作品一覧

  • 尻尾と心臓
    3.2
    1巻1,881円 (税込)
    回り道をしなければ、見えないことがある。仕事にも、人生にも。――未知の経験を求めて経営コンサルタントから転職した笹島彩夏は、社命を帯びて子会社に出向してきた乾紀実彦とともに、新しい営業補助システムの開発に携わる。しかし強烈な個性を持つ社長の岩佐が支配する子会社の中で、余所者の二人は周囲からの反発と見えない壁に翻弄されて……。「会社」という闇の中で、二人が見出したものとは?
  • 草のかんむり
    3.0
    1巻550円 (税込)
    カエルにされてしまった僕の哀しい愛の物語。曽祖父のうらみでカエルに変身してしまった僕は、やさしい麦子に助けられた。でもグリム童話みたいに素敵な王子様になれるだろうか? 群像新人文学賞受賞作品。
  • ポケットの中のレワニワ
    3.8
    1巻900円 (税込)
    アガタは派遣先で再会した小学校の同級生ティアンに惹かれていく。が、町村桂子という日本名で「統括主任」の肩書きを持つ彼女は、好意を示しつつも「貧乏人同士は付き合えない」と言う。そんな彼女が同じベトナム系の女友達と会ってから様子が変になり、会社まで辞めてしまう。アガタの思いは届くのか?
  • さして重要でない一日
    4.5
    1巻1,463円 (税込)
    未知の空間、会社という迷路を彷徨う主人公。トラブル、時間、おしゃべり、女の子、コピー機。著者独特の上品なユーモアの漂う、なにか、もの哀しくも爽やかな空気の残像。会社員の日常を鮮やかに切り取った、野間文芸新人賞受賞作。サラリーマンの恋と噂と人間関係、奇妙で虚しくて、それでも魅力的な「星の見えない夜」も所収。
  • 三月生まれ
    4.0
    1巻1,518円 (税込)
    少年たちの心の揺れをみずみずしく軽やかに描いた作品。淡い初恋、大人の男女間に流れる波紋、出会いそして別れの予感。――ちょうど同じ時間、兄の中子充は安直な片思いの恋に落ちようとしていた。(中略)思いがけず川並由佳が振り返って自分を見ていた。川並由佳が自分の名前を知っていた。知っていたばかりか、彼女の方から中子君と呼びかけてきた。たったこれだけのことで、充の片思いは始まったのだ。――本文より
  • 濁った激流にかかる橋
    4.0
    1巻1,562円 (税込)
    激流によって分断された町の右岸と左岸。それをつなぐ唯一の異形の橋。かつての小川は氾濫をくり返し、川幅は百倍にもなり、唯一の橋は拡張に拡張を重ね、その全貌を把握できぬほどの複雑怪奇さを示す。そして右岸と左岸にはまったく気質の異なる人々が住む。この寓話的世界の不思議な住民たちの語る9つの物語。諧謔的かつ魔術的なリアリズムで現代の増殖する都市の構造を剔抉した読売文学賞受賞作。
  • 愛と癒しと殺人に欠けた小説集
    3.6
    1巻1,771円 (税込)
    話題短編を集めた珠玉の作品集。「この世に平凡な人なんかいません。近づいてよく見ればみんな変。この世の平凡な真実です。でも近づいて、よく見ることは実は難しい。「近づいて、よく見る」には小説が役立ちます。小説はこの世の真実を映す、歪んでいるのに真正な鏡だから(そうでありますように! )。この小説集に収録されているのは、鏡の6つの破片です。この本は、愛や癒しや殺人を求める人には向きません。」(著者敬白)
  • 進化の時計
    -
    1巻2,222円 (税込)
    一匹の猿に魅せられた僕たちの青春冒険小説。それは、かわいらしい猿との出会いから始まった。東京から九州の延岡へと繰りひろげられるある計画とは? 愛しいジョウジ-を捜し続ける僕の哀しくも楽しい長篇。
  • 会社員とは何者か? 会社員小説をめぐって
    4.0
    1巻2,508円 (税込)
    果たして会社員は小説の主要な登場人物になりえるのか? 著者はこんな命題を抱え、会社員が主人公の古今の小説に切り込んでいきます。取り上げられるのは、源氏鶏太、山口瞳、庄野潤三、黒井千次、坂上弘、絲山秋子、長嶋有、津村記久子、カフカ、メルヴィル……。そこから見えてくるのは、自明なものとして受けとめられている「会社員」という言葉・存在に潜む謎だった。いったい、会社員とは何者なのか?
  • 会社員とは何者か? 会社員小説をめぐって

    Posted by ブクログ

    非常に興味深い「会社員小説」をめぐる文芸評論であり、良い作品紹介となっていると思う。ここで紹介され分析が加えられた作品群を読んでみたい。とりあえず著者の『岩崎彌太郎—「会社」の創造』(講談社現代新書)は注文してみた。

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    2016年05月11日
  • さして重要でない一日

    Posted by ブクログ

    岩井克人は『会社はだれのものか』で会社という存在の不思議さを論じています。そして伊井直行は本書(表題作を含めた中編2本)で会社員の不思議さを描いています。

    カフカやピンチョンなどによる「謎」めいた作品が好きであれば気にいるでしょう。柴田元幸の解説つきで、待望の文庫化です。

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    2012年04月30日
  • 濁った激流にかかる橋

    Posted by ブクログ

    街を左右に分断する激流と、それをつなぐ改築に改築を重ねた異形の橋。それを取り巻く左岸と右岸の人々の物語。連作短編。

    帯に「寓話的都市」とある通り、この街は現実の都市には似ていない。左岸と右岸にまたがる露骨な格差、文化の違い、想像を絶する大渋滞、役所の無能、ずさんな工事、利権がらみの政治、街に支配的な4つの姓から感じられる閉鎖性・・・。週刊誌をにぎわすようなありきたりな噂話の数々。
    解説にある通り、現実に比べてこの小説に登場する世界は分かりやす過ぎる。ステレオタイプだ。

    にも関わらずこの話は面白い。

    この前読んだベルンハルトの『消去』で、芸術とは誇張だ、誇張こそが実存へ架橋する手段だ、とい

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    2011年05月26日
  • ポケットの中のレワニワ

    H

    購入済み

    最後が・・・

    小説として面白いと思いますが、最後の終わり方が、個人的には少し拍子抜けしました。そのため、星を一つ減らしました。

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    2018年03月04日
  • 尻尾と心臓

    Posted by ブクログ

    作者が『会社員とは何者か?――会社員小説をめぐって』で展開している論を、見事に小説へと昇華しています。

    たとえば、源氏鶏太「英語屋さん」論において注目していた英語屋さんの社内でのヌエ的な立ち位置を、本作では子会社へと出向している男、その子会社に関連企業から派遣されている女という形で、再現させています。

    また、会社員小説を書くときに私生活を紋切り型に描かないという課題にも、柔軟に取り組んで書いているのが伝わってきます。作者の作品を愛読してきた読者としては、現時点での集大成と思わせてくれる快作でした。

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    2016年09月04日

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