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Posted by ブクログ
じんかんを読み進める中で、まず強く感じたのは「歴史上の悪人」とされてきた人物像とのギャップだった。
松永久秀は、単なる陰謀家や裏切り者ではなく、むしろ非常に人間くさく、「なぜそれを守ろうとするのか」という動機が少しずつ見えてくる存在として描かれていた。
そこに触れるうちに、評価や史実というものは、結局“後世の視点”でしかなく、その時代を生きた本人の感情や事情までは完全にはわからないという実感が生まれていく。
物語の中で特に印象的だったのは、人とのつながりや出会いと別れだった。それこそが、このタイトルにもなっている「じんかん」なのだと感じた。幼少期の多聞丸との出会いと別れ、そしてそこから大人になっての人間関係へとつながっていく流れが、この物語の軸になっている。
三好元長との出会いは、松永久秀にとって自分の才能を認め、信じてくれる存在との出会いであり、自分がどう生きるのかを形づくる大きなきっかけになっていた。
また三好義興との関係は、単なる主従関係ではなく、「未来」や「希望」としてのつながりだったように感じた。その存在があったからこそ、この関係には確かな明るさと可能性があった。
しかし、出会いは永遠ではなく、死によってその未来は途切れてしまう。そこにあったのは単なる喪失ではなく、「続いていくはずだった時間が終わってしまう」という深い悲しみだった。
この作品を通して、人とのつながり、すなわち「じんかん」は、強さや役割だけで成り立つものではなく、出会いと別れの積み重ねの中でこそ人生を形づくっていくものなのだと感じた。そしてそれは、人と人とが関係を紡いでいくことで初めて成立するものでもあると感じた。
そしてこの作品を読みながら、自分の幼少期からの出会いと別れについても重ねて考え、別れは消えることではなく、自分の中に残り続けるものなのだと感じた。
最終的にこの作品から残ったのは、「善か悪か」という評価ではなく、「その人はどう生き、誰と生き、何を生の証とするのか」という問いだった。そして人は出会いと別れの中で、自分の生きた証を形にしていく存在なのだと感じた。
Posted by ブクログ
九兵衛(松永久秀)の物語。案内役が信長という設定もなんとも秀逸である。
少年時代の多聞丸、日夏との出会い。そんな少年の物語でもあるからこそ、久秀となってからも九兵衛という名が多く使われている。三好元長、義興との別れも心打たれるものがある。
人は飢え死のうとも、孤独には勝てない。動物としては異常としか思えないが、どうやら人間とはそのように出来ているらしい。
「信疑一如」疑っているから信じようとする。疑いが微塵もなければ信じることもない。
武士や足軽は自身では何も生み出さず、人から搾取するのみ。
甚助の「俺はもう自分の生まれた意味を知っている。英雄の兄を支え続けることさ」少年の心を感じる。
久秀が信長に送った書状「世に神はいない。当然、仏もいない。それらは人が己の弱さを隠すために生み出したまやかしである」信長は嬉しくて笑ってしまう。幼き信長と同じことを考えていた。
物語から悲しみの底に、光があることを、どこかで信じられる、小説は、そのためにあるのかもしれない。と解説で北方氏は締めくくる。
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人は何のために生まれてくるのか?
本作の中で度々繰り返されるこの問いが、物語の根底にある最大のテーマだと感じた。
舞台は、理不尽な行いがまかり通る戦国の世。神仏の存在に疑問を抱きながらも、ただ民の安寧を夢見て、かけがえのない仲間たちと激動の時代を駆け抜けた梟雄・松永久秀。織田信長が小姓に語る彼の半生は、一般的に知られる「稀代の悪人」というイメージを180度覆すもので、悪名をも厭わず自らの使命に向かって突き進む姿に、思わず息を呑む。
久秀と仲間たちの絆には何度も心が揺さぶられた。利害を超え、互いを思いやり、生きた証を守るために身体をなげうって抗い続ける姿に目頭が熱くなる。
人は何のために生まれてくるのか…この生き様こそが、その答えだろか。
緻密な人間描写と痛快なストーリー展開で安定の面白さだった。著者の歴史小説は、やっぱり凄い。本作もすっかり圧倒された。
Posted by ブクログ
戦国時代の初め頃、「悪人」として忌み嫌われた松永久秀が主人公。織田信長に仕えながら二度も謀反を起こすが、なぜかその度に許されている。その信長が語る形式で話が進む。久秀の壮絶な生い立ち、人間や人生観、壮大な夢、人間の欲など、感情移入せずにはいられない。久秀の躍進や挫折のきっかけとなった出来事も現代に通じるものがあり、納得もするし、辟易とさせられる面も。歴史小説としても、ヒーローものとしても読める。何も三英傑だけでない、超有名なキャラクターではない人物の話は、意外と面白い。それにしても作者の力量に圧倒される。「イクサガミ」や「ぼろ鳶」にも圧倒的な主人公がいるが、そのどれにも似ていない。だからこそより楽しめる。
Posted by ブクログ
「大悪を三つもやってのけた」と言われる悪名高き武将、松永久秀の生涯を、織田信長が小姓に語るスタイルで描く歴史小説。
何気なくaudibleで聴き始めたらめちゃくちゃ面白くて、神本にチェンジして一気読み。現時点の私的今村翔吾氏の最高傑作!→
神本→紙本の間違いデス。
九兵衛と多聞丸との関係、甚助、日夏……前半の子供時代が後半大人になってからめちゃくちゃ効いてくるこの構成力……たまらん!!こういう大河小説は大好物デス!!
イケオジになってからの九兵衛がまた良き……筆マメで茶道を愛するとか良すぎるだろォォォ!!
ラストのシーンもな!!一人また一人と散るところがカッコ良すぎて、これぞ時代歴史小説!!って感じが好きすぎる。
信長もいい味出てるし「で、あるか」にニヤニヤしちゃう。
そして又九郎!!キャラ造形がたまらーん!!
Posted by ブクログ
時代物が読みたくなったら、今村さん!
と言うことで、今村省吾氏の「じんかん」です。
松永久秀の半生が綴られています。
生きた時代が、織田信長の父か祖父でも良いくらい。なんと豪華なことに、一世代くらい下になる織田信長が、松永久秀の物語を語ります。
生涯、少年の心を持ちながら国を憂いた松永久秀と、織田信長は気持ちで通じるところがあったらしい。
この当りの設定の巧さも、今村さんらしい感じ。あとがきで、北方謙三氏が今村さんの情景描写について、「どうも生まれながらに持ち合わせていた資質と見えた。」と言っておられますが、本当に上手です。
詳しくは書きませんが、これで大河ドラマ出来るのでは?と思わせる面白さです。
この「じんかん」を読んで、久秀の一世代上に当たる「三好元長」についても、興味が出ました。ちょっと調べてみます。
Posted by ブクログ
松永久秀一代記。アニメっぽい表紙イラストのせいであまり期待していなかったが、重厚で読み応えのある時代小説。
松永久秀の生まれなどははっきりしていないが、この本では商家の生まれとしている。父が物取りの足軽に殺され、母は餓死寸前で縊死。遺された兄弟は寺で世話してもらいながら、住職の死亡により、追剝少年集団に混じり生きながらえる。そのうちまた寺で庇護され、文字や知識を蓄えながら、この時期に武野紹鴎の手解きにより茶の道を納め、名物を手に入れ、次第に堺の自衛集団のお頭となり、見知った三好元長の祐筆として召し抱えられ、三好家重臣となっていく。
三好家の主殺しはやっていない。足利義輝暗殺にも関与していないが、東大寺は焼いた。ちなみに本書では爆死している模様。史実では天守を焼いたのみで爆発はしていない。
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