ビジネス・実用 - 筑摩書房作品一覧

  • 不在の哲学
    5.0
    古来、西洋哲学は確固とした普遍的「実在」を求めてきた。本書は、そうした客観的・統一的な脱自己中心的世界としての「実在」ではなく、対立概念である「不在」こそが「真にあること」ではないかという問題に取組む。言語=理性を習得してしまった人間は、客観的・統一的な「実在」こそ普遍的であり、それを、多元的・自己中心的な「私の世界」よりも優位に置く図式に、なかなか抗うことができない。そして、自分が住んでいる世界の相貌を語りつくすことができない。それはなぜなのか。不在を生み出す時間、自己と他者というトリック等、数々の哲学のアポリアに迫る、渾身の書下ろし。
  • すし 天ぷら 蕎麦 うなぎ ──江戸四大名物食の誕生
    3.6
    日本料理の基礎が出来上がった江戸時代。後期に入り経済事情が安定すると、ふだんの食事にも胃袋を満たす以上のものが求められるようになる。こうした中で生まれ、洗練されていったのがすし、天ぷら、蕎麦、うなぎだ。腕利きの料理人が現れると、食べ手にも粋人が現れる。この両者が出会い、食の世界に変革がもたらされていった。たとえば、日本橋南詰の天ぷら屋台の名店「吉兵衛」の客が、隣り合わせた屋台のかけ蕎麦に天ぷらを浮かべることを思いつく、といった具合に──。膨大な史料を読み解き、江戸四大名物食誕生の知られざる歴史に迫る、江戸食文化史の決定版!
  • フンボルト 自然の諸相 ──熱帯自然の絵画的記述
    3.0
    フンボルトの中南米探検行は6年の準備をかけ1799年に始まり、5年の歳月を費やした。彼は、地形や気象、地磁気などを機器測定した科学者であると同時に、ゲーテとの交遊からうかがえるように自然を深く愛好する人でもあった。「長い乾季のあと……草原の情景は一変する」「爽やかな雨を告げるのは、遠くの雷鳴である」「大地の表面が水でうるおされるや否や、かぐわしく匂う草原は多種多様なスゲ科植物、円錐花序モロコシ類、多種多様な禾本科植物で覆われる」。自然の全貌を絵画のように描きだしたこの科学的エッセイは、新しい旅行文学としても人気を博した掌編である。図版多数収録。本邦初訳。
  • ゲーテ形態学論集・動物篇
    -
    生きて発展する刻印されたフォルム! それは動物の骨格に潜在的にそなわっている「比較の第三者」としての原型を意味するゲーテの革新的な生物学思想の言葉である。植物において「すべては葉である」としたゲーテ形態学は、さらに対象を動物にも広げていく。動物形態の多様性は骨学的原型から発するもの、またそれぞれの動物の骨格部分は同一の基本器官のメタモルフォーゼ(変態)と洞察した。それら哺乳類についての論考のほかに、チョウのメタモルフォーゼやヒトの観相学をも含むオリジナル編集になる新訳決定版論考集成。図版多数。哲学しはじめ20世紀後半の現代科学に贈られた、ゲーテの大いなる遺産。『植物篇』の姉妹篇。
  • 増補 民族という虚構
    4.4
    “民族”は、虚構に支えられた現象である。時に対立や闘争を引き起こす力を持ちながらも、その虚構性は巧みに隠蔽されている。虚構の意味を否定的に捉えてはならない。社会は虚構があってはじめて機能する。著者は“民族”の構成と再構成のメカニズムを血縁・文化連続性・記憶の精緻な分析を通して解明し、我々の常識を根本から転換させる。そしてそれらの知見を基に、開かれた共同体概念の構築へと向かう。文庫化にあたり、新たに補考「虚構論」を加えた。
  • 工学の歴史 ──機械工学を中心に
    4.4
    工学とは「ものつくりの科学」である。動力を効率よく伝達する歯車の歯型はどのような曲線なのか。蒸気機関が出せる動力と効率は何によって決まってしまうのか。オイラーは伸開線によるインボリュート歯車を、カルノーは熱の理論を樹立した。「ものつくり」は科学に問いを課し、また科学から方策を授かってきた。本書は、その工学の歴史を、おもに機械工学と力学の話題を中心に展開した。技術開発や研究が最先端に達し、もはや参考となる文献・資料がなくなったとき、その解決のヒントは歴史のなかにある。幕末維新や近代日本に関する研究成果も意欲的に取り入れた力作。資料・図版を多数収録。
  • 現代思想史入門
    -
    二〇世紀のイデオロギー対立は終焉したが、新たな思想・哲学が出現していないように見える。近代のしがらみを捨てて、いま一度、現代思想の諸地層をもっとつぶさに見ていこう。そこに新たな思考が芽生えるきっかけが見つかりそうだ。生命、精神、歴史、情報、暴力の五つの層において現代思想をとらえ、それぞれ一九世紀後半あたりを出発点として、五度にわたってさらいなおす。現代思想の意義を探りつつ、その全体像を俯瞰する、初学者にもわかりやすい新しいタイプの入門書。
  • 自由の哲学
    4.5
    「外なる世界と内なる世界、外なる法則性と内なる道徳性との間に横たわる深淵は、ただ自由な魂だけがこれに橋をかけることができる」(本書「あとがき」より)。刊行後100年以上経つ現在も、まばゆい光芒を放ち続ける、シュタイナー全業績の礎をなしている認識論哲学。社会の中で否応なしに生きざるを得ない個としての人間は、個人の究極の自由をどこに見出すことができるのか。また、思考の働きは人類に何をもたらすのか。シュタイナー四大主著の一冊。
  • 神秘学概論
    5.0
    本書は、シュタイナーの四大主著の一冊であり、その思想の根幹が綴られている。肉体、エーテル体、アストラル体、自我という人間存在のヒエラルキアを解明し、宇宙論、人間論の中で、めくるめくような宇宙史の壮大な展望の下にマクロコスモス(宇宙)とミクロコスモス(人間)との関わりをあとづけ、進化の法則と意識の発達史、古代秘儀の本質、輪廻転生論、悪魔論、霊的認識の方法などを記し、過去と現在と未来についての常識をくつがえした前代未聞の神秘学大系が展開される。
  • 原始仏典
    4.3
    仏教経典を片端から読破するのはあまりに大変だが、重要な教えだけでも知りたい―本書は、そうした切実な希望にこたえるものである。なかでも、釈尊の教えをもっとも忠実に伝えるとされる、「スッタニパータ」「サンユッタニカーャ」「大パリニッバーナ経」など、原始仏教の経典の数々。それらを、多くの原典訳でも知られる仏教思想学の大家が、これ以上なく平明な注釈で解く。テレビ・ラジオ連続講義を中心に歴史的・体系的にまとめたシリーズから、『原始仏典1釈尊の生涯』『原始仏典2人生の指針』をあわせた一冊。
  • 戦争の技術
    -
    『君主論』でカリスマ権力者による政治主導を訴え、『ディスコルシ』で市民に国を守る自覚をうながしたマキァヴェッリは、本書で、強く、かつコントロールしやすい軍隊の作り方を説く。群雄割拠の時代、他国との戦いを勝ち抜かなければならないのはもちろんだが、同時に司令官たちの台頭も警戒しなければならない。軍制改革の特命を帯びた彼は、厳しい訓練によって兵士を鍛えるとともに、クーデターを未然に防ぎ、不満分子を矯正するための管理体制を構築する。マキァヴェッリ政治思想を理解する上で欠くことのできない一冊。ボリンギエーリ版、ナツィオナーレ版に依った改訳決定版。
  • 知性の正しい導き方
    3.5
    名誉革命後の混乱と喧噪のなかで、人間の自由と自主独立について徹底的に思考し、新たな論理学に基づいた知性のあり方を探究したロック。彼は、知性は誰にでも平等に備わっており、訓練や努力を重ねることで改善できるはずだ、と言う。近代の代表的思想家が伝授する、自分の頭で考えるための実践的メソッド。
  • 琉球の時代 ――大いなる歴史像を求めて
    5.0
    いまだ多くの謎に包まれた古琉球王国。歴史をひもといてみると、壮大な交易ルートを通じて築き上げた華やかな文化を誇っていた。中国、マラッカやポルトガル等、海外の文書に記された当時の王国の姿などを参考にしながら、その栄光と悲劇の歴史ドラマにわけいる。沖縄独自の文化と世界像に新たな光をあてた歴史的名著。
  • 諸葛孔明
    3.0
    『三国志』の主人公の一人である諸葛孔明。三国時代(二二〇~二八〇年)、蜀の宰相として活躍した彼は、曹操の魏や孫権の呉に比べて劣勢だった蜀の勢力を拡大し、主君の劉備亡き後も、縦横無尽の機略によって支えた。以来、二千年を経た今日まで「戦略家」「参謀」の天才として語り継がれている。基礎文献を丁寧に紹介しながら、稀代の軍師の素顔と事績に迫る。
  • 資本主義のパラドックス ――楕円幻想
    5.0
    近代社会存立の仕組みには、自己否定へ導くダイナミズムが潜んでいる。本書では自身の中に他者を孕むその様を、二つ焦点(=中心点)をもつ楕円になぞらえ、近代の本性に迫る。他者という存在に投資することで初めて成り立つ資本制の構図を明らかにし、その起源を錬金術に求めた。近代の萌芽から帰結まで様々な題材を議論することで、我々の社会の有様を示す。現代社会の問題に真摯に向き合いつつその行く末を論じる、著者の多層的見識が十全に発揮された意欲的論考。
  • 恋の中国文明史
    -
    もともと儒学では夫婦の和合は賛美されるが、未婚の男女の交際は認められない。結婚も親の取決めによる。この風習は中原の漢民族文芸に影を落とし、長い間、中国に純粋な恋愛小説はなかった。が、度重なる異民族の支配により〈恋〉を知った漢民族は、他民族の血と文化を自らに取入れ、変容させ、新たな活力にしてきた。やがて清代には恋愛小説の大作『紅楼夢』が登場、人々を魅了する……。中国史を漢民族の文化の変容の歴史として捉え〈恋〉という側面からそれを浮彫りにした意欲作。
  • 平安王朝と源平武士 ――力と血統でつかみ取る適者生存
    -
    清少納言や和泉式部が仮名文学で雅な貴族の世界を描いていた裏には、暴力が支配する武士の世界があった。それは地方だけでなく、都のすぐ近くでも人が殺されるような状態だった。そして、その雅な世界は武士による収奪によって成り立っていたのだ。この凄惨な時代、拡大・縮小を繰り返しながら、源氏と平氏が武士の代表格として確立してゆく。その背景にある、血の入れ替えと相剋の過程を克明に綴る。
  • 商店街の復権 ――歩いて楽しめるコミュニティ空間
    3.5
    商店街は過去の遺物ではなく、新たな動きが見え始めている。若い世代がカフェやコワーキングスペースなどコミュニティの拠点として商店街に関心を向け、クルマで買い物に行くのが難しい高齢世代が商店街に足を向ける流れも出てきた。コミュニティ空間としての「ウォーカブル・シティ(歩いて楽しめる街)」を求める動きも各地で起こりつつある。商店街のもつ新たな意味や価値に注目し、国際比較の視点や、まちづくり・交通など公共政策の観点も盛り込み、幅広い叡智を結集。未来の商店街のありようと、再生に向けた具体策を提起する。
  • 民主主義を疑ってみる ――自分で考えるための政治思想講義
    -
    近年、民主主義の危機が叫ばれ、その重要性を訴える議論が巻き起こっている。だが、民主主義を擁護するだけで本当に今日の「危機」は回避できるだろうか。むしろ、民主主義それ自体がポピュリズムなどの現象を招いているのではないか。本書では、政治思想が「民主政」批判から始まったことに注目しつつ、民主主義だけでなく、それを補完・抑制する原理としての自由主義や共和主義、社会主義などを取り上げ、それぞれの歴史的展開や要点を整理していく。主主義を機能不全から救い出すために何が必要か、その核心に迫る白熱の講義。
  • 乱数
    -
    「乱数」とは、サイコロを振って出る目のように「規則性のない数字(の列)」のことである。フォン・ノイマンは、コンピュータを使って乱数らしきもの(疑似乱数)を作り出す方法を考案した。疑似乱数は、数値実験や標本抽出などの統計的諸手法にとっては、数の頻度分布の「一様性」が満たされていれば十分である。本書は、このような意味での乱数列の作り方や、正規分布などの頻度分布に従う乱数列への変換法、さらに得られた乱数列が実用上許容できるものかどうかの統計的検定法を基礎的理論から実用的な計算法までをバランスよく記述した「乱数」を体系的に学べる日本でほとんど唯一の入門書。
  • 中国の城郭都市 ――殷周から明清まで
    3.0
    ときに長さ数十キロ・高さ十メートルを超える城壁で都市全体を囲んだ、中国の巨大な城郭都市。はやくは四千年以上前に作られ、一部戦乱期を経て継承・増改築された数々の城壁は地表・地中にその跡を遺し、現在も発掘調査が行われている。本書は、殷から清までのおもな城郭都市の構造を、史料と考古資料をもとに網羅的に紹介する類のない入門書。長安城、洛陽城、北京城など皇帝の住む都城から、地方行政の中心である州城・県城まで。城郭都市の発生、その構造の変遷から浮かび上がるのは、政治や戦争、人々の暮らしの変化だ。豊富な図版とともにあまたの城壁を渡り歩く、ダイナミックな中国都市史。
  • 「家庭」の誕生 ――理想と現実の歴史を追う
    5.0
    イエ、家族、ホーム、ファミリーなど、多くの名が生まれた理由は、その言葉を用いないと表現できない現象や思いがあったためだ。「家庭」には、リベラル、保守、それぞれの理想が託されてきたが、一方でその理想と現実には様々な乖離があった。明治から昭和、平成、現代まで、それらをめぐる錯綜した議論をときぼぐしていくことで、近現代日本の新たな一面に光をあてる。
  • 古代日本の宮都を歩く
    -
    よく知られるように平城京・平安京以外にも、古代には数多くの宮都があった。王権の所在地であり国家統治の中枢だった王宮は、やがて「百官の府」と称され、京域に貴族官人や庶民が集住し都市文化が萌芽。それは遷都と造都を繰り返す中でもたらされた。半世紀以上にわたり、古代の宮都を訪ね歩いてきた著者が、過去の景観と現在を比較し、文献史料を再検討することによって、宮都の知られざる事実を掘り起こす。通説にとらわれずに史実を明らかにしてきた碩学による宮都案内。
  • 聖母の美術全史 ――信仰を育んだイメージ
    -
    2020年4月、一枚の聖母像の前でフランシスコ教皇は、新型コロナと戦う連帯を全世界に呼びかけるミサを行った。今も昔も、悩み苦しむ人びとが求めるのは、「母なるもの」のイメージなのだろう。イコンをその源に持つ聖母は「受胎告知」「ピエタ」「無原罪の御宿り」など様々な主題を生み、祈りの対象としてのみならず、西洋美術史を強く牽引した。聖母像の起源から、ルネサンス、バロック、日本の南蛮美術やお掛け絵、現代美術に至るまで、その大潮流を追いかける比類なき美術史。
  • 死にいたる病
    3.7
    絶望とは、人間の精神のみが罹る「死にいたる病」である。キリスト教会の欺瞞を批判しつつ、無限なる神との関係における有限なる自己(単独者)をめぐって、絶望と罪との諸形態を徹底的に分析し、考え抜く――精神の教化と覚醒のために。自己疎外に陥った現代人の魂の、その核心への肉薄が、今なお鮮烈に読む者を捕えて離さない実存主義哲学の古典。20世紀の思想に広範な影響を与えたキルケゴール晩年の思索を、デンマーク語原点から訳出し、詳細を極める訳注と解説を付す。
  • 中世哲学入門 ――存在の海をめぐる思想史
    3.0
    未踏の大地だった中世哲学は、20世紀に入ると忘却の淵から蘇った。歴史的な関心よりも、現代における問題に直結する哲学として光が当てられ、中世論理学が言語哲学への枠組みを提供するなど、非合理でも素朴でもなく、煩瑣で無内容でもない中世哲学の姿が示されるようになってきた。中世哲学への入り口を示し、基本用語への解説を加えつつ存在の問題からアヴィセンナの存在論、存在の一義性、個体化論、普遍論争へと、存在の海をめぐる思想史を丁寧に案内する決定版入門書。
  • 算数・数学24の真珠
    -
    算数・数学には、海の宝石“真珠”にも喩えられるべき“基本中の基本”である考え方や概念がある。ゼロ、点と線、円周率、プラスとマイナス、ピタゴラスの定理、指数と対数、無限……。算数・数学を専門としない人や中学生、高校生にもその魅力・重要性がわかるよう、ベーシックな考え方を問い直し、ていねいに伝える数学入門書。やわらかい語り口と明快な論理で定評のある著者が贈る、数学史を彩る光り輝く24個の“真珠”。
  • 病気と治療の文化人類学
    4.0
    どれほど科学技術が発達しようと治らない病気はある。だからこそ人間は病気に強い関心を抱き、さまざまな意味づけを行ってきた。民俗医療や治療儀礼、宗教・民間信仰・シャーマニズムは、どのように病気とかかわってきたのか。本書では「病マケ」と呼ばれる家筋への差別構造、奄美のユタによる治療実態、明治期のコレラが引き起こした社会的混乱など、豊富で多様な民族誌的事例も踏まえつつ、文化と社会における病気に焦点をあて、総合的な文化人類学理論を構築しようとする。「医療人類学」を切り拓いてきた著者による先駆的名著。
  • 陸軍将校の教育社会史(上) ──立身出世と天皇制
    -
    天皇制イデオロギーの「内面化」が、戦時体制を積極的に担う陸軍将校を生み出したというのは真実か。本書は、膨大な史料を緻密に分析することを通じて、これまで前提とされてきた言説を鮮やかに覆していく。戦前・戦中の陸軍将校たちは、「滅私奉公」に代表されるような従来のイメージとは異なり、むしろ世俗的な出世欲をもつ存在だった。秩序への積極的な同化こそが、陸軍将校を生んだ。上巻には、「序論 課題と枠組み」から「第2部 陸士・陸幼の教育」第2章までを収録する。第19回サントリー学芸賞受賞作、待望の文庫化。
  • インド大反乱一八五七年
    4.0
    東インド会社の傭兵シパーヒーの蜂起に端を発し、インド亜大陸全体へと飛び火した大反乱。ムガル帝国皇帝を擁立した反乱軍はデリーに政権を樹立して闘争を繰り広げるが、内紛と分裂を経て、やがて大英帝国による直接統治という結末を迎える。この反乱を支えたのは、いったい何であったのか。農村社会の変容、ヒンドゥー教・イスラム教ほかの宗教、カースト制度など、本書は複雑なインド社会の根幹部分を丹念にすくいあげて分析しながら、そこに携わった多様な人々のリアルな姿も活写。20世紀の独立へと持ち越された、インド民族運動の真実の姿を描きだす。
  • 台湾総督府
    5.0
    清朝中国から台湾を割譲させた日本は、植民地・台湾を統治するため新たな統括官庁を組織した。その現地機関が台湾総督府である。初期武官総督時代・大正デモクラシー期の文官総督時代・大戦期の後期武官時代を経て、植民地時代の終焉までの日本支配の全貌を追うとともに、その軍事権・行政権・立法権・司法権の実態を探る。そこで浮き彫りにされるのは、台湾人としての民族意識が自治権獲得に向けた運動と併行して日本統治期に醸成された、という史実だ。台湾独立運動家でもあった著者が、多面的な視点をもって、平明かつ詳細に書ききった名著。
  • 琉球の富
    -
    琉球王国として独自の文化を形成した沖縄。1938年に初めて現地を訪れた柳宗悦は、工芸品ばかりでなく、建物や人、暮らしぶりにいたるまで、すべてが美しい島々に魅了される。以来、来島を重ね、調査・蒐集を行い、展覧会などを通じてその魅力を紹介した。しかしその夢のような美の王国は1945年の沖縄戦で灰燼に帰してしまう。本書には表題の「琉球の富」をはじめ、柳が沖縄のすばらしさや沖縄の人々への想いを綴った主な論考を収録。あわせて玉陵や識名宮、首里の町並みなど、失われてしまった美しい風景を記録した貴重な写真も多数掲載。戦前の沖縄がここに蘇る。文庫オリジナル。
  • 〈権利〉の選択
    4.5
    “right”に「権利」という訳語があてられたとき、そこには特殊日本的な背景が作用し、それ自体が一つの独自な解釈を表すものとなった。「力と利益」の意味を含む日本の“権利”の思想は、「正しいこと」を意味する西洋の“ライト”の思想とどの程度異なり、また、どの点で共通しているのか。この問いを考察の糸口として、我々が「権利」と呼ぶ思考装置の問題点と限界を明かし、その核心に迫る。福沢諭吉、西周、加藤弘之ら日本の思想家をはじめ、ロック、ドゥオーキン、ロールズ、セン、ニーチェらを導き手とし、理念と力の錯綜した関係を解きほぐした著。
  • (見えない)欲望へ向けて ――クィア批評との対話
    4.0
    性差や異性愛といった規範が作用する場から見えない欲望を引き出し、新たな解釈を生産すること。本書は、そうしたクィア批評の声に耳を傾けながら、「自分ではない」ものへの同一化による読むことの快楽と、性的な快楽を混線させる試みである。セジウィックの理論や英文学の古典から、ホモソーシャルな欲望、文学共同体の規範を学ぶ快楽、プライヴァシーという概念装置等を縦横に論じるとともに、クィア批評と精神分析の思想的往還を、ジジェク、バトラー、コプチェク、ベルサーニらを読むことで辿った。クィアなるものが含む解放性と固有性のパラドックス、批評的・思想的探究と政治的意味の緊張をも見据えた名著。
  • 〈日本美術〉誕生 ──近代日本の「ことば」と戦略
    4.0
    作品じたいは古くからあった。しかし、「日本美術史」という歴史体系は、「ことば」によって近代日本につくられたのである――。本書はまず、明治期に「絵画」などの美術用語が作られていく過程、また「日本画」「西洋画」「歴史画」「裸体画」「風景画」といったジャンルが規定されていく過程を綿密に追う。その背後にあるのは、近代日本で芽生えた国家思想、つまりナショナリスティックな「日本」意識と、欧化・国際化との相克だ。作品・作家を生み出し支えた政治的・社会的機構をとおして、新たに近代美術の深部を抉りだす。
  • 重力と力学的世界 上 ――古典としての古典力学
    4.5
    1~2巻1,155~1,265円 (税込)
    私たちが自明としている力学的世界観の成立には、古典力学と古典重力論にもとづく天体力学、とりわけ“重力”概念の確立が大きな影響を与えている。本書は、“重力”理論完成までの思想的格闘の足跡を原典に則して丹念に辿りつつ、誤りや迷いといった紆余曲折までも含めて詳らかにする。先人の思考の核心に「同時代的」に肉薄する壮大でドラマチックな力学史。上巻は、ケプラーにはじまり、ガリレイ、デカルトをへてニュートンにいたる力学方程式確立の歴史、オイラーの重力理論までを収録。
  • 戦争体験 ――一九七〇年への遺書
    3.0
    戦争体験の伝承ということ、これについては、ほとんど絶望的である――。少年期を日中戦争の戦時下に過ごし、大学在学中に徴兵され、ソ連軍の捕虜となり復員。異常で圧倒的であり、自らの現在を決定づけた戦争体験とその伝承の難しさについて、戦中派である著者が切々と書き綴る。戦後多くの知識人が、体験を思想化・体系化して後世に伝え、反戦・平和を訴える義務と責任を説くなかで、著者はその「語りがたさ」に固執しつづけた。屈辱や憤り、自責、虚しさ、喪失、死への誘惑……。時に感傷的で非生産的と批判されながらも、断片的で矛盾に満ちた自らの戦争体験に留まり、二十年をかけてその「無念」を問うた書。
  • 考古学はどんな学問か
    4.0
    考古学は物的証拠を手掛かりに、過去の人々の行為を再現する学問だ。したがって石器時代や縄文・弥生などの古い時代だけでなく、近現代までもが研究対象となる。もちろん物的証拠も幅広く、銃弾といったものさえ証拠になる。犯罪捜査さながらにスリリングな学問であり、時には一国の歴史を書き換えることすらある。アメリカで長く国民的英雄とあがめられていた将軍の遺跡が、実は先住民への暴力の跡だったことが分かった「リトルビッグホーン古戦場」などは代表的事例だ。歴史の生き証人を足元から掘り起こす考古学。その魅力を余すことなく伝える、読んで楽しい入門書!
  • 増補 女性解放という思想
    4.5
    「女性解放」を論じることはなぜ難しいのか。あるべき解放論を示すのではなく、かつて女性解放の運動と理論が直面した対立や批判、矛盾やその破綻を描くことで、今なお残る困難の数々を深く鋭く明かす論考集。1部には、イデオロギーに根ざす80年代女性解放論への批判と、「性差があるから差別ではない」とする言説の本質的な不当性を喝破した論考を収録。2部では、ウーマンリブ運動の思想史的位置付けと再評価を行い、3部では、フェミニズム運動への「からかい」が、非難や攻撃にもまさる抑圧的効果をもったことを明かした「からかいの政治学」など、メディアにおける女性表象の問題を追求した。今日までの状況を俯瞰する1章を加えた増補版。
  • アメリカ言語哲学入門
    4.0
    20世紀後半の現代哲学に、最も先鋭的かつ重要な潮流をなした、アメリカ言語哲学。その最前線を形づくってきた、サール、クリプキ、デイヴィドソン、クワイン、ローティら哲学の巨人の思想を、言語行為論、指示理論、根本的解釈説、メタファー論、反表象主義などの主要な議論から精査する。その考察から、彼らの視点には、実はデカルトやロックらの近代観念説やヨーロッパの解釈学とも通底するものがある、という事実が明らかになってくる。西洋哲学全体の流れの中で最先端のアメリカ言語哲学の核心に迫る、絶好の一冊。
  • 生の仏教 死の仏教
    -
    仏教は死後の救済のためのものだと思われたり、思想として知的に享受するものだと理解されることが多い。しかしそれは誤りだ。仏教はこの世を生きるための教えであり、その教えは念仏などの「行」を行うことで初めて意味を持つ。異国アメリカに仏教を広めた京極逸蔵は、仏教国でありながら仏教が根付かない日本に向け、彼の地から一つの提案をした。それが本書で説かれる「六波羅蜜」の実践だ。六波羅蜜は仏教徒の倫理規範というだけでなく、それを実践することが宗教的な目覚めへの近道ともなるからだ。専門用語に丁寧な説明をルビで付した、心底わかる仏教入門。
  • カント入門講義 ――超越論的観念論のロジック
    -
    我々が生きている世界は、心の中の世界=表象にすぎない。その一方で、しかし同時に「物自体」はある、とも言うカントの超越論的観念論。そのカラクリとして、基本的なものの見方・考え方の枠組みが人間の心にはあらかじめセットされているとカントは強調したわけだが、この点を強調することによって、その哲学は、後年の哲学者達の思想的転回に大きく貢献したと著者は説く。平明な筆致で知られる著者が、図解も交えてカント哲学の要点を一から説き、各ポイントが現代の哲学者に至るまでどのような影響を与えてきたかを一望することのできる一冊。
  • デカルト入門講義
    5.0
    科学者であったルネ・デカルトは、自然科学の礎たりえる知識をもとめ、第一哲学=形而上学の再構築に乗り出す。なにひとつ信じられるものがない「懐疑」を出発点に、それでも絶対疑えない原理「我あり」へ、更に「神あり」「物体あり」へと証明をすすめる。本書はその哲学をまず『省察』『哲学の原理』など主著を追ってわかりやすく解説。ついで『世界論』『人間論』を通して、近代哲学の理解に不可欠な自然学的論理を説明する。スピノザ、ロック、バークリ、ライプニッツ、カント、フッサール等々、その後のすべての西洋哲学に強烈な影響力を持ち続けたのは何故か。
  • ロック入門講義 イギリス経験論の原点
    -
    「人間の知識の起源と確実性を探求し、あわせて信念や意見の根拠を探求することが私の目的である」。ジョン・ロックは、近代哲学の基盤というべき「認識論」において、最初のアプローチを試みた一人である。しかし、その仕事に対しては誤読が重ねられ、真意は充分に捉えられてこなかった。例えば、ロックは心の直接的対象を観念と設定したため世界へのアプローチを不可能にしてしまったという批判等だ。イギリス経験論の原点となったロックの思想の真意とはどのようなものだったのか?社会思想・政治哲学でも知られるロックの形而上学的真価に迫る。平明な筆致による、書下ろし学芸文庫オリジナル。
  • ヨーロッパ冷戦史
    4.5
    ヨーロッパはいかに二つの陣営に分断され、ベルリンの壁はどう築かれたか。ベルリンの壁崩壊から、なぜ分断が一挙に統合へと向かったのか。ドイツ問題を軸に、東西間の対立と緊張緩和の過程を描き、冷戦の国際政治力学を浮き彫りにする。さらには、軍事的・経済的な対立と緊張緩和が交錯するドラマが活写される。ブレグジットで欧州統合が大きな曲がり角を迎え、世界が再び地域主義の様相を呈しているいまこそ参照すべき、最新研究に基づく現代ヨーロッパ国際政治史入門。
  • バロック音楽 ──豊かなる生のドラマ
    -
    17世紀初頭、宮廷文化が芽吹きはじめる中で、バロック音楽は開花した。華やかな祝祭が催される一方で、戦争・疫病・凶作に苛まれる不安な時代。強く激しい感情表現こそがバロック音楽の本質であり、即興的装飾と通奏低音などの技法、新様式、音楽理論がそれを支えた。本書はバッハ研究の第一人者が、荘厳な教会音楽や華麗なオペラ誕生の背景、伊独仏英各国の事情、作曲家たちの試行錯誤などに注目し、その歴史的意義を強調する。バロック音楽の全貌を平明に描きつつ、芸術史・思想史と結びつけなおした必携の入門書。
  • 医学全史 ――西洋から東洋・日本まで
    4.5
    現代医学はどのようにしてできあがったのか? 古代より、伝統医学は経験から治療法を、推論から理論を創り出すと同時に、西洋では解剖学という人体の科学的探究を続けてきた。それが19世紀に、病理解剖学や実験生理学の発展に伴い実践的な治療と結びつき、劇的な変貌を遂げることになる。医史学研究の第一人者が古今東西の書物を繙き、萌芽期から現代までの歴史を丁寧に辿りつつ、その飛躍的発展の背景に迫る決定版通史。
  • 新版 数学プレイ・マップ
    5.0
    「マップとは言っても、国土地理院のような権威はない。ところどころの案内、それも案内人の勝手で連れて行かれる程度の、気ままな地図だ。そこで勝手に遊んで、そして自分の地図を、これまた勝手に作る、それでよいと思う。」(「あとがき」より)。3次曲線、群論、関数、位相解析、集合等を難易もさまざま、趣向もさまざまで遊び尽くすー刀斎流数学ワールド。30歳で執筆した幻の論考「微積分の七不思議」や壮大な数学の歴史をすっきり簡潔に素描した「数学の大いなる流れ」他全5編を増補した新版。
  • 神社の古代史
    3.0
    古代の人々の生活や信仰、祭りの中から神社は各地で発生した。では彼らはどのような神々を祀ってきたのだろうか。明治以降の国家神道の影響を受ける以前の“祭祀の原像”を求めて、主要な神社の成り立ちや特徴を解説する。取り上げられる神社は大神(おおみわ)神社、伊勢神宮、宗像大社、住吉大社、石上(いそのかみ)神宮、鹿島神宮、香取神宮などで、それらは大和王権の国家運営が進むに従い、それぞれに役割を付与され性格づけられて、律令体制下の神社制度として確立していくことになった。日本古代史における神社の起源と変遷をていねいに辿り、その存在意義を考察する。
  • 数理のめがね
    4.0
    「物のかぞえかた」「勝負の確率」「幾何学の道具」「振子十話」など、身近なことがらから現象の本質を考察した知的好奇心を刺激する数理エッセイ。著者は地球物理学(地震学)の泰斗で、寺田寅彦門下のひとりとして、師の精神を引き継ぎ「難しい問題を易しく解説」する。その軽妙で数学的センスに溢れた語り口には定評があった。前半部の数理読み物に続き、後半部では理工系学生向けの少々ひねりを利かせた「微分方程式雑記帳」を収録する。
  • 思考の技法
    3.0
    あらゆる知的創造は、“準備”“培養”“発現”“検証”という四つのプロセスを踏むことで生み出される。では、人間がもつ思考の可能性を最大限活用し、「ひらめき」を意識的に生み出すような方法とはどのようなものか――。バーナード・ショーらとともにフェビアン協会の中心人物であったイギリスの政治学者・社会学者グレアム・ウォーラス(1858‐1932)。彼は、混迷を深める危機の時代にあって「思考」がなによりも重視されるべきと考え、そのメカニズムを原理的に究明しようとした。ジェームス・ヤング『アイデアのつくり方』の源泉ともされる創造的思考の先駆的名著、待望の邦訳。
  • 類似と思考 改訂版
    3.0
    判断は類推に支えられる。心はどのようなメカニズムを持つのか。“われわれの認知活動を支えるのは、規則やルールではなく、類似を用いた思考=類推である”。本書は、この一見常識に反する主張を展開したものだ。類推とは、既知の事柄を未知の事柄へ当てはめてみることと考えられている。だが、それだけでは実態に届かない。その二項を包摂するもうひとつの項との関係の中で動的に捉えなければならない。ここに、人間の心理現象に即した新しい理論が提唱される《準抽象化理論》。知識の獲得や発見、仮説の生成、物事の再吟味にも大きな力を発揮する類推とは何か。心の働きの面白さへと誘う認知科学の成果。
  • 戦後日本漢字史
    3.5
    現代日本語における漢字は、どのような議論や試行錯誤を経て今日の使われ方になったのだろうか? 戦後、民主主義の発達を阻害するという観点から、GHQは漢字廃止を提案し、また漢字制限のため当用漢字表・字体表が定められた。制度面では、これを緩和する方向で後年、常用漢字表制定とその改定が行われる。他方、実用面では、機械では書けないと言われていた日本語がワープロの登場で一気に障害を乗り越え、難字すら情報機器によって身近になるという逆転現象を起こしている。現代日本語に残された問題の起源を探り、未来を予見する刺激的な日本語論。
  • 日本の神話
    3.0
    古代日本においては、統治の正統性を確立するために、征服した部族が、征服された側の神話を、自らの神話に取り込んだ。そうして出来上がったのが天皇家の神話、記紀神話である。記紀神話の成立にあたっては、天皇家に征服された伊勢の豪族、度会氏、宇治土公氏がすすんで協力した。その結果、伊勢地方の太陽神であったアマテラスが万世一系の祖先神となる。しかしなぜ単なる一地方神が皇祖神に選ばれたのか?それはアマテラスが、日本人にとって最も当たり前で受け入れやすいタイプの神だったからだ。国家統治のために創り上げられた神話を元の地方神話に解体し、日本の神の原初の姿を取り出して見せた、画期的な研究。
  • 日本経済学新論 ──渋沢栄一から下村治まで
    4.0
    水戸学のプラグマティズムを、近現代日本を支えた経済思想へと発展させた人物こそ、渋沢栄一であった。『論語と算盤』で水戸学の朱子学批判を賤商思想批判へと読み換え、尊王攘夷思想から継承した経済ナショナリズムで日本の近代資本主義を確立した渋沢。その精神を受け継ぎ経済政策の実践に活かした高橋是清、岸信介、下村治ら実務家たちの思想に「日本経済学」と呼ぶべき思考様式を見出し、そのプラグマティズムと経済ナショナリズムに危機に立ち向かう実践的姿勢を学ぶ。
  • 線型代数 ──生態と意味
    -
    線型代数は大学教養課程で学ぶ数学の柱のひとつだが、もう一方の柱、解析学ほど学生には定着していない。これは、線型代数がどういう世界を語り、どのような生態なのか、長い歴史のある解析学と較べ、見えにくいことによる、と著者は言う。物理学や工学、化学、経済学、情報系など多くの分野で有効な武器として使われている線型代数をイメージや意味のセンスを大切にしながら、根本的な概念からひとつひとつ丁寧に説明する。「基礎」の骨格をくっきり際立たせた一味違った入門書。
  • ローマ教皇史
    -
    ヨーロッパはむろん隣接するイスラム圏や新大陸を含めた全世界に対して、2000年にわたり計りしれない影響をあたえつづけてきたカトリック教会。その組織的・権威的中核となったのがローマ教皇庁であり、歴代ローマ教皇である。十二使徒のなかから選ばれた初代ペトロス(ペテロ)に始まり、ローマ帝国期の教会迫害から公認へという大転換を経て、各国王室に比肩する勢力でありつづけた。本書は歴代教皇に沿って、カトリック・キリスト教全史を追うことができる一冊である。
  • 大学改革の迷走
    3.9
    「大学は危機に瀕している」。何十年も前からそう叫ばれつづけてきたが、いまでも、様々な立場から大学を変えるための施策がなされたり、意見が交わされたりしている。では、大学の何が本当に問題なのか? 80年以降の改革案から遡り、それらの理不尽、不可解な政策がなぜまかりとおったのか、そして大学側はなぜそれを受け入れたのかを詳細に分析する。改革が進まないのは、文部科学省、大学関係者だけのせいではない。大学改革を阻む真の「悪者」の姿に迫る。
  • 阪神タイガース 1985-2003
    4.0
    バース・掛布・岡田・真弓で空前のブームを巻き起こし、日本一に輝いた1985年。だがその後の道は多難だった。「ダメ虎」の強烈な印象を残した1980年代末の暗黒期、終盤までヤクルトとの死闘を演じた1992年の一瞬の輝きを経て、再び長い90年代後半暗黒時代へ。そして野村監督時代という夜明け前を経て、突然やってきた2003年の星野阪神の栄光。とかく印象論で語られがちな人気チームの歴史を、記録と報道された事実をベースにして再構成する。ファン必携の「正史」。
  • 増補 中国「反日」の源流
    4.0
    「愛国」が「反日」と結びつく不可解な国・中国。この構造は近世史・近代史の過程で形づくられた。1919年、北京の学生運動を皮切りに広がった五四運動は、現代に続くその出発点である。満洲事変をへて日中戦争へ向かうなかで、反日運動は「抗日戦争」と名を変えて最高潮に達した。本書は、日本・中国の近世史・近代史を政治・外交・経済・社会・思想にわたる全体史として描きだすことで、「反日」の原風景を復元し、ナショナリズムの核心にある「反日」感情の構造を解き明かす。古代から現代までの日中関係を俯瞰する論考を増補した決定版。
  • 大嘗祭
    3.0
    本書は歴史的資料を博捜して、大嘗祭を構成する儀礼である斎田点定、大嘗宮の造営、大嘗宮の儀、廻立殿の儀等を詳述し、全体像を明らかにする。大嘗祭の原型を探ることで可視化する、秘儀の象徴性とその本質とは。資料として、「天神寿詞」、「登極令」、および関連年表等を付す。
  • 倫理学入門
    4.0
    倫理学こそ哲学の中枢に位置する学問である──。本書の冒頭で、著者はこう強調する。人間のあらゆる行動や思索、生き方を根本的に規定するのは倫理であり、したがって倫理学とはまさに「人間とはなにか」を問う学問にほかならない、と。では、この問いに思想家たちはどう向き合い、どんな答えを導き出してきたか。それを明らかにすべく、アリストテレス、エピクロス、ストア派から功利主義、カント、ヘーゲルらを経て20世紀にいたるその歩みを三つの潮流に大別し、それぞれの思想を簡明に解説してゆく。人間の根本原理としての倫理をときあかす円熟の講義。
  • 代数入門 ──数と式
    5.0
    数学では、変化する数や量を表す際に、x、y、zのような記号を用いる。この「代数的方法」なくして数学をすることはできないし、実際、高校数学でははじめに「数と式」を学ぶ。けれど、そもそも「数や量を記号で表す」とはどういうこと? 文字だらけの数式を見るだけで、たじろく人も多いはず。本書はトランプや樹形図のように具体的な例を出発点にして、種々の多項式や方程式に慣れるところまでを目指す。「たくさんの人に数学を」という著者の思いの結実した、晩年の名教科書。遠山数学の集大成がここにある!
  • 増補 死者の救済史 ──供養と憑依の宗教学
    -
    数々の未練を残してこの世を去った死者たち。その無念に、残された者は何をしてあげることができるのか。この問いに日本人は古くから執心し、多種多様な解決策を練り上げてきた。祟りと祀り、穢れと祓い、供養と調伏、そして死者との直接の交流である憑依。これらをさまざまな角度から再検討し、さらに比較宗教学的な見地を織り込むことで、生者と死者とが邂逅する局面と、そこで行われる交流や対決、取引に新たな光を当ててゆく。文庫化にあたり、靖国神社を集合性と個人性との相克の場として捉えた論考「靖国信仰の個人性」を増補した決定版。
  • 柳田国男論・丸山真男論
    -
    体液のように流れる柳田の文体と方法にかたちをあたえ、彼のえがいた稲の人としての「日本人」の鮮明な画像と、そこに見えかくれする「山人」や「アイヌ」の影に徹底した考察を加える「柳田国男論」。丸山の戦争体験の批判を入口に、『日本政治思想史研究』における徂徠学の評価の分析を軸にすえ、丸山政治学が幻想の「西欧」という虚構の立場を設定して初めて切り拓いた地平を検証する「丸山真男論」。近現代の代表的な思想家を俎上にのせ、雄勁なスケールでその核心を論じる。
  • 英語類義語活用辞典
    -
    類義語・同意語・反意語の正しい使い分けが、豊富な例文から理解できる定評ある辞典。思わぬ誤解や失礼をしないための使用例が、卓越した日本語と英語の語感をもつ著者により解説される。(1)意味がほとんど同じで、どちらを使っても大した違いのないもの。mistakeとerror、bigとlargeなど。(2)使い方をまちがえるとコミュニケーションに重大な齟齬を来たすもの。doubtとsuspectなど。(3)漠然と類義語だと信じられているがその実、異質な言葉。fortunateとhappyなど。「なるほど」と腑に落ちる効果的な使い方が、わかりやすく習得できる、学生や教師・英語表現の実務家の必携書。
  • ミトラの密儀
    -
    ミトラ教は紀元前3世紀頃のペルシャで信仰され、ヘレニズムの文化交流によって地中海世界に伝播した。民族宗教という出自であるにもかかわらず、一時はローマ帝国でキリスト教と覇を競うほど隆盛を誇ったが、秘儀的な宗教であったがゆえ詳細の多くは謎に包まれてきた。獅子頭人身の異貌、牡牛を屠る図像の異教神が、なぜ異文化の民に受け入れられていったのか? 起源、教義、儀礼、キリスト教への影響、凋落の理由等、この密儀宗教の全貌を膨大な資料で解き明かした第一人者による古典的研究。貴重図版多数収録。
  • 大坂城全史 ──歴史と構造の謎を解く
    -
    かつて浄土真宗の聖地として栄え、織田信長の後を承けた豊臣秀吉、徳川家康・秀忠まで、時の権力者が本拠地として修築を重ねた大坂城。豊臣家の居城として栄華を極めるが、大阪夏の陣で落城。江戸幕府に再築されるものの、幕末には大部分が焼失した。明治以降、大阪市民の支持を得て天守閣が復興、現在まで市民に愛され続けている。長きにわたり権力者たちの興亡の舞台となった名城を、最新の研究成果に基づき読み解く、通説を刷新する決定版通史。
  • 日本人の死生観
    5.0
    日本人は生きることと死ぬことをどのように考えてきたのだろうか。長明、芭蕉、千代女、馬琴、良寛など代表的な古典の中に日本人の死生観を辿り、「死」を前提に生き方を考え、「死」の意味をあらためて見つめなおす。日本人の心性の基層に今日も生きている伝統的な死生観を現代に生きる私たち自身の問題として考える指針の書。「死」の偉大な先達から「終い方」の極意を学んでみたい。
  • 確率微分方程式
    4.0
    自然界や社会における偶然性を伴う現象は、いかにして定式化されるのか。確率過程をめぐる研究は20世紀前半にウィーナーやレヴィ、そしてコルモゴロフらによって進められ、なかでも伊藤清が確立した確率解析のための基本的手法は、「伊藤積分」の名で広く知られている。本書はそうした伊藤の定式化によりつつ、マルチンゲール的手法に重点を置いた確率積分を展開。物理学・数理ファイナンスなど幅広い応用をもつ理論の基礎をあざやかに示した名著。
  • バルトーク音楽論選
    4.0
    20世紀最大の作曲家のひとりであるバルトーク(1881-1945)。彼はまた、ハンガリーやルーマニアなど中欧・東欧の各地で民謡を採集するという、民俗音楽研究者としての顔をもっている。音楽が無調へと向かい、より抽象化していく時代の中、バルトークはなぜ、そしていかにして民俗音楽を採集するのか? 本書は彼が自ら採譜した民謡を楽譜つきで紹介・考察した論考のほか、コダーイ、ドビュッシー、ラヴェルなど同時代の作曲家についての批評、ハーヴァード大学で行われた講義録など計15篇を精選。文庫オリジナルのアンソロジー。
  • 入門 多変量解析の実際
    4.0
    21世紀に入り、統計学とデータサイエンスは社会からますます注目を集めるようになっている。データを扱ううえで有効なツールのひとつが多変量解析だが、実際には「分析の仕組みがわからない」とか、「分析の結果が何を意味するのかわからない」という人も多いはず。本書は因子分析、クラスター分析、重回帰分析などの主要な分析法について、できるだけ絵と言葉でポイントを解説。各方法の使い方、トラブル・シューティング、分析の心構えなど、マーケティング分野での多変量解析の応用に長年携わってきた著者ならではの「ユーザー視点のノウハウ」を伝える。実務家必読の入門書。
  • 大都会の誕生 ──ロンドンとパリの社会史
    3.0
    18、19世紀のロンドンは、「世界経済のメトロポリス」であると同時に巨大なスラムが存在する「世界の吹溜り」でもあった。また、カフェやレストラン、劇場といった華やかな文化を生み出したパリの都市空間は、二月革命に代表される民衆騒乱の舞台にもなった。人はなぜ都市に集まり、どのように大都会の生活様式が生まれたのか、この根本的な問いをめぐって、イギリス近世・近代史、フランス社会運動史をそれぞれ専門とする碩学が重層的な連関のなかに考察する。ふたつのアプローチ、すなわち経済生活と民衆運動、その違いがそのまま「二都」の性格の反映となっていることもきわめて興味深い。
  • 増補 中世日本の内と外
    3.3
    「国境」という概念が定着する以前から、東アジア世界にもたしかに領土・領有意識はあった。しかしそれはあくまで権力者の都合によるもので、一般の民衆には大きな意味をなさなかった。日本と新羅の国交が断絶した9世紀、朝鮮半島南西部を拠点にした海上貿易のドン・張宝高は、日本に唐物の商品を運び、貴族からも大いに喜ばれた。また中国の仏教聖地を訪れるために遣唐使船に同乗した天台僧の円仁は、新羅人の船に乗って帰ってくる。日朝間の海域では「倭人」が活発な交易を行っていた。境界を軽々とまたぎ、生活していた東アジアの人びとに焦点をあて、境界観の歴史をたどる。
  • 専制国家史論 ──中国史から世界史へ
    4.0
    自律的な団体性を欠いた社会と、意思決定の集中化した巨大な政治的統合。これは専制国家の指標である。中国はいかにしてその体現者となり、今日に至ったのか。本書は、封建社会を通過して近代国家へと展開を遂げた日本との比較検討をふまえ、中国という国家の特質をつぶさに炙り出す。グローバル化の進展とともに社会の団体的結合原理が解体し、政治決定の集中化が急激に進行する現代にあって、中国のもつ歴史的様態は、はたしてどのような示唆を与えるのか──。多分野の成果を取り入れ、人類史的視野から国家像を描出した渾身の論考。
  • 素読のすすめ
    3.7
    「素読(そどく)」とは、内容の理解は後まわしにして、古典を繰り返し音読すること。江戸時代以来、学習の初歩として行われてきたが、これには確かな意味があった。言葉の響きやリズムに浸ることによって感性が磨かれ、学びを深めるための土台をつくるのだ。また、素読は外国語の習得にも効果を発揮する。本書では、著者が子どもたちと実践してきた経験をもとに、素読の具体的な方法や外国における音読の例などをていねいに解説していく。声に出して読むことの意義をいちはやく再評価した書。
  • 史記1 本紀
    3.8
    中国の古典中の古典ともいうべき『史記』の全訳。「本紀」は、黄帝から秦の始皇帝の全土統一を経て、漢の武帝時代にいたる、歴史における帝王の系譜。中国史進展の大筋を「五帝」「夏」「殷」など十二巻で述べる。
  • 西郷隆盛 ──手紙で読むその実像
    -
    西郷ほど多くを語られ、また歪められてきた人物はいない。その生涯をめぐって、事実と異なる歴史がこれまで数多く語られてきた。その最大の原因は、歴史家が一次史料と二次史料をないまぜにし、それらを適宜選択的に使うことにある。本書では、西郷自身が書いた手紙を中心に、大久保・木戸・三条・岩倉・勝らが書いた手紙や日記などを加え、もっぱら一次史料をもとに、西郷の生涯を改めてとらえ直す。生身の人間・西郷の真実に迫るとともに、既往の西郷論の真偽を問う挑戦の書。
  • 日本社会再考 ──海からみた列島文化
    -
    日本を農業中心社会とみなす、長年常識とされてきた社会像は、近年つくられた虚像だった──ベストセラー『日本の歴史をよみなおす(全)』で、このことを明らかにした網野史学。この一貫した視点から、本書では「百姓」=「農民」という定説を覆し、実際にはその大きな部分を占めていた「海民」たちの活躍を読み解く。漁業、製塩業に従事するのみならず、広く遠洋交易を営み、企業家的な活動すら行った海民たちは、いかに日本の社会を彩り、形作ってきたのか。史料を駆使してその豊かな世界を掘りおこし、日本史に新たな地平を切り開いた快著。
  • 一百四十五箇条問答 ──法然が教えるはじめての仏教
    -
    法然が登場する以前、仏教は驚くことに、一部のエリートのためだけに存在する宗教だった。漢文で書かれた難解な経典が読めること、日常生活を気にせず修行に打ち込めること、が条件だったからだ。しかし実際に苦しみ、救済を必要としたのは、文字も読めない市井の人びとに他ならない。そこで法然は、誰でも、いつでも、どこでも実践可能な「念仏」を柱とする浄土宗を打ち立てた。この『一百四十五箇条問答』は、法然の教えに惹かれながらも、従来の仏教との違いに戸惑ったり、生活を改めなければならないのかと不安に思った人びとの145の疑問に、法然がやさしく答えたもの。浄土仏教や法然その人を理解するための、またとない入門書となっている。
  • 柄谷行人講演集成1985‐1988 言葉と悲劇
    -
    ソシュールからウィトゲンシュタインへ、西田幾多郎からスピノザへ──。1980年代後半の代表的講演を収録した本書で、柄谷は哲学、文学、宗教、言語学、経済学、数学など多様な領野を自在に行き来しつつ議論を繰り広げる。そこで執拗に追求されるのは、言語コミュニケーション(交換)における人間の悲劇的条件であり、他者との交通を可能にする普遍性がいかに生み出されうるかという問いである。いまなお多くの示唆に満ちたこれらの講演は、後の柄谷理論の展開を予感させるのみならず、批評という営み自体をも再審に付す魅力的な内容となっている。旧版の内容を再構成し、改稿を加えた決定版。
  • よくわかるメタファー ──表現技法のしくみ
    -
    「人生を駆け抜ける」「期待の星」「胸さわぎ」「頭痛の種」──文学から日常表現まで、メタファーは私たちの言語を生き生きと彩っている。その最大の強みは、抽象的でわかりにくい事柄を、より具体的でわかりやすい対象に見立てて説明する力である。本書では、身体の一部を用いた比喩、「上・下」、「内・外」などの空間概念を用いた表現など、メタファーを分類・解説し、その成り立ちから効果的な活用法まで、身近な実例を用いて平明に説く。本当に「伝わる」豊かな文章表現へと導く、最良の手引き。
  • カニバリズム論
    3.5
    カニバリズム(人肉嗜食)は人類の根源的タブーのように思われながら、実のところその痕跡は古来より無数に残されてきた。著者の専門は中国でありながら、古今東西の記録・小説を博捜し、ときに舌鋒鋭く、ときに諧謔と皮肉をもってカニバリズムを縦横無尽に論じる。人間の薄っぺらな皮膚を両手で思い切りめくり上げ、曝し、目を背けたくなるようなものを直視することで、「近代合理主義精神」なるものの虚構を暴き、「良識」を高らかに嗤いとばす。人肉嗜食、纏足、宦官……。血の滴るテーマで人間の真実に迫る異色の作品。
  • 中国語はじめの一歩〔新版〕
    4.0
    「中国語は、『おもしろそう』な予感と『できそう』な自信を、日本語を母語とする学習者に与えることに最も適した外国語です」(プロローグより)。30年以上にわたって中国語を教えてきた著者が、14億人とつながれることばの世界へ案内します。発音(四声)や文法の初歩はもちろん、文法の根底を支えるものの見方・考え方や対人観・世界観まで、まるで講義を聞いているかのような軽妙な語り口で平易に解説。「中国語とはどういう言語か」がよくわかるロングセラー入門書を、文庫化にあたり大幅に増補。
  • 哲学の誕生 ──ソクラテスとは何者か
    3.0
    哲学はソクラテスとともに始まったと見なされてきた。だが、何も著作を残さなかったソクラテスが、なぜ最初の哲学者とされるのか。それを、彼とその弟子のプラトン、アリストテレスという3人の天才による奇跡的な達成と考える従来の哲学史観では、致命的に見落とされたものがある。ソクラテスが何者だったかをめぐり、同時代の緊張のなかで多士済々の思想家たちが繰り広げた論争から、真に哲学が形成されていく動的なプロセスだ。圧倒的な量の文献を丹念に読み解き、2400年前、古代ギリシアで哲学が生まれるその有り様を浮き彫りにした『哲学者の誕生:ソクラテスをめぐる人々』の増補改訂版。
  • 未開社会における性と抑圧
    5.0
    「エディプス・コンプレックスはあらゆる社会に存在する」とフロイトは説いたが、マリノフスキーはこの仮説に対し民族誌的資料を駆使し、それが近代西欧の家父長制的社会特有の現象であると根底から相対化してみせた。近代的社会人類学の確立者として学説史に不朽の名を刻んだマリノフスキーが、性において人類の内なる自然と文化的力との相互作用のドラマを考察した古典的名著で、家族の起源、近親相姦の禁忌、父系制と母系制との関係等いまだ多くの示唆を与えてくれる。また、文化の概念をはじめ、彼の主要な理論、概念が展望でき、マリノフスキー理解の恰好な入門ともなっている。
  • 建築から見た日本古代史
    3.7
    建築とは、権力者たちが駆使した政治的言語である──。日本誕生の舞台となる古代において建築は、権力者が自らの権威を明らかにし、体現する文明の壮大さ、美意識の優越を高らかに宣言する最大最強のメディアであった。飛鳥寺、法隆寺、四天王寺から本薬師寺、伊勢神宮式年遷宮にいたるまで、建築様式や構造、配置パターンのなかに、母系と父系、天皇と律令、ナショナリズムと文明開化、それぞれの葛藤と融合を見いだし、まったく新しい日本古代史を組み上げ、提示する。
  • 日本語全史
    4.0
    日本語の全史を一冊でたどる初めての新書。日本語の変遷を古代(前期・後期)/中世(前期・後期)/近世/近代という時代ごとに、総説・文字・音韻・語彙・文法の五つに分けて整理していく。日本語は世界の言語の中でも比較的、古代からの変遷が少ない。であればこそ、現代語との関わりのなかで、日本語史を記述していくことが可能となるのだ。日本語の変遷の全体像がわかるだけでなく、現代の一部の慣用表現や方言などに残る過去の日本語の痕跡をたどっていく謎解きとしても楽しめる一冊。
  • 現代の古典解析 ──微積分基礎課程
    4.0
    古典的な微積分の基礎課程を、見晴らしのきく小高い現代的な立場から眺め渡した、読みきり22講義。「不等号と論理」「極限と連続」「実数の基本性質」に始まり、「指数関数と三角関数」「収束の一様性」「曲線と曲面」を経て「複素変数関数」「フーリエ変換と超関数」「偏微分方程式」に至る、解析学メインルート。講義の最中、時折もらす森一刀斎のつぶやきは、濃い霧の中を行く初学者にとって、そのむこう、ゆるやかに広がる景色と地形を髣髴とさせる。「そうだったのか!」とひざを叩かせる、解析学の秘伝公開。
  • 位相のこころ
    5.0
    位相は“近い”という日常感覚を数学的に厳密にとらえ直したもの、といってよく、現代数学において最も基本的で重要な概念の1つである。歴史的には、18世紀から19世紀末にかけて解析学が進展していくなかで、極限・収束・連続性などをめぐる議論から位相空間論が生まれ、20世紀における関数解析学の展開によって、より抽象的に定式化されていった。本書は、数学の意味・こころを語る達人である著者が、1950年代、60年代、70年代に、位相をめぐって書き綴った「位相解析入門」「位相用語集」「位相構造」という3つの文章からなる。著者の名調子に乗せられて、位相のこころを体感してみよう。
  • 集合論入門
    4.0
    「ものの集まり」や「連続」という素朴な概念。ここから広がる世界は実に深遠だ。19世紀にカントールが集合論の基礎を築くと、ラッセルを筆頭に様々な数学者がパラドックスや難題を発見した。それから現在に至るまで集合論は大発展を遂げ、今やその基礎概念は現代数学のみならず、論理を駆使する哲学にも欠くことができない。本書は古典的集合論の基礎を「集合の代数」「濃度」「順序数」の三部に分けて解説。コンパクトながら懇切丁寧な叙述で独習用としても最適。『数学序説』の著者による、定評のある入門書。
  • 人間なき復興 ──原発避難と国民の「不理解」をめぐって
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    福島第一原発事故後、廃炉の見通しもなく国は「新しい安全神話」を振りかざし、避難者帰還政策を進めている。人を「数」に還元した復興や分かったつもりの国民の「不理解」がこの国をあらぬ方向へ導いている。被災者の凄惨な避難体験と、原発自治体の暮らしの赤裸々な告白を、社会学者が読み解き、対話を積み重ねて「人間のための復興」とは何かを問い直す。事故の本質を鋭く衝いた警世の書。
  • 読書の学
    5.0
    言語は、事実のコミュニケーションのための媒体であるばかりではない。言語自体がまた人間的事実であり、そこに集約されている著者の態度が精密に読み込まれてはじめて、読むことは十全な読書となる。論語・史記から契沖、宣長、徂徠にいたるまで、漢籍や和書を縦横にし、著者の内部に生起し蓄積する感情・思考・論理を通して内的事実に降り立つ実践を展開する。事実に触発される意識をたどり、読書論を超えて学問論にいたる。著者の悠然たる文学的逍遙につき随って、その思考の筋道をつぶさに経験する一巻。
  • 日本陸軍と中国 ──「支那通」にみる夢と蹉跌
    4.5
    中国スペシャリストとして、戦前の対中外交を率いた陸軍「支那通」。その代表的人物・佐々木到一は、孫文はじめ中国国民党の要人と深い親交を結び、第二次北伐に際しては国民革命軍にも従軍した。しかし、その後、支那事変(日中戦争)では南京攻略戦に参加して、いわゆる南京「虐殺」の当事者となり、戦後、激しい批判にさらされることになる。革命に共感を寄せ、日中提携を夢見た彼らが、結果としてなぜ泥沼の支那事変へと両国を導くことになったのか。われわれは、どこで道を誤ってしまったのか? 「支那通」の思想と行動を通して、戦前の日中関係の深層に迫る。
  • 英米哲学史講義
    3.7
    英米哲学の諸潮流は、「経験」を基盤に据えるという発想に導かれている。それは、ロックやヒュームらの「経験論」を共通の源泉とするためだ──。ベンサム、J.S.ミルに発する「功利主義」。フレーゲとラッセルを先駆に、ウィトゲンシュタイン、クワインをへて現代に連なる「分析哲学」。パースが提唱しアメリカを体現する思想となった「プラグマティズム」。そして、ロールズやノージックらの「正義論」。本書は、こうした英語圏の哲学的系譜を、経験論を基点として一望のもとに描き出す。主要哲学のつながりを明快にとらえる、入門書決定版!
  • 増補 性と呪殺の密教 ──怪僧ドルジェタクの闇と光
    5.0
    性行為の歓喜が心身の力を極限まで高め、究極の智恵をもたらすという理論を根拠に、修行に導入された「性的ヨーガ」。不正義の人が悪事を成す前に、浄土に送り届けることは救済にほかならないという思想に基づく「呪殺」。チベット密教には、いまだ秘匿された教義が数多く存在する。なぜそうした奥義がチベットで歓迎されるに至ったのか。その背景を解き明かしつつ、知られざる神秘に迫る。国や地域と時代を問わず、宗教にあまねく内在する暴力とエロティシズムの原理にまで鋭く切り込んだ一章を増補。宗教の本質を抉り出す驚異の密教入門書。
  • 社会科学としての経済学
    4.0
    資本主義のメカニズムを明らかにするために、経済学はどこまでも科学的でなければならない──。戦後のマルクス研究を主導した宇野弘蔵。彼は教条的な『資本論』読解を批判し、純粋な科学として再構成することを企てた。本書では、経済学が取り組むべき根本課題から語り起こし、自然科学と社会科学の違い、マルクス理論の核心を踏まえたうえで、三段階論に代表される自らの理論を紹介していく。さらにマルクスの一連の著作をコンパクトにまとめた論考も収録。今日の資本主義を分析するために、マルクスをどう活用できるのか。その可能性がもっとも明快に示された一冊。
  • ギリシア文化史1
    5.0
    現代のさまざまな国家形態、政治思想、さらに哲学、弁論、文学・芸術の諸ジャンルにおける精神活動は、原型をほとんど古代ギリシアに見いだすことができるだろう。この天才的な民族の創造物にあらゆる面から深い考察を加え、文化史家としての力をすべて結集することで、ブルクハルトの『ギリシア文化史』は成立した。その史観の類を見ぬ深刻さ、厳しく率直な人間観、深い洞察力と広い視野により、古今の史家の試みをはるかに凌駕して、この畢生の大著は歴史の真実に肉薄する。第1巻は、ギリシア人とその神話、ポリスとそこで展開された僭主制や民主制を語る。
  • 大乗とは何か
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    幅広く衆生の救済を目指す大乗仏教運動は、西暦紀元前後にインドで胎動し始め、東アジアを覆うほどの伝播をなして今日に至る。「釈尊の初期仏教に立ち返れ」と説く般若経を先駆経典とし、その中心思想「空」はナーガールジュナ(龍樹)によって基礎づけられた。「大乗諸仏と私」「大乗の展開」「大乗の諸相」の三部からなる本書は、「菩薩」という言葉の来歴、空の考え方、経典成立の問題など、大乗の諸側面に迫った、仏教学の泰斗最後の論考集である。仏教入門としてもまたとない書。
  • 親鸞からの手紙
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    親鸞が、もっとも信頼する人びとや、最愛の弟子たちと交わした、胸を打つ手紙の集成。その現存する手紙全42通の現代語訳と解説で親鸞の心中に迫る。最新の親鸞研究の成果にもとづき、全書簡を書かれた順に構成。これにより、子息善鸞の義絶事件などの人間的苦悩と、煩悩具足の凡夫であることの自覚から、ひたすら阿弥陀仏の本願(専修念仏)に帰命する姿が、より鮮明に立ち現れる。それは、仏教を貴族や支配階級のもとから解放し、真に民衆のものとして、多くの衆生を獨世から救おうとする姿にほかならない。現代にも脈々と生きる、親鸞の力強い実践思想へのこのうえない入門書。

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