あらすじ
アガタは派遣先で再会した小学校の同級生ティアンに惹かれていく。が、町村桂子という日本名で「統括主任」の肩書きを持つ彼女は、好意を示しつつも「貧乏人同士は付き合えない」と言う。そんな彼女が同じベトナム系の女友達と会ってから様子が変になり、会社まで辞めてしまう。アガタの思いは届くのか?
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Posted by ブクログ
どなたかの「会社員とは何か?」の感想を読んで、読んでみたくなった記憶が……。
そしてだいぶ長いこと積んであった……。
伊井直行氏の著作を読むのは初めて、たぶんお名前すら、しかとは存じ上げなかったんだけど……。
おもしろかった! これ、もっともっと話題になってもいいと思うんだけど!(いやわたしが知らないだけで話題になってたのか?)
すごく好きな感じだった。わたしはこういう小説をもっと読みたい!
主人公は家庭環境が複雑で今はハケンで仕事している青年、その義理の弟でひきこもりの青年、ベトナムから難民として入国して団地にすんでる人々、となかなか困難な状況の人々ばかりで、主人公は未来にまったく希望がもてないって気分なのだけど、なぜだか悲壮感はなく、じめじめしない、すごくカラっとした感じで、ユーモアもあって。あまり感情をゆさぶられることなく淡々と読んでいける感じがすごくよかった。なんだろう、この感じ。あまりほかにないような。よくわからないけど、晴れた冬空みたいな「カラっと感」。
レワニワ、っていう想像上の生物みたいな生物も出てきて、シュールな場面もあるのだけれど、違和感がなく、そういうこともありそうっていう感じで。それも、じめじめしてない。
後半、話は少し深刻になって、幸福とは、生きる意味は、とか出てきて確かに考えさせられるんだけど、やっぱりじめじめしないし、希望が見えて、読後感がすごくいい。
伊井直行氏の本をもっと読みたいと思った。
Posted by ブクログ
いくつかのサイトで『1Q84』と似ていると紹介されています。じっさい読んでみて「なるほど」と思いましたが、どこが似ているかというと・・・物語の設定や展開とかではなく、作風というか手触りが似ている気がします。
4つ星にしたのは、伊井さんの作品(たとえば『さして重要でない一日』)は、いつも何かが欠けている感じがしてるから。でも、その欠落感が決して不快ではなく、いい感じなのです。