読んでみようと思う。
「日本人の脳に主語はいらない」
「英語で日本語を考える」などなど。
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