Posted by ブクログ
2021年11月03日
平安時代中期、安和2年(969年)の「安和の変」に端を発する物語。
この時代のことを知らなかったので、読み終わってからここに登場する人物のことを調べてみたが、源頼光や渡辺綱ら四天王は酒呑童子ら都を荒らす悪党を平定した武人として紹介されており、この本を読んでからそれを知ると、ふ~ん、そうなんだという感...続きを読むじ。
往々にして歴史は勝者によって都合良く書かれたものであるので、通念にある正邪をひっくり返し虐げられた側から書こうとした作者の企てはなかなか興味深い。その根底には人の生きる権利や平等に対する思いが流れているが、それを声高に叫ぶことなく、面白い読み物に仕立てあげられたところに値打ちあり。
それにしても、袴垂に、酒呑童子とその配下、土蜘蛛、子持山姥、滝夜叉姫に安倍晴明…、数多の書物、伝承伝説から御伽草子や能、神楽まで呑み込んで、よくもここまでキャラとつながりを作り込んだものだ。対峙する四天王もそれぞれに個性あふれる人物として描かれ必ずしも悪役でないところもまた良し。
色んな場面で映画のように映像が目に浮かぶ書き振りを楽しんだが、中でも、帝の意思に従い上洛した大江山の一行と京の民との祭りのような一瞬の交わりの場面が白眉であった。