増田四郎の一覧
「増田四郎」の新着作品・人気作品や、最新のユーザーレビューをお届けします!
-
作者をフォローする
- フォローするとこの作者の新刊が配信された際に、お知らせします。
ユーザーレビュー
-
海という自然の国境に囲まれた島国に生き、日本語という絶対的な標準語があり、民族も単一(本当は違うが)である我々日本人には理解できない大陸国家の人たちのもつ国家観念について、示唆に富む話がわかりやすく書かれている。
-----以下要約-----
地中海というギリシア文化の影響をもろに受ける土地で着
...続きを読む実に文明化したローマ人。そのローマ人の打ち立てたローマ帝国の実情は契約関係で結ばれた複数国家の集合体であった。それが東洋の領土国家観に影響を受け次第に皇帝が全てを統治する制度国家へと変貌するが、ローマ帝国の衰微に伴ってゲルマン民族が擡頭しはじめるとローマ帝国は東に移ってビザンツ帝国となり西にはゲルマン民族の一種フランク人によるフランク帝国が誕生する。しかし著者曰く「西ヨーロッパはすでにローマの滅亡以来、今日に至るまで、いまだかつて一つの国に統合されたためしはなかった」(p.134)。フランク帝国は現在の西ヨーロッパに広大な領土をもったが、それは結局のところ初期ローマ帝国内部の契約関係と似たものであり、つまりヨーロッパははなから統一体ではなかった。
言語的にみても錯綜はなはだしく、その言語に即して政治的分離独立することもできれば、またそれを超えて一つになることもできる。つまりヨーロッパとはそれだけ流動的な集合体である。EEC(発刊当時)が目指すのも画一化されたヨーロッパという一つの(日本人的発想による)国家的存在ではなく、各々の個性を打ち出しながらも緩くヨーロッパという枠組みの中でヨーロッパを守っていくことにある。
Posted by ブクログ
-
ヨーロッパ社会史 増田四郎
一橋大学の歴史学4傑と呼ばれる増田四郎氏の市民講座を本にしたもの。最近、広井氏の『コミュニティを問い直す』や木下武男氏の『労働組合とは何か』を読んでいた際に、中世都市の記述で増田氏が頻繁に引用されているのを発見し、改めて増田氏の本を読みたくなった。増田四郎氏は、祖父のゼ
...続きを読むミの先生であり、私のゼミ教官が増田四郎氏が指導した阿部謹也先生の愛弟子であるため、私とは深い縁がある。大学入学時に耽読した『ヨーロッパとは何か』『大学でいかに学ぶか』の2冊には大いに興奮した。特に、『ヨーロッパとは何か』で取り上げられる辺境史観という発想は、その後、言語学や人類学などを学ぶにつれて、非常に役に立った。
そんな増田四郎氏がヨーロッパについて『ヨーロッパとは何か』より平易に書いた本が本書である。歴史学においては、アナール学派などによる市民の生活を仔細に把握する社会史という分野が当時開かれていたが、本書における社会史とは、ヨーロッパ史というものを広く、トータルにとらえ、近代という時代を生み出した前史を辿るというものである。本書の序盤では、これまた一橋歴史学4傑の一人である三浦新七先生が引かれ、ヨーロッパの起源をギリシアの哲学、ユダヤの宗教、ローマの法学の結節点とみなし、その3つの潮流の融合体としてのキリスト教的統一世界という見方を紹介する。そして、そのキリスト教的統一世界の中で、中世史は形成され、黒死病の蔓延や社会の流動化を端緒とし、イギリス、フランス、ドイツなどの現在の国家の形に分かれていく姿を描いている。特に、前段で紹介したコミュニティ論やユニオニズムは、近代への反省を主題としている。そんな中で、近代の萌芽まで遡り、我々が所与のものとして認識している近代の前史を辿ることは、近代の超克および、日本において近代的な制度を運用するにあたり、非常に有用であると感じた。
また、本書を通じて、増田氏の平和への願いを感じた。中世都市のお互いが顔が見える範囲での緩いつながりを紹介する段では、近代国家同士の戦争を未然に防ぐ方法として、このような都市間の平和協定を網の目の如く張り巡らせることができないかと模索している点や、都市内部や都市間での紛争の際に、宗教的な権威が仲裁し、一定期間流血を許さない「神の平和」が実施されることを引き、近代国家間の戦争時にも宗教的な権威による停戦協定を如何にして実現するかという部分にも想いをはせていることには、歴史学や中世史をアクチュアルにとらえているとともに、戦争を経験した世代としての矜持を見て取ることができる。一方、宗教による戦争の仲裁を学ぶと同時に、宗教による戦争についても興味が深くなり、本書を読み終えるころには、山内進元学長の『十字軍の思想』を次回の読書リストに追加した。
Posted by ブクログ
-
はるか以前から創文社版を積ん読のままだったのが、創文社の事業中止に伴い、今般、学術文庫として刊行されたことに感慨を覚えながら、改めて購入することとしたもの。
ピレンヌ・テーゼという言葉は知っていたが、本書を通読して、その内容が一応理解はできた。全体を通して、ローマ帝国及びその内海であった地中海
...続きを読むの圧倒的な歴史的重みと、イスラム勢力の拡大がヨーロッパに与えた歴史的影響の大きさを、そのシャープな叙述で明らかにしているところが非常に印象的であった。
訳者あとがきにもあるとおり、本書は、綿密周到な「研究」を裏に潜めながらも、研究とは一応区別される「叙述」になっているところに、一般読者としては魅了された。ゲルマン民族の移動によってもローマ世界は連続性を維持していたのであり、それが断絶し、「ヨーロッパ」が誕生したのは、イスラム勢力により西地中海における交通が遮断され、経済的、通商的に大変動を来したことに由来することを、おそらくは膨大な社会経済史的な研究蓄積を背景に持って著者は明らかにしていく。
同じくフランク王国といってもメロヴィング朝とカロリング朝では国家政体が全然異なること、イスラム以前は東ローマ帝国が西方世界に対しても大きな影響力を持っていたこと、東方教会とローマ教会の対立、そしてヨーロッパ世界の確立に教皇庁の動向が重要であったことなどが、本書の叙述全体によって、立体的なイメージを持って理解できた。
おそらくは、著者以降の歴史研究の進展により、例えば商業の規模や貿易品の実態を始め各分野で異なる事実や史実評価が出てきているのかもしれないが、本書の面白さに変わるところはないと思う。
欲を言えば、文庫本として一般読者向けに出すのであるから、本書の扱っている時代が、ヨーロッパから中東に至る500年以上の歴史を扱っているので、年表は付けてもらいたかった。また、人名索引は付いているが、あまり馴染みがないので、王朝各王の系図と在位年が分かる表は欲しかった。
Posted by ブクログ
-
1966年に書かれた本ですから文体や取り上げられている時事ネタは古いです。
ですが、本書で提起された問題は色あせていません。第1章の「学ぶということ」や、本書の結びとしておかれた第7章「現代学問のすすめ」は現代の大学生(あるいは大学を目指す高校生)はぜひ読んでもらいたい内容ですし、最近大人が子ども叱
...続きを読むれていないという自戒を込めた筆者の感慨はすんなりと受け入れられるものでしょう。
あらためて学生の頃、教授に誘われて飲みに連れて行ってもらったことのありがたさ、そういう雰囲気がまだ残っていた地方大学で学べたことの幸運を懐かしく思い出しました。
Posted by ブクログ
-
先輩にあたる祖父のゼミの教官であった増田四郎の著作。一橋西洋史学四傑の一人だそうな。(ちなみに残りは三浦新七、上原専禄、阿部謹也)。
この本の問題意識は、WW1後に起きたいわゆるヨーロッパの地盤沈下に際し、時代の過渡期における人々の生活がいかなるものであったかというものである。そこで、増田が注目した
...続きを読むのは古代ローマ帝国末期から中世にかけての人々の生活である。時代の過渡期の先例を吟味することで、現代に対して示唆を与える。まさしく社会科学としての歴史学の代表的著作。
Posted by ブクログ
増田四郎のレビューをもっと見る