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Posted by ブクログ
徳治主義を旗印とする儒教において、聖人とされながらもほとんど現実の政治にたずさわることのできなかった孔子という存在は、その教えに対する大きな矛盾でした。本書は、こうした問題ををかかえ込んだ儒教が、その後の中国思想史においてますますその矛盾を大きくせざるをえなかった経緯をたどっています。
孔子は士官を求めながらも、その願いはなかなか叶えられることはありませんでした。本書ではまず、『論語』などに記された孔子の事績を、彼のかかえている「ルサンチマン」を示すものとして読み解く試みがなされています。
しかし、儒教と「ルサンチマン」の結びつきは、孔子の生涯とともに終わることはありませんでした。徳治主義を掲げる儒教は、聖人であるはずの孔子がなぜ王になれなかったのかという矛盾を解決するための強弁を生み出しつづけ、そのことが儒教の歴史をかたちづくっていきます。著者は、孟子がこの矛盾に直面したことについて論じています。
董仲舒をはじめとする公羊学派も、この矛盾にこたえるために苦慮しなければなりませんでした。著者は、この学派によって編まれた緯書が孔子の権威に拠ったのではなく、むしろ緯書によって孔子を王として権威づけることがなされたと論じています。さらに変法運動の指導者である康有為も、『新学偽経考』や『孔子改制考』において、この矛盾を引きついでいることが指摘されています。
孔子を「ペテン師」とみなすユニークな視点からの儒教思想史として、おもしろく読むことができました。
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