時代小説文庫作品一覧

  • 三国志 一の巻 天狼の星(新装版)
    続巻入荷
    4.0
    四百年続いた漢帝国は衰退し、崩壊への道を辿っていた。政は乱れ、賊が蔓延る後漢末期の乱世に、ひとりの英傑が立ち上がる。漢の名前は劉備玄徳。義に厚く、漢帝国の復権を目指す劉備の志に賛同し、義兄弟の契りを交わした関羽と張飛とともに、叛乱を起こす黄巾賊との闘いに挑む。新時代を切り開く曹操、呉の礎を築いた孫堅など、群雄割拠の時代を駆け抜けた漢たちを壮大なスケジュールで描く――。 北方謙三の名著「三国志」が装いも新たに「新装版」として登場!! 文字も大きくなって読みやすくなり、往年の三国志ファンも三国志初心者も大満足の一冊。「新装版」第一巻には著者のあとがきを収録。
  • 血脈 新・剣客太平記(一)
    完結
    3.5
    直心影流の継承者を決める大仕合から四年。三田に剣術道場を構える峡竜蔵は幼馴染である綾を妻に迎え、その翌年には長男・鹿之助を授かっていた。順調に門弟も増え、賑わいを見せる峡道場。そんなある日、綾は、竜蔵が幼い頃から生活の面倒をみてきた内弟子・雷太の様子にどこか翳りがあることに気づく。いつもは明るく道場の人気者、雷太の変化の理由とは……。夫となり父となっても己が剣の道を生きる峡竜蔵が、今度は信愛する弟子たちを厳しく温かく育てていく――。大好評「剣客太平記」シリーズ、新たなる始動。
  • すみれ飴 花暦 居酒屋ぜんや
    続巻入荷
    3.7
    「それは、そのうちね」そう、お妙がにっこり笑う。お花が 「料理を教えて」というと、お妙はきまってそう有耶無耶に してしまうのだ。養い子のお花は、引き取ってくれた只次郎 とお妙の役に立ちたいだけなのに――。一方、かつてお妙と 只次郎の世話になった薬問屋「俵屋」の小僧・熊吉は十八歳 になり、手代へと昇進していた。出世頭には違いないが、小 僧とは距離ができ、年嵩には疎まれ、心労が半端ない……。 蕗の薹の芥子和え、タラの芽の天麩羅、ホクホク枸杞飯、そ してふわふわの鰻づくし! 彩り豊かな料理と共に、若い二 人の成長を瑞々しく描く傑作人情時代小説、新装開店です!
  • 落としの左平次
    NEW
    4.0
    佐々木清四郎は、齢十八歳。定町廻り同心となり三年がたつが、まだ見習い同然の扱いだ。そんなある日上役に呼ばれ、左平次預かりの命を受ける。左平次は、優秀な廻り方で「落としの左平次」と呼ばれていたが、理由あって引退、今は町人の身分だという。どうやら亡くなった清四郎の父親の元同僚らしい。早速、娘の亡骸が運びこまれた番屋で清四郎は左平次に怒鳴られるが──厳しくも温かく鍛えられながら、清四郎は一人前の同心を目指して奔る! 鰻丼、錦糸丼など美味しいご飯も沢山登場するノンストップエンターテインメント時代シリーズ、堂々たる幕開け。
  • 剣客太平記
    3.8
    剛剣で無敵を誇りながらも、破天荒であった亡き父の剣才を受け継ぐ峡竜蔵は、三田で直心影流の道場を構えていた。だが、門弟はひとりもおらず、喧嘩の仲裁で糊口を凌ぐ日々。そんななか入門を希望する者が現れた。竹中庄太夫と名乗る中年男は、頼りない風貌ながらも、竜蔵が驚くほどの熱意で入門を迫り、翌日には入門希望の男女を連れてくるのだった。殺された兄の敵を討ちたいという男の切なる願いに、竜蔵は剣術指南を引き受けるが――(「第一話 夫婦敵討ち」より)。竜蔵の真っ直ぐな心が周囲に優しい風を起こす。書き下ろし時代長篇。
  • 雛の鮨 料理人季蔵捕物控
    3.4
    1~47巻607~858円 (税込)
    日本橋にある料理屋「塩梅屋」の使用人・季蔵が、手に持つ刀を包丁に替えてから五年が過ぎた。料理人としての腕も上がってきたそんなある日、主人の長次郎が大川端に浮かんだ。奉行所は自殺ですまそうとするが、それに納得しない季蔵と長次郎の娘・おき玖は、下手人を上げる決意をするが……(「雛の鮨」)。主人の秘密が明らかにされる表題作他、江戸の四季を舞台に季蔵がさまざまな事件に立ち向かう全四篇。粋でいなせな捕物帖シリーズ、遂に登場!
  • 衝天の剣 島津義弘伝(上)
    完結
    4.4
    規格外の戦略と勇猛果敢な薩摩魂で戦国最強と謳われた島津四兄弟。その中でも次男・義弘は、ひときわ光彩を放つ武力をもっていた。しかし九州制覇を目前に控えた四兄弟の前に立ちはだかった天下人・豊臣秀吉の大軍に抗しきれず、島津家は豊臣の軍門に降った。その後、明国征服を目論んだ秀吉の命により朝鮮、明国侵攻が目前に迫る。生きて薩摩の地へ帰れるかさえわからない。しかしそれでも行かねばならない、島津家存続のために。そして朝鮮へと出兵した義弘は、明軍との壮絶な死闘を繰り広げることになる──。(全二巻)
  • 人撃ち稼業
    3.4
    時は天保十二年。丹沢で熊獲り名人と呼ばれている玄蔵は、恋女房の希和とふたりの子どもと共に幸せに暮らしていた。そんなある日、御公儀徒目付の多羅尾と名乗る武士が突然玄蔵の元にやって来て、「お前、江戸に出て武家奉公をしてみないか」という。どうやら己の鉄砲の腕が欲しいらしい。とんでもないと断ろうとした玄蔵だが、「お前の女房は耶蘇なのか」と脅され、泣く泣く多羅尾と共に江戸へ……。孤立無援の玄蔵を待ち受けている苛酷な運命とは!? 人気作家による、手に汗握る熱望の書き下ろし時代小説、新シリーズ。
  • 日雇い浪人生活録(一) 金の価値
    3.8
    九代将軍家重の治世。親の代からの浪人・諫山左馬介は、馴染みの棟梁の紹介で割のいい仕事にありついた。雇い主は、江戸屈指の両替屋・分銅屋仁左衛門。夜逃げした貸し方の店の片付けという楽な仕事を真面目にこなす左馬介を仁左衛門は高く評価するが、空店から不審な帳面を見つけて以降ふたりの周りは騒がしくなる。一方、若き田沼意次は亡き大御所・吉宗からの遺言に頭を悩ませていた。「幕政の中心を米から金にすべて移行せよ」。しかし、既存の制度を壊して造りなおす大改革は、武家からも札差からも猛反発必至。江戸の「金」に正面から挑む新シリーズ、堂々の第一弾!(解説/細谷正充)
  • 赤ひげ診療譚
    4.3
    長崎で最新の医学を学び、江戸に戻った保本登は、突然小石川養生所に呼び出され、見習い勤務を命ぜられた。エリートとしての矜持を抱く登は、「赤鬚」と呼ばれる医長・新出去定の強引さに不満を抱き、激しい反発を覚える。だが、養生所を訪れる貧しい患者たちや、徒労とみえることに日々を費やす「赤鬚」とふれ合ううち――。病や死を通して“生”の重みを描き出した、山本周五郎渾身の傑作。(エッセイ/細谷正充、編・解説/竹添敦子)
  • 悪党(上)
    -
    河内の〝悪党〟楠木正成。幕府に従わないために〝悪〟と決めつけられた男が本拠・赤坂荘で行う政は、銭を中心とする、誰もが等しい、武士の支配とは異なるものだった。その政を己の力が及ぶ範囲で守ろうとしていた正成の目標は、ある日、一人の男と出会うことで様変わりした。護良親王――今上帝の第三皇子である。彼と志を共にし、日本全土から武士の支配を取り除くため、弟・正季や幼馴染みの山の王、猿楽師らと共に強大なる敵に挑む! 熱き大河歴史小説、誕生。全二冊。
  • 浅草料理捕物帖(一)
    完結
    3.0
    浅草で評判の一膳飯屋・樽屋の板前、孝助のもとに、悪評高い岡っ引きの文蔵がやって来た。店に毎晩来る浪人・越野十郎太が、連続辻強盗ではないかと目星をつけたからだ。文蔵の手下になりたい孝助は、十郎太を見張るが、十郎太はすぐに意図を見抜き、疑いを否定する。やがて二人は、それぞれが十年前の事件の裏を暴くため、浅草に戻ってきたことが明らかに……。一方、太物問屋・片倉屋に、手代として働いていた息子を見捨てられた千代治は、復讐のため主人・徳兵衛らを付け狙う。だが、その矢先、番頭が辻強盗に殺される。果たして犯人は――? 美味しい浅草の食と事件を描く捕物帖、待望の幕開け!
  • 雨あがる
    4.7
    貧しいながらも心優しい人々のお互いを信じ合う姿が深い感動をよぶ表題作「雨あがる」、その続編「雪の上の霜」、侍という生き方よりも人間らしい生き方を選ぶ主人公を描き、著者の曲軒ぶりがいかんなく発揮されている「よじょう」など、武家ものを中心とした名作全五篇を収載。生きにくい時代だからこそ浮かび上がってくる、“人間の人間らしさ”を描き続けた昭和の文豪・山本周五郎の魅力が光る、オリジナル名作短篇集。(編/解説・竹添敦子)
  • 家康の猛き者たち 三方ヶ原合戦録
    4.0
    今こそ家康の求心力を高め、鉄の家臣団を作り上げる。それこそが徳川家を強くすることに?がる。その要となる人物は「本多平八郎忠勝」しかいないと徳川家康は考えていた。甲斐の武田信玄が勢力を伸ばす中、遠江国二俣城をめぐり、争いは続いていた。先行した忠勝と武田軍が一言坂で激突した後、両軍は三方ヶ原で再び相見えることとなる。徳川勢八千に織田勢三千が加わった、総勢一万一千の部隊が、武田勢三万に挑む。常に激闘の中に身を置きつつも、生涯傷一つ負わなかったという徳川軍団随一の武者、本多平八郎忠勝を描くエンタテインメント歴史時代小説。
  • いかだ満月
    3.5
    月うさぎが跳ねたら、明日の吉兆――江戸の義賊として名を馳せた鼠小僧次郎吉が、獄門になった。相棒であった材木問屋「新宮屋」の主・祥吉は、残された次郎吉の妻と息子・大次郎を命にかけても守ることを誓う。ある大商いをものにした祥吉は、熊野杉の買い付けのために、大次郎、木場の川並の健次とともに七日船に乗り、紀州・神宮へと向かうが・・・・・・。苦難に負けず、明日を信じて生きる人びとの、義理と人情と誇りを描く、傑作時代長篇。
  • ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや
    完結
    3.6
    家禄を継げない武家の次男坊・林只次郎は、鶯が美声を放つよう飼育するのが得意で、それを生業とし家計を大きく支えている。ある日、上客の鶯がいなくなり途方に暮れていたときに暖簾をくぐった居酒屋で、美人女将・お妙の笑顔と素朴な絶品料理に一目惚れ。青菜のおひたし、里芋の煮ころばし、鯖の一夜干し……只次郎はお妙と料理に癒されながらも、一方で鶯を失くした罪責の念に悶々とするばかり。もはや、明日をも知れぬ身と嘆く只次郎が瀕した大厄災の意外な真相とは。美味しい料理と癒しに満ちた連作時代小説、新シリーズ開幕。
  • 一膳めし屋丸九
    完結
    3.5
    日本橋北詰の魚河岸のほど近く、「丸九」という小さな一膳めし屋がある。うまいものを知る客たちにも愛される繁盛店だ。たまのごちそうより日々のめしが体をつくるという、この店を開いた父の教えを守りながら店を切り盛りするのは、今年二十九となったおかみのお高。たとえばある日の膳は、千住ねぎと薄揚げの熱々のみそ汁、いわしの生姜煮、たくわん漬け、そして温かいひと口汁粉。さあ、今日の献立は?しあわせは、うまい汁とめし、そしてほんの少しの甘いもの。おいしくて、にぎやかで、温かい人情派時代小説。
  • 望月のうさぎ 江戸菓子舗照月堂
    完結
    3.8
    生まれ育った京を離れ、江戸駒込で尼僧・了然尼と暮らす瀬尾なつめは、菓子に目がない十五歳。七つで両親を火事で亡くし、兄は行方知れずという身の上である。ある日、了然尼と食べるための菓子を買いに出たなつめは、いつもお参りする神社で好々爺に話しかけられた。この出会いは、なつめがまた食べたいと切に願ってきた家族との想い出の餅菓子へと?がった。あの味をもう一度!心揺さぶられたなつめは、自分も菓子を作りたいという夢へと動きはじめて……。江戸の町の小さな菓子舗が舞台の新シリーズ誕生。
  • えにし屋春秋
    3.8
    浅草の油屋・利根屋の娘お玉に、本所髄一の大店の主人との縁談が持ち上がった。しかし見合いの前日、お玉は置手紙を残して姿を消した。利根屋の体面と命運のかかった縁談である。身代わりとなったおまいは、当日、〈えにし屋〉を名乗る謎めいた女の元で、美しく着飾らせてもらい見合いの席に臨む。しかしその後もお玉の行方は一向に掴めないままで……。浮世には結びたい縁もあれば切りたい縁もある。縁を商いとする者と頼る者の光と影に、心揺さぶられる長篇時代ミステリー、シリーズ第一作。
  • 閻魔裁き ㈠ 寺社奉行脇坂閻魔見参!
    完結
    3.0
    播州竜野藩の藩主、脇坂淡路守安董は、寛政三年に二十四の若さで、幕府の重鎮である寺社奉行に抜擢された。寺社奉行の権限は広く、しかも坊主や神職という海千山千の連中を相手にしなければならない。怪しい金色の出世不動像や、神社の境内に丑の刻になると、女が集団でいっせいに押しかけ、藁人形を打ちつけ去っていく丑の刻参りなど、問題は山積み。家臣の鶴田風二郎、亀山雷蔵の「風神雷神コンビ」を従え、「神も仏もおれが裁く!」と豪快に成敗する。待望の新シリーズ、ついに開幕!!
  • 応仁悪童伝
    3.0
    高貴な出自で妖しいほどの美貌をもつ稚児・けいと孤児で諸刃の剣を自由に操る能楽師の少年・一若。ふたりは、堺の慈済寺で暮らしていたが、ある日、僧を殺め火を放ったけいは、一若に罪を着せ共に出奔、京に向かう。山名宗全、細川勝元、骨皮道賢……らが激突する応仁の京で、彼らは知恵と美貌と刀の腕を武器に、暗殺、一揆、下剋上……の暗黒の乱世を、未来を求めて己たちの力で生きる。各紙誌でも絶賛の著者の新たな代表作、待望の文庫化。(解説・田口幹人)
  • 大江戸亀奉行日記
    4.0
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 所は上野不忍池、イシガメたちがのどかに暮らすこの池を、突如覆った不穏な空気──上方からクサガメ、アメリカからはミドリガメが移住してきたのがその理由だ。無法者と化した彼らに対してか、イシガメの中には右傾化するモノやフェミ論を唱える者が現れて、まさに一触即発の状態に!亀奉行・亀山左衛門尉俊寛の悩みも増すばかりなのだった……。カメたちの日常をユーモアと風刺たっぷりに描く、本邦初の生体環境時代小説。
  • 大江戸少女カゲキ団
    完結
    3.5
    花のお江戸の両国に、芹が女中として働く「掛け茶屋まめや」がある。芹は幼いころ、役者だった父のもとで芝居の稽古に励んでいた。しかしあることがきっかけで、芝居や踊りからすっかり遠ざかってしまう。ある日、芹は久しぶりに心の中で踊りの師と仰いでいる東花円の稽古所を覗いた。ちゃんと金さえ積めばあたしだって立派な師匠に弟子入りすることが出来るのに……。心にうずく妬み心を隠しつつ、踊りへの未練を捨てきれずにいた。そんな時、花円が突如まめやに現れて、意外な申し出をしてきた──。待望の新シリーズの開幕です!!
  • おくり絵師
    4.0
    故郷の仙台で母親を亡くし天涯孤独となったおふゆは、母の最期の言葉を頼りに江戸に行き、縁あって、絵師歌川国藤のもと、住み込みで修行中の身である。思うような絵が描けず、悩んでいたある日、亡くなった役者の姿を描いた「死絵」に出会う。一方、幼少時に仙台で知り合った昔馴染みで役者の三代目富沢市之進が、浅草の芝居小屋の夏興行でついに主役を張るという。おふゆは市之進の母親お京に誘われ、初日の舞台を見に行くことになるが……。憂き世を照らす、一途な愛と親子の絆に涙する、書き下ろし時代小説。
  • おたふく物語
    4.0
    町人たちの暮らしの姿、現実を生きてゆく切なさに焦点を絞り、すぐれた「下町もの」を数多く遺した山本周五郎。本書は、自分たちを“おたふく”と決めこんでいる明るく元気のいい姉妹をいきいきと描いた「おたふく物語」三部作(「妹の縁談」「湯治」「おたふく」)をはじめ、身分の垣根を越えた人間の交流を情愛たっぷりに綴った「凍てのあと」、女性の妖しさと哀しさを濃密に綴った「おさん」の全五編を収載。江戸に暮らす女性たちの姿を見事に切り取った名作短編集。文庫オリジナル。 (編/解説・竹添敦子)
  • 親父の十手を受けついで 親子十手捕物帳
    3.0
    1~7巻748~770円 (税込)
    辰吉は、十手持ちだった父・辰五郎と折り合いが悪く、家を飛び出していた。忠次親分や妹の凛に心配されながら、仲直りを拒み続けて数年が過ぎていた。が、賭場での揉め事が原因で、人殺しの嫌疑をかけられてしまう。一方、引退していた辰五郎に、ある大店の跡継ぎが入れ込む楊枝屋の女について調べてほしいとの依頼が舞い込む。父と息子の事件はやがて絡み合って、二人は思わぬ敵と退治するのだが……。親子の絆と人情を描いた傑作時代小説シリーズの開幕!
  • 女は同じ物語
    -
    城代家老の子息・広一郎の女嫌いは、許婚者に見向きもしないほどの徹底ぶり。ある日、家庭内で絶対的権力を持つ母のさしがねで、紀伊という侍女をつけられて――。ユーモアたっぷりに女性の主導の恋を描いた「女は同じ物語」をはじめ、藩を捨て、浪人となり裏長屋に安住の地を求めた信兵衛の人情味溢れる生き方を描いた「人情裏長屋」など、「人間の持つ愛憎、苦悩、悲哀、妬心、人情などの、感情の全てが描かれている」(今井絵美子・巻末エッセイより)周五郎作品から、名作全五篇を精選。文庫オリジナル。(編・解説/竹添敦子)
  • かあちゃん
    4.0
    私も周五郎作品を読み返す度、失ったものを取り戻すような気持ちになる。それはかつての日本の風景であり、人の情であり、親から伝えられた仕来りであり、恥を感じる心でもある(宇江佐真理・巻末エッセイより)。女手でひとつで五人の子供を育てているお勝と、その家に入った泥棒との心の通い合いを描いた表題作をはじめ、山本周五郎が、人間の“善なる心”をテーマに遺した作品から、全五編を厳選。文庫オリジナル。(編/解説・竹添敦子)
  • 駆ける 少年騎馬遊撃隊
    4.3
    盗賊に村を襲われ、家族も友人も殺され、天涯孤独となった少年・小六。だがその馬術を見出され、彼は吉川元春の軍の中で騎馬隊員として頭角を現していく。一方、毛利に滅ぼされた尼子再興を誓う猛将・山中幸盛(鹿之助)。彼もまた、戦火で友人と愛する人を失い、毛利への復讐に燃えていた。共に戦という理不尽から立ち上がった二人。その譲れぬ思いが、戦場でぶつかる――! 第13回角川春樹小説賞受賞作、選考委員満場一致の感動歴史エンターテインメント!
  • 風の王国(1) 落日の渤海
    完結
    4.0
    全10巻733~859円 (税込)
    延喜十八年(九一八年)夏、東日流国(現在の青森県)。東日流の人間として育てられてきた宇鉄明秀は自分の出生の謎を解き明かすために、海を隔てた渤海国へ向かう。十七年前に赤ん坊だった自分を東日流のに連れてきたのは誰なのか? 命がけの船旅を経て、やがて明秀は渤海の港町・麗津に辿り着くのだが……。幻の王国・渤海を舞台に繰り広げられる、侵略と戦争、恋と陰謀。壮大なスケールで描く、大長篇伝奇ロマン小説の開幕!
  • 金貸し同心
    NEW
    -
    老中水野忠邦による人々に倹約を命じた天保の改革の真っ只中、多摩の役人だった辰ノ輔は、告げ口をしたことで立場が悪くなり養子に出されて、廻り方同心となった。早速見習いとしてある同心の下についたのだが、その男・本庄茂兵治は、同心でありながら暴利を貪る金貸しも行っていた! 辰ノ輔は自分の役割を裏稼業の監視と割り切って、茂兵治の下で働き始めるのだが……。貨幣経済へと移り変わり、武士の地位が落ちていく中、銭をもって善を成す痛快時代劇の登場!
  • 飛燕の簪 神田職人えにし譚
    3.7
    1~6巻704~726円 (税込)
    財布や煙草入れなど、身につける小物に刺繍と金銀の箔をあわせて模様を入れる、縫箔師の咲。両親を亡くし、弟妹の親代わりとなって一生懸命に腕を磨いてきた。ある日立ち寄った日本橋の小間物屋で、咲はきれいな飛燕の簪に魅了される。気になって再び店を訪れると、その簪を手掛けたという錺師の修次と出会った。しかし二人が話している隙に、双子の子供が簪を奪って逃げてしまい……。咲が施す刺繍が人々の縁をやさしく紡ぎます──江戸のお仕事人情小説、装いを新たにシリーズ開幕!
  • 狐小僧、江戸を守る
    3.0
    時は江戸。上野の禅寺で住職の天暁と暮らす十四歳の少年がいた。名は弥六。かつて幕府と盟を結んでいた大妖怪・白仙と、人間の女の間に産まれた〝半妖〟の子だ。だが白仙は七年前、突然数多の妖怪達と江戸を襲撃し、姿を消した。以来幕府は怨霊怪異改方──通称・孔雀組を組織し妖怪を厳しく取り締まり、人も暮らしにくい窮屈な世となってしまった。弥六は、人も妖怪も平穏に暮らせる世を目指し、烏天狗の黒鉄と、夜ごと江戸の町を見廻るが……。妖怪×剣戟ノンストップ時代小説の誕生!
  • しのぶ梅 着物始末暦
    完結
    3.5
    着物の染み抜き、洗いや染めとなんでもこなす着物の始末屋・余一は、職人としての腕もよく、若くて男前なのだが、人と深く関わろうとしない。一方、余一の古馴染みで、柳原土手の古着屋・六助は、難ありの客ばかりを連れてくる。余一の腕を認めながら、敵対心を燃やす呉服太物問屋の若旦那・陵太郎。朴念仁の余一に片思いをしている一膳飯屋の看板娘・お糸など……。市井の人々が抱える悩みを着物にまつわる思いと共に、余一が綺麗に始末する!! 人情味溢れる筆致で描く、時代小説。
  • 曲亭の家
    3.6
    小さな幸せが暮らしの糧になる──当代一の売れっ子作家・曲亭(滝沢)馬琴の息子に嫁いだお路。横暴で理不尽な舅、病持ち、癇癪持ちの夫とそんな息子を溺愛する姑。日々の憤懣と心労が積もりに積もって家を飛び出たお路は、迎えに来た夫に「今後は文句があればはっきりと口にします。それでも良いというなら帰ります」と宣言するが……。修羅の家で、子どもを抱えながら懸命に見つけたお路の居場所とは? 直木賞作家の真骨頂、感動の傑作長編。(解説・植松三十里)
  • 綺良のさくら
    5.0
    江戸初期、南部盛岡藩の草創期に、初代藩主・南部利直の御側用人を務める桜木兵庫の元に生まれた綺良は、周囲の愛情を一身に受けて、幸せな子ども時代を送っていた。利直の五男・彦六郎とは幼馴染みでお互い想いを寄せていた。しかし、そんなある日、二代目藩主に意見をした父・兵庫がその怒りに触れてしまう。そして綺良は、大奥に出仕することに……。幾多の苦難に出会いながらも自らの道を探し求める綺良の“愛”と“夢”を描き切る、感動の時代長篇。(解説・川本三郎)
  • くらまし屋稼業
    3.8
    万次と喜八は、浅草界隈を牛耳っている香具師・丑蔵の子分。親分の信頼も篤いふたりが、理由あって、やくざ稼業から足抜けをすべく、集金した銭を持って江戸から逃げることに。だが、丑蔵が放った刺客たちに追い詰められ、ふたりは高輪の大親分・禄兵衛の元に決死の思いで逃げ込んだ。禄兵衛は、銭さえ払えば必ず逃がしてくれる男を紹介すると言うが──涙あり、笑いあり、手に汗を握るシーンあり、大きく深い感動ありのノンストップエンターテインメント時代小説、ここに開幕!(解説 吉田伸子)
  • 群青の闇 薄明の絵師
    4.4
    町絵師の子として育った諒は、京狩野家の絵師・五代目狩野永博の許へ弟子入りをする。諒の才能に惚れこんだ永博は自分の娘・音衣と結婚させ婿養子として迎えた。京狩野家の六代目絵師として邁進していたが、妻との関係が冷めていくうちに、諒を兄と慕う幼馴染みの夜湖といつしか男女の関係になっていた──。一方で、「豊臣家の宝」とも呼ばれ、岩絵具にすると深い群青色を出すといわれた幻の輝石「らぴす瑠璃」が京狩野家に密かに伝えられているという噂を耳にする。「絵師とは何ぞや」。その答えを求め続ける男たちと、様々な思惑の中で苦悩する女たちを描いた、書き下ろし時代小説。
  • 慶次郎、北へ 新会津陣物語
    3.0
    豊臣秀吉が世を去り、五大老筆頭の徳川家康は、前田家を屈服させるなど、天下取りの野望を露わにし始める。そして次の標的を上杉に定めた。そんな折、前田慶次郎が会津に入り、穀蔵院飄戸斎の名で上杉に仕官する。上杉家の家老・直江兼続は家康を糾弾、会津攻めを誘う。それは上方の石田三成の挙兵と呼応した、家康を挟撃する一大作戦だった。狙い通り家康を西へ向かわせた上杉は、伊達、最上と東北の熾烈な戦いへ。『乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益』で第九回角川春樹小説賞を受賞した著者が、天下のかぶき者の最後の戦いを描く!
  • 剣客同心 上
    3.0
    南町奉行所の隠密同心長月藤之助の息子・隼人は、日々剣術道場で汗を流す十七歳の若者。無口ながらも実直で、剣も手練れの父を見て育った隼人は、藤之助のような同心になりたいと感じていた。だがその矢先、藤之助は、事件の探索中に謎の刺客に襲われ、帰らぬ人となってしまう。父が追っていた事件は、なんだったのか。父の仇を討つため、隼人は事件を追うことを決意するが――。傑作時代長篇、待望の文庫化(全二巻)(解説・細谷正充)
  • 剣客同心 鬼隼人
    完結
    4.0
    日本橋の米問屋・島田屋が夜盗に襲われ、二千三百両の大金が奪われた。八丁堀の鬼と恐れられる隠密周り同心・長月隼人は、奉行より密命を受け、この夜盗の探索に乗り出した。手がかりは、一家を斬殺した太刀筋のみで、探索は困難を極めた。そんな中、隼人は内与力の榎本より、旗本の綾部治左衛門の周辺を洗うよう協力を求められる。だが、その直後、隼人に謎の剣の遣い手が襲いかかった――。著者渾身の書き下ろし時代長篇。(解説・細谷正充)
  • 菊と鬼 剣客同心親子舟
    3.0
    二年前から南町奉行所に出仕している見習同心・長月菊太郎。父は、同奉行所の隠密廻り同心で、鬼隼人と恐れられる直心影流の遣い手・長月隼人である。そんな父子のもとに、日本橋の両替屋に押し込みが入り、二千両が奪われ、奉公人五人が惨殺されたとの報が入った。三月ほど前に別の両替屋を襲ったのと同じ賊による所業と睨み、さっそく動き出した隼人について、菊太郎も探索に加わることとなる。幼いころから父の背中を見て剣術の腕を磨いてきた菊太郎は、父と共に、慣れない仕事に体当たりで挑んでいく!「剣客同心親子舟」シリーズ、堂々の第一作。
  • 月神
    3.4
    明治十三年、福岡藩士出身の月形潔は、集治監建設のため横浜港から汽船で北海道へと向かった。その旅のさなか、亡き従兄弟の月形洗蔵を想った。尊王攘夷派の中心となり、福岡藩を尊攘派として立ち上がらせようとしていた洗蔵。だが、藩主・黒田長溥は、尊攘派の台頭を苦々しく思っており、洗蔵は維新の直前に刑死した。時は過ぎ、自分は今、新政府の命令によって動いている。尊敬していた洗蔵が、今の自分を見たらどう思うのか? 激動の明治維新の中で国を思い、信念をかけて戦った武士たちを描く、傑作歴史小説。
  • この世の花
    -
    徳川譜代の名門で七千石の旗本の妾の娘・花。母・ふきは商人の娘ながら父・真島兼続に惚れられて娶られ、母子ともに兼続から愛されていた。だが、それを正妻、そして他の妻は妬み嫉み、事あるごとに虐げる。兼続の長男・一成やその親友・青山信義や保坂勇里は花の健気な姿に目を掛けているのだが、それがまた他の娘たちには気にくわない。そんな中、ふきが病に倒れ――。激動の時代に、苦難を乗り越え健気に輝く、一人の少女の物語。
  • 初午いなり 木挽町芝居茶屋事件帖
    完結
    3.8
    木挽町の芝居茶屋かささぎは、若い店主・喜八とその兄弟分・弥助、料理人・松次郎の三人で営む小さな店。誰もが振り向く色男・喜八と冷たい風貌で女心を痺れさせる弥助目当ての女客や、気の利いた小料理を求める常連に愛されている。が、じつは喜八、かつて江戸市中の風紀を乱す無頼の徒と粛清され、命を落とした町奴かささぎ組親分のひとり息子。それ故、鬼勘の異名をとる火付改・中山直房に、なにかと敵視され……。芝居の町を舞台に、喜八と鬼勘の掛け合いが見どころの事件帖、人情たっぷりにいざ開幕!
  • 跡とり娘 小間もの丸藤看板姉妹
    完結
    3.0
    江戸の真ん中、日本橋伊勢町の小間物商「丸藤」は、紅やおしろい、櫛やかんざしなど、きらびやかな品揃えが自慢の大店だ。その「丸藤」の娘ふたりのうち、幼いころから病弱で品川で暮らしていた姉の里久が、年頃を迎え、家族のもとに戻ってきた。ところがその里久、漁師町の暮らしにすっかり染まり、まっすぐな物言いと大店の娘らしからぬ立ち居振る舞いで、実の母も妹・桃も戸惑うばかり。だが、里久の底抜けの前向きさが、閑古鳥が鳴き始めていた店を少しずつ変えていって──。おてんばな姉と小町娘の妹、看板姉妹の物語。
  • 五辯の椿
    4.0
    天保五年の正月、むさし屋喜兵衛の寮から火の手が上がり、焼跡から三人の焼死体が見つかった。三人は、長く結核を患っていた当主喜兵衛と、妻おその、娘おしのと認められる。一方その年の晩秋、江戸の町では殺人事件が相次ぎ、骸の傍らには必ず椿の花弁が残されていた。被害者はいずれも殺されて当然と思われるような悪名高い男たちばかり。この一連の事件に、与力青木千之助が捜査に当たる。聞き込みの末に若い娘の影を掴むが、果たしてその娘とは・・・・・・。法で罰することのできない、けれど到底許しがたい罪をどう裁くべきか――昭和の文豪・山本周五郎渾身の傑作長篇。(エッセイ/澤田瞳子、編・解説/竹添敦子)
  • 鷺の墓
    3.7
    藩主の腹違いの弟・松之助警護の任についた保坂市之進は、周囲の見せる困惑と好奇の色に苛立っていた。保坂家にまつわる因縁めいた何かを感じた市之進だったが……(「鷺の墓」)。瀬戸内海の一藩を舞台に繰り広げられる人間模様を描き上げる連作時代小説。「一編ずつ丹精を凝らした花のような作品は、香り高いリリシズムに溢れ、登場人物の日常の言動が、哲学的なリアリティとなって心の重要な要素のように読者の胸に嵌め込まれてくる」と森村誠一氏絶賛の書き下ろし時代小説!
  • 真田の兵ども
    4.0
    日本を真っ二つに分けた関ヶ原の戦いの直前、真田昌幸の愛した上田の地に、徳川秀忠が攻め入って来る。味方の二十倍の大軍勢を前に、一族、家臣、城、領地、民、忍び、すべてをつぎ込んだ真田の戦略が動き出す。密命を帯びた真田忍びの源吾は、真田信幸付きの小姓に姿を変え、敵味方の間を駆け抜ける。だがこの若き忍び武者には意外な役割と正体があった――民ともに、一族の存亡と男の夢を賭けた上田城攻防戦に刮目せよ!
  • さぶ
    4.6
    才走った性格と高すぎるプライドが災いして人足寄場に送られてしまう栄二。鈍いところはあるがどこまでもまっすぐなさぶ、ふたりの友情を軸に、人の抱えもつ強さと弱さ、見返りを求めない人と人との結びつきを描き、人間の究極のすがたを求め続けた作家・山本周五郎の集大成。「どうにもやるせなく哀しい、けれども同時に切ないまでに愛おしい」(巻末エッセイより)、心震える物語。(エッセイ/高田郁、編・解説/竹添敦子)
  • 地獄小僧 三人佐平次捕物帳
    完結
    4.0
    全20巻733~748円 (税込)
    世間での岡っ引きの悪評を憂いていた同心・井原伊十郎は、美人局の罪で捕まえた三兄弟、頭は切れるが悪人面の平助、力だけは人並み以上の次助、女も敵わぬ美貌の佐助を、岡っ引きとして売り出すことを思い付く。罪を問わぬ代わりに、三兄弟に「佐平次親分」を名乗らせ、その評判を上げさせようと考えたのだ。同じ頃、大店に押し込んでは皆殺しにして金品を奪う「地獄小僧」が治安を脅かしていた。三人で一人の佐平次は、この凶行を止めることができるだろうか?
  • 史記 武帝紀(一)
    完結
    4.0
    匈奴の侵攻に脅かされた前漢の時代。武帝劉徹の寵愛を受ける衛子夫の弟・衛青は、大長公主(先帝の姉)の嫉妬により、屋敷に拉致され、拷問を受けていた。脱出の機会を窺っていた衛青は、仲間の助けを得て、巧みな作戦で八十人の兵をかわし、その場を切り抜けるのだった。後日、屋敷からの脱出を帝に認められた衛青は、軍人として生きる道を与えられる。奴僕として生きてきた男に訪れた千載一遇の機会。匈奴との熾烈な戦いを宿命づけられた男は、時代に新たな風を起こす。北方版『史記』、待望の文庫化。(解説・鶴間和幸)
  • 写楽女
    -
    寛政六年の春。地本問屋「耕書堂」に住み込みで奉公している女中のお駒は、店主・蔦屋重三郎のもと、日々忙しく働くある日、店の中に入っていく長身の男を見かけた。その男は、写楽という蔦屋が抱える新しい絵師だった。写楽の役者絵が店に並ぶと、今まで誰も見たことのない絵に、江戸中が沸いた。讃辞と酷評入り混じる中、突然重三郎に呼ばれたお駒は、次に写楽が描く絵を手伝ってほしいと言われ……。選考委員満場一致で受賞した、第十四回角川春樹小説賞受賞作、書き下ろしの外伝を加え、待望の文庫化。
  • うどは春の香り 新・一膳めし屋丸九(一)
    3.0
    お高が作太郎と暮らし始めて二年、芸熱心な芸者がさらう三味線の音が響く日本橋芸者の町・檜物町に、一膳めし屋丸九は店を移した。先代・九蔵の味を再現しようと、作太郎は新しい店の二階で宴会の営業を始めることを提案する。九蔵の料理帖には、しいたけと芝えびの真薯、春の雪、ふわふわ玉子など、手間はかかるがとっておきの献立が残されていたのである。奮闘するおかみ・お高、手伝いのお栄やお近、ついてきてくれた常連客、そして花街ならではの新しい顔ぶれも加わって、一膳めし屋丸九の、新しい物語が始まります!
  • 初陣 新剣客同心親子舟
    3.0
    八丁堀同心の長月菊太郎は、今年で二十歳。四年前、直心影流の達人だった父が隠密廻りの役職から身を引いたのを機に、南町奉行所本勤に抜擢され、日々勤めに励んでいた。そんなある日菊太郎のもとに、日本橋本町の呉服屋に押し込みがあり、手代が殺されたと報せが届く。勇んで探索に乗り出す菊太郎。その数日後、南町奉行の遠山より菊太郎と隠居の父・隼人に呼び出しがあった。鬼隼人の異名をとっていた隼人にも探索に加わってほしいというのである。親子で江戸の悪を追う〈新剣客同心親子舟〉シリーズ、堂々の第一作。
  • 神剣 人斬り彦斎
    3.3
    嘉永三年(一八五〇)、九州肥後の熊本藩、御花畑表御掃除坊主の河上彦斎は、師・宮部鼎蔵を訪ね、尊敬する吉田松陰と、生涯にわたり惹かれ合う女性・由依と出会う。彦斎は日本を守るため厳しい県の修行をし、尊攘派の志士として次々と佐幕派の者たちを喪っていく。しかし彦斎の願いむなしく、明治新政府はこの国を西洋に屈服させてしまうように思えた。抵抗した彦斎は……。尊攘派の志士として激烈な活動を行い、「人斬り彦斎」として恐れられた漢・彦斎の苛烈な人生と志を描く、傑作長篇歴史小説。(解説・佐藤賢一)
  • 新・里見八犬伝 上
    完結
    3.0
    名作映画「里見八犬伝」の原作が時を超えて蘇る──室町の世、手柄を挙げた飼犬・八房の妻になった安房里見家の伏姫。姫を八房からとり戻そうとした家来の手で、命を落としたその体から八つの光の玉が飛び散った。〈仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌〉その玉を持つ運命となった八人の光の戦士たち。彼らと悪の軍団との凄絶な戦いが、今始まる! 『南総里見八犬伝』をベースにしながらも波乱のドラマを加え、大きく変身させた疾風迅雷の大伝奇エンターテインメント・ノベル。〈全2巻〉
  • 心中しぐれ吉原
    4.0
    蔵前の札差・大口屋文七の女房みつが、桜が満開の頃、出逢茶屋で役者と心中した。しかし文七は、女房の不貞を信じられず、無理に殺されたに違いないと自ら探索をはじめる。一方、大口屋の大旦那が、〈花魁・瀬川に惚れさせた男に自らの持っている貸し金の証文を全部くれてやる〉と、文七たち八人の分家の主に宣言したが……。妻を亡くした文七の無念とそれを支える瀬川との、まっしぐらな愛と心中事件の驚きの真相を描く著者渾身の傑作長篇。(解説・縄田一男)
  • 水滸伝(一) 九紋龍の兄妹
    完結
    4.0
    政和二(一一一二)年。華州華陰県史家村に若い双子の兄妹がいた。男の名は史進、女の名は史儷。二人とも眉目秀麗で棍術の達人だった。晩夏のある日、少華山の盗賊との戦いのさなか、王進という男と出会う。王進は東京開封府八十万教頭―近衛兵たちの武芸師範だった。この出会いは、二人を含めた多くの人間の運命を変えていくことになるのだが……。圧倒的なスケールと迫力で描く、平谷美樹版「水滸伝」、堂々の開幕!
  • 雀のお宿
    3.0
    山の侘び寺で穏やかな生活を送っている白雀尼にはかつて、真島隼人という慕い人がいた。が、隼人の四年余りの江戸遊学が二人の運命を狂わせる・・・・・・。心に秘やかな思いを抱えて生きる女性の意地と優しさ、人生の深淵を描く表題作ほか、武家社会に生きる人間のやるせなさ、愛しさが静かに強く胸を打つ全五篇。前作『鷺の墓』で「時代小説の超新星の登場」であると森村誠一氏が絶賛。(解説・結城信孝)
  • いろあわせ 摺師安次郎人情暦
    3.7
    神田明神下に住む通いの摺師・安次郎。寡黙ながら実直で練達な職人の技に、おまんまの喰いっぱぐれの心配がないと、ついた二つの名は「おまんまの安」。そんな中、安次郎を兄と慕う兄弟弟子の直助が、様々な問題を持ち込んでくる。複雑に絡み合い薄れてしまった親子の絆、思い違いから確執を生んでしまった兄弟など……安次郎は否応なしに関わっていくことに――。五つの摺りの技法を軸に、人々が抱え込む淀んだ心の闇を、澄み切った色へと染めていく。連作短篇時代小説、待望の文庫化。(解説・北上次郎)
  • 蘇鉄の女
    4.0
    化政文化華やかりし頃、瀬戸内の湊町・尾道で、花鳥風月を生涯描き続けた平田玉蘊。楚々とした美人で、一見儚げに見えながら、実は芯の強い蘇鉄のような女性。頼山陽と運命的に出会い、お互いに惹かれ合うが、添い遂げることは出来なかった・・・・・・。激しい情熱を内に秘め、決して挫けることなく毅然と、自らの道を追い求めた玉蘊を、丹念にかつ鮮烈に描いた、気鋭の時代小説作家によるデビュー作、待望の文庫化。
  • 某には策があり申す 島左近の野望
    4.0
    「天下の陣借り武者、島左近、死ぬまで治部殿の陣に陣借り仕る」――筒井順慶の重臣だった島左近は、順慶亡き後、筒井家とうまくいかず出奔。武名高き左近には仕官の話が数多く舞い込むが、もう主君に仕えるのはこりごりだと、陣借り(雇われ)という形で、豊臣秀長、蒲生氏郷、そして運命の石田三成の客将となる。大戦に魅入られた猛将は、天下を二分する関ケ原の戦いでその実力を発揮する! 従来の「義の人」のイメージを塗り替えた新たな島左近。期待の歴史作家による渾身の作品。(解説・細谷正充)
  • さくら舞う 立場茶屋おりき
    完結
    3.6
    全25巻704~737円 (税込)
    品川宿門前町にある立場茶屋おりきは、庶民的な茶屋と評判の料理を供する洒脱で乙粋な旅籠を兼ねている。二代目おりきは情に厚く鉄火肌の美人女将だ。理由ありの女性客が事件に巻き込まれる「さくら舞う」、武家を捨てて二代目女将になったおりきの過去が語られる「詫助」など、品川宿の四季の移ろいの中で一途に生きる男と女の切なく熱い思いを、気品あるリリシズムで描く時代小説の傑作、遂に登場。
  • 梨の花咲く 代筆屋おいち
    完結
    3.7
    わが願ひ、君が幸ひのみにて候ふ―― 一通の文だけを残し姿を消した許嫁・颯太との再会を願い、下総の小さな村からひとり江戸に出たおいちは、ひょんな縁から、本郷丸山の歌占師・戸田露寒軒宅で世話になることになった。そのほんの数日後、露寒軒宅の女中おさめと、その生き別れになっていた息子の縁を、一通の手紙によって再び繋いでみせたおいち。おいちに人の心を汲む才を認めた露寒軒は、颯太と会える日まで「代筆屋」を営んでみるよう勧めて……。真心を込めた手紙が人と人との縁を紡いでいく、連作時代小説、期待の新シリーズ誕生!(解説・細谷正充)
  • 大名火消し ケンカ十番勝負!
    4.3
    享保五年(一七二〇)。十九歳の拓蔵は、亡き母に苦労をかけた父を殴るため、信州からはるばる江戸に出てきた。だが火消し“加賀鳶”の徹次に拾われて、父が江戸で“水神の辰”と慕われた伝説の火消しであったこと、そして昨年の火事で死んだことを知る。拓蔵は加賀鳶に入り、周囲とぶつかりながらも火消しの仕事にやりがいを見出していく。その頃、江戸の町ではつけ火が続いて──。まっすぐな若者の奮闘と成長を描く、痛快時代小説!文庫オリジナル。
  • 茶屋占い師がらん堂
    3.3
    最福神社門前の茶屋「たまや」を切り盛りする母を手伝いながら、明るく元気に暮らしていた娘・すず。母娘で営む茶屋は、丁寧に作られた甘味と季節の蕎麦がうまいと客の評判も上々だ。ところが一年前の春、隅田川沿いの桜を見物に行って以来、すずはどんな医者も原因がわからぬ不調に苦しむようになった。最後の望みをかけ評判の医者の元へ向かう道すがら、具合が悪くなったすずは、宇之助と名乗る謎の占い師に助けられて……。口福を満たす甘味や蕎麦とぴたりと当たる占いが明日への幸せを呼ぶ、時代小説の新シリーズ開幕!
  • 母子燕 出入師夢之丞覚書
    完結
    4.2
    半井夢之丞は、深川の裏店で、ひたすらお家再興を願う母親とふたり暮らしをしている。亡き父が賄を受けた咎で藩を追われたのだ。鴨下道場で師範代を務める夢之丞には”出入師“という裏稼業があった。喧嘩や争い事を仲裁し、報酬を得ているのだ。そんなある日、呉服商の内儀から、昔の恋文をとり戻して欲しいという依頼を受けるが・・・・・・。男と女のすれ違う切ない恋情を描く「昔の男」他全五篇を収録した連作時代小説の傑作。待望の新シリーズ、第一弾。
  • くら姫 出直し神社たね銭貸し
    4.0
    下谷にある〈出直し神社〉には、人生を仕切り直したいと願う人々が訪れる。縁起の良い〈たね銭〉を授かりに来るのだ。神社を守るのは、うしろ戸の婆と呼ばれる老女。その手伝いをすることになった十六歳の娘おけいは、器量はよくないが気の利く働き者だ。ある日、神社にお妙と名乗る美女が現れる。蔵茶屋の商売繁盛を望む彼女が授かったのは大枚金八両。さらにうしろ戸の婆は、お妙に相談役としておけいを連れていくように言い、おけいには「蔵に閉じ込められたものをすべて解き放ってくるように」と耳打ちして──。読み応え抜群の時代小説。(解説・吉田伸子)
  • 特命見廻り 西郷隆盛
    -
    どうやら近ごろ、六軒もの牛鍋屋に謎の五臓六腑が投げ込まれ、新政府は、この事件に蓋をしているらしい――西郷吉之助こと隆盛は、役人の川路利良に命じて秘かに事件を調べさせていた。西郷は田中作二郎という若者に被害のあった牛鍋屋を探らせることに……。勝海舟、大久保利通や篤姫こと天璋院、女医・楠本イネも登場。牛鍋、鯛の丸あげ煮など美味しい料理とともに西郷隆盛が大活躍する、傑作時代事件帖。書き下ろし。
  • 情け深川 恋女房
    3.0
    1~5巻792~836円 (税込)
    深川佐賀町の稲荷小路に『足柄屋』という小間物屋を構える与四郎と小里の夫婦。十三年前に無一文で江戸にやってきた与四郎は、立ち直りのきっかけとなった地蔵様からお恵みと縁を大事にすること、そして修行時代に出会い、互いに一目惚れした女房の小里に支えられた商いが誠実なことで、周囲から評判だった。しかし深川祭りで、小僧の太助が争いに巻き込まれたことから恨みを買ってしまい、撒かれた悪評から商売が傾きつつあった……。共に助け合う夫婦の仲睦まじさと、周囲の人々の人情で解決される事件を、実力は作家が描く心温まる物語。新シリーズスタート。
  • 一の富 並木拍子郎種取帳
    3.3
    「ちと、面白いことがござりました」――人気狂言作者・並木五瓶の弟子・拍子郎は、”町のうわさ”を集め、師匠のうちに報告にくるのが日課だ。大店の不義密通事件、出合茶屋の幽霊騒動、金貸しの老婆の首吊り事件……拍子郎は、遭遇する事件の真相を、五瓶とその妻の小でん、料理茶屋のおあさ、拍子郎の兄で北町奉行所に勤めている惣一郎などを巻き込んで、次々と明らかにしていく――。江戸の四季と人の心の機微が織りなす、粋でいなせな捕物帳の傑作シリーズ第一弾!(解説・細谷正充)
  • 煮売屋なびきの謎解き仕度
    3.0
    1~3巻880~902円 (税込)
    なびきは幼い頃に親兄弟とはぐれ、神田に煮売屋を営む久蔵に引き取られた。養親となった久蔵が富士のお山でのご来光を拝むために旅立ったことで、十四歳のなびきが女将として、間口二間で二階建ての店を任される。久蔵が残した「神棚の神さまへの供えだけは忘れるな」という教えと、料理の腕で店の切り盛りは何とかなるものの、なびきを悩ませるのは、店に持ち込まれるお客たちの事件や謎だった。不思議な神さまのお告げと持ち前の鋭さで、なびきは難事を乗り越えていくのだが……。美味しい料理と事件の謎が彩る、江戸前ミステリーの誕生。
  • 日日平安 青春時代小説
    3.7
    お家騒動に遭遇したのを幸いに、知恵を絞り尽くして食と職にありつこうとする主人公の悲哀を軽妙に描き、映画「椿三十郎」の原作にもなった「日日平安」をはじめ、男勝りの江戸のキャリアウーマンが登場する「しゅるしゅる」、若いふたりの不器用な恋が美しい「鶴は帰りぬ」など、若者たちを主人公に据えた時代小説全六篇を収録。山本周五郎ならではの品のいいユーモアに溢れ、誇り高い日本人の姿が浮かびあがるオリジナル名作短篇集。(編/解説・竹添敦子)
  • はぐれ牡丹
    3.4
    一乃は夫・鉄幹と四歳になる幹太郎と三人、深川冬木町の裏店に暮らしている。日本橋両替商の跡取り娘であった彼女は、かけ落ちして鉄幹と一緒になったが、貧しくとも幸福な日々を送っていた。そんなある日、一乃がにせ一分金を見つける。一方同じ裏店のおあきが人さらいにあってしまう。一乃たちは、おあきを助けるために立ち上がるが……。助け合い、明るくたくましく生きる市井の人々を情感こめて描く長篇時代小説の傑作。   (解説・清原康正)
  • 励み場
    NEW
    3.7
    智恵は、勘定所で普請役を務める夫・信郎と、下谷稲荷裏でつましくも幸せに暮らしていた。信郎は若くして石澤郡の山花陣屋元締め手代まで登りつめたが、真の武家になるため、三年前に夫婦で江戸に出てきたのだ。そんなある日、三度目の離縁をし、十行半の女になった姉の多喜が江戸上がりしてきた。一方、その頃、信郎は旗本の勘定から直々に命を受け、上本条付にひとり出向いていたが……。己の「励み場」とは何か?家族とは何か?──直木賞作家が描き切った渾身の長篇小説。(解説・池内紀)
  • 弦月の風 八丁堀剣客同心
    完結
    4.0
    日本橋の薬種問屋に賊が入り、金品を奪われた上、一家八人が斬殺された。風の強い夜に現れる賊――隠密廻り同心・長月隼人は、過去に江戸で跳梁した兇賊・闇一味との共通点に気がつく。そんな中、隼人の許に綾次と名乗る若者が現れた。綾次は両親を闇一味に殺され、仇を討つため、岡っ引きを志願してきたのだ。綾次の思いに打たれた隼人は、兇賊を共に追うことを許すが――。書き下ろし時代長篇。
  • 破天の剣
    4.2
    群雄割拠の戦国時代、九州は薩摩の戦国大名・島津貴久の四男として生まれた家久は、若年の頃より「軍法戦術に妙を得たり」と評されるほどの戦巧者であった。だが兄弟の中で家久だけが母親の違う出自の為に深い懊悩を抱えていた。家久はその思いを払拭するかのように大友宗麟、龍造寺隆信といった九州の名だたる大名と奮闘を繰り広げ、島津の九州統一の夢に奔命する。しかし、天下人・豊臣秀吉とその弟・秀長が率いる大軍が島津家の前に立ちはだかる――。島津家の知将・島津家久の波乱に満ちた生涯を描く、第十九回中山義秀文学賞受賞作、待望の文庫化!!
  • 覇道の槍
    3.9
    阿波国の戦国武将・三好元長は、将軍家の血筋に連なる足利善維、三好家の主君筋に当たる細川六郎とともに、戦のない世を作ろうと誓いを立てた。元長は類い稀なる才を活かし、時の政権に代わる堺公方府の樹立に貢献した。畿内支配体制を確立すべく活躍をみせたが、その後、主君・六郎との対立の末に壮絶な人生を歩むことになる――。大いなる野望の先に、男がみた夢とは!?第十九回中山義秀文学賞受賞作家が、悲運の武将・三好元長を描いた渾身の戦国史小説。
  • 花あらし
    3.0
    奥祐筆立花家で、病弱な義姉とその息子の世話を献身的にしている寿々は、義兄・倫仁への思慕を心に秘めていた。が、そんなある日、立花家に大事件が起こり、寿々は愛するものを守るために決意する……(「花あらし」)。心に修羅を抱えながら、人のために尽くす人生を自ら選ぶ女性を暖かい眼差しで描く表題作他、こころの琴線に静かに深く触れる全五篇。瀬戸内の武家社会に誇り高く生きる男と女の切なさ、愛しさを丹念に織り上げる。
  • 思い出牡蠣の昆布舟 はるの味だより
    完結
    4.0
    全4巻748~814円 (税込)
    薬売りだった父を亡くした、はる。一つ年上の兄は、口入れ屋から奉公先を紹介してもらい、その支度金ではるを親戚に預け、江戸へと旅立っていった。十年の月日が流れ、江戸からやってきた絵描きの彦三郎の絵に生き別れの兄の姿を見た彼女は、兄と再会すべく江戸へと旅立つ。彦三郎の世話で、かつては人気の一膳屋だったものの、偏屈者の治兵衛が継いでからすっかり寂れてしまった「なずな」で、住み込みで働くことになるのだが……。慎ましくも美味しい庶民の料理、そして彩り美しい江戸の四季の中、一生懸命に生きる人々を描く時代小説の開幕!
  • 縁談 独り身同心(一)
    完結
    3.5
    全7巻733~737円 (税込)
    北町奉行所定町廻り同心・井原伊十郎に、上役から縁談話が持ち込まれた。相手は五百石鳥の旗本の出戻り娘だが絶世の美女だという。独り身ゆえの気楽さから、如何に話を断ろうかと悩んでいたある日、縁談相手の百合が伊十郎の元を訪れた。評判通りの天女のような美しさに一目惚れした伊十郎。しかし時を同じくして、妖艶な音曲の師匠・おふじが現れ、伊十郎の心は揺らぎ始める――。一方で、江戸市中を騒がす盗人『ほたる火』と対峙した伊十郎だったが、あることから『ほたる火』を取り逃がしてしまう……。独り身同心に降りかかる、女と事件の行く末は? 待望の新シリーズ、第一弾(解説・三田主水)
  • 陽眠る
    3.0
    大政奉還の後、鳥羽伏見の戦いに敗れはしたが、徳川慶喜は薩長への徹底抗戦を主張、幕軍は意気軒昂だった。オランダで建造された軍艦〈開陽丸〉の艦将・榎本釜次郎武揚も「ここからが海軍の出番」と自負していた。しかしその夜、慶喜は開陽丸で江戸へ逃げてしまう。失望した榎本は、副艦将・澤太郎左衛門、大坂城から持ち出した十八万両とともに開陽丸ごと脱走。蝦夷地を開拓し旧徳川家臣の新天地とすべく、北へと向かう──。無念の開陽丸と男たちの軌跡を描き切る、渾身の歴史小説。
  • ぶぶ漬屋 稲茶にございます
    3.3
    夫が賄を受けたという、いわれのない咎で西国の藩を追われ、親子三人で江戸に出てきて十四年、夫が亡くなってから十三年。その間、真沙女は息子・夢之丞の仕官だけを頼みに、地道に生きてきた。しかし元奉公人のお久米と偶然にも再会し、一緒にお袋の味のお惣菜とお茶漬けの店をはじめることに。母親の変わり様に出入師の夢之丞はとまどいながらも、生き生きとしている母の姿を見て、陰ながら店を助けるが……。“母子燕”が自ら幸せを切り拓く、待望の新シリーズ、ここに誕生。
  • 北斗の邦へ翔べ
    4.0
    松前家中の少年、春山伸輔は、尊皇攘夷に与しなかったことで落ちぶれてしまった家名を復権させるべく、箱館の遊軍隊と合流。 榎本軍への撹乱活動を行っていた。 一方、新選組副長だった土方歳三は、蝦夷地にできた箱館政府において陸軍奉行並となっていた。 市中の混乱を収めつつ、近藤勇らと夢見た国盗りを、再びこの地で実現させようとしていた。 薬売りに変じて市中見廻りに出ていた土方歳三は、撹乱活動中だった伸輔と偶然にも知り合うことになる。 互いの正体を知らないままに、知遇を得た二人。 だが激化する戦いが、やがて二人の運命を切り裂いていく。待望の文庫化。
  • 美作の風
    -
    津山藩士の生瀬圭吾は、家格をおとしてまでも一緒になった妻・美音と母親の三人で、つつましくも平穏な暮らしを送っていた。しかしそんなある日、城代家老から、年貢収納の貫徹を補佐するように言われる。不作に加えて年貢加増で百姓の不満が高まる懸念があったのだ。山中一揆の渦に巻き込まれた圭吾は、さまざまな苦難に立ち向かいながら、人間の誇りと愛する者を守るために闘うが……。市井に生きる人々の祈りと夢を描き切る、感涙の傑作時代小説。(解説・細谷正充)
  • 無根の樹
    4.5
    京都西町奉行所同心、榊玄一郎の元に、手下の小吉が現れた。堀川に相対死(心中)の水死体が上がったのだという。骸が発見された橋のたもとに向かった玄一郎だが、現場には西町奉行の侍医、久我島冬吾の姿があった。この医者は頼みもしないのに勝手に検分をして、同心たちとは全く違う見解を述べるので、評判はかなり悪い。しかも『相対死は三日間、四条河原に晒される』という法度があるにもかかわらず、久我島は玄一郎に、人助けと思って、心中である事実をもみ消せと言い出した。一体何が目的なのか!? しかしこの心中事件が市中を震撼させる事態へと発展していく──。
  • 柳橋物語
    3.6
    「この物語、年代を問わず全ての女のためにあるのかもしれない。そして、本気で女を愛せる男たちのためにも」(あさのあつこ・巻末エッセイより)。「待っているわ・・・・・・」明日上方へ旅立つ男からの告白に幼い感傷で応えてしまったおせんが、その一途さゆえに歩むこととなった苛酷な生涯を描いた恋愛小説の傑作「柳橋物語」、万年補欠とも称すべき武家の四男としての人生を堂々とまい進する青年とその家族の物語「ひやめし物語」、あまりの世間しらずに幽霊たちもたじたじ・・・・・・講談調の滑稽譚「風流化物屋敷」。人間の諸相を巧みに、鮮烈に描き出した三篇を収録。(エッセイ/あさのあつこ、編・解説/竹添敦子)
  • 夢のまた夢 人が、命をかけて守りたいものは、何か。
    完結
    -
    天正時代、ローマに派遣されることになった原マルティーノ、中浦ジュリアン、千々石ミゲル、伊東祐益の四人の少年は、フロイスと、ヴァリニャーノに連れられ、安土城へ向かった。織田信長は宣教師の言うことを信じていないという祐益に、「愛というものがどういうものか。自分を信じ、まっすぐに生きるとはどういうことか、帰ってきてわしに語って聞かせろ」と問いかける。ドラマ「MAGI 天正遣欧少年使節」の脚本(鎌田敏夫)を元に、戦国の世を描いた描き下ろし小説。
  • ゆめ姫事件帖
    3.0
    将軍家の末娘“ゆめ姫”は、このところ、一橋慶斉様への輿入れを周りから急かされていた。が、彼女には、その前に、「慶斉様のわらわへの嘘偽りのないお気持ちと、生母上様の死の因だけは、どうしても突き止めたい」という強い気持ちがあったのだ……。市井に飛び出した美しき姫が、不思議な力で、難事件を次々と解決しながら成長していく姿を描く、傑作時代小説。「余々姫夢見帖」シリーズを全面改稿。装いも新たに、待望の刊行開始!
  • 義経になった男(一) 三人の義経
    3.5
    嘉応二年(一一七〇年)。朝廷が行った強制移住で近江の国に生まれ育った蝦夷のシレトコロは、まだ見ぬ本当の故郷―奥州―を想っていた。十三歳の春のこと、三条の橘司信高と名乗る男があらわれ、シレトコロは奥羽に連れて行かれる……。それは、後の源義経の影武者とするためだった。一方、鞍馬山の牛若は、「あなた様は、源氏のお血筋。平家を打倒し、天下に名をはせるお人」という言葉によって剣術の稽古を続けていた。そして〈遮那王〉と名乗ることになった十六歳の牛若は、奥州平泉に向かう決意をする。壮大なスケールで、新しい義経を描ききった、歴史小説の金字塔!
  • 乱世を看取った男 山名豊国
    3.5
    かつて「六分の一殿」と呼ばれた山名家は、十二代目・山名宗全が応仁の乱を起こしたことで凋落を始める。この家に生まれた山名豊国は、苦境をはねのけて家を再興することを幼き日からの悲願とするが、毛利と織田の二大勢力に挟まれて国は混乱し、家臣・国衆の反発がその道を阻む。生き残るために心ならずも裏切りを繰り返し、誰よりも太平の世を求め続けた豊国。後世に悪名と轟かせた戦国武将の隠された一面を描く歴史長篇。
  • 乱世をゆけ 織田の徒花、滝川一益
    3.3
    甲賀の忍びあがりの土豪、滝川久助は、里の陰謀で父を失い、兄を殺め出奔。久助は名を一益と改め、諸国を放浪中に織田信長と運命的な出会いをする。一益は、射撃や忍びの腕だけでなく、武将としても力をつけ、信長の寵臣として存在を大きくしていく。天下への道を着々と進んでいく信長だったが、天正十年(一五八二)、家臣・明智光秀の突然の謀反によって斃れてしまう──。一益を頼みとする若き前田慶次郎、伝説の忍者・飛び加藤といった魅力的な脇役も登場。謎多き武将、滝川一益の波乱に満ちた生涯を描く。選考委員が大絶賛した、第九回角川春樹小説賞受賞作。
  • 龍馬奔る 少年篇
    4.0
    天保六年十一月十五日、土佐城下の坂本家では、一貫の目方があって、背中まで金色の毛がびっしり生えた男児が誕生した。龍馬と名付けられたその子は、両親や姉など周りの人びとの深い愛情を受け、たくましく育っていった。そして弘化二年、十一歳の龍馬を、母・幸は、「鯨組に世話になりなさい」と一人、旅に出したのだった……。一方、土佐の山里では、二年半遅れで生まれた中岡慎太郎が大庄屋の跡とりとしてふさわしい少年に成長していた。土佐出身の著者が渾身の力をこめて描く、「龍馬伝」の幕開け。
  • 童の神
    4.4
    「世を、人の心を変えるのだ」「人をあきらめない。それが我々の戦いだ」――平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛……などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人(みやこびと)から蔑まれていた。一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。そして遂に桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが――。差別なき世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩。 第10回角川春樹小説賞(選考委員 北方謙三、今野敏、角川春樹 大激賞)受賞作にして、第160回直木賞候補作。

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