松浦理英子のレビュー一覧

  • 犬身(上)

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    「自分は人間でなく犬に生まれるべきだった」幼少期から犬化願望を持つ八束房恵は理想の「飼い主」とでも言うべき女性・玉石梓と出逢う。「あの人の犬になりたい」と願う房恵に「その望みを叶えるかわりに魂をもらう」と謎の契約を迫る朱尾献が現れた。果たして本当に犬となり、梓の犬・フサという新たな生を梓と共に生きようとするが、フサは牝犬ではなく牡犬に変えられてしまっていた。更に、兄をはじめとする問題を抱えた梓の家族のこと、梓が兄の彬に肉体関係を強要されていることも知ってしまい――

    主要人物二人の名前が明らかに八犬伝意識(八房と玉梓。あと、思えばフサと伏姫のフセは語感が似ている)の作品で興味があったから読んで

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    2015年01月17日
  • 犬身(上)

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    突拍子もない設定にぐいぐい引き込まれる。犬好きだから尚のこと、それを指す表現も素晴らしい。
    だがわたしがこの本のみならず、松浦さんの作品と言う作品を大声でお勧め出来ないことはかなり惜しい。それが松浦さんのいいところと言えばそうなのかも知れないが、全てを許容し理解出来る人はかなり限られるのではないだろうか。これに関して言えば勿体無いの一言に尽きる。

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    2013年12月02日
  • 犬身(上)

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    ネタバレ

    松浦理英子は、僕の学生時代に『親指Pの修業時代』が大ベストセラーになったが、それ以来ご縁のなかった作家。と言っても、もともと寡作な人らしく親指P以降、長編小説はこの『犬身』(2007年)含めて 3作くらいしか出ていない。

    妙にフェティッシュな犬への憧憬が描かれる序盤から、バーテンダー朱尾が本性を表わしておどろおどろしい雰囲気を醸し出す中盤、そしていびつな家族とその崩壊を描く終盤と、まったく先の見えないジェットコースターのようなストーリー。作者の発想の奇抜さもあいまって、次の展開がまったく判らないので、最悪の事態を想像して血圧が上がることしきりだったが、まあそれなりの終末に収束していただいて、

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    2013年07月15日
  • 犬身(下)

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    本当にまあ、最後まで、生々しくてグロテスクな小説だった。
    兄や母の存在はまさに、「憎い」ではなく「肉い」と書き表すのが最適だったように思う。最終局面に至って、兄と母の狂気ぶりはもはや人間味すら失い、心を閉ざしたように淡々とそれに応じる梓もまた、逆方向のベクトルで人間性を欠いている。そこに流れ出した血の匂いと温度で物語は急展開を迎え、一気に結末へと向かうのだけれど、その辺りのゾクゾク感がすごい。「血」の匂いと温度によって、もしくは血そのものによって「肉」が洗い清められたみたいにして、物語は新しい始まりとしての結末に繋がっていく。
    血と、肉と、それから魂と、人間も犬も、その3つからできているのに違

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    2013年04月18日
  • 犬身(下)

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    犬はいい。
    人間だったらどんなふうに声をかけたらよいものかわからなくなるようなときでも、犬だったら、そっとそばに寄り添えばいいのだ。

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    2013年02月14日
  • 犬身(上)

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    犬が飼い主恋しさに人間になる話は今まで読んだ気がするけれど、その逆は初めてかも^_^前者は犬を飼っていたら誰もが想像し願望する事もあると思うけど、自分自身が犬とは…かなりの犬マニアかド変態か(||゚Д゚)くらいに思ってちょっと引いてたのですが。
    読み進めていくうちに、この突拍子もない状況も楽しめる程引き込まれていました。
    房枝は犬になっただけでなく、牡犬になって性まで変えられてしまうのですが、全く無になった自分に向けられるものは、何の計算も性欲もない見返りを決して求めない唯の無垢な愛情。これこそ究極の愛情なのではないか、と思ってしまう。
    背景には房枝の愛する梓の不幸がある訳ですが、それが今後ど

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    2012年06月30日
  • 犬身(下)

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    犬になりたい主人公。 ちょっと、倒錯した世界?かと思うところもありました。 朱尾の正体は悪魔?狼男? ちょっと、もやもやするところもあります。

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    2012年04月01日
  • 犬身(下)

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    セックスの介在しない、個と個の愛を犬と飼い主の関係で描いた作品。男女はもちろん、男と男、女と女でも性器への接触なしで恋愛は成り立つだろうか?男女でそういう状況を描いた先行する作品はあるけれど、やはりどちらかが我慢している部分があるように思う。本作中、性欲から出発しない触れ合いたい気持ちが書かれていても、フサが梓に感じているのは、やはり恋愛感情ではないか。これが男女の関係では「体で受け止めてもらえないと、お互いたいせつにし合ってるっていう実感が起こらないんだよ」となる。だからこのテーマを描くには、人が犬に変わるというファンタジー要素は必要なんだな。

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    2011年01月19日
  • 犬身(下)

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    こういう、身も蓋もないの結構好き。
    救われているようで誰も救われなかったー
    うあおw
    まぁでも朱尾さんかっこいいからいいね^^b

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    2010年09月09日
  • 犬身(上)

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    犬になったよ……!
    展開が面白い……
    でもきんしんそうかんやらなにやらちょっと苦手なの多かったー

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    2010年09月09日
  • 最愛の子ども

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    ネタバレ

    苦手かも、どう読み解いていいかわからないな、と思いながら読み進めたけど、最後の「わたしたち」が生み出したエピローグとしての真汐の独白と、村田沙耶香の解説が良かった。

    〈物語〉の中で行われていることに対する、薄っすら伴う嫌悪感と自分との距離の遠さは、私がこの行為をきちんと自分事として解体できてないからなのかもしれない。

    美織の両親が日夏に行った「闘う価値のないものと闘うより、ひとまず離れた方がいいよ」という教え、参考になる。日夏は閉ざされた世界から離れて、閉ざされた荒れた世界を地均ししにまた戻ってきてほしい。と「わたしたち」目線でただ願う。

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    2025年09月10日
  • 犬身(下)

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    牛尾は彬に、息子とともに家を出て行った彬の妻の佐也子がひそかに書いていたブログを見せます。そしてその直後、梓と彬の関係を思わせるような内容のブログが、インターネットで公開されていることがわかります。

    フサは、牛尾がブログの執筆者ではないかと疑いますが、やがて彬が梓の立場に身を置いて、自分につごうのよい物語をつくっているのだと考えるようになります。ブログを目にした梓は目に見えてふさぎ込むようになり、フサはそんな彼女を元気づけたいと願います。

    犬にすがたを変えることで、慕っていた相手のゆがんだ家庭事情を知ることになるという上巻から引き継がれた枠組みのなかでストーリーが進行していきます。梓のあら

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    2024年06月07日
  • たけくらべ 現代語訳・樋口一葉

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    現代語訳を読んで、ようやく「たけくらべ」の物語がわかった。翻訳してくれてありがとうございます。

    訳者のあとがきも面白いから、最後まで読んでね♥

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    2024年05月28日
  • 最愛の子ども

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    書評を読んで面白そうと思い購入した本。思春期の女の子たちの家族ごっこ…言葉にすると何とも幼稚っぽい行動のだけど、その「家族」に付随する当事者たちや「目撃者」たちの感情や欲望が淡々と描かれ、それがこの小説に不思議な魅力を与えている。

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    2023年09月06日
  • 奇貨

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    変態月、読み終わってからめちゃ昔の作品てことを知ってびっくりした。
    令和でも昭和でもおんなのこはそんな変わんない。

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    2022年01月22日
  • 犬身(下)

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    犬が好きすぎて犬に変わっちゃう女性が主人公の話。動物になるとか子供向けの作品ならよくあることかもしれないけど、大人向けの小説なので、シリアスな描写と魔法ぽい話がミックスされているストーリーラインが斬新だった

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    2021年04月09日
  • 女性作家が選ぶ太宰治

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    ネタバレ

    「女生徒」や「恥」は好き。
    自分のことを綴った話はいかにも太宰らしい。度々出てくる弟くんが、このあと若くして亡くなってしまうんだなあと思うと辛い。

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    2020年02月02日
  • 犬身(下)

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    自分が犬なんじゃないかと思う、という発想はなんだか斬新な気がした。私も犬が好きだけど、飼い主に献身的に尽くしたいっていう感覚はないので。笑
    実際に主人公が犬になってからは飼い主である梓の話が強烈でそっちばかりが印象に残ったけど、自分の飼ってる犬との関係を見直すきっかけになった本だと思う。

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    2016年01月16日
  • 犬身(下)

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    後半物語が加速し、急に収束する。

    後味がいいのか悪いのか、読み手によって変わるかも。
    人生はいつだって素直じゃないから、
    だからこれはハッピーエンドなんだ、きっと。

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    2015年06月03日
  • 女性作家が選ぶ太宰治

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    「男性作家が選ぶ太宰治」は、どの話も小説の王道のごとく、
    シンプルにストレートに面白かった。
    対してこちらは、エッセイ風だったり、入れ子構造になっていたりと、
    やたらと技巧に凝っているのが目立つ。
    他人と同じものを選びたくないという女性心理だろうか?
    私の頭が単純なのか男性寄りなのか、「男性作家」の方が断然良かった。

    本書でいちばん気に入ったのは、角田光代さん選の「恥」
    「自分を暴かれる傷みが、読む快楽になることを知った」というコメントに膝を打つ。

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    2015年06月05日