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Posted by ブクログ
『三四郎』(夏目漱石)以上に、心理描写に引き込まれました。
主人公の長井代助、30才。裕福な家のお坊ちゃんで、親の脛をかじっている。働かないで暮らせる。インテリと頼りなさが同居した感じ。
読み始めからゾクゾクします。不倫の話。代助の不倫相手は友人、平岡常次郎の妻(三千代)。代助と三千代は、互いに好意を持っていました。しかし、代助は平岡と三千代の結婚をとり持ってしまう。自分の気持ちより、友人の思いを優先して。
三千代との再会で過去の恋が再燃すると、頼りなげな代助が、大人の男性になっていくように思いました。しかし2人のやりとりから、三千代の方が度胸が座っていると感じる面も。彼女は病気持ちで、自分の死を意識している感じがあります。
小説の中盤から代助という人物は、不倫はもちろん、結婚する段階でなく、悲しいけれどまだ恋愛の段階だと思ってしまいました。「僕の存在には貴方が必要だ。どうしても必要だ。」この言葉を学生時代に三千代さんに言っていたら......
終盤にいくにしたがい、代助の前途は真っ暗闇。しかし、代助がようやく地に足をつけて歩く決意をしたかのようにも感じました。
『三四郎』にも『それから』にも、ストーリーにお金の貸し借りが出てきます。他の作品はどうなんだろう?
きめ細かな心理描写、独特の間合いで読者を惹きつける文章は天下一品。代助と三千代の思い出に白百合の花があります。代助が三千代への思いを吐露する場面に、白百合の香りを持ってくるところ、にくい演出です。この密会での告白後、数日経って代助は三千代に会いにいきます。三千代が平然として言った言葉は「何故それからいらっしゃらなかったの」。ちょっとドキッとしました。タイトルの“それから”が入っていたので。漱石の仕掛けかな?やはり、三千代の方が肝が座っている感じ。男女の温度差、感じます。
小説のラストがこれまた秀逸で、思いも寄らない“色”で描写されていて、忘れられません。代助の前途は困難を極めている、そこにこの色を持ってきたか!という感じ。インパクト大です。
この小説を私の感覚で要約するなら....
不倫の話と簡単には言い切れない、恋愛未消化ゆえの悲劇。悲しみや辛さを正面から受けとめた代助の心の変遷と決断。ようやく一歩を踏み出すが、彼の今後は未知数。どうなるか分からない。だから、タイトルは『それから』.....
単純に読んで終わりではない、様々な登場人物の角度から読み取りができ、深い思索へと導かれる作品です。それゆえ、名作だと言えると思います。
Posted by ブクログ
随分前に『三四郎』を読んで、漱石ふつうにおもしろいなと思っていたのですが、前期三部作の2作目にあたるこちらを読むのにだいぶかかりました。
『三四郎』はラストが少し物悲しさもありますが、全体的に青春小説風ですがすがしさがありましたが、こちらは最初から全体的に詰んでいるというか、代助自体は最初は悠々自適としていますが、明らかにそう長くは続かないだろうという不安感が、読者の方にも共有していて、この不発弾、いつか爆発するんだろうという緊張感がただよっていて、読みごたえがありました。
また、『三四郎』や『こころ』にも表れていましたが、時代が物質的文化へシフトしていくときに、時代は変わるけど、さて人のこころもそう簡単に変えることができるのだろうかという疑問が、この作品にも表れていたように思います。
Posted by ブクログ
定職を持たず父からの援助で暮らしている明治期の高等遊民である長井代助が主人公の小説。
代助が働かない理由を友人である平岡に語る場面でもあるように代助の言っていることは屁理屈にも感じるが、世の中をできるだけ公平に見て自由に論じるためには代助のような立場の人間の方が適している面もあるのかなと感じた。
平岡と平岡の妻である三千代とのやりとりはもちろんだが、個人的にはかつては代助と同じように文学書を熱心に読んでいたのに生活に追われるようになり次第に読書の面白さがわからなくなった但馬にいる友人の描写が代助の生活との対比を上手く表現していると感じ印象に残っている。
Posted by ブクログ
吾輩は猫であるの次に読んだので、ストーリーがある分読み進めるのが早かった。
遊民の代助の内面が丁寧に描かれており、代助は分析力があり聡明な設定だが、辛い過去に忘却という蓋をしていたり、三千代を思う気持ちが止められなくなったり、最後は頭の中が赤で埋め尽くされるなど、彼の言う自然には逆らえないものだと思った。
私は漱石の、場面をガラリと変える描写が好きで、特に三千代への思いを初めて具体的に示した、馬鈴薯と金剛石の描写と、激しい雨の中、部屋中を百合の花の香りで満たして三千代に告白するシーンが好きだ。後者のシーンは、本当に百合の香りがしてくるようだった。
夢十夜とそれからを読んで、百合の花やその香りが好きになった。
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