あらすじ
その男、悪人か。
主人を殺し、将軍を暗殺し、東大寺の大仏殿を焼き尽くすーー。
悪名高き戦国武将・松永久秀の真実の顔とは。
直木賞作家による、圧巻の歴史巨編。
〈第11回山田風太郎賞受賞作〉
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松永久秀一代記。アニメっぽい表紙イラストのせいであまり期待していなかったが、重厚で読み応えのある時代小説。
松永久秀の生まれなどははっきりしていないが、この本では商家の生まれとしている。父が物取りの足軽に殺され、母は餓死寸前で縊死。遺された兄弟は寺で世話してもらいながら、住職の死亡により、追剝少年集団に混じり生きながらえる。そのうちまた寺で庇護され、文字や知識を蓄えながら、この時期に武野紹鴎の手解きにより茶の道を納め、名物を手に入れ、次第に堺の自衛集団のお頭となり、見知った三好元長の祐筆として召し抱えられ、三好家重臣となっていく。
三好家の主殺しはやっていない。足利義輝暗殺にも関与していないが、東大寺は焼いた。ちなみに本書では爆死している模様。史実では天守を焼いたのみで爆発はしていない。
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人は何のために生まれて何をして自分を示す事ができるのか。松永久秀の半生を通じて、出会いと別れに心を揺さぶられる。登場人物の大切にしているもの、心の動きを描くことで物語が紡がれていく。舞台は現代ではないけれど現代に通じることがたくさんあった。読み終えて序章を読みなおすとグッとくるものがある。読んでよかったと思う。
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「人は何故生まれ、何故死ぬのか」
人間(じんかん)のなんたるかを知るために闘った久秀。戦国の世の話なのに現代に通ずる物があり、じっくり向き合いたいの物語。
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松永久秀は自分にとって『無名』にしかすぎない人物でした。
久秀が思う「人は何故生まれ、何故死んでいくのか」。
久秀だけじゃなく誰もが思うことをこの物語の展開で答えを導いていってくれているのかもしれないと思い読み進めていきました。
両親がなくなった彼の幼少期(九兵衛)は凄惨だった…と思う。
だけど多聞丸や日夏たちと出会い彼の人生が変わり始め、当時の日本(戦国時代〜安土桃山時代?)を俯瞰して世の中を変えていかなければならないと思うようになった、その思い。三好元長との出会いがそうさせたのかな。夢をかなおうと貫く意思の強さを感じる。
「本当のところ、理想を追い求めようとするものなど、この人間(じんかん)には一厘しかおらぬ」
この言葉には日本各地に夢を本気で叶えようとする人は、ごくわずかかもしれない。それでもハングリー精神を捨てない強い心を持てと私たちに伝えたいのかなと安直にも思ってしまった。人は難しいことに遭遇すると「無理無駄」と思ってしまうし。
小説とはいえ、壮大かつ混沌とした時代に生き抜き人を成長させ「日本を変えたい!」強き思いを持つ人物・久秀の生き様を始めて知り、自分自身を奮い立たせた…そんな熱いドラマを見ているかのようでした。
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久しぶりに読んだ歴史小説がこのじんかんで良かったとつくづく思った。
今村さんの作品は初めてだったが、私にとっては貴重な読書体験になった。
人間の愚かさ、醜さ、弱さを痛感する。
時代が違えど、人の業の深さは計りしれず、立場や環境が変わった途端剥き出しになる。
九兵衛は死にゆく人々の想いを一人で受け、人の心の弱さに抗い人生を全うする。最期の時ですら心に想う大切な人に馳せていく姿は見事だった。
世の噂や思い込みで悪人になり得るのは今の時代に通ずる深さがあって、それに流されず、分かる人に分かれば良いと信念を持つ心は見習いたいと心うたれた。
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北方謙三の解説(あとがき)が、この作品をさらに魅力的にしてくれる。良かった。史実から当然に展開はわかっているんだけど、そんなの関係ない。物語ってすごいな、と思う。それを作る人も、解説する人も、すごいな、と思える作品でした。
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幼少期、この少年たちの中で誰が松永久秀になるのか、わかりませんでした。信長も一目を置く松永久秀の一生涯の物語ですが、各章の頭に信長が久秀のことを回想するシーンがあり、この各章の頭の信長の部分がなかなか良かったです。久秀は、主家乗っ取り、将軍殺し、東大寺焼き討ちという3悪を行ったとされる人物ですが、宗慶との最後の別れの場面での久秀の言葉に、久秀の人柄が現れていてすごく良かったです。また人間らしい優しさを持ち、配下の武将にも慕われていて、すごく好きな武将になりました。
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戦国武将・松永久秀の一生を綴った時代小説。どの程度史実に則っているのかはわからないが、情に厚い人物像が涙を誘った。分厚いページ数だけじゃない、とてつもない大作。と言いつつ正直、ゲームの「戦国無双」で初めて知った名前でイメージもそっちに引っ張られた状態で読んだので「えっ、こんな感じの人だったの?」って感じに戸惑った。この辺は作者の解釈次第だろうけど。
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塞王の盾に続き2作目の今村翔吾作品。松永弾正久秀、名前を聞いたことある程度だったけど(高校世界史履修)、ひたすら面白かった。
様々な出会いを経て立身出世していく様は爽快。妬まれることもあるけど、壮大な夢に向かって邁進する姿にエールを送りながら読んだ。
次読む今村作品は何にしようかワクワクしている。
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松永久秀の悪人のイメージが変わる内容になっています。また、戦国の世の中がリアルに再現されており、今の時代で良かったと結構思わされました。色んな事が伝わってくる良い内容でした。
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さすが今村さん、凄い面白かった。
580ページに及ぶ長編も難なく読み進められ楽しめた。
時は室町~安土桃山時代、孤児だった松永久秀の凄絶な半生が信長の回想で語れていく。
松永久秀?あまり耳にしない武将だ。(自分が無知なだけかも)信長いわく「人の成せぬ大悪を一生のうちに三つもやってのけた」と家康に説明している。しかも二度も謀反をおこしている。この時点で久秀のイメージは悪かったのだが、話が進むにつれ真相は全然違う。松永久秀の言動や人格に心が掴まれていく。
たくさんの見どころあるが中でも7章の「人間へ告ぐ」で1万の敵の軍勢が迂回して信貴山城を狙っているという情報を奈良の民が自分の命をかえりみず報せてくれた場面でその町民は身体に何本もの矢を射られており、そのうちの1本は右胸を貫いていたというから驚ききである。民を大切にしていた松永の人格が伺えるのとその町人が実は、あの…であるのを知った時、胸が張り裂けそうになり感涙。
あと2度目の謀反の理由も泣かされる。最後まで家臣や家族、民、友を思いとても素晴らしい武将だ!松永久秀が夢を成し遂げていたらどんな世の中になっていただろう?きっと子供達が笑顔で居られる世の中かな。
余談ですが、久秀の孫2人は織田家に人質として預けられていて、信貴山城の時に処刑され、久通も自害してしまったらしい。信長さんもう少し寛大な処置できなかったの?
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戦国時代最も悪名高い武将の一生を綴る物語。
信長が九兵衛の半生を語り、彼の生い立ちから悪行の真実が明らかとなっていく中で、彼の夢や想い、そしてかけがえのない人間達との出逢いを知ることで、本当の松永久秀という武将を本当の意味で理解できた。
どこまでが真実でフィクションなのかわからないが、
ただ1つ言えることは松永久秀の大ファンになった。
過去1で好きな歴史小説。
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途中で中弛みするかなと思ったんだけど、ぐいぐいと松永久秀の魅了を描ききる物語展開が素晴らしく、後半はのめり込むように読んでいました。松永久秀に対する印象が180度変わった著作でした。物語として面白かったです。
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これまで持っていた「松永久秀」の人物像とは全く違う切り口で描かれており、このような捉え方もありうるのかもしれないなと思いながら読んでいた。
そして、又九郎同様、自分も松永久秀の生涯に引き込まれていっていた。
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一年の終わりに人間を深く考えさせられる作品に
出会えて満足である、語り部が信長という無駄に
豪華な状況は奇をてらったものではなく、松永久
秀と信長の共通する「人間が意に沿わぬ運命に流
される事に抗う(特に神仏が仮想敵)」魂の形
寺社など人に善悪を吹き込む最たるもの(作中)
自分を善と思えば容赦なく悪を叩く、現在のSNS
に繋がる気持ちで読んでいた
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ良かった…!!!最初は分厚いな〜と思ってたけど、読み出したら手が止まらなくなってすぐ読み終わってしまった。松永久秀については、確かに悪人という面が有名だし、そういうふうに描かれるところが多いと思うけど、こうして見るとひとつの意思を貫き通そうとしたんだな。
歴史をなぞっていくと、確かに何かの意思で足を引っ張られるような、という分岐点が必ずあって、後世の現代から見るとそこが歴史の面白いところではあるのだけど、当時何かを成し遂げようとしていた側からすればたまらないよな。
織田信長の語りという面も良かった。こういう歴史小説はもっと読んでみたい。
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本書を読む前までは名前と数々のぶっ飛んだ行い、そしてギリワンという異名?を知っており、読み進めるにつれて今読んでいる内容が史実であってほしいと思うようになりました。
文庫本では600ページに迫る文量、かつ個人的に馴染みのない単語たちが出てきて久々に意味を調べつつ読みましたが、あっという間でした。
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恥ずかしながら歴史に浅く松永久秀の事を良き知りませんでした。著者は『童の神』『幸村を討て』等の歴史の一説を描く事が多いですが、この作品も同様です。それがまた面白い。この本の内容が正しいのではと思ってしまいます。
信長に届けられた弾正の手紙をきっかけに、信長が小姓(又九郎)に弾正の生立ちから語り出します。信長が認めた男のストーリー聞いて圧倒される又九郎。この又九郎は、よくいる安定と安寧を望む普通の男です。しかし、彼が物語終盤に信長と弾正と絡み始め一気に加速していきます。信長と弾正という本物の男達の熱と覚悟に当てられ「一度でいい、男と認められたい」と事態の打開を図るべく奔走する又九郎。この気持ちはよくわかる。
清廉潔白過ぎるきらいもありますが、もう少し物語に浸っていたかったな、と思える小説でした。
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「塞王の楯」がおもしろかったので手に取りました。
歴史の事は詳しくありませんが、歴史小説が今自分の中で熱を持っています。
悪名高き武将・松永久秀が織田信長に対して謀反を起こす。そして、謀反が初めてではない。さらに「降伏するなら赦す」といい、信長が久秀の生涯を語りだした。
信長が語り部というのはおもしろいと思いました。
-人は何のために生まれてくるのか。
-「俺たちはなんで生まれてきたのだろう。」
作中常にこの疑問が投げかけられている。
「自分」という存在を証明してくれるものは一体何なのか?
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三悪を犯し、戦国時代の悪人と呼ばれた「松永久秀(九兵衛)」を描いた作品。物語は、久秀が織田信長に二度目の謀叛を起こした場面から始まる。
謀叛の報せを伝えるため、信長の居る天守閣へ向かった又九郎は、戦々恐々としながら事の次第を告げる。だが信長は「降伏すれば赦す」と言う。それはなぜか――信長が語る久秀の物語が、静かに幕を開ける。
私は「松永久秀」という歴史上の人物を知らなかった。それでも今は、久秀について誰かと語りたくて仕方がない。史実には事欠かない人物であったようだが、幼少期の記録はほとんど残っていないらしい。この『じんかん』では、そんな久秀の生い立ちから描かれている。
物語の序盤、多聞丸やその仲間たちとの出逢い、本山寺で過ごした日々は、九兵衛という人物を理解するうえで十分な厚みを持っている。後に「悪人」と呼ばれるとは到底思えないほど、彼は聡明で、思いやりに満ちている。
登場人物たちが形づくられていく過程も、物語として純粋に面白く、気づけば深く惹き込まれていた。だからこそ、日向との関係性には胸が締めつけられる。
九兵衛には「もう少し自分に素直になってほしい」と言いたくなるほど、彼はクールだ。物語の後半、堺の民として登場する場面では、私たちも九兵衛と同じくらい、やるせなさを感じずにはいられなかった。
物語にはたびたび「神仏などいない」という久秀の思想が現れる。「もし神仏がいるのなら、なぜ善良な民が虐げられるのか。では、人は何を頼り、何を信じればよいのか」――彼は問い続ける。
死の間際、久秀の脳裏をよぎったように、一生の中で繰り返される出逢いと別れのなかに、信じてきた人々の顔が浮かんでいたのではないだろうか。
人間とは、人間自身が切り拓いていくもの。
人生とは何か――本作を通して、それは「問い続けること」なのではないかと感じた。その問いの中で、一生のうちに一つでも納得できることがあれば、この世を生きた意味があるのかもしれない。
自問自答もあるが、その多くは他者との関わりの中で育まれていくものだろう。
善悪や真偽の判断は、いつの時代も難しい。
ただ、事実はさておき、その過程には幾重もの想いが重なっている。あの時代を駆け抜けた人々の想いは、私たちに受け継がれ、その一生をこうして物語として受け取ることで、明日の希望へと繋がっていくのだと思う。
すごい作品を読んだなという気持ちでいっぱいだ。
この小説に出会えたこと、その中で久秀たちと出会えたことが誇らしい。
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松永久秀の一代記。戦国時代の人物ではかなり気になる存在なので読んでみた。
予備知識が少ないのでどこまでが史実でどこからがフィクションかはわからず。同じく神仏を信じぬものとして胸の熱くなるところもあったが娯楽小説の域を出ず。もう少し深いところまで届いて欲しかった。
歴史・時代小説は、歴史的事実(?)という枠の中での創作という難しさがあると思っています。それも松永久秀という有名な武将を取り上げることは、より枠組みが堅固と言ってよいと思います。
本作は、松永久秀の物語を縦軸に、久秀と織田信長の関係を横軸にしており、信長の一般に流布されている性格等と異なる一面をも書かれていて、良い作品と思います。
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松永久秀に関しての新解釈、というか成したことがあまりにも、なので悪人とされてきた人物の余白部分に人情味を足してこんな人だったかもよ?と提案する意欲作。戦国時代小説の旗手たり得る今村作品として、広い視野を共有する良い提案。定説を不憫に思うところも、人の気持ちに寄り添うのが上手い作者らしい文章だった。
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アツさ迸る傑作!!!
悪人のイメージが強い松永久秀を斬新な視点で描いている。彼が目指した国の形は現代へと繋がっているなと感じた。しかしながら今の日本を見たら久秀はどう思うだろう。
人間をじんかんと読むと意味が変わると云うことを初めて知った。我が地元・尼崎が登場するのもなんだか嬉しいポイントだ。
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日本史上の三悪人とも称される松永久秀。そんなイメージを一新させる歴史小説。
織田信長が小姓の狩野又九郎に語り聞かせる形式をとることで、久秀の生涯を立体的に浮かび上がらせる。
民を武士から解放し、民の自治を確立し、武士という存在をなくそうとまで考える久秀。。
なんと先進的なことか。
九兵衛と称する子供時代から信長に再三謀反を企てるまでの、彼の波瀾万丈な一生が、著者の手で鮮やかに魅力たっぷりに描き出される。
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職場のパイセンより。戦国武将松永久秀の物語。語り部は織田信長。主家乗っ取り、将軍暗殺、東大寺焼打など、信長をして「この男、人がなせぬ大悪を一生のうちに三つもやってのけた」と言わしめる有名人ではあるけど、詳しい事はあまり知らなかったので大変勉強になった。人との出会いと別れを繰り返し、想いを受け継いでいく。信長の最期で有名な「人間五十年…」は「じんかん」とも読むらしい。これを読むまで松永久秀は信用できない悪人程度としか思ってなかったけど、180度見かたが変わった。三好義興との別れはかなり鼻がツーンってなった。
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登場人物が魅力的で、劇画を観ているように引き込まれて読み進みました。
最後の七章が、私の読力には盛りだくさん過ぎた感、、、
星5つにして、「次の歴史ドラマに〜」と書きたかったので残念 、、、いや、今でも是非、「ひかる君」の次に!と思ってます。最後の章だけ、もう少し分かりやすく直して欲しい、凄く悔しい気分です。
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東大寺大仏殿にいる敵陣へ向かう際に自軍に向けて話した松永久秀の一言。 「あの日のことを恩に思う心優しい者が...何故死なねばならぬのだ。俺にはどうしても解らぬ。誰か解る者がいれば教えてくれ!誰かが高笑いしているこの世の片隅で、今日も誰かが泣いている。お主たちも大切な者を、何の罪もない者を不条理に失ったことがあろう。神や仏がいるならば何をしているのだ... 戦いたくない者は去っても良い。だが、もし付いて来てくれるというなら、、、神仏に人の美しさを、人の強さを見せてやろう。」 久秀の強さが腑に落ちた。
Posted by ブクログ
松永久秀を主人公にするのは目新しいが、久秀がただの良い人扱いで凄みを感じなかったのが残念。それなりに面白かったが、読んで新しい知識が増えるような作風ではないので、中毒性は低い。