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異伝最上義光 立志編
1994年に学研の第1回歴史群像大賞を「うつけ信長」で受賞し、その後はノンフィクションで活躍していた著者が、満を持して世に問う歴史小説の再デビュー作品。 尾張の織田信長が頭脳的な作戦を駆使して大軍の今川義元を破り、その名を天下に知らしめた後、甲斐の武田信玄が密かに入京の機会をうかがっていた永禄年間の後期。 表面上は静かに見えた東北地方でも、水面下では覇権争いの動きが加速化しつつあった。羽前山形の最上宗家。開祖が斯波兼頼という由緒ある家柄でありながら、いまは米沢の伊達家に首根っこを押さえられ屈辱を味わっている立場。10代当主義守はお家存続が大事とばかりに伊達家の顔色をうかがっているが、嫡男義光はそんな父の態度に我慢ならず自主独立の炎を内に燃やしていた。義光の攻撃的な気性に不安を覚えた義守は家督を次男の義時に譲り、伊達家との友好関係を保持しようとする。伊達家の当主は輝宗。後に勇名を馳せる梵天丸(政宗)はまだ2歳そこそこの幼子だった。 火花がはじける。父義守と次男義時が、義光抹殺へと動き始めたそのとき、機が熟したとばかりに義光が起つ。城から闇夜にまぎれて脱出した義光のもとに、最上家の権威復活を待ち望んで密かに連帯していた者たちが一気に結集する。義光の幼馴染みで山寺立石寺にて修行中の身だった光源坊(氏家守棟)、義光脱出を手引きした山家兄弟(義治、知治)、最上家と縁の深い五光山宝幢寺の尊海和尚……。そして、義光決起の時を陰で仕組んでいた黒幕は意外にも……。 歴史的評価が「好」「悪」に二分されて、未だ人物像が定まっていない戦国武将最上義光。その最上義光の生涯を独自の歴史観と鑑識眼で活写し、新鮮な人物像を描き出す『異伝最上義光』の第1巻「立志編」。 冒頭から主要人物たちが生き生きと躍動する、歴史小説ファン必読の一書。 〈目次〉 一 冬眠から醒めた熊 二 百丈岩の誓い 三 出直しの小僧丸 四 上方風の町づくり 五 船出の朝 六 熊ときつねの戦い 七 新時代を開く -
里見八犬伝
ときは戦国。安房国(千葉県)を領する里見義実《よしざね》は安西景連《かげつら》に攻められる苦戦のなかで、たわむれに犬の八房《やつふさ》に向かい、「景連の首をとってくれば娘の伏姫《ふせひめ》を与えよう」といった。この冗談が現実となったばかりか、八房はほんとうに伏姫を欲しがる。伏姫は犬を殺そうとする父を制して、八房と一緒に出奔する。二年後、義実は娘の救出にむかい、犬と一緒にあやまって娘をも銃で撃ってしまう。伏姫は死ぬまぎわに妊娠していることを告げるが、けっして八房に身を汚されたことはないと誓い、身の潔白のあかしに切腹する…と、白煙があがり、伏姫の「仁・義・礼・智・信・忠・孝・悌」の八字を彫った数珠が天空にのぼって光を放って飛び散った。その後、各地に八つの玉のそれぞれ一つを持った八人の犬士が生まれる。本巻には「仁の巻」と「義の巻」を収める。早くも四人の珠の所有者があきらかになる。 -
蒙古襲来
13世紀後半、日本はかつてない国難に直面しようとしていた。高麗を支配下に置いた元帝国が、ついに野望の矛先を日本へと向けたのだ。服属を求める元からの度重なる使者に対し、鎌倉幕府の若き指導者・北条時宗は、ついに対決の道を選択する。二度にわたって元の大軍が来攻する「元寇」の始まりである。そうしたなか、戦場となった北九州には、おのが夢をこの戦いに賭けた二人の男があった。肥後の御家人、竹崎季光・季長の兄弟である。ともに長兄から疎まれ、所領のない無足の身に甘んじていた彼らは、やがて数奇な運命から、季光は海を越えて高麗の反乱軍に投じ、季長は元との合戦で手柄を立てる道を突き進む。二人の活躍を軸としつつ、物語は元の皇帝フビライ、執権・北条時宗といった時代の主人公から、日蓮、マルコ・ポーロらまでも巻き込んで、壮大な人間絵巻を展開していく。中国・朝鮮半島・日本をまたにかけた長編歴史ロマン。 -
新・水滸伝
中国は宋朝の時代、勅使として龍虎山に派遣された洪信は、厳しく禁じられた石窟の中を掘ったため、封じられた百八の魔星はどっと地上に踊り出た。やがて、その一星一星が人間と化して、梁山泊をつくり、天下を揺さぶる。――これが中国最大の伝奇小説「水滸伝」の発端である。「新・水滸伝」は、少年時代からこの中国古典に親しんだ著者が、思うままに意訳し、奇書の世界を再現する一大絵巻。 -
黒田如水
『新書太閤記』の一大分脈を成すのが、本書である。秀吉といえども、独力では天下を取れなかった。前半は竹中半兵衛の智力をたより、後半は黒田如水を懐刀とした。如水は時勢を見ぬく確かな眼を持ち、毛利の勢力下にありながら、織田の天下を主張。また、荒木村重の奸計に陥り、伊丹城地下牢での幽囚生活を余儀なくされながら、見事に耐えぬく。――若き日の如水を格調高く描く。 -
宮本武蔵
野に伏す獣の野性をもって孤剣をみがいた武蔵が、剣の精進、魂の求道を通して、鏡のように澄明な境地へ達する道程を描く、畢生の代表作。若い功名心に燃えて関ケ原の合戦にのぞんだ武蔵と又八は、敗軍の兵として落ちのびる途中、お甲・朱実母子の世話になる。それから一年、又八の母お杉と許婚のお通が、二人の安否を気づかっている作州宮本村へ、武蔵は一人で帰ってきた。 -
大奥様陽だまり事件帖
四百五十石の旗本・羽鳥弥左衛門利宣(はとりやざえもんとしのぶ)の母、嬉代(きよ)は六十三になる寡婦で、屋敷の離れに住んでいる。 良家の子女に書を教えたり、句会を催したりして過ごしているが、頭の回転が早く、人の機微にも通じ、洞察にも優れているので、様々な人がなにかと相談事を持ち込んで来る。 当主の弥左衛門は、人は好いが優柔不断で、日頃から嬉代に頭が上がらない。妻女の民江(たみえ)は、嬉代の大胆な行動に戸惑いがちだ。嫡男(孫)の俊之輔(しゅんのすけ)は、おとなしく、学問所に通っている。孫娘の那美(なみ)は、旗本の姫としては、活発で、早とちりもあるが聡明。嬉代と波長が合い、時に持ち込まれる相談事の解決の手伝いをしている。 嬉代主催の俳諧の集いに来ていた町名主、三左衛門(さんざえもん)が、大工の棟梁の耕吉(こうきち)が愛用の道具箱を盗まれ、困惑しているという話をする。耕吉は若くして棟梁になって、評判も良く、道具を大事に使っていた。道具箱がなくなっては、仕事にならない。 腕が良くて仕事が早い耕吉は、手間賃も比較的安いので、他の棟梁連中から妬み嫉みを受けることもあった。そういう連中の誰かの嫌がらせだと考えているらしい。だが盗まれたという証拠もない。役人は取り合ってくれない。興味を覚えた嬉代が乗り出したところ、意外な事実が明らかになった。子供たちの親を思う心と、職人気質の大工同士が引き起こした小さな事件が四方丸く収まって、めでたしめでたし。そして、また、新たな相談が嬉代のもとに……。江戸の町で起こる、小さな事件が老女の機転と洞察力で、丸くおさまり、今日も江戸は平和に暮れてゆく。 -
本能寺異聞 信長と本因坊
戦国武将は歴史を動かす碁石に過ぎぬのか? 囲碁名人・本因坊算砂の息が止まりかけた。 「信長公の首級は何処にある」 大御所・徳川家康のたった一言で、「炎の記憶」を呼び覚まされた算砂は沈黙せざるを得なくなった。 大坂の陣が勃発する七年ほど前、慶長十二年師走、駿府城で対局中の出来事だった。 日海と名乗っていた若かりし頃の算砂は、戦国の時流に弄ばれ、本能寺の変の渦中に放り込まれていたのだ。 行方知れずの織田信長の亡骸、底知れぬ明智光秀の本意、茶会や連歌の会、安土築城などの不気味な闇。 武将の松永久秀・荒木村重・佐久間信盛・斎藤利三ら、五摂家筆頭・近衛前久、連歌師・里村紹巴、堺商人・小西隆佐、雑賀衆・鈴木孫一と善住房、薬師・曲直瀬道三、神主・吉田兼和、宣教師・オルガンティーノたちは、天下布武という棋譜の碁石に過ぎないのか? 若き法華僧の名棋士が、戦国人の傍らで見た歴史を描く、刮目の長編歴史小説。 本能寺の変の真相を読み解く! ※この作品は単行本版『絶局 本能寺異聞』として配信されていた作品を改題した文庫本版です。 -
宮本武蔵
山中で棒を振り回していた少年は、十三歳にして試合相手の頭蓋をかち割った! 自身も剣の達人である著者が描く凄絶なる歴史長編 宮本武蔵は幼少より武術に頭角をあらわし、生まれ持っての膂力と父の激しい指南にこたえ、13歳にして真剣の立会に打ち勝った。 血なまぐさい試合にあけくれた青春時代、京都郊外、一乗寺下り松での吉岡一門との死闘、関門・船島での佐々木小次郎との血闘など、いくたの修羅場でつねに勝利をおさめた孤高の剣聖の凄絶なる生涯を描破する。 吉川英治版『宮本武蔵』とそれを原作とした人気コミックの影響もあり、内省的な宮本武蔵像が一般化した現代。 だからこそ津本陽描く、本能で動き、野獣味のある武蔵像は読者にいまも新鮮な驚きを与える。 解説・桶谷秀昭 -
はぐれ医 慶安
承応年間の江戸木挽町に、大和慶安という若い医者がいた。 水野家筆頭侍医を父に持ち、跡継ぎとして期待を寄せられていたものの、血が苦手という医者としては致命的な弱みがあり、家を飛びだして鬱屈とした人生を送っていた。 だがこの慶安、血を見なければ優秀な医師、木刀を手にすれば天下無双、しかも人の背後に「桜色の後光」が見えるという、なんとも変わった人物であった。 ひょんなことから、他人の恋心が見えるこの不思議な能力を活用し、慶安は商家の若旦那失踪事件を見事解決に導く。 世話焼きの妹や女医師、岡っ引の協力を借りて、慶安は男女の事件を紐解いていくのだが…!? 日本初の結婚相談所を作った、実在の医師を描く新シリーズ! -
平家物語
古典文学の名作を林真理子が官能的に小説化! わずか30年で、壇ノ浦の海に消え去った平家の栄華と滅亡の物語。滅びるもの皆美しく……。日本人の心の中にある、“滅びの美”への思いを、古典文学の名作「平家物語」を通してみずみずしく小説化した、林真理子の意欲作。長大な軍記物である原作を換骨奪胎し、現代人の感性を刺激するエピソードだけを抽出して、スピード感あふれる展開に改変。まさに“令和の平家物語”というにふさわしい作品。 平清盛、源義経、後白河法皇、建礼門院徳子など、9人の主要登場人物の目を通して紡ぎ出される、一章完結形式の新感覚歴史大作。古典の「平家物語」では語られることのなかった登場人物たちの心のうちを、見事に描き切っています。 特に女性登場人物の内面描写は、現代小説のように引き込まれるはず。また美しい平安末期の情景描写は実に官能的です。古典の「平家物語」では“大原御幸”として描かれた結末部分の、さらに“その先”を描いた林真理子版『平家物語』の最後は、衝撃的で必読です! 既刊『六条御息所 源氏がたり』『STORY OF UJI』とともに、“林真理子源平三部作”の完結版。 ※この作品は過去に単行本として配信されていた『平家物語』 の文庫版となります。 -
極道同心
御城の本丸が赤々と燃えた夜に、見廻り中の定町廻り同心が殺された。しかも死体には不可解な傷、そばに謎の言葉が残されていた。 上野広小路にある極道一家が生家である定町廻り同心鬼沢準之助は、友の仇を打つ決意をし、犯人捜しに東奔西走するのだが、御城の火災という大事件の前に、人々の記憶は飛んでいて探索は難航する。 折しも、鬼火と名乗る金蔵破りが跋扈し、江戸中の商家を恐怖のどん底に落とし込む。準之助らも探索の時を奪われた。 準之助は、生家の極道一家を使い江戸の隅々の賭場を探索。さらに持ち前の侠気と悪知恵を駆使して、憎き敵を追い詰める。 痛快にして、はちゃめちゃ。暴れ出したら止まらない町同心の見栄と心意気の熱血捕物帖、ご開帳。 -
隠居と若 深川奮闘日和
安房館山藩一万石の次男坊・稲葉正高は、学問と剣術に励む生真面目な部屋住み。ある日、藩政を再建した祖父・正武の隠居に伴い、共に本所の中屋敷へと移ることになった。 偉大な祖父から「諸々の修業をして婿にいけ」と告げられ意気込むも、隠居後の正武は一転して遊び好きの好々爺に。小料理屋通いに岡場所遊びと振り回され、正高は戸惑うばかりだった。 そんな折、藩御用達の魚油問屋「房州屋」から、不審者に探られているとの相談が舞い込む。 正武に命じられ夜回り役を務めることになった正高は、奉公人の怪死、おかみが秘めた仇討ちの因縁、そして盗賊一味の影へと辿り着くーー。 堅物な若様が、老練な隠居と江戸の闇に立ち向かう捕物帳シリーズ。待望の復刊!! -
戦国 茶室のミサ
戦国の日本で勢力拡大を図るイエズス会の真の狙いのひとつは、世界有数の産出量を誇る石見銀山。司祭オリヴェイラは、通詞の日本人ジュリアンと平戸から堺を目指す。石見銀山への伝手を持つ鉄砲商、田丸屋に近づく狙いだ。2人は日本で空前の熱狂を生んでいた茶の湯を布教に利用することを構想。茶室はいつしか、宗教と政治、欲望と裏切りが交錯する密談の場へ変わっていく。田丸屋のほうは沈没船に眠る銀獲得のため、欧州の潜水技術に期待していた。石見に至った彼らの背後にも戦火は迫り・・・・・・。予想を超えた大胆な展開と結末。気鋭が放つ歴史ロマン! -
勘定の鬼
================== 『若親分、起つ』シリーズで話題の著者、 渾身の時代シリーズ! ================== 鬼たるべし 天下の財を正しく回すために 江戸の天才官僚、荻原重秀を活写する 白熱の時代シリーズ、堂々開幕! ~・~・~・~・~・~・~・~・~ 「これからの勘定方を、 そなたが作っていくのじゃ」 十九歳で勘定役に抜擢された 荻原彦次郎(後の重秀)。 苦手な算盤は算術の才を持つ 用人の半助に任せっきり。 自身はめっぽう切れる頭を武器に 日々改革に励んでいた。 そんな彼に検地の指揮という 難題が降りかかる。 太閤が行って以来八十年ぶり。 年貢にかかわるだけに、 各所代官の抵抗は必至だが――。 彦次郎がとった前代未聞の秘策とは!? -
斬! 江戸の用心棒
「丑三つ時になると幽霊が出るんです」。新たに江戸に店を出そうとしている商家の手代から不思議な話を聞いた月島真十郎。幽霊の噂が広まっては、商いに支障をきたすので、本当に出るかどうか、真十郎の目でも確かめてほしいというのだ。一両を差し出されて依頼を受けた彼は、夜中に壁の鳴る音で目を覚ました。神経を研ぎ澄ませて気配を探り、思い切って障子を開けると、そこには長い髪を垂らした女の幽霊が立っていて……。(「ゆうれい屋敷」)。 武士を捨て、市井で用心棒稼業をこなす真十郎の活躍を描く、人気シリーズ第六弾。 【著者プロフィール】 1967年広島県生まれ。『ネオ・ワールドウォー』(経済界)を2003年に発表し、以降、架空戦記を中心とした執筆活動に入る。2010年より活躍の舞台を時代小説に移行し、人気を博している。主なシリーズに、「新・浪人若さま新見左近」「あきんど百譚」、「斬!江戸の用心棒」、「公家武者 信平」、「この世の花」などがある。2025年、第14回日本歴史時代作家協会賞「シリーズ賞」受賞。 -
公儀始末人 楠木兵馬
貧乏長屋に住む浪人の楠木兵馬。茶屋で貸本を読むのが唯一の楽しみという、まこと地味で平凡な暮らしを送っているが、じつのところ、この男には裏の顔がある。 かつて兵馬は、幕府の命令により数々の裏仕事をおこなった闇の始末人なのであった。だが最愛の妻と娘を亡くしたのをきっかけに引退、いまは市井で平穏に生きているのである。 そんななか兵馬は、若い遊女のおりんと出会い、いつしかふたりは親しい友人となっていく。だがある日、おりんがやくざ者に暴行されたことで、兵馬のなかで眠っていたかつての凶暴な力がついに目覚め、果てなき復讐がはじまっていくのだが……。 気鋭の作家が描く、とにかくおもしろい時代活劇・新シリーズ! -
流人侍・不破六郎太
不破六郎太が八年ぶりに八丈島から江戸へ帰ってきた! 流人としての過酷な島暮らしで肌は黒く灼けながら、鍛錬で筋骨隆々に。愛刀・斬馬刀〈梵天丸〉を手に、爛々と輝く目には強い意志が宿っていた。 「生類憐れみの令」は年々酷くなっていた。その濡れ衣を着せられ、御家断絶、父は切腹、六郎太は遠島、家族は離散した。誰が不破家を貶めたのか探り、必ず仇を討つと誓った。 だが帰還したのも束の間、荒れ果てた元不破家の屋敷前で、怪しい浪人らが斬りかかってきた! 二階堂流の遣い手である六郎太の斬馬刀が鞘走り、次々と薙ぎ斬っていく! 奇襲の裏に八年前との関わりが垣間見え、真実を暴くため六郎太が動き出す。 怒涛の剣戟に心を鷲掴みにされる剣客小説開幕! -
小鍋屋よろづ公事控
夫婦で営む小さな小鍋屋「よろづ」は今日も賑わう。旬の食材で作られる小鍋は滋味満点。つまみにして飲むもよし、おかずにして飯をかっ込むもよし。ご近所の常連はもとより足をのばしてわざわざ訪れる者もいて、評判はうなぎのぼり。客の絶えない繁盛店になった。ある日、紙問屋の主が女将のお咲に相談をする。孫娘が飼っていた猫が行方知れずに。ほうぼう探した結果、近所の老婆に飼われていることが分かった。お金を積んででも返してもらおうとするが、老婆は頑として譲らない。果たしてどうすればいいのか、と紙問屋の主は頭を抱える。実はお咲、両親は公事宿(行政書士、司法書士のようなもの)を営んでいた。子供のころから相談事に触れてきたので、少しは知識がある。私が仲裁に入れば、事件は解決できるかも? お咲は、主と一緒に老婆のもとにおもむいた。さて、お咲が提案した仲裁案は? 美味しい小鍋と公事知識でお客の悩みをほっこり癒す! -
十三夜の焔
天明四年五月の十三夜。御先手弓組番方・幣原喬十郎は男女の惨殺体を発見する。傍らには匕首を手に涙を流す若い男が一人。喬十郎は咄嗟に問い質すが、隙をつかれて取り逃がす。その男は闇社会で名を轟かせる大盗一味の千吉だと判明。殺害された男の周辺を洗う中、再び遭遇するも、千吉は殺害を否定し、再び姿を眩ませる。十年後、喬十郎は、銭相場トラブルで一家を殺害された塩問屋の事件を追う過程で、両替商となった千吉(利兵衛)に出合う。火付盗賊改長官・長谷川平蔵に助言を仰ぐも、突然の裏切りに遭い、左遷されてしまう。悪事に立ち向かう喬十郎と、江戸の闇社会に生きる千吉。宿命的な敵対関係を描き出す、血湧き肉躍る時代小説。 -
殿さま狸
いま読むべき歴史小説作家、規格外の面白さ! 天下一の奇策! 豊臣軍を、徳川軍を化かせ―― 阿波の狸と称された蜂須賀家政が御家存続のため関ヶ原に挑む! 豊臣秀吉の親衛隊・黄母衣衆の蜂須賀家政は、齢二十八にして阿波国十七万五千石を任された。 なぜ父ではなく己に。父・小六は秀吉の腹心であり、木曾川の川並衆頭領でもある名将だった。武家にはない川並衆の自由な発想で国を育てる家政。ところが関ヶ原の合戦で御家存続の窮地に── “阿波の狸”と称された若き大名が、東西両軍を化かす天下一の奇策を放つ痛快歴史小説! 【文庫判特別書下ろし「雀は百まで」収録】 -
鬼しぶ
「あいそねえ」「金がねえ」「出世しそうにねえ」北町奉行所の平同心・渋井鬼三次は、景気悪そうな面構えのせいか、そう陰口を叩かれていた。さらに「女にもてねえ」、「女房子供にも見限られた」とも。 そんな渋井に期待する人物がいた。お奉行の永田備後守である。渋井の「少々癖のある性根が、探索にはうってつけである」らしい。 札差の若旦那が拐かされて、身代金三千両を奪われた事件が発生、その真相究明を命じられる。渋井は岡っ引きの助弥と、物真似芸の大道芸人で見目麗しき人気者・菊市と共に、粘りある探索で影さえ見えぬ犯人たちに、僅かな手掛かりで迫っていく。 「風の市兵衛」の濃厚脇役・渋井鬼三次が主役になって大活躍! -
おんなの女房
ときは文政、ところは江戸。武家の娘・志乃は、歌舞伎を知らないままに役者のもとへ嫁ぐ。夫となった喜多村燕弥は、江戸三座のひとつ、森田座で評判の女形。家でも女としてふるまう、女よりも美しい燕弥を前に、志乃は尻を落ち着ける場所がわからない。 私はなぜこの人に求められたのか――。 芝居にすべてを注ぐ燕弥の隣で、志乃はわが身の、そして燕弥との生き方に思いをめぐらす。 女房とは、女とは、己とはいったい何なのか。 いびつな夫婦の、唯一無二の恋物語が幕を開ける。 第10回野村胡堂文学賞、第44回吉川英治文学新人賞、二冠の作品がついに文庫化! カバーイラスト/おかざき真里 -
仕舞屋侍〈新装版〉
かつて御小人目付として剣と隠密探査の達人だった九十九九十郎(つくもくじゅうろう)。 だが後輩がお役目で命を落としたことを機に職を辞し、いまは町屋でもめ事の内済屋を営んでいる。 齢を経たからできる練れた交渉。見えてくる人の心の綾。 だが、その九十郎も驚くことがある。 ある日家に帰るとひとりの童女が「お帰りなさいませ」と膝をついた。 父母を亡くし、賄いとして雇って欲しいという。 童女は、断っても出て行かず、会津で料理人をしていた父に仕込まれた料理で九十郎を唸らせる。 そんなある日、九十郎は、不忍池の畔で追剥ぎに襲われて、斬り殺された山同心の妻・お照から依頼を受ける。 お照は、夫がたびたび夢に現れては無念だと訴えるのだと述べ、三十両を添えて、涙ながらに事件の真相解明を懇請するが… -
にゃん! 鈴江三万石江戸屋敷見聞帳
町娘のお糸が仕えることになったのは、鈴江三万石の奥方様。 その正体は……なんと猫? 人情、猫情てんこ盛りの抱腹絶倒、時代小説! 幼い頃から妖かしが見えてしまうお糸は、鈴江三万石の江戸屋敷に奉公に出ることになった。正室の珠子に仕えるものの、お糸の目に映る珠子は……なんと猫? 聞けば、城主長義に一目惚れし、人間に変化して嫁いできたという。しかし鈴江には権謀術数が飛び交い、長義にも命の危機が! 愛する人を守ろうとする珠子の姿に心打たれ、お糸もともに立ち上がるが……。 【『にゃん! 鈴江藩江戸屋敷見聞帳』改題作品】 -
軒猿の娘
大人気シリーズ「剣神」の岩室忍が描く、痛切なる忍びの世界! 「鶴、信長を殺せ」若き女忍び逆鶴に託されたのは、軍神上杉謙信の密命。密命を果たさねば死、それが加藤段蔵率いる忍び衆「軒猿」の掟であった。謙信の密書を携え京へ向かった逆鶴は、足利義昭、近衛前久らとの邂逅を経て、ついに織田信長への接触を果たすが……。本能寺の変前夜、明智光秀の蜂起を歴史の裏舞台から描く! 文庫書き下ろし 目次 対馬谷の鶴/仏の胸/将軍義昭/設楽ヶ原/お化け公家/蛇石/軍神の死/乱丸/逆鶴の愛/小猿の死/黒坊主/大天主/五郎山/珠光小茄子/三職推任/白雲寺/本能寺/嵯峨野 文庫書き下ろし -
長兵衛天眼帳
日本橋の村田屋は創業百二十周年の老舗眼鏡屋。そのあるじの長兵衛は、すぐれた知恵と家宝の天眼鏡で謎を見通すと評判だった。 ある日、目明かしの新蔵が長兵衛に助けを求めてくる。住吉町の裏店で起こった人殺しの本当の下手人を挙げるのに長兵衛の力を借りたいという。 浜町の目明かし・巳之吉が、殺人が起こった長屋の者たちの手を検分して、手が汚れていたというだけでそこに住まう十七の娘おさちに縄を掛けたという。 ろくな調べもせずに罪なき娘を引き立てたことに怒りを覚えた長兵衛は、広い人脈と持ち前の人柄を発揮して事件を解決に導く。 長兵衛の評判がますます高まる中、今度は木場の檜問屋・福島屋矢三郎の遺言状の真贋鑑定を依頼される。 息子の豊太郎に遺されたものの他に、矢三郎の弟・新次郎の許にも遺言状があるのだという。 長兵衛は天眼鏡で真贋を明かすが、福島屋を自分のものにしたい新次郎の企みによって、事態は思わぬ方向へ動き……!? -
商い同心 千客万来事件帖 新装版
まがい物? 偽金? 値段が高すぎる! その値段には裏がある―!? 人情と算盤で謎を弾く! 名手の傑作時代小説 正しい値で売らないと悪行になっちまう―― 「私には物たちの声が聞こえてくるのですよ。辛く悲しい声です」物の値段を見張り、 店に指導する役回りの諸色調掛(しょしきしらべがかり)同心を務める澤本神人。 今日も子分の庄太と江戸の町を見まわるが、値段の裏にあるさまざまな人情や思惑がからみあい、 神人を悩ませる謎と悪事が次々と待ちうけていた。同役だった父の代から未解決の贋金騒動の真相にも迫るが――。 (本書は2016年刊行『商い同心 千客万来事件帖』の新装版です) 〈目次〉 「雪花菜」 「犬走り」 「宝の山」 「鶴と亀」 「幾世餅」 「富士見餅」 「煙に巻く」 解説/細谷正充 -
無根の樹
京都西町奉行所同心、榊玄一郎の元に、手下の小吉が現れた。堀川に相対死(心中)の水死体が上がったのだという。骸が発見された橋のたもとに向かった玄一郎だが、現場には西町奉行の侍医、久我島冬吾の姿があった。この医者は頼みもしないのに勝手に検分をして、同心たちとは全く違う見解を述べるので、評判はかなり悪い。しかも『相対死は三日間、四条河原に晒される』という法度があるにもかかわらず、久我島は玄一郎に、人助けと思って、心中である事実をもみ消せと言い出した。一体何が目的なのか!? しかしこの心中事件が市中を震撼させる事態へと発展していく──。 -
貸し物屋お庸謎解き帖 百鬼夜行の宵
江戸の暮らしを支える貸し物屋の情に厚くて美形の娘店主が大活躍! 痛快ホロリの謎捌きが癖になる大人気書き下ろし時代小説! 「ちょいと手を貸してやったら人がもっと幸せになるんなら、進んでやるのがいいと思わねぇか?」 江戸のレンタルショップ湊屋両国出店の主・お庸は口の悪さで知られる美形の江戸娘。 真っ直ぐな気性で男勝りな娘店主のもとには、今日も胡乱なお客が訪れる── 厄介事も無理難題も持ち前の好奇心と人情で解決する「貸し物屋お庸」の魅力全開! 「凧の骨を貸してくれ」とやって来た童が心に秘めた願いとは? 仲介を頼まれた「縁起がいい」はずの仕舞屋に居たのは? お客が求める貸し物の陰に隠れた悩みや事情を見抜いて収めるお庸の謎捌きが痛快な、 大人気書下ろし時代小説、待望の第二弾! -
破天の剣
群雄割拠の戦国時代、九州は薩摩の戦国大名・島津貴久の四男として生まれた家久は、若年の頃より「軍法戦術に妙を得たり」と評されるほどの戦巧者であった。だが兄弟の中で家久だけが母親の違う出自の為に深い懊悩を抱えていた。家久はその思いを払拭するかのように大友宗麟、龍造寺隆信といった九州の名だたる大名と奮闘を繰り広げ、島津の九州統一の夢に奔命する。しかし、天下人・豊臣秀吉とその弟・秀長が率いる大軍が島津家の前に立ちはだかる――。島津家の知将・島津家久の波乱に満ちた生涯を描く、第十九回中山義秀文学賞受賞作、待望の文庫化!!