伊井直行の作品一覧
「伊井直行」の「愛と癒しと殺人に欠けた小説集」「会社員とは何者か? 会社員小説をめぐって」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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小説・文芸
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Posted by ブクログ
街を左右に分断する激流と、それをつなぐ改築に改築を重ねた異形の橋。それを取り巻く左岸と右岸の人々の物語。連作短編。
帯に「寓話的都市」とある通り、この街は現実の都市には似ていない。左岸と右岸にまたがる露骨な格差、文化の違い、想像を絶する大渋滞、役所の無能、ずさんな工事、利権がらみの政治、街に支配的な4つの姓から感じられる閉鎖性・・・。週刊誌をにぎわすようなありきたりな噂話の数々。
解説にある通り、現実に比べてこの小説に登場する世界は分かりやす過ぎる。ステレオタイプだ。
にも関わらずこの話は面白い。
この前読んだベルンハルトの『消去』で、芸術とは誇張だ、誇張こそが実存へ架橋する手段だ、という旨のことを書いてあった。
この小説では、街の特質も、人々の振る舞いも、現実世界を誇張したものだと言える。
でもこの小説の素晴らしいところは、それを誇張と全く感じさせないところ。それどころか、この街、この人々、すぐそこにあるような自然さがある。
激流とバケモノ橋というアンリアルな設定が、その周りの誇張を相対化してしまったかのようだ。あんなものがあるんだから、街がこうなるのも当然だ。という感じ。
よく考えたら随所に死者が出てきているけど、それも違和感がない。マジックリアリズムと言えるかもしれない。
格別面白いエピソードが転がっているわけではない(といってもラストの大逆流のカタルシスはなかなかのもの)。
でも、この街・人々が妙に愛おしくなる。不思議な読後感がある。
こう書いてしまうと凄くありきたりなのだが、私は文筆の徒でないのでこれが限界。
ぜひ一読して、この世界の魅力に触れてもらいたい一冊。