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熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく……。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて『それから』『門』に続く三部作の序曲をなす作品である。(解説・柄谷行人)
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Posted by ブクログ
三四郎の心模様が、静かで落ち着いた文章の中に流れていました。色で言えばグレーに近い感じです。それは悪い意味ではありません。心というものの描き方が上手い、それにつきるのだと思います。 東京帝大入学のため、熊本から上京途中の三四郎は、汽車の中で、ある女性に出会います。その女性とひょんなことから、同室で...続きを読む一泊することになります。読んでいる方がハラハラして、“三四郎、今後、女性と付き合えなくなるのではないか”と気を揉んでしまいました。「あなたは余っ程 度胸のない方ですね」なんて言われたら一生トラウマになってしまう。この女性、悪魔みたい。「度胸がない」という言葉は、三四郎のお母さんの手紙の中にもありました。漱石が、三四郎の人物像を読者に植え付けるための、仕掛けかなと思いました。 真面目で、はっきりしないところがあって、純情で、ちょっとかわいいところがあり、お人好しの三四郎。彼は、美禰子さんに恋をします。20代の同世代の男女の精神年齢の差が、うまく描かれていました。美禰子さんは、裕福なお嬢様でお高くとまっている雰囲気があり、三四郎に合わないなあと思いながら読んでいました。でも、好きなんだからしょうがない。 性格なんて、そう簡単に変わるわけではありません。最後の最後まで、三四郎の心が折れやしないかとヤキモキしました。 私自身、大学時代、月1の書道の勉強会で知り合った年上の男性が、結婚する報告を聞いたとき、“告白しとけば良かったかな?”とちょっと後悔したことがありました。(告白すればうまくいくわけではないのですが)でもそのことがきっかけで、その後の恋愛の学びとなったことは事実です。三四郎は、告白めいたことを言っているので、私よりエライ!三四郎のこれからに期待します。 小説中に、正岡子規の名前が登場したり、三四郎が友達にお金を貸す場面があったりと、漱石自身のことが少なからずも投影されているように思いました。
巧いとしか言いようがない。冒頭、いきなり掴みから入る。九州から上京するくだり、名古屋の宿で、車中で一緒になった若い女性と同室・同衾。そして名古屋から、向かいの席に座った男は……。 手紙や葉書や電報、絵画や演劇、演説会や引っ越し、どの小道具や出来事も絶妙な使われ方をしていて、無駄がない。しかもみな自然...続きを読むだ。そしてなんといっても、会話が機智と機微に富む。 脇役たちもみな個性的。どこにでも顔を出す与次郎がいい味を出している。 話は、8月末から12月末までの4カ月間に三四郎に起こった出来事。朝日新聞の連載は9月1日から12月29日と、シンクロしている。新聞の読者にとってはリアルタイムな話の展開。これも見事と言うしかない。
掴みから小気味よい。 夏目漱石が生きた時代の学生の在り方を通して、現代や自分自身のことも振り返るきっかけになった。 学問への価値観が面白かった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「迷子の英訳を知っていらしって」学問、友情、恋愛への不満や戸惑い。 何度読んでも新鮮な気持ちになれる、みずみずしい...続きを読む永遠の傑作。 『それから』『門』へと続く前期三部作の第一章。
最後まで読めてよかった。 “恋”の瞬間に立ち会ったような感じがした。 余韻が良い。 “それから”も楽しみ!
全体的な感想 現代に多い女性との交際未経験の青年が恋をする話。私も主人公の青年と同い年で、なおかつ交際未経験なので、私にやけに語りかけてくるものがあった。どこか他人事ではない気がした。でも、同い年の時に、この作品に出会えてよかったと思う。でなければ、ここまでのリアリティーは感じられていないだろう。物...続きを読む語の意味を考えれば考えるほど、余韻をより深く感じられるあたりでは、噛めば噛むほど美味しくなるガムのような摩訶不思議な作品であった。 ネットのレビューにもあったが、この作品は恋する女性に対して、好きという言葉を使わずに、彼女への恋慕の情を表している。これに関しては、漱石先生の文才、もとい彼の小説がなぜここまで人気なのかの一端を表していると言えよう。 恋愛したことない青年にはぜひこの作品を読んでほしいところではあるが、いささか文芸の話とかが多いような気がして、もう少し恋への懊悩(おうのう)を書いてほしかった。その点では少し物足りなかったように感じる ネタバレ込みの感想 主人公である三四郎は、池のほとりで出会った美禰子という美しい女性に恋をする。彼女も三四郎のことを好きな面もあったが、どこかどっちつかずなところもあり、結局はみね子は別の人と結婚してしまう。この恋に翻弄される主人公たち(主人公だけを指してるのかもしれないが)のことを、彼らは迷羊(stray sheep)と呼び合い、お互いだけに分かる暗号みたいなものがある。 sheepは、熊本という田舎から出てきたばかりの純朴な主人公にはピッタリの表現だと思うし、迷うという表現で自分たちが恋に翻弄されている様子を表したのも、これまた一興である。最後に森の女という題の美禰子の絵を見た時に、stray sheepと心のなかで呟くシーンは、結婚したみね子への失恋の虚しさをよく表しているシーンだと思う。恋愛したことない同い年の私も、いつか恋愛したときに、このような結果になるのかと一抹の不安にも駆られた 中田敦彦のYouTube大学のサムネに、三四郎は純愛物語と書いてあったが、私はそれより失恋の虚しさや主人公をどこか弄んでいるような気もする美禰子のSっ気の方を強く感じた。もちろん純愛みもあったけどね。 最後に、主人公は東京という地にも振り回されていたような気もした。かといって、熊本にはもう帰りたくないと読み取れるような供述もあるし、居住地という意味での主人公の本当の居場所はないくらい、彼は複雑な思いを抱いていたと思う。
「三四郎」では好きという言葉が用いられていない。しかし、三四郎の一挙手一投足によって美禰子への恋心は鮮明に描かれておりそこに夏目漱石の巧みさが描かれていると思う。また、三四郎には夏目漱石の価値観がよく現れていて面白い。
物語について大きな展開や事件があるものではなく、淡々とした日常を描いた写生文ですが読後感がかなり好きです。多分キャラクターが三四郎を含めてみんないい味を出しているのかなと思います。 2/7再読✅ やっぱり最高です〜〜〜〜〜読んだ後はなんだかゆっくりのんびりいい心地の余韻に浸れます。12のラスト〜本...続きを読む編ラストにかけてが最高に好きです。 うまく言葉にできませんが、"〜"な気分になります。
3度目の三四郎。 最初に読んだのは、高校生のとき。「坊ちゃん」のような派手な展開もなく、田舎者の三四郎が美禰子さんに憧れるが、地味な失恋をするという陳腐な青春小説という印象で、面白い本とは思えなかった。 50代での再読で漸く良さがわかった。汽車の中の情景、途中下車した名古屋での女性との一夜、水蜜...続きを読む桃を頬張りながらの富士山談義で構成される印象的な導入部。日露戦争後当時の東京の情景と漱石が思うこれからの日本の将来への展望も良く書かれていて、読書の楽しさが味わえた。 そして、今回は「それから」「門」を読んでからの「三四郎」。漱石の世界に馴染んでからの「三四郎」の世界は心地よかった。なんと言っても、三四郎の人物描写が良い。導入部で「あなたはよっぽど度胸のない方ですね」と評されてしまう三四郎の性格。物語はその性格通りに展開。「矛盾」に悩み、3つの世界を頭の中に作りあげ、美禰子との距離を縮められず、ラストでは美禰子を描いた絵の題名を「ストレイシップ」と呟く。愛おしさすら感じてしまう人物であり、「それから」「門」で三四郎のその後をもう一度追いたくなった。 広田先生、野々村とその妹、美禰子、佐々木の言動も面白い。なお、美禰子のモデルは平塚雷鳥、野々村は寺田寅彦、佐々木は鈴木三重吉。これを知って読むと「三四郎」の世界をより楽しめる。 「草枕」同様、「三四郎」も複数回読むことで味が出る。ただ、轢死事故の描写の位置付けがよくわからない。10年後にまた読もう。
青春の中、優秀な学生さんが様々な経験をしていくのが微笑ましかった 明治時代にタイムスリップしたみたいで楽しかった
最近、三四郎池に行く機会があり、久しぶりに夏目漱石を読んでみたが、古い文調でも読みやすく楽しめた。現代に比べて時間がゆっくり流れているが、人の機微に触れる機会は多く、対人関係は豊かに感じた。
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