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Posted by ブクログ
人を愛せず、犬を愛する女性が自らを「犬化願望」「種同一性障害」と呼び、理想の飼い主である女性を見つけ「あの人の犬になりたい」と願う。人の身では到底辿り着けない深い場所に、犬として、その女性の家族との間にある闇に触れていく話。
ファンタジーな世界観の中に官能的な描写を濁さずに書いていて、肉体を介在しなければ人間は愛情を感じることができないのか? 心と、肉体は、必ずしも一致していなければならないのか? を考えさせられる一冊だった。
動物は無償の愛を与えてくれるとは言うけれど、柔らかな毛並みと、優しい目を向けられるだけで、彼らはその愛で飼い主を守っているのだと思う。
Posted by ブクログ
本当にまあ、最後まで、生々しくてグロテスクな小説だった。
兄や母の存在はまさに、「憎い」ではなく「肉い」と書き表すのが最適だったように思う。最終局面に至って、兄と母の狂気ぶりはもはや人間味すら失い、心を閉ざしたように淡々とそれに応じる梓もまた、逆方向のベクトルで人間性を欠いている。そこに流れ出した血の匂いと温度で物語は急展開を迎え、一気に結末へと向かうのだけれど、その辺りのゾクゾク感がすごい。「血」の匂いと温度によって、もしくは血そのものによって「肉」が洗い清められたみたいにして、物語は新しい始まりとしての結末に繋がっていく。
血と、肉と、それから魂と、人間も犬も、その3つからできているのに違いない。
Posted by ブクログ
セックスの介在しない、個と個の愛を犬と飼い主の関係で描いた作品。男女はもちろん、男と男、女と女でも性器への接触なしで恋愛は成り立つだろうか?男女でそういう状況を描いた先行する作品はあるけれど、やはりどちらかが我慢している部分があるように思う。本作中、性欲から出発しない触れ合いたい気持ちが書かれていても、フサが梓に感じているのは、やはり恋愛感情ではないか。これが男女の関係では「体で受け止めてもらえないと、お互いたいせつにし合ってるっていう実感が起こらないんだよ」となる。だからこのテーマを描くには、人が犬に変わるというファンタジー要素は必要なんだな。
Posted by ブクログ
牛尾は彬に、息子とともに家を出て行った彬の妻の佐也子がひそかに書いていたブログを見せます。そしてその直後、梓と彬の関係を思わせるような内容のブログが、インターネットで公開されていることがわかります。
フサは、牛尾がブログの執筆者ではないかと疑いますが、やがて彬が梓の立場に身を置いて、自分につごうのよい物語をつくっているのだと考えるようになります。ブログを目にした梓は目に見えてふさぎ込むようになり、フサはそんな彼女を元気づけたいと願います。
犬にすがたを変えることで、慕っていた相手のゆがんだ家庭事情を知ることになるという上巻から引き継がれた枠組みのなかでストーリーが進行していきます。梓のあらたな人生に、ふたたびフサが寄り添うことになる結末にたどり着いたときには、多少救われる思いにもなりましたが、ときにフサも牛尾とともに梓に批評的な意見を語ったりと、玉石家の家族関係の観察者というポジションを大きくはずれることのないまま終わってしまったのは、すこしもの足りないようにも感じました。
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