『最愛の子ども』にも感じたけど、何か物寂しいけど柔らかな気持ちになのは、やはりこの文章によるものか。とても心地よいテンポと表現で読むのが楽しみであり、読み終わるのが惜しくなってくる。皆さん言うようにいつまでも読んでいたい気持ちになる。
冒頭の戯曲形式によるイントロダクションで人間関係を説明される中
...続きを読むでヒカリへの興味を沸かせて次の章へと移るが、この中に順平がいる事で自分自身も素直にこの中に入っていけた気がする。こうやって読者を物語に引き込むのがとても上手だと思う。
各々のエピソードを通じてヒカリ像を浮かび上がらせる流れの中で、最初はとても魅力的なファムファタールとも言えるヒカリが人との付き合いを重ねる程にどんどん自分自身の孤独感に悩んでいく姿は物悲しいけど、何だかわかる気がする。結局、人は完全に他人と分かり合えることはないとすれば、誰しもがヒカリの要素を持っていて、かつ誰しもが嘘でもいいから分かりやすいフィードバックを求めているのではないか?ヒカリを通じてそういう自分自身の中にある孤独感を見ているような気分になる。
といっても決してどんよりするわけでもない。それは全員の文章からヒカリへの愛が溢れているからか。よく考えれば、最初の戯曲部分は単なる台本なんだから本当に皆で集まってたわけでもないと思うし、おそらく劇団員にはヒカリとは付き合わなかったけど重要な役割の人もいたんだろうと思うとかなり冒頭に引っ張られて過剰に仲間意識を感じてしまっているのかも知れないとは思いながらも、心地よい空気感を楽しめた。
つまるところ、ヒカリは何を求められているか?は理解できても何を自分が求めているのか?はなかなか理解できていなかったのかな?その気持ちわからなくもない気がする。。。