あらすじ
「犬になりたい」と夢想する房江は、思いをよせる女性の飼い犬となるため、謎のバーテンダーと魂の契約を交わす。しかし飼い主の家庭は決定的に壊れていた。オスの仔犬となったフサは、実母と実兄のDVから彼女を守ることができるのか?
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
本当にまあ、最後まで、生々しくてグロテスクな小説だった。
兄や母の存在はまさに、「憎い」ではなく「肉い」と書き表すのが最適だったように思う。最終局面に至って、兄と母の狂気ぶりはもはや人間味すら失い、心を閉ざしたように淡々とそれに応じる梓もまた、逆方向のベクトルで人間性を欠いている。そこに流れ出した血の匂いと温度で物語は急展開を迎え、一気に結末へと向かうのだけれど、その辺りのゾクゾク感がすごい。「血」の匂いと温度によって、もしくは血そのものによって「肉」が洗い清められたみたいにして、物語は新しい始まりとしての結末に繋がっていく。
血と、肉と、それから魂と、人間も犬も、その3つからできているのに違いない。
Posted by ブクログ
犬になりたい主人公。 ちょっと、倒錯した世界?かと思うところもありました。 朱尾の正体は悪魔?狼男? ちょっと、もやもやするところもあります。
Posted by ブクログ
セックスの介在しない、個と個の愛を犬と飼い主の関係で描いた作品。男女はもちろん、男と男、女と女でも性器への接触なしで恋愛は成り立つだろうか?男女でそういう状況を描いた先行する作品はあるけれど、やはりどちらかが我慢している部分があるように思う。本作中、性欲から出発しない触れ合いたい気持ちが書かれていても、フサが梓に感じているのは、やはり恋愛感情ではないか。これが男女の関係では「体で受け止めてもらえないと、お互いたいせつにし合ってるっていう実感が起こらないんだよ」となる。だからこのテーマを描くには、人が犬に変わるというファンタジー要素は必要なんだな。
Posted by ブクログ
牛尾は彬に、息子とともに家を出て行った彬の妻の佐也子がひそかに書いていたブログを見せます。そしてその直後、梓と彬の関係を思わせるような内容のブログが、インターネットで公開されていることがわかります。
フサは、牛尾がブログの執筆者ではないかと疑いますが、やがて彬が梓の立場に身を置いて、自分につごうのよい物語をつくっているのだと考えるようになります。ブログを目にした梓は目に見えてふさぎ込むようになり、フサはそんな彼女を元気づけたいと願います。
犬にすがたを変えることで、慕っていた相手のゆがんだ家庭事情を知ることになるという上巻から引き継がれた枠組みのなかでストーリーが進行していきます。梓のあらたな人生に、ふたたびフサが寄り添うことになる結末にたどり着いたときには、多少救われる思いにもなりましたが、ときにフサも牛尾とともに梓に批評的な意見を語ったりと、玉石家の家族関係の観察者というポジションを大きくはずれることのないまま終わってしまったのは、すこしもの足りないようにも感じました。
Posted by ブクログ
犬が好きすぎて犬に変わっちゃう女性が主人公の話。動物になるとか子供向けの作品ならよくあることかもしれないけど、大人向けの小説なので、シリアスな描写と魔法ぽい話がミックスされているストーリーラインが斬新だった
Posted by ブクログ
自分が犬なんじゃないかと思う、という発想はなんだか斬新な気がした。私も犬が好きだけど、飼い主に献身的に尽くしたいっていう感覚はないので。笑
実際に主人公が犬になってからは飼い主である梓の話が強烈でそっちばかりが印象に残ったけど、自分の飼ってる犬との関係を見直すきっかけになった本だと思う。
Posted by ブクログ
後半物語が加速し、急に収束する。
後味がいいのか悪いのか、読み手によって変わるかも。
人生はいつだって素直じゃないから、
だからこれはハッピーエンドなんだ、きっと。
Posted by ブクログ
念願の梓の飼い犬となったフサだが、梓は、肉体関係を強要する兄・彬と、兄にばかり目をかける母に悩まされる日々を送っていた。そんな中、まるで梓が書いたかのような、彬との性的関係を告白するブログを見つけてしまう。家族の呪縛を抜け出したくて、けれど抜け出せない梓と彼女を慕うフサに訪れる結末は……
ファンタジー要素はあれどなんか久々にどろどろした現代小説読んだな……って感じ。振り返ってみると設定はユニークだけど別にそこまで面白いってわけでもなかったかな……八犬伝要素も名前だけでほぼないしね。途中何で私これ読んでるんだろう……って疑問に思ってたりもしたので、☆3くらいで。彬もそうなんだけど梓の母親も読んでてつらかった。いや彬がなによりつらかった。やっぱ近親相姦は地雷だしそれがレイプに近いものならもっと地雷だわ、と再認識したのであった。終わりもああだし……。フサもしかしたらタブーやぶるんじゃないかなー、破るために存在するんだもんなーって思ってたらそれもなくて、ちょっと残念だった。でも性的な悦びの根源は単純なふれあいにあるっていうの良かったです。
Posted by ブクログ
うーん…バルセロナの友人の元へ旅立つというハッピーエンドが来るかと思いきや、予想外の展開でした。
でもあのまま、兄と母親にいいようにされていくよりかはマシなのかな。
朱尾さんが意外に良い人(狼)でよかったw
フサが殺されてしまった時には天国から見守るオチかと思いましたが、転生オチとは。
下巻での梓の変化はすごく良かった。
もう縛られるものは無いのだし、もう一度人生をやり直して欲しい。
メイン3人が魅力的で一気に読んでしまいました。
Posted by ブクログ
フサの飼い主梓は理不尽で強引な兄から性的虐待を受け続けていた…
梓の母はそんな兄のことを実態も知らずに溺愛、梓を気遣うこともなく…
物語がひどい方向になってきた!フサと梓の絆は深まるものの…どうなるこの先…
とハラハラしながら読んでいたら、本当に救いのない展開になって。。悲惨すぎるけど、犬的にはハッピーエンド?献身と犬身を掛けているのだろうし、春琴抄めいた感覚もあるなぁ。