松浦理英子のレビュー一覧

  • 最愛の子ども

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    舞台は私立玉藻学園高等部2年の女子クラス。彼女達は、クラスメイトの日夏、真汐、空穂の3人をパパ、ママ、王子様と模した『わたしたちのファミリー』の推し活をしていた。

    人生の経験が不足し、知識、自意識が肥大化している彼女達の妄想は、それゆえに現実的な制約を受けずに理想の家族像を紡ぎ出し、『わたしたちのファミリー』に投影・神格化していく。

    女子高校生純度が高そうな内容で、読み始めてすぐ「あ、苦手なやつだ」と思ったのだけれど、なぜだか引き込まれてしまった。

    居心地が良いのだ。この居心地の良さは、『わたしたち』が物語りを語ると言う画期的なシステムによるものだと思われる。一人の語り部ではなく、皆で共

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    2025年07月01日
  • 最愛の子ども

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    ネタバレ

    わけの分からない胸の痛みで涙が出て仕方なかった。

    とても巧妙な構成で高校生の女子達の心の中をのぞく。どの子も賢く、好奇心に溢れ、仲間想いで、観察眼が鋭い。

    家庭環境、親との関係に痛みをかかえる真汐、日夏、空穂の関係性の変化を”わたしたちのファミリー”として観察(想像、捏造?)する同級生たちの視点から心象が描かれる。

    真汐の最初の作文でいきなり引き込まれて、読んでいる間中今も心にある痛みがずっと胸で疼くような感じがした。

    真汐に自分は近いと思った。心を鍛えなければ、といい、心に蓋をして懸命に傷つかないように自分を保とうとする姿。

    うまく言葉にできないけれど、高校生の女子たちの賢さ、優し

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    2025年05月01日
  • 奇貨

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    村田沙耶香さんおすすめ本。恋愛関係になり得ない2人の不思議な同居生活の中で、芯のある七島の主張とそれを引き出す本田さんのやりとりが痛快。まず、こんな存在がいることが羨ましい。自分にとっての奇貨と出会うため、自分が誰かの奇貨となるためには、「自分」というものを持って正しく見つめ、更に曝け出さなくてはならないのだと思った。同収録「変態月」も、同性に対する性欲求が絶妙に仄暗く描かれていた。

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    2025年03月03日
  • たけくらべ 現代語訳・樋口一葉

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    私にはきちんと内容を理解するにはまだ頭が足りないようだ。一度読み終えたものの何度か読み返す必要があると感じた。

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    2025年02月09日
  • たけくらべ 現代語訳・樋口一葉

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    訳者後付けでも解説されているように、一葉の作品には句点、段落があまり見られない。もちろん当時はカギ括弧のような様式も主流ではなかったのだろうが、21世紀の我々が馴染んだ文体ではない。

    しかし、訳者の努力の賜物なのだろう。非常に読みやすかった。「たけくらべ」はロマンスともジューブナイルとも分類できない複雑さがあり、充分に面白い。

    「たけくらべ」以外の短編たちもよい。「うもれ木」なんかは私の好みだった。恋愛:人間的成長=8:2くらいの混ぜ具合。当時の主流だっただけなのか、一葉が個人的に恋愛を関心事としていたのかはわからないのだが、何はともあれ良い作品だと思った。

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    2024年08月02日
  • 最愛の子ども

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    こんな友達たちがいたら面白かったんだろうなと思う。学生時代って一つ一つが大ごとで友達同士とごちゃごちゃと言い合うのが楽しかったんだよなあ〜。
    表現がいい意味で生々しく、秀逸で、世の中に疑問を持ちつつもまだちょっと未熟で、でもとても賢い女子高生たちの学生時代を覗いてる気分になった。

    200ページちょっとだけど中身はとっても濃い作品でした。

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    2024年01月04日
  • 最愛の子ども

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    制覇はしていないものの、読んできた松浦理英子作品では一番好きだった。私もこの学園で過ごしたかった。あらゆるタグに囚われることなく友達を愛したかった。真汐と日夏には『ナチュラル・ウーマン』の容子と花世の面影があったけれど、彼女たちへの眼差しは温かく柔らかかった。

    それなりに物事の分別もつき、且つ社会に出る直前、教室の中で世界が完結する微妙な未分化を表すのに女子高生を主人公に据えること、真汐、日夏、空穂の関係性を見守るクラスメイトたちの距離感と「わたしたち」という主語、単語と関係性の再定義、全てが、上手いな〜とうっとりしてしまったのだった。

    とにかく真汐がいとおしくてしかたがない。

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    2020年06月13日
  • 女性作家が選ぶ太宰治

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    読んだことのある作品もそうでない作品もあったけれど全体を通して楽しかった。
    やっぱり太宰治が好きだなぁと。

    女生徒、恥は読んだことのあった作品。好きな作品は何度読んでも楽しめるし、何度だって読みたくなる。
    そのうちまた読みたい。

    古典風、秋風記。今回初めて読んだ作品の中ではこの2篇が私の中でベスト。2度、3度と読み込んでいきたい。

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    2017年07月13日
  • 犬身(上)

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    四章のうち、第一章「犬憧」読んだだけで
    十分におもしろく。
    逆に、残りはどう展開すんの!?
    って感じにさせるくらいだった。

    まぁ、それから先は
    どろどろ。を絡めていっちゃったけど。
    でもそれも面白かった。

    なんだろぉ。
    なんか彼女の何かに対する不満さ、
    というか、じれったさというものみたいのが
    なんか響いてきたかなぁ…

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    2015年12月18日
  • 犬身(上)

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    おんなのひとらしい、強い思い(こみ?)が、現実になる話。
    犬の話だからか、嗅覚、味覚、触覚の表現がひじょうに細やかで、というか文章が全体的に丁寧で、ありありと光景が目に浮かぶ。

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    2013年02月13日
  • 犬身(上)

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    上巻を読み終えた今、どうやったって幸せになれないだろうと思う。
    下巻の最後に彼女と彼女の犬に幸せが待っているなんて絶対に思えない。

    全ての頁に「犬」にまつわることばや名前が出てくる様に感じる。
    犬まみれだ。

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    2011年04月19日
  • 最愛の子ども

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    クラスメイトから〈わたしたちのファミリー〉と呼ばれるパパ、ママ、王子という役柄に収まっている3人の女子高校生の話。
    その話と語りの2つの見どころがある。
    語りの部分は冒頭から早々にその存在を認識させられる。
    話としても面白く、仕掛けとそれについて考えるのも面白いけどそれについてはそうである以上ではないのでどう思うかは読者次第。

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    2025年09月26日
  • 奇貨

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    津村紀久子の解説の後、何を追加で書けるだろうか。思ったことが、そのまま書かれていた。
    本田さんと七島の寂しさや関わりや、人生の色々なことがリアルで曖昧な感覚だと思うのにくっきりと言葉で捉えられていて、胸に響いてくる。人との関係性のままならなさの共感とともに、希望も感じた。
    松浦理恵子の小説には、女性があたりまえに肯定された世界があって、読んでいると心が安らぐ。自分の感性やものの見方ひとつで、私も小説世界の外でも、そんな世界に住めるのだろうか。今感じている不安や息苦しさは、他者目線で女性や自分を見ているからなのだろうか。

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    2025年05月01日
  • たけくらべ 現代語訳・樋口一葉

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    面白いとは、思った。そんで、この書き方が樋口さんなのかあ、とも思った。訳されていても、こんな堅いんだなあ。って。でも…まだ、私には早かったらしい。「面白いなあ」から→「眠たいなあ」にいつの間にか変わってしまっていて…笑。リベンジしたいです。

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    2024年11月14日
  • 犬身(上)

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    八束房恵は、腐れ縁の久喜洋一とともに『犬の眼』というタウン誌を発行する仕事をしています。彼女は幼いころから「犬になりたい」という願望をもっており、自分が人間として生まれてきたことに違和感をもつ「種同一性障害」だと自分のことを理解するようになります。

    房恵は、ナツという犬を飼っている陶芸家の玉石梓という女性に出会い、彼女の飼い犬になりたいと願うようになります。そんな房恵に対して、「天狼」というバーを経営する朱尾献という男が、彼女を梓の飼い犬にする代わりに、彼女の魂をゆずらないかという契約をもちかけてきます。そんななかで、ナツが死んでしまうという事件が起こり、房恵は半信半疑ながらも牛尾と契約を結

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    2024年06月07日
  • 最愛の子ども

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    ネタバレ

    『コンビニ人間』の村田紗耶香さんが解説で
    「家族」の中での肉体というものについて考えた、と書き、

    「大切な、信頼できる相手の前で、心地よく筋肉が弛緩すること。・・誰かの体温の中を安堵しながら漂うこと・・・
    身体が相手を家族だと認識し、そうした反応をするなら、現実での関係性の名前がどうであるかなど関係なく、肉体にとってその人は『家族』なのではないかと思う。」

    と書いている。

    夫の日夏、妻の真汐、王子様=最愛の子どもに空穂という三人の女子高生を中心に、家族関係を妄想する周りの友だちたち。

    どう定義できるのか分からなかった「家族」が、
    三人の肉体の反応を通して、村田氏が指摘するように
    とても

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    2023年04月17日
  • 【無料版】『ヒカリ文集』抜粋 特別エッセイ付き

    購入済み

    協力があってこそ

    同一の作者一人が書くのではなく、別々の劇団員が協力して、まるで文集としてひとつの作品を完成させるというユニークな展開をたどります。その作品において賀集ヒカリにスポットが当てられます。彼女の繊細な心情と言動にぜひとも注目したいです。

    #深い

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    2022年04月01日
  • 最愛の子ども

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    「どれだけ美しければ世間にだいじにされるのだろう。どれだけ性格がよければ今のわたしが全く愛せない人たちを愛せるのだろう。」

    とても純度の高いものを読んだ気分だ。でもそう言葉にしたら、やや違和感も覚えた。
    「疑似家族」と「三人をアイドル視する周囲」という女の子同士の甘さ、十代のきれいさ、というとちょっと違って、でも違わなくて、上手く言えない。

    若手作家じゃないからこそ書ける女子高生、という印象を受けた。
    ちょっと風変わりだけれど奇をてらっているとは思わない、地に足の着いた無二さ。
    みんな微熱を帯びていて、それでいて過度に浮かされすぎない冷静さを感じる。
    筆致の所為もあるだろうか?
    濃くて、あ

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    2020年05月15日
  • 女性作家が選ぶ太宰治

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    未読既読入り交じっていたけれど、男性作家が選ぶ作品とはやはり色が違って面白い。くすっと笑ってしまえるあたり、やはり太宰の魅力。

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    2018年02月11日
  • 奇貨

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    久々に松浦理英子を読んだけども、めっちゃ面白かったぞ。このおっさんはひどいへんたいだと思ったけども(←)こういう人間関係も純文学でないとなかなか味わえない。あと思ったんやけど、松浦理英子は男性の一人称も描くのね。
    後半の「変態月」も面白かったです。思春期だなあ。地元が近いからか方言に親近感。

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    2017年05月17日