【感想・ネタバレ】儒教 怨念と復讐の宗教のレビュー

あらすじ

わずかな領地も持たず、生涯のほとんどを無位無官で流浪した一介の匹夫・孔子。みじめな人生を送った男の妄執が、復讐の宗教を生んだ。時に体制擁護のイデオロギーとして利用され、時に革命思想として弾圧されながら、その底に流れるルサンチマンの精神は2500年にわたって払拭されることはなかった。今、関心を集める「儒教」とは? 特異な宗教の正体を暴き、「聖人君子の道徳」という従来のイメージを覆す、新視角の儒教論。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

儒教 怨念と復讐の宗教。浅野裕一先生の著書。儒教はもともと世間から評価されずに蔑まされて馬鹿にされ、世間に対して怨念を持ち復讐したいという強い願望を持っていた孔子によるいわば妄想、被害妄想に基づいて出来たものだなんて、恥ずかしながら初耳でした。儒教というと年長者や目上の人を敬う上下関係に厳格な教えという怨念と復讐とはほど遠いイメージがあったから驚きでした。

0
2018年08月16日

Posted by ブクログ

徳治主義を旗印とする儒教において、聖人とされながらもほとんど現実の政治にたずさわることのできなかった孔子という存在は、その教えに対する大きな矛盾でした。本書は、こうした問題ををかかえ込んだ儒教が、その後の中国思想史においてますますその矛盾を大きくせざるをえなかった経緯をたどっています。

孔子は士官を求めながらも、その願いはなかなか叶えられることはありませんでした。本書ではまず、『論語』などに記された孔子の事績を、彼のかかえている「ルサンチマン」を示すものとして読み解く試みがなされています。

しかし、儒教と「ルサンチマン」の結びつきは、孔子の生涯とともに終わることはありませんでした。徳治主義を掲げる儒教は、聖人であるはずの孔子がなぜ王になれなかったのかという矛盾を解決するための強弁を生み出しつづけ、そのことが儒教の歴史をかたちづくっていきます。著者は、孟子がこの矛盾に直面したことについて論じています。

董仲舒をはじめとする公羊学派も、この矛盾にこたえるために苦慮しなければなりませんでした。著者は、この学派によって編まれた緯書が孔子の権威に拠ったのではなく、むしろ緯書によって孔子を王として権威づけることがなされたと論じています。さらに変法運動の指導者である康有為も、『新学偽経考』や『孔子改制考』において、この矛盾を引きついでいることが指摘されています。

孔子を「ペテン師」とみなすユニークな視点からの儒教思想史として、おもしろく読むことができました。

0
2025年02月01日

「学術・語学」ランキング