新潮文庫作品一覧

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  • 和算の侍
    3.0
    天才算術家関孝和に師事し、葛藤する中で円理を究めた高弟建部賢弘(かたひろ)。その苦闘の生涯を描く「円周率を計算した男」(歴史文学賞受賞)ほか、独学にして大酒飲みの奇才久留島義太(よしひろ)、算学者であり大名だった有馬頼ゆき(よりゆき)、百姓出身で孤高の算術家山口和(かず)など、江戸の天才数学者たちを主人公に、数奇な人生模様を情感溢れる筆致で描く、和算時代小説の傑作。『円周率を計算した男』改題。
  • わしの眼は十年先が見える―大原孫三郎の生涯―
    3.8
    下駄と靴と片足ずつ履いて――その男は二筋の道を同時に歩んだ。地方の一紡績会社を有数の大企業に伸長させた経営者の道と、社会から得た財はすべて社会に返す、という信念の道。あの治安維持法の時世に社会思想の研究機関を設立、倉敷に東洋一を目指す総合病院、世界に誇る美の殿堂を建て……。ひるむことを知らず夢を見続けた男の、人間形成の跡を辿り反抗の生涯を描き出す雄編。

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  • ワシントンハイツ―GHQが東京に刻んだ戦後―(新潮文庫)
    3.5
    終戦からほどなく、東京の真ん中に827戸を擁する米軍家族住宅エリアが出現した。その名も「ワシントンハイツ」。「日本の中のアメリカ」の華やかで近代的な生活は、焼け野原の日本人にアメリカ的豊かさへの憧れを強烈に植え付けた。現代日本の「原点」ともいうべき占領期を、日米双方の新資料と貴重な証言から洗いなおした傑作ノンフィクション。日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
  • 話術(新潮文庫)
    4.2
    話は誰でもできる。だからこそ、上手に話すことは難しい。日常の座談では、何を、どう話すか。大勢の聞き手を相手にするときに気を付けておくことは。声の出し方、間の置き方はどうする? 一人で喋るな、黙りこむな。お世辞、毒舌、愚痴、自慢は、やりすぎると嫌われる。ほら吹き、知ったかぶりは恥ずかしい。人生のあらゆる場面で役に立つ、“話術の神様”が書き残した〈話し方〉の教科書。(解説・濵田研吾、久米宏)
  • 忘れ得ぬ芸術家たち
    -
    法隆寺壁画の模写に没頭し、戦争のさなかに法隆寺へ向う列車の中で倒れた日本画家の荒井寛方。烈しく一途に美を語り、最初の出会いから著者をとりこにしてしまった陶工・河井寛次郎。ほかに橋本関雪、上村松園、国枝金三など、著者が美術記者時代にめぐり会った画家や陶芸家たちとの交わりを中心に、美の創造者たちの内面と風貌を生き生きと描き、鎮魂の思いあふれる美術エッセイ集。
  • 忘れないと誓ったぼくがいた
    3.7
    大好きなのに、いつまでも一緒にいたいと思ったのに、ぼくの心を一瞬で奪った君は〈消えてしまった〉。君の存在を証明するのはたった数分のビデオテープだけ。それが無ければ、君の顔さえ思い出せない。世界中の人が忘れても、ぼくだけは忘れないと誓ったのに――。避けられない運命に向かって必死にもがくふたり。日本ファンタジーノベル大賞受賞作家による、切ない恋の物語。
  • 私の愛した小説
    -
    敗戦直後に出会ったモーリヤックの「テレーズ・デスケルー」は、作家として進むべき方向を、私に教えてくれた作品だった。『沈黙』を書く時も『侍』の時も、必ずこの小説を読み直してから執筆を始めた……。四十年以上にわたり、読むたびにいつも新しい顔を見せる「テレーズ」を回想し、文学と宗教について語った長編エッセイ。巻末に遠藤周作訳「テレーズ・デスケルー」を収録する。

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  • 渡された場面
    4.0
    四国の県警捜査一課長香春(かわら)銀作は、文芸雑誌の同人誌評に引用された小説の一場面に目をとめた。九州在住の下坂一夫が書いたというその描写は、香春が担当している“未亡人強盗強姦殺人事件”の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていたのだ。再捜査により、九州の旅館女中の失踪事件と結びついたとき、予期せぬ真相が浮び上がる――中央文壇志向の青年の盗作した小説が鍵となる推理長編。

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  • わたしがいなかった街で
    3.8
    離婚して1年、夫と暮らしていたマンションから引っ越した36歳の砂羽。昼は契約社員として働く砂羽は、夜毎、戦争や紛争のドキュメンタリーを見続ける。凄惨な映像の中で、怯え、逃げ惑う人々。何故そこにいるのが、わたしではなくて彼らなのか。サラエヴォで、大阪、広島、東京で、わたしは誰かが生きた場所を生きている――。生の確かさと不可思議さを描き、世界の希望に到達する傑作。
  • 私が語りはじめた彼は(新潮文庫)
    3.5
    私は、彼の何を知っているというのか? 彼は私に何を求めていたのだろう? 大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘――それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか……。「私」は、彼の中に何を見ていたのか。迷える男女の人恋しい孤独をみつめて、恋愛関係、家族関係の危うさをあぶりだす、著者会心の連作長編。(解説・金原瑞人)
  • 私たちが好きだったこと
    3.8
    1巻671円 (税込)
    工業デザイナーを目ざす私、昆虫に魅入られた写真家のロバ、不安神経症を乗り越え、医者を志す愛子、美容師として活躍する曜子。偶然一つのマンションで暮らすことになった四人は、共に夢を語り、励ましあい、二組の愛が生まれる。しかし、互いの幸せを願う優しい心根が苦しさの種をまき、エゴを捨てて得た究極の愛が貌を変えていく……。無償の青春を描く長編小説。
  • 私という小説家の作り方
    4.2
    小説中の「僕」とは誰か? ジャーナリズムや批評家をアテにせず小説を書いていくには? なぜ多くの引用をするのか? 失敗作はどれか? ――『奇妙な仕事』以来40年に及ぶ小説家生活を経て、いまなお前進を続ける著者が、主要作品の創作過程と小説作法を詳細に語り、作家人生を支えてきた根源の力を初めて明かにする。文学を生きる糧とする読者へ贈る「クリエイティヴな自伝」。
  • 私と踊って
    3.9
    1巻693円 (税込)
    パーティ会場でぽつんとしていた私に、不思議な目をした少女が突然声をかける。いつのまにか彼女に手をひかれ、私は光の中で飛び跳ねていた。孤独だけれど、独りじゃないわ。たとえ世界が終わろうと、ずっと私を見ていてくれる? ――稀代の舞踏家ピナ・バウシュをモチーフにした表題作ほか、ミステリからSF、ショートショート、ホラーまで、彩り豊かに味わい異なる19編の万華鏡。
  • 私の愛する憩いの地
    -
    女の私が行ってきたのですから、私の歩いた道はどなたでも行けるのです――聖書の世界の神秘に出会うシナイ山、水源から辿るコロラド川、モザイク芸術の町ラヴェンナなど、31年にわたり「兼高かおる世界の旅」で日本のお茶の間を魅了した著者が披露する、とっておきの地の数々。すでに海外旅行通のあなたにも、新たな旅のロマンを教えてくれる“美しい星地球”への愛情溢れる一冊。 1995年刊。
  • 私の映画教室
    4.0
    チャップリンが88歳で死んだ翌日、人生の師チャップリンを偲んで著者が語った「不滅のチャップリン」。貧しい少女からセックス・シンボルへ、そして不幸な死へと生き急いだモンローを語る「かわいい女」のほか、「フランス映画の魂ジャン・ギャバン」「西部劇の神さまジョン・フォード」等、映画を愛し、映画から人生を学び続ける淀川おじさんが解説する、映画の魅力のすべて!
  • 私の嫌いな10の言葉
    3.6
    「相手の気持ちを考えろよ! 人間はひとりで生きてるんじゃない。こんな大事なことは、おまえのためを思って言ってるんだ。依怙地にならないで素直になれよ。相手に一度頭を下げれば済むじゃないか! 弁解するな。おまえが言い訳すると、みんなが厭な気分になるぞ」。こんなもっともらしい言葉をのたまう大人が、吐気がするほど嫌いだ! 精神のマイノリティに放つ反日本人論。

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  • 私の暮らしかた
    3.7
    大貫妙子――凜とした楽曲と透きとおった声で多くのファンをもつ、シンガー&ソング・ライター。その飾らない生き方にも共感が寄せられている。葉山での猫との暮らし。年下のパリの友だち。コスタリカで出会ったナマケモノ。歌い手としてさまざまな土地を訪れ、歌わない某日は田植えに出かける。母なる自然と自らの内なる声に耳を澄ます。愛おしい日々をまっすぐ綴る、エッセイ集。
  • 私の恋人(新潮文庫)
    4.0
    一人目は恐るべき正確さで世界の未来図を洞窟の壁に刻んだクロマニョン人。二人目は大戦中、収容所で絶命したユダヤ人。いずれも理想の女性を胸に描きつつ34年で終えた生を引き継いで、平成日本を生きる三人目の私、井上由祐は35歳を過ぎた今、美貌のキャロライン・ホプキンスに出会う。この女が愛おしい私の恋人なのだろうか。10万年の時空を超えて動き出す空前の恋物語。三島賞受賞作。
  • 私の詩と真実
    -
    「詩人との邂逅」「神への接近」「友情と人嫌い」「シェストフ的不安」「私のピアノ修業」「わが楽歴」「フランクとマラルメ」「若い知性の抒情」「認識の詩人」「ロンドンの憂鬱」「詩と人生の循環」の十一編からなる。優れた評論家であり、また稀なエスプリの人である著者が、評論の形で描いた、二十歳代に於ける精神形成を跡づけた自画像である。昭和28年の読売文学賞を受賞した作品。
  • 私の少女マンガ講義(新潮文庫)
    4.2
    日本の漫画は世界でも希有な文化である。中でも少女マンガは男性とは異なる視点で新たな物語を生み出してきた。その第一人者である萩尾望都が2009年、イタリアで行った講演で繙いた、『リボンの騎士』から『大奥』へ至る少女マンガ史、そして、自作の解説と創作作法を収録。'19年にデビュー50周年を迎えてなお現役であり続ける著者が、日本独自の文化である少女マンガの「原点」と「未来」を語る一冊。(解説・中条省平)
  • 私の食物誌
    -
    たべものにまつわる言葉の語源、歴史、食生活のしきたりをはじめ、一年三六五日の暮らしの中の食物に焦点を合わせて綴る、楽しい話の数々――日々の暮しを彩るさまざまな味のすがたを、古今東西の文献や流行歌などに幅広く求め、また、町角での買いぐいなどなど、著者が幼少の日より親しんできた味の思い出を、四季折々の風物と、周辺の人々の回想とともに語る、味の歳時記。
  • 私のなかの彼女
    4.1
    「男と張り合おうとするな」醜女と呼ばれながら、物書きを志した祖母の言葉の意味は何だったのだろう。心に芽生えた書きたいという衝動を和歌が追い始めたとき、仙太郎の妻になり夫を支える穏やかな未来図は、いびつに形を変えた。母の呪詛、恋人の抑圧、仕事の壁。それでも切実に求めているのだ、大切な何かを。全てに抗いもがきながら、自分の道へ踏み出してゆく、新しい私の物語。
  • 私の裸(新潮文庫)
    3.5
    1巻572円 (税込)
    女は皆、平和を装っているだけ。ライターの天音は、妻としても職業人としても自己不全感を抱いていた。ある日、友人の紹介で俳優の朔也と出会う。人とは違う肉体を生かして役者になった朔也を取材するうち、彼の周りの女性たちが変貌した瞬間を知る。いい子の呪いに苦しむ鈴美、男性経験のない冬美恵、朔也の妻・理都子、そして天音自身も――。未知の私が現れる5編。『幸福なハダカ』改題。(解説・寺地はるな)
  • わたしの普段着
    4.0
    かつて電車で目にした、席を譲られた老紳士の優美な仕種。我が家に家出娘を迎えに来た父親が農村の事情を語る言葉の奥深さ。結核による死を覚悟した頃を思えば感じる、今この時に生きる幸せ――。気取らず、気負わず、殊更には憂いを唱えず。いつも心に普段着を着て、本当に知った人生の滋味だけを悠悠閑閑と綴ってゆく。静かなる気骨の人、吉村昭の穏やかな声が聞こえるエッセイ集。

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  • 私の文学漂流
    -
    1巻550円 (税込)
    結核に苦しみながら読書に熱中した少年時代。川端康成、梶井基次郎に心酔し、三島由紀夫らを訪ねた大学文芸部の頃。大学を中退して結婚、生活に追われつつも、小説へのいちずな情熱を貫いた同人誌時代。そして四度の芥川賞落選……。逆境を乗り越えて太宰治賞を受賞し、次いで名作『戦艦武蔵』が生まれるまでの軌跡を率直に綴り、一人の作家の誕生を描く自伝。初期短篇「死体」「青い骨」「貝殻」3作併録。

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  • 私の本棚
    3.9
    本棚は、すでにいっぱい。ほしい本は、まだまだある。――夢、憧れ、苦労、奮闘。23編の名エッセイ。小野不由美、椎名 誠、赤川次郎、赤瀬川原平、児玉 清、南 伸坊、井上ひさし、荒井良二、唐沢俊一、内澤旬子、西川美和、都築響一、中野 翠、小泉武夫、内田 樹、金子國義、池上 彰、田部井淳子、祖父江慎、鹿島 茂、磯田道史、酒井駒子、福岡伸一。
  • 私の遺言
    4.1
    北海道に山荘を建てたときからそれは始まった。屋根の上の足音、ラップ音、家具の移動をともなう様々な超常現象、激しい頭痛。私はあらゆる霊能者に相談してその原因を探った。そうせずにはいられなかった。やがてわかった佐藤家の先祖とアイヌとの因縁。霊界の実相を正しく伝えることが私に与えられた使命だったのか。浄化のための30年に及ぶ苛烈な戦いを記した渾身のメッセージ。
  • 私は忘れない
    4.0
    日本のめざましい経済成長の陰に、電信電話もなく台風の被害も報道されない僻地。海の荒れる時は定期便の船さえ近づけない閉ざされた南の離島、黒島。スターの座を夢みながらチャンスを逃した門万里子は単身黒島へ旅立ち、自然との闘いの中でたくましく運命を切り開く人々の純朴な姿に心を打たれる――。明るい筆致で、厳しい日常生活の中に人間らしさの恢復を試みた問題作。
  • 渡りの足跡(新潮文庫)
    4.1
    この鳥たちが話してくれたら、それはきっと人間に負けないくらいの冒険譚になるに違いない──。一万キロを無着陸で飛び続けることもある、壮大なスケールの「渡り」。案内人に導かれ、命がけで旅立つ鳥たちの足跡を訪ねて、知床、諏訪湖、カムチャツカへ。ひとつの生命体の、その意志の向こうにあるものとは何か。創作の根源にあるテーマを浮き彫りにする、奇跡を見つめた旅の記録。
  • 和名の由来で覚える300種 高山・亜高山の花ポケット図鑑(新潮文庫)
    -
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 花は和名の由来を知ることで、名前が簡単に覚えられます。「衣笠草」は大きな葉を広げた姿を、昔の高貴な人にさしかけた衣笠に見立てた和名です。「駒草」は蕾の形が、子馬の頭に似ていることからつけられました。山の花を集めた本書は咲く地域を亜高山と高山に分け、さらに草地、湿地、礫地、岩場といった場所ごとに紹介。『野と里・山と海辺の花ポケット図鑑』の姉妹編です。
  • 和名の由来で覚える372種 野と里・山と海辺の花ポケット図鑑(新潮文庫)
    -
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 花はその和名に秘密があります。花弁の色、葉の形、薬効、地名などが含まれているのです。だから「お坊さんが座禅を組む姿に似ているから“座禅草”」というように、和名の由来を知ることで簡単に覚えられます。本書は海辺、野原、山と地域ごとに分け、似た花の違いをイラストによってひと目で分かるように構成しました。その場で開いてすぐ分かる、「花のポケット図鑑」決定版です。
  • 笑う月(新潮文庫)
    3.8
    笑う月が追いかけてくる。直径1メートル半ほどの、オレンジ色の満月が、ただふわふわと追いかけてくる。夢のなかで周期的に訪れるこの笑う月は、ぼくにとって恐怖の極限のイメージなのだ――。交錯するユーモアとイロニー、鋭い洞察。夢という〈意識下でつづっている創作ノート〉は、安部文学生成の秘密を明かしてくれる。表題作ほか著者が生け捕りにした夢のスナップショット全17編。
  • 笑うな(新潮文庫)
    3.9
    タイム・マシンを発明して、直前に起った出来事を眺めるというユニークな発想の『笑うな』。夫の目前で妻を強姦する制服警官のニューロイックな心理『傷ついたのは誰の心』。空飛ぶ円盤と遭遇したSF作家の狼狽ぶりをシニカルに捉えた『ベムたちの消えた夜』。ほかに『赤いライオン』『猫と真珠湾』『血みどろウサギ』など、スラップスティックでブラックな味のショート・ショート34編。
  • わるいやつら(上)
    3.8
    1~2巻737~781円 (税込)
    米倉涼子主演のドラマ原作。“どのように美しくても、経済力のない女は虫のように無価値だ”医学界の重鎮だった亡父の後を継ぎ、若くして病院長となった戸谷信一は、熱心に患者を診療することもなく、経営に専心するでもない。病院の経営は苦しく、赤字は増えるばかりだが、彼は苦にしない。穴埋めの金は、女から絞り取ればいい……。色と欲のため、厚い病院の壁の中で計画される恐るべき完全犯罪。

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  • 我は景祐―幕末仙台流星伝―(新潮文庫)
    4.0
    1巻1,100円 (税込)
    仙台藩にもおぬしのような切れ者がいるとはな――。桂小五郎にそう言わしめた若き藩士・若生文十郎景祐。六尺の長身に柔和な瞳、豪胆でいて細心な気質は自藩を真摯に憂えていた。鳥羽伏見の戦いの後、朝敵・会津藩追討を命じられた仙台藩は窮地に。会津進攻を唱える世良修蔵殺害を機に藩士たちは奥羽越列藩同盟を導き、戊辰戦争へとひた走ってゆく。幕末の新たな英雄を描く感涙の時代長編。(解説・安部龍太郎)
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ
    3.8
    外部からおそいかかる時代の狂気、あるいは、自分の内部から暗い過去との血のつながりにおいて、自分ひとりの存在に根ざしてあらわれてくる狂気にとらわれながら、核時代を生き延びる人間の絶望感とそこからの解放の道を、豊かな詩的感覚と想像力で構築する。『万延元年のフットボール』から『洪水はわが魂に及び』への橋わたしをなす、ひとつながりの充実した作品群である。
  • われらの時代
    3.8
    快楽と不能の無限の繰返しから抜け出て、幼年時代の黄金の象徴だった天皇の現在の姿に手榴弾を投げつけ爆破しようとする少年。遍在する自殺の機会に見張られながら、自殺する勇気もなく生きてゆかざるをえない“われらの時代”。いまだ誰も捉えられずにいた戦後世代の欲望をさらけ出し、性を媒介に現代青年の行きづまりを解剖して、著者の新たな文学的冒険の出発となった長編小説。
  • ワンダフル・ワールド(新潮文庫)
    3.3
    アロマオイルを纏(まと)った肌をぶつけ合い、のぼり立つ匂い。調香師との情事は、私に長い愛人生活を終わらせる予感を抱かせた。あの光景を目にするまでは――(「アンビバレンス」)。年上の人妻経営者に持ちかけられた三か月間の恋人契約。俺に抱かれ、女の喜びを感じると話していた彼女は、なぜ突然いなくなったのだろう(「バタフライ」)。記憶と熱を一瞬で呼び覚ます特別な香り。五編の恋愛小説集。
  • ワン・モア・ヌーク(新潮文庫)
    4.2
    「核の穴は、あなた方をもう一度、特別な存在にしてくれる」。原爆テロを予告する一本の動画が日本を大混乱に陥れた。爆発は3月11日午前零時。福島第一原発事故への繋がりを示唆するメッセージの、その真意を政府は見抜けない。だが科学者と刑事の執念は、互いを欺きながら“正義の瞬間”に向けて疾走するテロリスト二人の歪んだ理想を捉えていた――。戒厳令の東京、110時間のサスペンス。
  • ワーキングガール・ウォーズ
    3.7
    37歳女性、入社15年目、独身バツなし。ついでに恋人・人望ともにナシ。……ですが、何か問題でも? 無能な上司や、使えない部下への鬱憤を抱え、今日もお疲れモード。有名企業の女性係長といったって、陰では「お局」呼ばわりで、都合のいいときだけ「ベテラン」だなんて、やってられるか。どんなに強く見えたとしても、たまには愚痴も聞いてほしいし、恋愛だって諦めるにはまだ早い――働く女の本音と弱音を描く本格「負け犬」小説!

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  • ヴァンサンカンまでに
    3.6
    アパレルメーカーに勤める仲江翠は入社一年目。そつなく仕事をこなしていたが、彼女には秘密があった。仕入れ部の課長と不倫恋愛していたのだ。さらに同期の男性とも恋人として付き合い、ゲームのような恋愛を続けた。ところが、同僚女性が上司と無理心中する事件が発生。二人の一途さを理解できない翠だったが、やがて彼女にもつらい出来事が舞い込む。本当の愛に気付くまでの物語。
  • ヴァージニア
    4.0
    ボーイフレンドたちに自己の肉体を与え続ける女子学生、ヴァージニアの奇妙な孤独感を描いた表題作。死の床で、愛と生の妄執にとらわれる歯科医の、鬼気迫る意識を掘り下げた『長い夢路』。婚約者の死霊との愛の交歓を、エロティカルな幻想の中に捉えた『霊魂』。――荒涼たる死と性の深淵、超現実的な愛と夢想の世界を、明晰な知性と、ロマネスクな筆致に托した秀作三編を収録。
  • ヴァージン・ビューティ
    3.3
    「いけないわ、ダメ……やめて……ください」――私はSM嬢を辞めて、小さな本屋で働きはじめた。店主夫妻はとっても優しい。奥さんはインテリ美人で、ご主人は真面目で実直。それなのに、仕事に慣れてきたある日、棚に並んだSM雑誌に誘われるように、ご主人との関係がはじまってしまった。でも私がセックス中に思い浮かべるのはご主人ではなくて……輪姦、SM、不倫、レズビアン……ヒロインたちが初めての経験で知る究極のエクスタシーを描く、全7編を収録。超過激な愛の物語。

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  • ヴィヨンの妻
    3.9
    1巻407円 (税込)
    酒と女に明け暮れる無頼派の作家。26歳のその妻は夫の尻ぬぐいに奔走するが……。古い価値感が失われ新しい価値観が生まれようとしている戦後の混乱の中、必死に生き抜こうともがく男と女の愛のかたちを繊細に描いた表題作。その他太宰晩年の好短編を多数収録。

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  • 明暗(新潮文庫)
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    -
    勤め先の社長夫人の仲立ちで現在の妻お延と結婚し、平凡な毎日を送る津田には、お延と知り合う前に将来を誓い合った清子という女性がいた。ある日突然津田を捨て、自分の友人に嫁いでいった清子が、一人温泉場に滞在していることを知った津田は、秘かに彼女の元へと向かった……。濃密な人間ドラマの中にエゴイズムのゆくすえを描いて、日本近代小説の最高峰となった漱石未完の絶筆。(解説・柄谷行人)
  • 文鳥・夢十夜(新潮文庫)
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    -
    人に勧められて飼い始めた可憐な文鳥が家人のちょっとした不注意からあっけなく死んでしまうまでを淡々とした筆致で描き、著者の孤独な心持をにじませた名作『文鳥』、意識の内部に深くわだかまる恐怖・不安・虚無などの感情を正面から凝視し、〈裏切られた期待〉〈人間的意志の無力感〉を無気味な雰囲気を漂わせつつ描き出した『夢十夜』ほか、『思い出す事など』『永日小品』等全7編。(解説・三好行雄)
  • 坑夫(新潮文庫)
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    -
    恋愛事件のために家を出奔した主人公は、周旋屋に誘われるまま坑夫になる決心をし、赤毛布や小僧の飛び入りする奇妙な道中を続けた末銅山に辿り着く。飯場にひとり放り出された彼は異様な風体の坑夫たちに嚇かされたり嘲弄されたりしながらも、地獄の坑内深く降りて行く……。漱石の許を訪れた未知の青年の告白をもとに、小説らしい構成を意識的に排して描いたルポルタージュ的異色作。明治41年、『虞美人草』に次いで「朝日新聞」に連載された。(解説・三好行雄)
  • 二百十日・野分(新潮文庫)
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    “豆腐屋主義”の圭さんと奔放な性格の碌さん。江戸っ子二人の軽妙な会話を通じて、金持が幅をきかす社会を痛烈に批判する『二百十日』。理想主義が高じて失職した元中学教師の文筆家・白井道也と二人の青年・高橋と中野。学問、金、恋、人生の葛藤を描く『野分』。漱石の思想や哲学をもっとも鮮やかに体現する二作品。(解説・紅野敏郎)
  • 硝子戸の中(新潮文庫)
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    -
    硝子戸の中から外を見渡しても、霜除けをした芭蕉だの、直立した電信柱だののほか、これといって数えたてるほどのものはほとんど視野に入ってこない――。宿痾の胃潰瘍に悩みつつ次々と名作を世に送りだしていた漱石が、終日書斎の硝子戸の中に坐し、頭の動くまま気分の変るまま、静かに人生と社会を語った随想集。著者の哲学と人格が深く織りこまれている。(解説・石原千秋)
  • 道草(新潮文庫)
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    海外留学から帰って大学の教師になった健三は、長い時間をかけて完成する目的で一大著作に取りかかっている。その彼の前に、十五、六年前に縁が切れたはずの養父島田が現われ、金をせびる。養父ばかりか、姉や兄、事業に失敗した妻お住の父までが、健三にまつわりつき、金銭問題で悩ませる。その上、夫婦はお互いを理解できずに暮している毎日。近代知識人の苦悩を描く漱石の自伝的小説。(解説・柄谷行人)
  • 行人(新潮文庫)
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    -
    学問だけを生きがいとしている一郎は、妻に理解されないばかりでなく、両親や親族からも敬遠されている。孤独に苦しみながらも、我を棄てることができない彼は、妻を愛しながらも、妻を信じることができず、弟・二郎に対する妻の愛情を疑い、弟に自分の妻とひと晩よそで泊まってくれとまで頼む……。「他の心」をつかめなくなった人間の寂寞とした姿を追究して『こころ』につながる作品。(解説・大野淳一)
  • 彼岸過迄(新潮文庫)
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    誠実だが行動力のない内向的性格の須永と、純粋な感情を持ち恐れるところなく行動する彼の従妹の千代子。愛しながらも彼女を恐れている須永と、彼の煮えきらなさにいらだち、時には嘲笑しながらも心の底では惹かれている千代子との恋愛問題を主軸に、自意識をもてあます内向的な近代知識人の苦悩を描く。須永に自分自身を重ねた漱石の自己との血みどろの闘いはこれから始まる。(解説・柄谷行人)
  • 虞美人草(新潮文庫)
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    大学卒業のとき恩賜の銀時計を貰ったほどの秀才小野。彼の心は、傲慢で虚栄心の強い美しい女性藤尾と、古風でもの静かな恩師の娘小夜子との間で激しく揺れ動く。彼は、貧しさからぬけ出すために、いったんは小夜子との縁談を断わるが……。やがて、小野の抱いた打算は、藤尾を悲劇に導く。東京帝大講師をやめて朝日新聞に入社し、職業的作家になる道を選んだ夏目漱石の最初の作品。(解説・柄谷行人)
  • 草枕(新潮文庫)
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    住みにくい人の世を芸術の力で打破できぬかと思案する青年画家。あるとき温泉場の出戻り娘・那美に惹かれ、絵に描きたいと思うが何か物足りない。やがて彼が見つけた「何か」とは――。豊かな語彙と達意の文章で芸術美の尊さを描く漱石初期の代表作。(「漱石の文学」江藤淳、「『草枕』について」柄谷行人)
  • 門(新潮文庫)
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    親友の安井を裏切り、その妻であった御米(およね)と結ばれた宗助は、その負い目から、父の遺産相続を叔父の意にまかせ、今また、叔父の死により、弟・小六の学費を打ち切られても積極的解決に乗り出すこともなく、社会の罪人として諦めのなかに暮らしている。そんな彼が、思いがけず耳にした安井の消息に心を乱し、救いを求めて禅寺の門をくぐるのだが。『三四郎』『それから』に続く三部作。(解説・柄谷行人)
  • それから(新潮文庫)
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    長井代助は三十にもなって定職も持たず、父からの援助で毎日をぶらぶらと暮している。実生活に根を持たない思索家の代助は、かつて愛しながらも義侠心から友人平岡に譲った平岡の妻三千代との再会により、妙な運命に巻き込まれていく……。破局を予想しながらもそれにむかわなければいられない愛を通して明治知識人の悲劇を描く、『三四郎』に続く三部作の第二作。(解説・柄谷行人)
  • 三四郎(新潮文庫)
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    熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく……。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて『それから』『門』に続く三部作の序曲をなす作品である。(解説・柄谷行人)
  • 倫敦塔・幻影の盾(新潮文庫)
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    イギリス留学中に倫敦塔を訪れた漱石は、一目でその塔に魅せられてしまう。そして、彼の心のうちからは、しだいに二十世紀のロンドンは消え去り、幻のような過去の歴史が描き出されていく。イギリスの歴史を題材に幻想を繰りひろげる「倫敦塔」をはじめ、留学中の紀行文「カーライル博物館」、男女間における神秘的な恋愛の直観を描く「幻影の盾」など七編をおさめる。(解説・伊藤整)
  • ガイズ&ドールズ(新潮文庫)
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    賭け事にとり憑かれた生粋のギャンブラーが一目惚れしたのは、魂を救済するため布教活動に従事する清廉な美女だった――。『ガイズ&ドールズ』の題名でおなじみのミュージカルや映画の原作者として知られ、ブロードウェイを舞台に悲喜こもごもの人間喜劇を描き続けたデイモン・ラニアン。ジャズ・エイジを代表する短篇の名手の歴史的デビュー作品集を、オリジナル収録そのままに紹介する。(解説・小森収)
  • カフカ断片集―海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ―(新潮文庫)
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    カフカは完成した作品の他に、手記やノート等に多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記されたなぜか笑える絶望的な感情、卓越した語彙力で発せられるネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも悲観的で人間らしく生きたカフカが贈る極上の言葉たち。完全新訳で登場。(解説・頭木弘樹)
  • ぼくの哲学(新潮文庫)
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    その男、偶像か、トリックスターか。NYを舞台に世界を熱狂させ続けたアーティストの稀有なる証言。シャイで神経質だった幼少期から、孤独を受け入れた途端に取り巻きができ、夜な夜なパーティに繰り出した狂騒の時代まで。「芸術家は英雄(HERO)ではなく無(ZERO)」「芸術なんて作ればもう新しくない」と豪語し、ひとところに留まらなかった時代の寵児は何を見、何を語ったか。唯一無二の決定的自伝。
  • フェルメールの憂鬱(新潮文庫)
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    未発見のフェルメール作品『ニンフと聖女』がスイスで見つかった。その直後ニューヨークのメトロポリタン美術館からフェルメールの代表作『少女』が強奪され、日本人に買い取られたという情報が流れる。2枚の絵をめぐり絡み合うさまざまな思惑と、周到に張り巡らされていく幾重もの罠。天才詐欺師、悪徳画商、宗教団体教祖――くせ者たちによる騙し合いに勝利して、最後に絵を手にするのは!?(解説・西上心太) ※新潮文庫に掲載の図版は電子版には収録しておりません。
  • 夜明けのカルテ―医師作家アンソロジー―(新潮文庫)
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    その眼で患者と病を見つめてきた医師にしか描けないことがある。新米研修医が気づいた真実。引きこもり患者を救うひと癖ある精神科医。無差別殺人犯への緊急手術。友の脳腫瘍に握る電気メス。深夜の出産に奔走する医療チーム――。彼らは考える。決断する。オペを行う。あなたの命を守るために。9名の医師作家が、知識と経験をもとに臨場感あふれる筆致で描く、空前の医学エンターテインメント集。(解説・吉田大助)
  • ここに物語が(新潮文庫)
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    人は人生のそのときどき、大小様様な物語に付き添われ、支えられしながら一生をまっとうする――。『二十歳の原点』『木かげの家の小人たち』『あらしの前』『百年の孤独』。作家・梨木香歩は、どんな本に出会い、どんなことに想いを馳(は)せ、物語を紡いできたのか。過去二十年に亘(わた)り綴られた、数多(あまた)の書評や解説、そして本や映画にまつわるエッセイを通してその思考を追う、たまらなく贅沢な一冊。(解説・長田育恵)
  • 最後に「ありがとう」と言えたなら(新潮文庫)
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    亡くなった夫に頭を撫でて欲しいと願った妻。亡き母の髪を泣きながら洗った美容師になりたての娘。お気に入りの洋服を着て何度も抱っこされた、小さな体の重さ……。故人を棺へと移す納棺式にひとつとして同じものはない。悲しく辛い時間。しかし、生と死のはざまのごく限られた時間に、家族は絆を結び直していく。4000人以上のお別れをお手伝いしてきたベテラン納棺師が出会った、家族の物語。
  • こころの散歩(新潮文庫)
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    こんな窮屈な時代だからこそ、たまには、心に深呼吸させてみませんか? 目に見えるモノではない「心の相続」をすることの重さ、生きるためのエネルギーとなる「ノスタルジーの力」、そして「後ろ向きに前へ進むこと」の大切さ。自由闊達、融通無碍。九十歳をこえた作家が自らの豊富な経験をもとに綴る、「週刊新潮」連載のエッセイから選りすぐった、人生を楽しむためのヒント満載の四十三編。(解説・南陀楼綾繁)
  • 神の悪手(新潮文庫)
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    1巻649円 (税込)
    俺はなぜ、もっと早く引き返さなかったのか――。棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編。(解説・斜線堂有紀)
  • 祈願成就(新潮文庫)
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    凄惨な事故死を遂げた郁美。その葬儀を機に、大人になった幼なじみ四人が再会した。小学生の頃の郁美は、仲間たちそれぞれの願いを叶えるため、雑木林でおまじないの儀式を行なっていた。彼女の死を境に、儀式に参加した四人は不気味な影に悩まされ、おぞましい事故や原因不明の災厄に見舞われる。無邪気な遊びに潜む恐ろしい罠とは――平穏な日常が暗転する、絶望に満ちたオカルトホラー。

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