ビジネス・実用 - 講談社 - 講談社学術文庫作品一覧

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  • 源平合戦の虚像を剥ぐ 治承・寿永内乱史研究
    4.4
    「平家物語史観」を乗りこえ 内乱が生んだ異形の権力 鎌倉幕府の成立にせまる 屍を乗り越え進む坂東武者と文弱の平家公達――。我々がイメージする源平の角逐は、どこまで真実だったのか? 「平家物語史観」に基づく通説に対し、テクストの精緻な読みと実証的な探究によって、鋭く修正をせまる。さらに、源平合戦の実像や中世民衆の動向、内乱の歴史的所産としての鎌倉幕府の成立過程までを鮮やかに解明した、中世史研究の名品。 現在でも、武士を暴力団にたとえ、その武力を超歴史的に批判するような見解は目についても、肝心の武士が「戦士」として行動する「戦争」や「武力」の在りかたについては、まだまだ未解明な部分が多い。……「源平合戦」にロマンを感じておられた方は、少々失望されることになるかもしれないが、本書としてはできるだけ現実的・冷静に、治承・寿永内乱期の戦争の実態を復元し、そのうえで、たんに戦乱の被害者にとどまらない中世民衆の動向や、内乱の歴史的所産としての鎌倉幕府の成立を、検討していきたいと考えている。――<本書「はじめに」より>
  • 松と日本人
    -
    松はいつの時代にも、日本人には特別な存在でした。奈良時代より松明(たいまつ)として照明に使われ、平安貴族は、贈り物や文を、〈雅(みやび)〉なしきたりとして、松の折り枝を結んでいました。神が宿るといわれた聖なる木は、いかに私たちの美意識や文化に影響を与えてきたのでしょうか。『古事記』『万葉集』『日本書紀』などの文学、『源氏物語絵巻』や仏画、和歌での描写を渉猟し、そこに隠された、日本人の死生観や宗教観を探ります。 本書の底本は、人文書院より一九九三年に刊行されました。 目次) 第一章『魏志倭人伝』の植生と松 第二章 やまとたけると松 尾津崎の一つ松 磐代の浜松 童子女(うない)の松原 聖徳太子と飛仙 第三章 正倉院絵画の松 東大寺領の山境絵図 藤をまといつかせた松樹「樹下囲碁図」 第四章 のびやかな松と平安時代 宇治平等院鳳凰堂扉絵の松 雅のしきたり・松の折り枝 「源氏物語絵巻屏風屏風の松 第五章 松明と明かり 第六章 人の死と松 第七章 日本人と松 あとがき 主な参考文献 学術文庫版あとがき
  • 日本人の死生観
    3.4
    仏教学に民俗学の方法を接続し、日本人の宗教を深く掘り下げた五来重。本書は、厖大な著作を遺した宗教民俗学の巨人の「庶民宗教論」のエッセンスを知るのに最適な1冊である。 日本人の死生観とは、すぐに連想される「ハラキリ」や殉死など、武士道的なものだけではない。貴族や武士の死生観、いわば「菊と刀」ばかりでなく、「鍬」を持つ庶民の死生観は、一体どんなものだったのか。本書では、教祖・教理・教団から成る西洋起源の宗教や、文献研究と哲学的思弁にこだわる仏教学ではなく、仏教伝来以前からの霊魂観や世界観が息づく根源的な「庶民の死生観」を明らかにしていく。 著者によれば、庶民にとってあらゆる死者は一度は怨霊となる。それは鎮魂によって「恩寵をもたらす祖霊」に変えなくてはならない。そのための信仰習俗や儀礼の有様を探索し、日本列島を歩きに歩いた著者の視線は、各地に残る風葬や水葬の風習、恐山のイタコと円空仏、熊野の補陀落渡海、京都の御霊会、沖縄のイザイホウ、遠州大念仏、靖国神社などに注がれる。 巻末解説を、『聖地巡礼』『宗教と日本人』の著者・岡本亮輔氏(北海道大学准教授)が執筆。〔原本:角川書店、1994年刊〕
  • パラダイムとは何か  クーンの科学史革命
    3.7
    トーマス・クーンという名前を知らない人でも、また科学史や科学哲学などの分野に縁のない人でも、「パラダイム」という言葉なら聞いたことがあるに違いありません。 いまや日常語として「物の見方」「考え方の枠組み」の意味で使われているこの言葉は、もともと1962年刊『科学革命の構造』というクーンの著書の中で語られたもので、「一定の期間、研究者の共同体にモデルとなる問題や解法を提供する一般的に認められた科学的業績」を意味していました。 この概念は、それまでの「科学革命は17世紀に起きた1回きりの大事件」という科学史の常識を覆す衝撃的なもので、「<科学>を殺した」といわれたほど、大きな影響を及ぼしました。 パラダイム・シフトは歴史上何回も起こり、それは社会・文化の歴史と密接な関係があるとするクーンの見方は、フーコーが人文科学的知の布置の変化を考古学的方法によって解き明かしたと同じスタンスで、「知」の連続的進歩という通念を痛撃しています。 本書は二十世紀終盤の最大のキーワードとも言うべき「パラダイム」の考え方を面白く、わかりやすく説くものです。 ●主な内容 第1章 <科学>殺人事件 第2章 科学のアイデンティティ 第3章 偶像破壊者クーンの登場 第4章 『科学革命の構造』の構造 第5章 パラダイム論争 第6章 パラダイム論争の行方 【原本】 『現代思想の冒険者たち クーン パラダイム』1998年 講談社
  • 病が語る日本史
    3.7
    平安時代の人々は病気に罹ると怨霊・物の怪の所為とそれにおびえ、加持祈祷を大々的に行った。また仏教の伝来、遣唐使の派遣は海外の伝染病をもたらした。そして疾病の蔓延は人々を苦しめ、政治を動かし、大きく変えもした。 寄生虫に冒され、結核やポリオも病んだ縄文・弥生の人々、贅沢病ともいえる糖尿病で苦しんだ藤原家一族、江戸時代猛威をふるったインフルエンザやコレラ。 その他、天然痘、麻疹、梅毒、眼病、脚気など、各病気と当時の人びとがいかに闘ってきたかを、歴史上の事件、有名な人物の逸話を交え、〈病〉という視点を軸に展開していきます。 日本武尊の死因・脚気の原因はいつ明らかにされたか? もし武田信玄がガンで急死しなかったら? 具体的な謎解きをまじえ、読者の興味を引き付けながら、それらの病が日本の歴史に及ぼした影響をさぐってゆきます。 医学史研究の第一人者が語る病気の文化史であり病気の社会史です。 原本 『病が語る日本史』講談社、2002年刊 ●主な内容 第一部 病の記録 骨や遺物が語る病/古代人の病/疫病と天皇/光明皇后と施療/糖尿病と藤原一族/怨霊と物の怪/マラリアの蔓延/寄生虫との長いつきあい 第二部 時代を映す病 ガンと天下統一/江戸時代に多い眼病/万病のもと風邪/不当に差別されたらい・ハンセン病/脚気論争/コレラの恐怖/天然痘と種痘/梅毒の経路は?/最初の職業病/長い歴史をもつ赤痢/かつては「命定め」の麻疹 第三部 変わる病気像 明治時代のガン患者/死病として恐れられた結核/ネズミ買い上げ--ペスト流行/事件簿エピソード/消えた病気/新しく現れた病気/平均寿命と死生観 関連文献  あとがき
  • イソクラテスの修辞学校
    -
    イソクラテスの思想の真髄 「善き言論」は「善き思慮」のしるし 古代ギリシアの教養理念に一大潮流を形成したイソクラテス。プラトンらが教養の原理に数理諸学や哲学を置いたのに対し、彼は弁論・修辞学を対置し、教育を実践した。やがてイソクラテスを源泉とする修辞学的教養はローマ、ルネサンスと受け継がれ、遠く近世にまで多大な影響を及ぼすことになる。イソクラテスの理想と教育を生き生きと描いた好著。
  • 僧侶と海商たちの東シナ海
    4.0
    「894年遣唐使廃止」は日本を変える出来事ではなかった。 列島を取り巻く大海原をたくましく乗り越え、「外」と日本を繋ぎ続ける人たちがいた― 利を求め海を闊歩する海商たちと、 彼らの助けを得て、最新の知識を求めて大陸へ渡ろうとする僧侶たち。 多くの記録を史料に残した僧たちの足跡を辿ることで、海域交流の実相に迫り、歴史世界としての東シナ海を描き出す! [本書の内容] 序章 中世日本と東シナ海 第1章 「遣唐使以後」へ  最後の遣唐使、出発   海商の登場   「遣唐使以後」の入唐僧たち  第2章 古代から中世へ  平安王朝の対外政策   帰国しなかった僧たち   密航僧の出現  第3章 大陸へ殺到する僧たち 「中世」の始まり   日宋仏教界をつないだ人脈―入宋僧円爾   日元関係の波紋と仏教交流―入元僧龍山徳見  第4章 「遣明使の時代」へ  混乱の海、統制の海  仏教交流の変質  補章 遣明使の後に続いたもの ※本書は2010年に講談社選書メチエより刊行された『 選書日本中世史4 僧侶と海商たちの東シナ海』を原本とし、改訂を加え補章を付して文庫化したものです。
  • 「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄
    3.5
    阪急創業者・小林一三は、「政治中心」の東京に対して、大阪を「民衆の大都会」と呼んだ。 ターミナル・デパート、高級住宅地……国鉄に対抗し「官」からの独立を志向する関西私鉄は、沿線に市民文化を花開かせ、「民衆の都」大阪は東京を凌駕する発展を見せた。 だが、大正から昭和への転換、昭和天皇行幸を機に、街は次第に「帝都」へと変質してゆく―。 権力の装置=「国鉄」と関西私鉄との葛藤を通し、「都市の自由」の可能性とその挫折を描く、原武史の代表作。 第20回(1998年) サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞。 [解説(鹿島茂)より] 「横軸としての鉄道に、縦軸としての天皇が交差することによって、思考の座標軸が形成され、二つのパラメーターが思考の軌跡をさまざまに描き出す」 [本書の内容] はじめに―昭和大礼の光景 第一章 私鉄という文化装置  「帝国」と「王国」  『細雪』から  関東私鉄と関西私鉄 第二章 「私鉄王国」の黎明  第五回内国勧業博覧会  法の抜け穴  二つの風土 第三章 「阪急文化圏」の成立  往来ふ汽車を下に見て―小林一三という人物  民衆の都  沿線文化の確立  反官思想の結実―阪急デパート 第四章 昭和天皇の登場  「大大阪」の誕生  昭和大礼と都市空間の変容  官民協力奮励セヨ―一九二九年の行幸 第五章 阪急クロス問題  「官」の巻き返し  逆風  小林一三、社長を辞任す 第六章 「帝都」としての大阪  大阪市民たるもの  天皇のまなざし  一生一代の御奉公 おわりに―「紀元二千六百年」の光景 解説=鹿島茂 ※本書の原本は1998年に講談社選書メチエより刊行されました。
  • 生き残った帝国ビザンティン
    4.8
    ローマ皇帝の改宗からコンスタンティノープル陥落まで 「奇跡の1000年」興亡史 栄華の都コンスタンティノープル、イコンに彩られた聖ソフィア教会……。興亡を繰り返すヨーロッパとアジアの境界、「文明の十字路」にあって、帝国はなぜ1000年以上も存続しえたのか。キリスト教と「偉大なローマ」の理念を守る一方、皇帝・貴族・知識人は変化にどう対応したか。ローマ皇帝の改宗から帝都陥落まで、「奇跡の1000年」を活写する。
  • 日本の修史と史学 歴史書の歴史
    4.0
    現存する最古の歴史書『古事記』、『日本書紀』にはじまり、『大鏡』などの「鏡物」、『平家物語』などの軍記物語、鎌倉幕府による『吾妻鏡』や江戸幕府の『本朝通鑑』、『徳川実紀』、水戸藩が編纂した『大日本史』、そして『大日本史料』をはじめ現在まで続くものもある明治政府の歴史編纂事業にいたるまで、この国では1300年以上にわたってそれぞれの時代に、さまざまな人々の手で歴史書が編まれてきました。これらの編纂にあたった人々は、どのような目で歴史を眺め、そしていかなる態度で歴史を書いたのでしょうか。歴史に向き合う姿勢はどのような変遷を遂げてきたのでしょうか。 本書は、古代から現代にいたる歴史書を、時代を追って50以上にわたって取り上げ、それぞれの成立事情や特色を平易に解説したものです。歴史叙述の変遷の軌跡から、この国の歴史そのものが照らし出されます。 六国史研究の大家であるとともに、東京大学史料編纂所所長をも務め自身も史料の編纂に携わった、戦後の日本史学の礎を築いた著者が贈る、第一級の史学入門! (原本:至文堂、1966年) 【本書で取り上げられている主な歴史書】 『帝紀』、『旧辞』、『古事記』、『日本書紀』、『日本後紀』、『続日本後紀』、『類聚国史』、『日本紀略』、『本朝世紀』、『扶桑略記』、『栄花物語』、『大鏡』、『今鏡』、『水鏡』、『増鏡』、『愚管抄』、『将門記』、『陸奥話記』、『平家物語』、『保元物語』、『平治物語』、『太平記』、『梅松論』、『釈日本紀』、『神皇正統記』、『吾妻鏡』、『百錬抄』、『六代勝事記』、『五代帝王物語』、『元亨釈書』、『善隣国宝記』、『本朝通鑑』、『寛永諸家系図伝』、『武徳大成記』、『東武実録』、『武徳編年集成』、『御撰大坂軍記』、『寛政重修諸家譜』、『徳川実紀』、『続徳川実紀』、『続徳川実紀』、『後鑑』、『大日本史』、『中朝事実』、『武家事紀』、『藩翰譜』、『読史余論』、『古史通』、『史疑』、『折焚く柴の記』、『続史愚抄』、『野史』、『大勢三転考』、『古事類苑』、『大日本史料』など。
  • ベートーヴェン 巨匠への道
    3.0
    1792年、ウィーンの地に立った一人の青年音楽家は、その後いかなる道のりをたどって、「楽聖」となったのか。 師ハイドンはじめ同時代の音楽家たちとの出会い、《エロイカ》《第十交響曲》創作の謎、家族関係の苦悩と波乱の生活、各界の理解者や奇人らとの友情、そして恋人…… 音楽のあり方を根本から変え、傑作を生み出し続けたその生涯に、音楽評論の名手が全角度から光を当てる、珠玉の二十話。 【本書の主な内容】 青春のボン/ベートーヴェンの愛―婚約説をめぐって/第十交響曲のゆくえ/《シンフォニアエロイカ》の謎/ 「メルツェルさん、さようなら」―メトロノーム考/ 《ウェリントンの勝利》の顛末/べートーヴェンと宗教―フリーメーソンだったのか?/イギリスへの夢―ニートとの交際をめぐって/オペラのライヴァル―同時代人ウェーバー/「第三の故郷」ボヘミア/ヴァイオリン・コンプレックス/コントラバスとマンドリン/ダンス音楽への愛着/「歓喜」の背景―日本人とベートーヴェン など ※1987年刊『ザ・ベートーヴェン』(春秋社刊)の文庫化
  • ロシア正教の千年
    5.0
    時に激しく弾圧され、また、時にロシア愛国主義を鼓吹し、人々の精神的支柱となってきたロシア正教の1000年の歴史を、政治と社会の流れの中でとらえた労作の文庫化。 西暦988年、キエフを中心にロシアの国家的統一を果たしたウラジーミル1世は、ビザンチン帝国に範を求めて東方キリスト教(ギリシア正教)を国教に採用した。以来、ロシアはビザンチン文明圏に属し、モスクワは「第三のローマ」としての存在感を高める一方、西欧文明の恩恵から隔絶されることになった。同じキリスト教を共有しながら、ローマ法、ルネッサンス、宗教改革を経験せずに近代への向かうのである。 ロシア革命による「無神論体制」の誕生と、ソヴィエト政権の熾烈な迫害は、宗教者たちを厳しく追い詰めたが、それゆえにこそ、ナチス・ドイツとの大祖国戦争では、スターリンに協力しソヴィエト愛国主義の先頭に立つが、戦後はふたたびフルシチョフの弾圧を受ける。ゴルバチョフ政権下でようやく「宗教ルネッサンス」を迎えるが、ソヴィエト体制の崩壊は、正教会にも深刻な分裂の危機をもたらしたのだった。 文庫化にあたり、「プーチン政権下の正教会」を大幅に加筆。 〔原本:『ロシア正教の千年――聖と俗のはざまで』日本放送出版協会刊、1993年〕
  • 日本の庶民仏教
    5.0
    日本人は宗教になにを求め、なにを信じてきたのか? 仏教は思弁的な教義や哲学、僧侶の支配、また優雅な仏教芸術のみで語られるものではない。インドから中国、朝鮮を経て、欽明天皇十三年(西暦552)に日本に受容された仏教は、庶民の間で不安や苦痛、悩みからの救済として取り入れられ、それぞれの生活や慣習に合わせ独自の伝播と発展を見せた。観音信仰、ヤマ信仰、高野聖にイタコ、踊り念仏、お遍路さん――多種多様な民間宗教の形から、日本の仏教文化を問い直す。(原本:角川選書、1985年刊)
  • 西洋中世の愛と人格 「世間」論序説
    -
    ヨーロッパ中世の社会を、伝説、民話、さらには法や経済などさまざまな位相から総合的に再構築し、共同体のあり方を生き生きと描き出した西洋史学の泰斗、阿部謹也(1935-2006年)。晩年は西洋史家ならではの視点から、「世間」を軸にした独創的な日本人論を展開したことでも知られる。  なぜ、日本人は「世間を騒がせて申し訳ありません」と謝罪するのか。無実ならば決して謝罪せず、世の中が納得するまで主張を続ける西洋との違いはどこから生まれるのだろうか。日本古来の「世間」と対比させつつ、西洋の「社会」を構成する「個人」や「愛」がヨーロッパで成立する過程を描き出した本書は、代表作『「世間」とは何か』を著者の本領たる西洋中世史から裏づける作品であり、一連の「世間論」の原点でもある。  著者は本書でこのように述べている。「大切なのは、わが国では、「社会」と「世間」という二つの用語の世界があるということを、まず認識することである」――。日本の共同体があらゆる水準で崩壊しつつある今こそ読みたい、人と人とのつながりの根源を照らし出す一冊。(原本:朝日新聞社、1992年)
  • チベットのモーツァルト
    3.8
    密教の実践的研究を通して、チベット高原の仏教思想と現代思想が幸福な邂逅をとげる――。 物質に対する執着に眼を曇らされた闇を抜け、いまだ顕れ出ることのない純粋な未発の光に満ちたもう一つの夜を渡る旅へ。 <精神の考古学>を駆使して新たな知の時代を切り拓き、思想の大海を軽やかに横断し続ける著者の代表作。
  • 国民主権と天皇制
    4.0
    惜しまれながら急逝した不世出の法哲学者・尾高朝雄(1899-1956年)、初の文庫版。本書の原本は、1947(昭和22)年10月に国立書院から出版されました。その5ヵ月前には日本国憲法が施行されています。大日本帝国憲法から日本国憲法への移行は、前者の改正手続きに基づいてなされました。そうして「天皇主権」から「国民主権」への大転換を遂げた新しい戦後日本には「象徴天皇」が残されました。国民主権と天皇制ははたして両立可能なのか? もしそこに矛盾があるのなら、戦前から戦後の移行はいかにして根拠づけられるのか? これらの疑問は、単に憲法学の問題であるだけでなく、戦後の繁栄を支えた日本の新しい形は正当な根拠をもつものか、というすべての日本国民に関わる問題でもあります。本書は、この問題を解きほぐしてくれるものです。改正手続きの具体的な経緯をたどり、その過程で起きた「国体」をめぐる論争に触れつつ、「主権」とは何なのか、という問いを追求します。誰にでも理解できるよう、ていねいにたどられていった考察の末、「国民主権」と「天皇制」を両立させる「ノモス主権」が提示されます。本書が発表されたあと、憲法学者・宮沢俊義(1899-1976年)が異論を唱え、二人のあいだに論争が繰り広げられました。本書は、宮沢の批判に対する応答として書かれた二篇を増補して1954(昭和29)年に青林書院から刊行された版を底本とし、その内容を追えるようにしました。「ノモス主権」の概念は、長らく忘れられてきました。しかし、ここには今こそ考えるべき問いがあります。学術文庫『立憲非立憲』に続き、唯一無二の憲法学者・石川健治氏による渾身の「解説」を収録した本書は、新しい時代の日本にとって必須の一冊となることでしょう。[本書の内容]序 言/はしがき/第一章 新憲法をめぐる国体論議/第二章 主権概念の批判/第三章 国民主権の原理/第四章 天皇統治の伝統/第五章 新憲法における国民主権と天皇制/第六章 ノモスの主権について/第七章 事実としての主権と当為としての主権/解説(石川健治)
  • 小学生のための正書法辞典
    -
    ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインが生前に公刊した著書は、たった2冊である。1冊は『論理哲学論考』(1922年)。この書をもって、哲学のすべての問題は解決されたと確信したヴィトゲンシュタインは、哲学から離れ、小学校の教師に転身を遂げる。教師として暮らす中でその必要を感じ、みずから執筆したのが、残る1冊である本書(1926年)にほかならない。本書は、その本邦初訳となる記念碑的訳業である。
  • 語りかける身体 看護ケアの現象学
    4.0
    「植物状態患者」は自分自身や周囲の環境を認識できず、他者と関係することが不可能だと定義されている。しかし実際に彼らと接する看護師や医師の多くは、この定義では理解できない「患者の力」を目の当たりにする。自然科学は彼らを「意識障害」としか診断できない。そこで著者は現象学という哲学を使って、その〈何か〉を探究し始める。
  • 『青色本』を掘り崩す――ウィトゲンシュタインの誤診
    -
    「私は他者の痛みを感じることはできない」――このことを出発点として展開されるウィトゲンシュタイン『青色本』の思索を、著者が細部にわたって、詳細に検討。「独我論」とは、いったい何なのか? 哲学的に思考する醍醐味満載の一冊!
  • バロックの光と闇
    4.7
    「歪んだ真珠」を意味する語として生まれた「バロック」は、「粗野な」、「劣った」というニュアンスを帯びて使われる一方で、バッハやベルニーニに代表される雄大壮麗な作品とともに知られてもいる。──では、「バロック」とはいったい何か? 西洋美術史研究の第一人者が、多彩な時代と分野を縦横無尽に駆けめぐり、本質に迫っていく旅の記録。多数の図版を収録した原本に、さらに新たな図版を加えた決定版が登場!
  • 新しい中世 相互依存の世界システム
    4.0
    冷戦構造の終焉、アメリカ覇権の衰退、経済相互依存の進展--。激変する情勢のただなかにある現代、我々はどこへ向かうのか。国境が薄れた「新中世圏」、なお国民国家たらんとする「近代圏」、秩序が崩壊した「混沌圏」に国々を分類、移行期にある世界を独自の視点で鋭く分析する、刺激的な論考。ヨーロッパ中世になぞらえた「新しい中世」の概念を駆って、ポスト近代の世界システムの構想に理論と実証で迫る。
  • 親鸞と一遍 日本浄土教とは何か
    4.0
    無の深淵が口をあけ虚無の底に降り立った中世日本に日本浄土教を大成した二人の祖師がいた。定住型の親鸞と漂泊型の一遍という、全く対照的な生き方と思索を展開した両者の思想を、原典に現代語訳を付して緻密に読みこみ比較考量、日本文化の基層に潜む浄土教の精髄を浮き彫りにする。日本人の仏教観や霊性、宗教哲学の核心に鋭く迫った清新な論考。
  • ガリラヤからローマへ 地中海世界をかえたキリスト教徒
    -
    イエスはローマ総督によって処刑された。しかし、まだそれは帝国にとっては辺境属州のささいなできごとでしかなかった。彼を神の子と信じる人びとの群れは大多数の帝国人からは無視されるか、まともに扱われることのない、いかがわしい、忌まわしいと見なされる状況にあったが、徐々に教徒の数と伝道の地域を拡大していった。それは結果的に地中海の心性を、そして社会のあり方そのものをも変化させるほどの影響を残したのである。
  • 統合失調症あるいは精神分裂病 精神医学の虚実
    -
    昏迷・妄想・幻聴・視覚変容……これらの症状は何に由来するのか。病名の誕生当初から「人格の崩壊」「知情意の分裂」などと理解されてきた謬見が次第に正されつつある。患者はどうして、どんな不具合を抱えているのか。精神科臨床に長年携わってきた著者が、脳研究の成果も参照し、治療につながる病気の本態と人間の奥底に蠢く「原基的なもの」を語る。
  • 再発見 日本の哲学 北一輝――国家と進化
    3.0
    独自の社会主義論と国家論を展開し、二・二六事件の蹶起将校たちの思想的指導者だった北一輝。国体論を批判し、当時の名だたる憲法学者たちとことごとく対決した彼の思想とは、いかなるものか。伊藤博文、有賀長雄、美濃部達吉、井上毅、穂積八束などなど、近代日本の礎となった思想との対抗のなかに北を位置づける快著!
  • ソビエト連邦史 1917-1991
    3.8
    プロレタリアート革命が、農民国家ロシアで勃発したのはなぜか? 党が国家を所有するという転倒した関係はソ連に何を引き起こしたのか? 「古儀式派」という宗教と党中枢との知られざる関係とは?1917年の革命~1991年の崩壊。この74年間に失われた人命は、数千万以上。ソ連・ロシア政治研究の第一人者が、ソ連崩壊後明るみ出た数多の資料を読み解いて、人類史上最大の「社会主義国家」の全貌を解き明かす。
  • キリスト教の歳時記 知っておきたい教会の文化
    -
    世界中のキリスト教会が備えている一年サイクルの暦。イエスやマリアに関わる日を中心に諸聖人を記念した祝祭日でいろいろな期節が彩られる。クリスマス、イースターという共通イベントのほかに教派や地域により意味や形に違いのある祝祭内容。各教会では実際にどんなことを祝っているのか、人々の生活とどう関わっているのかを、詳しく紹介する。
  • 『新約聖書』の誕生
    4.3
    新約聖書が成立したのは、キリスト教の歴史のなかで特殊な状況が存在したからである。その歴史的に特殊な状況とはどのようなものなのか。そして新約聖書が成立して以来、新約聖書が権威あるものとして存在することが当然のように考えられているとするならば、そのような事態を当然のこととする特殊な立場が新約聖書をめぐって存在していると考えねばならないだろう。その特殊な立場とは、どのようなものなのか。
  • ベルギー大使の見た戦前日本 バッソンピエール回想録
    3.0
    ことしは日本とベルギーが国交を結んでから150年。その間、バッソンピエールが在任した18年間は、日本の運命を決する致命的な諸契機が、歴史のページに次々に刻みこまれていった時代でした。大正天皇の病気、関東大震災、ワシントン、ロンドン両条約における軍縮問題、満洲事変と国際連盟脱退、相次ぐ要人の暗殺、五・一五事件と二・二六事件……。それらを外交官としてつぶさに観察した希有な記録、それが本書です。
  • 女官 明治宮中出仕の記
    4.1
    明治天皇と昭憲皇太后に仕えた女官の手記。華族・久世家の長女、三千子の見聞は、宮中のしきたりや天皇皇后の実像を生々しく伝える。数十人にのぼる女官のさまざまな職名と仕事、天皇自らが名づけた源氏名とニックネーム。「雀」と呼ばれた三千子は、天皇皇后の睦まじい様子に触れ、女官たちに気安く声を掛けて写真をねだる皇太子(大正天皇)に戸惑う。さらに、「俗の言葉でいえばお妾さん」である権典侍と、皇后の関係とは――。
  • 興亡の世界史 大日本・満州帝国の遺産
    3.0
    東京帝大の学生時代は北一輝に心酔し、官界に進んでからは革新官僚として満州の経営に辣腕を振るった岸信介。敗戦後はA級戦犯容疑から総理の座に昇り詰め、高度成長を発進させて昭和の妖怪とも呼ばれる。かたや教師から立身のため満州国軍人となった青年は、戦後、韓国軍の中で頭角を現し、クーデタで政権を掌握。独裁者となって漢江の奇跡と呼ばれる高度成長を達成する。朴正煕と岸信介、二人の揺籃の地、満州国の遺産を問う。
  • 唯識の思想
    4.2
    科学・哲学・宗教の三面をあわせもつ普遍的な仏教思想、唯識。「すべては心の中の出来事にすぎない」とする、この大乗仏教の根本思想は、八種の識が世界を生み出し、心に生じる感情や思考は表層に現れると説く。不可思議にして深淵な心の構造を深層から観察・分析し、その秘密を解く唯識思想とは何か。この古くて新しい思想を解説する最良の唯識入門。
  • 明治日本印象記 オーストリア人の見た百年前の日本
    -
    優美な自然、興趣をそそる諸芸能、無類に清潔で礼儀正しい日本人……。明治中期に訪日し、異文化にとまどいつつも、北海道から長崎まで精力的に旅を続けた著者の印象の一端である。大都市は勿論、地方の文化にも触れ、市井の民とも親しく接して、日本に魅了された彼は生涯に7度日本を訪れることになる。美術史家である著者の鋭い感性が捉えた19世紀末の日本。挿画約100点収録。
  • 古本説話集(上)
    -
    鎌倉時代初期成立と見られる撰者未詳の無名説話集が昭和18年に発見され、斯界の耳目を驚かせた。そして、原本が散佚した「宇治大納言物語」の流れを汲むこの作品は、日本古典文学の貴重な財宝となった。貫之・躬恒・和泉式部・赤染衛門など、王朝歌人たちの逸話を多く集め、宮廷文化の典雅な世界が展開する。上巻は、和歌説話集で、世俗説話46話を収録。
  • 空の思想史 原始仏教から日本近代へ
    4.0
    一切は空である。神も世界も私すらも実在しない。インド仏教がその核心として生んだ「空の思想」は絶対の否定の果てに、一切の聖なる甦りを目指す。やがてこの全否定の思考は、チベット・中国・日本への仏教東漸の中で、「世界を生みだす無」「真理としての空」という肯定色を強めていく。アジアで花開いたラディカリズムの深い変容を追う二千年史。
  • 日本の中の朝鮮文化 相模・武蔵・上野・房総ほか
    -
    朝鮮半島からの渡来人を抜きに日本の古代は語れない。全国に分布する彼らの高い文化水準を伝える遺跡に注目した著者は、20年余にわたる踏査の旅へ出発した。次々と掘り起こされる、忘れられあるいは隠された真実。そこから考察された両国・両民族の歴史的関係は我々を呪縛する〈帰化人〉史観の訂正を迫る。壮大な紀行の第一歩となった本巻は、関東編を収録する。(講談社学術文庫) ※この電子書籍の底本である、講談社学術文庫の原本は、1983年4月に講談社より講談社文庫として刊行されました。『日本の中の朝鮮文化 相模・武蔵・上野・房総ほか』は、講談社学術文庫を底本とし電子化した電子書籍のほかに、講談社文庫を底本とし電子化した電子書籍『日本の中の朝鮮文化(1)』も配信中です。内容は同一のものとなります。あらかじめご了承ください。
  • 古代朝鮮
    3.5
    檀君神話、広開土王陵碑、任那日本府、白村江の戦いと唐との戦争――。中国・日本との軋轢と協調を背景に統一への歩を進めた古代の朝鮮。旧石器時代から統一新羅の滅亡までの朝鮮半島の政治・社会・文化とはどのようなものだったのか。『三国史記』『三国遺事』をはじめとする文献類の精査によって、その実像を鮮やかに復元した古代朝鮮史研究の傑作。(講談社学術文庫)
  • 〈出雲〉という思想 近代日本の抹殺された神々
    3.8
    明治国家における「国体」「近代天皇制」の確立は、〈伊勢〉=国家神道の勝利であった。その陰で闇に葬られたもう1つの神道・〈出雲〉。スサノヲやオホクニヌシを主宰神とするこの神学は、復古神道の流れに属しながら、なぜ抹殺されたのか。気鋭の学者が〈出雲〉という場所(トポス)をとおし、近代日本のもう1つの思想史を大胆に描く意欲作。(講談社学術文庫)
  • 妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心
    4.0
    日本人にとって、妖怪とはなにか。科学的思考を生活の基盤とし、暗闇すら消え去った世界においてなお、私たちはなぜ異界を想像せずにはいられないのだろうか。「妖怪」とは精神の要請なのか、それとも迷信にすぎないのか――。古代から現代にいたるまで妖怪という存在を生みだし続ける日本人の精神構造を探り、「向こう側」に託された、人間の闇の領域を問いなおす。妖怪研究の第一人者による、刺激的かつ最高の妖怪学入門。(講談社学術文庫)
  • 日本仏教 思想のあゆみ
    3.0
    聖徳太子、南都六宗、最澄・空海、鎌倉新仏教……。歴史的に仏教の展開の最終段階に位置し、高度な思想を展開した日本仏教。唯識や華厳の世界観、最澄や空海の即身成仏の思想、法然、親鸞、一遍らの念仏、道元の坐禅観、日蓮の唱題──。各宗派祖師の思想の概略をわかりやすく明らかにしながら、日本人のものの見方及び考え方の特質を描き出す一冊。(講談社学術文庫)
  • 近代ヨーロッパへの道
    4.0
    ルネサンス、宗教改革を経て、市民社会の形成へ。それは中世以来、引き継がれてきたものと、近代的な要素とが複雑に絡み合い、そこから新たなものが生まれ成長してゆく"複雑にして多面的な運動"だった。新大陸発見から産業革命前夜にかけて、近代社会の形成に向かうヨーロッパの姿を再現、絶対王政の栄華の陰で苦しむ庶民の姿までもいきいきと描く。(講談社学術文庫)
  • 花祭
    3.0
    修験者たちによって天龍川水系に伝えられ、中世に始まるとされる民俗芸能「花祭」。湯を沸かし神々に献じ、すべてを祓い清める冬の神事に、人々は夜を徹して舞い続け、神と人と鬼とが一体となる。信仰・芸能・生活・自然に根ざした祈りを今に伝える奥三河地方の神事を昭和初頭、精緻に調査し、柳田や折口にも影響を与えた、日本民俗学の古典的名著。(講談社学術文庫)
  • マッハとニーチェ 世紀転換期思想史
    4.3
    現象学、ゲシュタルト心理学、アインシュタインの相対性理論、ウィーン学団の論理実証主義、ウィトゲンシュタインの後期思想、ケルゼンの実証法学など、すべてマッハの影響下に生まれた。ニーチェの最後期の思想「遠近法的展望」もマッハの「現象」の世界と重なる。まったく交流のなかった物理学者と古典文献学者は、同時期に同じような世界像を描き、それが、十九世紀から二十世紀への思想の中心となった。世紀転換期思想を解読。(講談社学術文庫)
  • 寺山修司全歌集
    4.3
    短歌、俳句、詩、エッセイ、評論、演劇……。芸術のジャンルを軽々と飛び越え、その鬼才ぶりを発揮した寺山修司。言葉の錬金術師は歌う。故郷を、愛を、青春を、父を、そして祖国を! 短歌の黄金律を、泥臭く、汗臭く、血腥い呪文へと変貌させる圧倒的な言語魔術に酔いしれる。(講談社学術文庫)
  • 世界史再入門 歴史のながれと日本の位置を見直す
    3.7
    西欧や中国など特定の地域に偏った歴史では、人類史の筋は見えてこない。日本の歴史も世界の動きに取り込み、普遍的な視点でとらえようと試みることで、教科書や全集ではつかむことのできなかった世界史の全体像が浮かび上がる。生産力発展の過程と生存・自由・平等を求める人々の努力で形作られた人類史を辿り、現代世界の課題を見つめ直す好著。(講談社学術文庫)
  • ヘレニズムの思想家
    -
    多島海イオニア地方に起こり、ソクラテス、プラトン、アリストテレスへと繋がる古典期のギリシア哲学。自由・真理の探求を旨とする思想は、アレクサンドロス大王以降のヘレニズム期にどのように展開したのか。エピクロス、ストア派のゼノン、クレアンテス、セネカ、懐疑派のピュロンなど、運命への関心、生き方の探求を主眼とした思想家たちを紹介。(講談社学術文庫)
  • 新井白石「読史余論」 現代語訳
    4.3
    「正徳の治」で名高い大儒学者による歴史研究の代表作。古代天皇制から、武家の発展を経て江戸幕府成立にいたる歴史を九変・五変に時代区分して論じ、徳川政権の正当性を主張する。天皇家や源頼朝、足利幕府への客観的で冷徹な評価、為政者の不徳と失政に対して天命が革まる「易姓革命」への警鐘など、実証的で先駆的な史論の現代語訳。(講談社学術文庫)
  • 幕末外交と開国
    4.2
    無能無策な幕府が、黒船の「軍事的圧力」に屈し、不平等条約を強いられたという「日本史の常識」を検証。軍事衝突は起こり得るのか、交渉は何語で行うのか――。ペリー来航から和親条約締結までの一年間を日米の資料から追跡して見えてきたのは、幕府の高い外交能力と、平和的交渉の輝かしい成果だった。日本の近代外交と日米関係の原点を見直す。(講談社学術文庫)
  • 天皇 天皇の生成および不親政の伝統
    5.0
    「天皇親政」と「国体」へのタブーが解けた戦後の学界で、いち早く天皇統治の解明に挑んだ法制史家による「天皇の歴史」。「不親政」と「刃に血ぬらざること」こそが天皇の伝統であり、それゆえに邪馬台国の時代から現在にいたるまで、「統合の象徴」として存続しえたという。その後の日本人の天皇観に大きな影響を与えた必読の論考。(講談社学術文庫)
  • 満州事変
    3.0
    1931年9月18日、奉天郊外の柳条湖で南満州鉄道の線路が爆破された。この事件を契機に、大陸での勢力拡大を目論む関東軍は満州(現・中国東北部)全土を占領する。膨大な史料の精緻な読みをとおして、第一次山東出兵、張作霖爆殺事件から、関東軍の暴走、満州国建国、国際連盟脱退まで、当時の状況を詳細に再現、近現代史の問題点を抉剔する。(講談社学術文庫)
  • 「日本人論」再考
    3.5
    明治以降、夥しい数の日本人論が刊行されてきた。『武士道』『菊と刀』『「甘え」の構造』などの本はなぜ書かれ、読まれ、そして好評を博すのか。そこには、私たちを繰り返し襲う「不安」がある。欧米文明に遭遇し、戸惑う近代日本人のアイデンティティの不安の在処を抉り出す。本書は、日本人論の総決算であり、150年間の近代日本の物語でもある。(講談社学術文庫)
  • 道元「永平広録 真賛・自賛・偈頌」
    -
    禅者でありつつ類まれな詩作者でもあった道元は生涯に四〇〇首以上もの偈頌(漢詩)を残した。祖師の頂相(肖像画)に寄せた「真賛」、自身の頂相に寄せた「自賛」、在宋時代から帰国後、越前時代に詠まれた観月、寓居、山居など応時応節の「偈頌」、計一五〇首を収録した本書は、道元の「さとりの詩人」としての姿を描き出す。『永平広録』掉尾を飾る最終巻(巻十)の全訳註。道元が漢詩に詠んださとりの深奥を平易に解説する。(講談社学術文庫)
  • グノーシスの神話
    4.0
    1世紀の地中海世界に誕生し、「古代キリスト教最大の異端思想」ともいわれる「グノーシス主義」が生み出した神話の主要な断章を紹介する。1945年にエジプトで発見されて宗教界にセンセーションを起こしたグノーシス主義の基本文献「ナグ・ハマディ文書」のエッセンスとともに、その影響の強いマンダ教、マニ教の教典の主要部分を抜粋し編成。1999年および2011年に岩波書店より刊行された同名書籍の文庫化。(講談社学術文庫)
  • パラダイムと科学革命の歴史
    3.7
    科学史の第一人者による「学問の歴史」。科学革命で生まれた新たなパラダイムが学問的伝統を形成していく過程を解明する。古代以来の東西学統の比較から、学会誌などのメディアの発明、職業的科学者の誕生、現代のデジタル化まで、社会的現象としての科学と科学者集団を分析。『歴史としての学問』(1974年、中央公論社刊)を学術文庫化にあたって改題し、新たに「学問のデジタル化・グローバル化」を論じた補章を加筆。(講談社学術文庫)
  • ヨーロッパの出現
    -
    森と石、都市と農村が展いた後発のヨーロッパ文明は、どのようにして世界史の領導者になったのか。戦争・飢餓・疫病、ルネサンス・宗教改革・大航海を経てきたその歴史に建設と改新、破壊と停滞のリズムを読み取り、文明を一つのシステムとして通観する。西洋史の泰斗による格好のヨーロッパ入門!
  • 妖怪学とは何か 井上円了精選
    -
    妖怪博士の妖怪退治!! 「コックリ」「天狗」「狐憑き」から、「妖怪屋敷」「西瓜(スイカ)の幽霊」「経を誦(よ)む古木」まで、全国の妖怪事象を蒐集しつつ、御一新の世になお蔓延る迷信を一網打尽にせんとした奇特な哲学者を突き動かしたものとは一体何だったのか? 「妖怪学講義録」「おばけの正体」など、妖怪学の創始者・井上円了の精華をオリジナルに厳選した、決定版アンソロジー。 [目次] 編者序文 妖怪談 妖怪学講義録 『妖怪学雑誌』論説 (真怪論/妖怪学と諸学との関係/忘憂術/論怪) おばけの正体 補遺 (妖怪学講義細目/妖怪学講義参考書目/井上円了調査地一覧) 注
  • 世界の音 楽器の歴史と文化
    3.3
    「打楽器を持たない民族はいない」。古来、人は自身の体やモノを叩いて感情を伝え、動物の鳴き声や雨風などの自然音を真似、再現してきました。楽器発祥から2万年。信仰の祭礼、政治儀式、軍事の士気高揚・・・・・・あらゆる場面に浸透していった「音」と「音楽」。気候風土や時代背景に合わせ、世界各地の「音」は、どのように姿を変えてきたのか。西洋音楽と民族音楽、その対比が示す真意は? 「音」で考える、ユニークかつ雄大な文化人類学!(解説・森重行敏) 本書の原本は『世界楽器入門 好きな音 嫌いな音』(1989年1月 朝日選書)を改題したものです。 はじめに 第一章 ミンゾク楽器・ 第二章 楽器の起源 1 生活周辺から生まれた楽器  2 食器から楽器へ  3 道具から楽器へ  4 自然界の音の再現から楽器へ  5 生存に必要な音を出す道具から楽器へ  6 呪術・信仰の道具から楽器へ  7 学問・研究の道具から楽器へ  8 音像から楽器へ  第三章 楽器分類を通して見た諸民族の楽器観 1 中国  2 インド  3 ギリシャ  4 ローマ  5 ヨーロッパ  第四章 楽器の音 1 打つ、擦る、吹く、弾く  2 楽器の成り立ち  3 音の出し方  第五章 楽器の分布と歴史 第六章 風土と音 1 風土と楽器  2 音の響き  第七章 音・数・楽器 第八章 メディアとしての楽器 1 経営メディアとしての楽器  2 視覚メディアとしての楽器  3 思想メディアとしての楽器  第九章 手作りについて 第十章 好きな音嫌いな音 第十一章 東方の楽器・西方の楽器 石笛/横笛/笙/篳篥/尺八/和琴/箏/琵琶/三味線/胡弓/鼓 /先史時代の楽器/オーボエとバスーン/クラリネット/トラムペ ットとトロムボーン/ホルン/テューバ/リコーダーとフリュート /バグパイプ/オルガン/キタラとライア/ハープ/ヴァイオリン /リュートとギター/ツィターとハープシコード/クラヴィコード とラングライク/ダルシマーとピアノ/カリヨン/ティンパニとシ ムバル/アフリカの楽器/インドの楽器/インドシナ半島の楽器/ インドネシア・オセアニアの楽器/雑音の効果/種々の撥/弦 楽器に関する参考文献 あとがきにかえてーー楽器研究の方法論―― 解説「人類共通の財産ーー音楽とは何か?ーー」森重行敏(洗足学園音楽大学現代邦楽研究所所長) 楽器索引 人名索引
  • 人格の哲学
    -
    「人格(ペルソナ)」とは、単にかけがえのない個であるばかりでなく、他者との交わりにおいて存在し、自己を実現する主体である――。 古代以来の神学から現代の哲学までを渉猟。真の「人格」理解を通してあらゆる存在の価値の基礎づけと倫理の構築を目指す、著者畢生の書。 これを知らずして、「人間の尊厳」も「善」も語れない! [本書の内容] 序論 人格(ペルソナ)について語ることの難しさ 第一章 個人から人格へ――人格の哲学をめざして 第二章 「世俗化」と「人格」概念 第三章 行為と人格 第四章 存在としての人格 第五章 人格の形成 第六章 人格(ペルソナ)の神学的考察
  • ヨーロッパ中世の社会史
    4.5
    ヨーロッパはなぜ世界の覇権をとったのか? その基層をなす社会構造の特殊性は中世に準備されていた。中国やローマ帝国が目指した世界帝国を否定し、国民というまとまりの上に立つ国家という独自の道を、中世一千年をかけて形成したのである。そのとき、神・自然・同胞、三つに対する考え方の変化が起こった。政治史・経済史・法制史などに分化した理論をぶちこわし、人間の移動や、文字に残っていない民衆の「話し言葉の世界」をひっくるめて、現在に続く世界史の転換と相関を、語りかけるように読み解く。わたしたちは歴史から何を学べるか? 【原本】 『ヨーロッパ中世の社会史』(岩波書店、1985年) 【目次】 第一講 中世社会史への誘い 第二講 民族大移動期の世界史的意義(4~8世紀) 第三講 西ヨーロッパ的生産様式の形成と普及(8~11世紀) 第四講 西ヨーロッパ中世都市の特色(11~13世紀) 第五講 中世西ヨーロッパ社会に共通した特質(13~16世紀) 第六講 国家権力の質的変化について
  • オスマンvs.ヨーロッパ 〈トルコの脅威〉とは何だったのか
    3.7
    オスマン帝国を通して読むと、世界史が違うすがたを見せ始める―― ヨーロッパが「トルコの脅威」と力説するオスマン帝国は、決して「トルコ人の国家」だったわけではない。「イスラムの脅威」に対し十字軍が何度も組織されたが、オスマン帝国にはキリスト教徒もたくさんいた。宗教的寛容性と強力な中央集権体制をもち世界帝国を目指す先進国へのおそれ、その関わりこそが、「ヨーロッパ」をつくり、近代化を促したのだ。数百年にわたる多宗教・多言語・多文化の共生の地が、民族・宗教紛争の舞台になるまで。 【目次】 プロローグ 「トルコ行進曲」の起源 第一章 オスマン帝国の起源     1 ユーラシア草原を西へ――トルコ系遊牧民の西漸     2 トルコ族のイスラム化とアナトリアのトルコ化     3 モンゴルの征西とオスマン朝の誕生 第二章 ヨーロッパが震えた日々――オスマン帝国の発展     1 オスマン朝の興隆――ムラト一世とバャズィト一世の時代     2 世界帝国への道――メフメット二世とコンスタンティノープル征服     3 ヨーロッパにとっての東方 第三章 近代ヨーロッパの形成とオスマン帝国     1 普遍帝国オスマン――「壮麗者」スレイマン一世とウィーン包囲     2 オスマン対ハプスブルク     3 近代ヨーロッパの成立とオスマン帝国 第四章 逆転――ヨーロッパの拡張とオスマン帝国     1 最初の暗雲――スレイマン一世の死     2 変化の兆し――一六世紀後半のヨーロッパ     3 変容する帝国――スレイマン一世移行のオスマン帝国     4 退潮の時代――第二次ウィーン包囲失敗     5 枠組みの転換――オスマン優位の終焉 エピローグ 「トルコ軍楽」の変容
  • パリ歴史探偵
    3.0
    景色にまぎれた不自然な段差、小さな抜け道。かすかな違和感に導かれ、古地図を広げて一九世紀のガイドブックや文学作品を繙けば、モーパッサン、ランボー、ゾラが暮らした時代の空気がみるみる立ち上る! 当時の風習や世相までをも、ユーモラスな視点で活写。中世から一九世紀を自在に飛び回る旅へ、中世・ルネッサンス研究の泰斗が貴方を誘う。 (一部抜粋) 本書は、パリ街角のさりげない光景のなかに、この都市の記憶を、あるいはこういってよければ、パリという馥郁(ふくいく)たる香りの酒瓶の底に沈んだ澱のようなものをたどろうとした試みである。「神々は細部に宿れり」をモットーにして、半ば意識的に、モニュメントとはいいがたい些細な「モノ」をめぐるささやかなる探偵旅行を展開してみた。――「プロローグ」より 目次 プロローグ 1章 三つの壁、三つの時代・  1 中世に飛ぶ   2 古地図のなかのパリ   3 入市税関の時代   ●コラム『タブロー・ド・パリ』  2章 パサージュを渡り歩く 「昔の香りただようショワズール小路よ」/ヴァリエテ座の楽屋口  /パサージュ対ギャルリー/ジュフロワ小路からヴェルドー小路へ  /「ソルボンヌ小路」を発見!/セピア色のパサージュ  ●コラム『ナナ』  3章 昔のガイドブックから  1 『パリ= ディアマン』一八六七年版 ●コラム『居酒屋』  2 局留め便、ひとむかし前のメール ●コラム『肉体の悪魔』   3 写真館の時代   「小さな肖像」/ランボーを撮った写真家/「立体写真」ブーム 4章 まぼろしの公衆トイレを求めて 5章 記憶の場としてのマルヌ川  1 『居酒屋』の時空間   2 マルヌ川の岸辺で思うこと   3 思いがけず廃線歩き  6章 印象派の散歩道 学術文庫版付録「青春のカルチエ・ラタン」 あとがき 本書は2002年、講談社現代新書より刊行された『パリ歴史探偵術』を改題、一部、加筆修正したものです。
  • ローマの哲人 セネカの言葉
    4.0
    パクス・ロマーナ期、ローマ帝国で弁護士、元老院議員、財務官、法務官、そして皇帝ネロの顧問官を歴任したセネカ(?~65年)は、思想家として人生、死、貧困、徳、欲望と快楽、真の自由という、誰の人生にも関わるテーマについて普遍的なメッセージを遺している。「どうしてこんな面白いものが今まで日本ではほとんど読まれなかったのだ」――特定の他者にあてた書簡の形で著した十数篇の文章を、『清貧の思想』『ハラスのいた日々』の作家・中野孝次が晩年自らの翻訳で読み解く。道徳的退廃に陥った21世紀の日本を憂え、人として生きる術を説くいきいきとした箴言として提示した、現代人のためのセネカ入門。(原本:2003年岩波書店刊)
  • 南朝全史 大覚寺統から後南朝へ
    4.0
    謎多き南朝。その実像は、政治・文化的実体をともなった本格政権だった! 大動乱の時代として日本史に深く刻まれた南北朝時代。しかし南朝の実像は謎に包まれてきた。 室町幕府に対し劣勢に立ちながら、吉野山中に長きにわたり存続できたのはなぜか。 厖大な史料を博捜し、政治・文化的実体をもつ本格政権としての南朝に光を当て、 起源である鎌倉時代の大覚寺統から後南朝まで「もうひとつの朝廷」二百年を描き切る決定版。 【本書より】 本書は、こうした南朝研究の課題と研究手法上の特殊性をふまえて、南朝の前史から説き始め、ピークというべき建武の新政、その後身としての南朝をへて、北朝に吸収された後の抵抗運動としての後南朝の段階をふくめた、いわば南朝の全部をひっくるめた総合的な叙述をすることを目指している。そうすることによって、南朝をつらぬく原理というか、真っすぐ通った一本の柱のようなものの存在を明らかにすることができる。 【本書の内容】 第一章 鎌倉時代の大覚寺統  大覚寺統の成立  両統対立の開始  両統対立の展開  両統の相剋 第二章 建武の新政  綸旨万能の成果と限界  軍事指揮と恩賞宛行  王統からみた建武の新政 第三章 南朝の時代  南北朝の併立  後村上天皇の時代  長慶天皇の時代  後亀山天皇と南北朝の合体 第四章 南朝を読みとく  南朝史料としての『新葉和歌集』  南朝の組織と制度  南朝と地方との関係  大覚寺統傍流の末路 ※本書の原本は2005年に講談社選書メチエより刊行されました。
  • 伊勢神宮と出雲大社 「日本」と「天皇」の誕生
    -
    こうして「日本」は形づくられた! なぜ、大和は出雲を必要としたのか? 朝日と夕日、太陽と蛇、陸と海、現世と他界― 天武・持統の大和王権を守る「両端の象徴的霊威」をになうものとして伊勢・出雲をとらえ直し、日本の起原に鋭く迫る試み。 「神とは何か」という民俗学による理論的分析の視点と、歴史学による記紀をはじめとする文献研究、考古学の発見を融合させた、新しい古代探究! 【本書の内容】 第一章 伊勢神宮の創祀 第二章 〈外部〉としての出雲 第三章 祭祀王と鎮魂祭 終 章 〈日本〉誕生への三段階 ※本書の原本は、2008年に講談社選書メチエより刊行されました。
  • 雇用、利子、お金の一般理論
    値引きあり
    4.3
    この本が、経済学を変え、世界を変えた。 ――正確で明快な新訳で読む社会科学史上の偉業 物が売れない、職がない――なぜ市場は自由放任では機能しなくなることがあるのか。ケインズは自らも通暁する古典派経済学の誤謬と限界を徹底的に見据え、ついに現代経済学の基礎となる本書に至った。現実世界に直面し理論をラディカルに(皮肉とユーモアも効かせて)更新する、科学という営みの理想形。 本書の核心を定式化したヒックスの重要論文『ケインズ氏と「古典派」たち』も採録。 ポール・クルーグマン「イントロダクション」より 経済停滞は、経済繁栄の過剰に対する必然的な罰なのだという発想は根強い。経済がそもそもどうやって停滞するに至ったかではなく、どうやって停滞にとどまるかを分析することで、ケインズは経済の苦悶に何か懲罰的なものがあるという発想を葬り去った。つまり『一般理論』は、知識の豊かな規律あるラディカリズムの成果なんだ。
  • 神主と村の民俗誌
    4.5
    氏神から産土神、株神を祀る。集落や同族、一家で神々を招くたびに役割を果たす神主の仕事とは? 祈祷・祭りと村の暮らしを描く。
  • 潜伏キリシタン 江戸時代の禁教政策と民衆
    4.0
    幕藩体制下に弾圧されたキリシタンは、明治政府によって解放された――。このように思われている「日本社会の近代化」は、歴史の真実なのだろうか。そもそも、「キリシタン」とは何なのか。非キリシタンであったにもかかわらず、領主の苛政に一揆を起こした民衆を「切支丹」として弾圧した事例や、問題化を避けるために、穏健なキリシタン百姓を黙認した事例などを取り上げ、歴史と宗教のかかわりに新しい視野を提供する。
  • 神話学入門
    5.0
    ヨーロッパで生まれた「神話学」は、どのように広がり、どう変節してきたのか。ミュラーがダーウィンの思想と出会い、考えたこととは? フレイザーが『金枝篇』で遺した影響とは? レヴィ=ストロースは何を神話の源泉としたのか? キャンベルのつくった「健全な神話」とは何か?「神話」の定義から現代における影響まで、学説史に沿って文献を渉猟し、豊富な引用で、西洋に横たわる思想の本質に迫る意欲作。
  • 中世ヨーロッパの城の生活
    3.9
    牢固とまた堂々と風格を漂わせ、聳(そび)える城。西欧中世、要塞のような城が陸続と建造されていった。城作りはいついかなる理由で始まったのだろうか。城の内外ではどのような生活が営まれていたのだろうか。ウェールズ東南端の古城チェプストー城を例に挙げ、年代記、裁判記録、家計簿など豊富な資料を駆使し、中世の人々の生活実態と「中世」の全体像を描き出す。
  • 島原の乱 キリシタン信仰と武装蜂起
    3.7
    関ヶ原合戦の記憶も遠のいた1637年、彼らは突如として蜂起した。幕府や各地大名を震撼させ、12万人の大軍をもってようやく鎮められた大規模な一揆は、なぜ、いかにして起こったのか? 「抵抗」や「殉教」の論理だけでは説明できない核心は何か。信者のみならぬ民衆、戦国あがりの牢人、再改宗者らが絡み合う実相を、宗教という視点から戦国時代を考察してきた第一人者が描く。島原の乱を知る必読の決定版!
  • 哲学の練習問題
    4.3
    私たちの身体と心には、まだ開発されていない能力が無数にある。しかし、それは「学習」では開発できない。発達をリセットして、能力を形成すること。それは「名詞」ではなく「動詞」の経験であり、そのためには実際にやってみるのが唯一の方法である。本書では、オートポイエーシスの第一人者として知られる著者が、一人でもできるエクササイズを数多く紹介している。これらを実行したその先には、未知の自由が待っている。
  • 日本の土偶
    3.0
    土偶はどこから来て、どのように変化したのか。本書では多様な土偶を年代・地域別に体系化し、形態・特徴・出土状況などを300点以上の図版で立体的に解説。さらに髪型から埋葬まで、縄文時代の文化と信仰を探り、海でつながれた周辺地域の調査から土偶の起源を追究する。土偶研究の黎明期を導いた研究者による伝説的名著、待望の文庫化!(序文 サイモン・ケイナー)
  • 儒教 怨念と復讐の宗教
    5.0
    わずかな領地も持たず、生涯のほとんどを無位無官で流浪した一介の匹夫・孔子。みじめな人生を送った男の妄執が、復讐の宗教を生んだ。時に体制擁護のイデオロギーとして利用され、時に革命思想として弾圧されながら、その底に流れるルサンチマンの精神は2500年にわたって払拭されることはなかった。今、関心を集める「儒教」とは? 特異な宗教の正体を暴き、「聖人君子の道徳」という従来のイメージを覆す、新視角の儒教論。
  • 浮世絵の歴史 美人絵・役者絵の世界
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    独特の魅力を放つ「浮世絵」は、いかにして生まれ、江戸期の象徴的芸術とまでなったのか? 庶民出の町絵師によって、庶民の興味を引く「美人・役者・風景」を題材にし、庶民の購買力によって支えられた浮世絵。本書は浮世絵を日本の近世から現代の美術史として通観する試みである。浮世絵とは、そもそも何だったのか――これを読めば、浮世絵のすべてがわかる、入門編にして決定版。
  • 中国侠客列伝
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    「弱きを助け、強きを挫く」侠者たちの壮挙。替天行道、一諾千金……。信義を重んじ、自らの命を賭して果断に行動する侠者たち。血湧き肉躍る痛快事を次々と実現するアウトロー達の強さと優しさを読み解く。
  • 古事記とはなにか 天皇の世界の物語
    4.0
    アマテラスとは高天原にあって葦原中国まで貫く秩序の原理である。スサノヲは秩序を根源からゆり動かす巨大なエネルギーだ。オホクニヌシはスサノヲの力を得て国作りを完成する――明快な論理と一貫した作品論的態度による読解で析出される『古事記』の全体構造と世界像とは。天皇の世界たる「天下」を語る物語として、厳密な読みを示した画期的力作!
  • バロック音楽名曲鑑賞事典
    3.3
    生きる喜びが溢れる豊かな生のドラマ、バロック音楽。新しく誕生したオペラ、心の奥底まで響く宗教音楽、多彩に奏で歌う協奏曲、宮廷を輝かせる典雅な調べ。カッチーニ、モンテヴェルディ、シュッツやクープラン、ヴィヴァルディ、ヘンデル、バッハ等の作品から隠れた名曲、感動の演奏を厳選。西洋音楽史研究の第一人者が古楽の沃野から選んだ名曲100曲の魅力をあまさず語る。
  • 進化生物学入門 宇宙発生からヒト誕生への137億年
    4.0
    宇宙誕生は一三七億年前。地球発生は四六億年前。三八億年前の原始の海に、化学進化で生物の原料・アミノ酸ができ、最初の生命体(プロトビオント)が誕生した。真核生物、多細胞生物を経て、五億五〇〇〇万年前、カンブリアの大爆発。しかし、奇妙な生物の多数は絶滅。何が起こったのか? その後の進化とは? 多様な生物が生きる地球の壮大な生命のドラマを読み解く。
  • 生命の劇場
    4.0
    ダーウィニズムと機械論的自然観に支配されていた二十世紀初頭、人間中心的な世界観を退けて「その生物が周囲に与える意味の世界」すなわち「環世界」の概念を提唱し、その後の動物行動学や哲学、生命論に影響を及ぼした生物学者の最晩年の著作。対話形式で独自の世界観を展開し、自説への批判とそれへの反論をも明快に語る、今も新鮮な科学の古典。
  • 再発見 日本の哲学 平田篤胤 霊魂のゆくえ
    5.0
    日本倫理学会「和辻賞」受賞の力作。近世の庶民的な仏教思想を背景におきながら、死と霊魂について篤胤が展開した思想を、詳しく、繊細に読み解いた、画期的な著作、ついに文庫化!
  • 再発見 日本の哲学 佐藤一斎――克己の思想
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    佐藤一斎『言志四録』は、いまだに根強い人気を誇る箴言集です。かの西郷隆盛が信奉したことでも名高い。そこに書かれている思想とは、一体なんなのか?真の己を知り、志を立てる。近代日本の躍進を支えた秘密もそこからは読みとれます。今こそ、『言志四録』を!
  • 水戸黄門「漫遊」考
    4.5
    序 章 「水戸黄門」への旅立ち第1章 中国の名裁判官――物語と現実第2章 朝鮮の『春香伝』と暗行御史第3章 北条時頼から水戸黄門まで第4章 英雄伝説と神話第5章 巡遊する王第6章 芸能とスパイ第7章 「黄門漫遊記」の誕生――歌舞伎と講談第8章 明治天皇と水戸黄門第9章 「黄門漫遊記」の発展――映画とテレビ終 章 水戸黄門の仲間たち
  • 中世・ルネサンスの音楽
    4.0
    音楽の源泉、バロック以前の音楽の好解説書 心洗われる素朴な響きのグレゴリオ聖歌、吟遊詩人のうたい上げる愛のメロディ……美しい旋律で人の心の奥底を揺り動かす中世・ルネサンス音楽の世界へようこそ。
  • 十二世紀ルネサンス
    4.5
    中世の真っ只中、閉ざされた一文化圏であったヨーロッパが、突如として「離陸」を開始する12世紀。東方からシチリアへ、イベリア半島へ、ギリシア・アラビアの学術がもたらされる。ユークリッド、プトレマイオス、アル=フワーリズミーなどが次々とラテン訳され、飛躍的に充実する西欧の知的基盤。先進的アラビアとの遭遇が生んだ一大転換期を読む。
  • 江戸近郊道しるべ 現代語訳
    4.2
    文化・文政・天保の頃、徳川家御三卿のひとつ清水家に仕えた武士が、多忙な勤務の合間に楽しんだ日帰り散策紀行。大都市・江戸も一歩郊外に出れば、豊かな自然に囲まれていた。起伏に富む地形、田畑と湿地、深い森に佇む社寺旧跡と素朴な人々。ささやかな名所・絶景を求めて歩く喜びに満ちた、時空を超える江戸東京お散歩ガイド。(解説・田中優子)
  • パスカル『パンセ』を楽しむ 名句案内40章
    -
    人間は「考えない葦」である!?──長大な『パンセ』から気になる一節を取り上げ、意外なエピソードをまじえながら読み解く楽しみ。それぞれ読み切りで書かれた40章から成る本書は、1日1章、40日で『パンセ』を完全制覇できる手軽なガイドブックです。ヨーロッパ最高の知性とともに生きる豊かな毎日を手に入れよう!
  • 再発見 日本の哲学 折口信夫――いきどほる心
    -
    日本人にとって神とは、どのような存在だったのか。日本の古代、日本の根源に、独自の感性で踏み込んでいった折口信夫の思想を鮮やかに照らし出す、俊秀の力作。
  • エスの系譜 沈黙の西洋思想史
    4.0
    「なぜか分からないがそうしてしまった」、「まるで自分ではない何かにやらされているようだった」……。こうした話は作家や芸術家の創作についてよく聞かれるが、日常の中にも同様の経験があるのは誰もが知っていることだろう。みずからの行動の原動力だったことは明らかなのに、それが何なのかは明言できないもの。その得体の知れない力を示すために着目されたのが、ドイツ語の代名詞「es(エス)」だった。
  • 民権闘争七十年 咢堂回想録
    -
    連続25回当選、人呼んで「憲政の神様」。生涯を議会政治、政党政治の確立に捧げた男が敗戦に直面して抱いた苦い思い。「日本に欧米なみな立憲政治を確立することを念願として私は七十余年努力したが、微力のためかついに及ばず、そのために愚かな戦争を始めて無条件降服という未曾有の屈辱を蒙る……私は一生を無駄に過してしまったと思うことがしばしばある」。戦後70年をすぎ、立憲主義が問われるいま、本書の意義は重い。
  • 交易する人間(ホモ・コムニカンス) 贈与と交換の人間学
    3.0
    本書の主題は、具体的事例に則して言えば、贈与と交換の社会哲学である。より正確に言えば、本書は、贈与と交換を峻別する。そうすることで、近代に出現した市場経済、そして特殊近代的な資本主義経済の歴史的位置づけ、ひいてはそれらがかかえる歴史的限定性を明らかにできるからである。…… 要するに、本書は、人類が歴史的に経験してきた種々の相互行為を観察することを通して、社会存在としての人間の根源に迫る試みである。
  • 神紋総覧
    -
    家に家紋があるように、神社にも紋章がある。出雲大社は亀甲紋、諏訪神社は梶の葉紋、八幡神社は巴紋……。祭神のシルシのみならず、神社の社紋、社家の家紋からの派生である場合も、一社が複数の神紋をもち、使い分ける場合もある。どんな意匠があるのか。なぜそのモチーフなのか。四千社以上の調査で解きあかす「神紋」の種類と分布、意味と歴史。
  • 霊山と日本人
    4.0
    主要霊山ごと、あるいは個別宗教ごとにしか語られてこなかった日本の山岳信仰。本書はそれを世界、とくに東アジアの山岳信仰のなかに位置づけ、包括的に捉えたはじめての本である。霊山の特徴、信仰、儀礼などを、人々の生活と関連づけて考えることで、山の霊性とは何かを明らかにする。私たちはなぜ山に手を合わせるのか。神仏や天狗はなぜ山に住まうのか。いま、あらためて、自然や「聖なるもの」を問いなおす。
  • 華族誕生 名誉と体面の明治
    -
    明治二年に誕生し、現行憲法の発効と同時に消滅した華族制度。そこでは誰が華族となり、「公侯伯子男」の爵位はどのように決められたのか。また、爵位をめぐってどんな人間模様が描き出されたのか――。豊富なエピソードをまじえて華族制度の誕生を解説し、歴史上の意義を問う。実体が忘れられて久しい、名誉と体面の保持に拘泥した特権階級に光を当てた、華族研究の必読書。
  • 対馬藩江戸家老 近世日朝外交をささえた人びと
    5.0
    将軍吉宗の代替わりに際し、来日する朝鮮通信使。江戸時代、朝鮮との外交交渉・貿易業務の窓口だった対馬藩は、朝鮮御役を拝命する。莫大な出費、形式を重んじる使節、無理解な老中たち。日朝双方の本音と建て前の間にあって、ときに詭弁を弄し、ときに脅し、ときに屈辱に耐えつつ近世の日朝「交隣」をささえた小藩の苦悩と奮闘。
  • 江戸幕末滞在記 若き海軍士官の見た日本
    3.5
    王政復古直前に来日したデンマーク人が、フランス公使ロッシュの近辺で見聞した貴重な体験を綴る。将軍慶喜との謁見の模様やその舞台裏、横浜の大火、テロに対する緊迫した町の様子、また、日本人のきれい好きから悪習や弱点までも指摘。旺盛な好奇心、清新な感性、鋭い観察眼と洞察力。若き海軍士官が幕末日本の姿を鋭く鮮やかに描く。(講談社学術文庫)
  • 再発見 日本の哲学 埴谷雄高 夢みるカント
    -
    「自同律の不快」って、いったい何だ!? 難解であることで有名な小説『死霊』の哲学を、しなやかな文章で、明解に解きほぐす快著が、待望の文庫化。話題を集めた「再発見 日本の哲学」の一冊であり、埴谷雄高の世界があざやかに分かる一冊。(講談社学術文庫)
  • 四國遍禮道指南 全訳注
    -
    1687年刊『四國遍禮道指南』は、四國遍路の起源を示す重要な史料であると同時に、江戸以降ロングセラーとなった実用的なガイドブックです。江戸期に大師信仰を中心に、当時すでに確立されていた西国三十三観音巡礼などの影響下、四国巡礼が確立された。原本の読み下し、現代語訳、注、現代の地図に原本の道順を反映させた地図も掲載。実際に遍路する方々のガイドともなる。時間を超えた巡礼の旅に出るための一冊です。(講談社学術文庫)
  • ケガレ
    3.0
    民間信仰において、ケガレを祓う儀礼は頻繁に多様な形で行われていた。人間の不幸は、ケガレ=不浄に原因があると考えられ、生活の隅々にまでその指標が浸透していたのである。死=黒不浄、出産・月経=赤不浄、罪や病、境界・峠という空間等、様々な民俗事例にあらわれたケガレ観念の諸相を丹念に追い、信仰行為の背後にあるものを明らかにする。(講談社学術文庫)
  • 地名の研究
    4.0
    日本は諸外国とくらべて地名が膨大であると説き、柳田は有名な「大きな地名」よりも、小字などの「小さな地名」に着目する。また、地名を新古の生活の必要によって命名する「利用地名」、自分の土地だと宣言するための「占有地名」、地名を分割して名付ける「分割地名」に分類。それぞれの特徴は何か。地名学の源流となった名著。(解説・中沢新一)(講談社学術文庫)
  • ジャーナリストの生理学
    -
    19世紀のパリで新聞などを舞台に活躍していたジャーナリストと批評家を取り上げ、作家一流の「生理学」の手法で徹底的に批判する。「もしジャーナリズムが存在していないなら、まちがってもこれを発明してはならない」と一刀両断にする結論を見れば、今も昔も新聞は何も変わっていないことは疑いない。新聞の存在意義が問われる今日こそ、ジャーナリストはもちろん、すべての人が手にするべき一冊。(講談社学術文庫)

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