小説作品一覧
-
-文学作品が刊行されたあと非難や攻撃や異議を受けるというのは今日でも目にする光景です。学術的な論文や書籍でも、文学作品でも、盗用の疑惑をもたれたり、実際に告発されたりすることは決して稀ではありません。そういうとき、後ろめたさゆえに無言を貫く著者もいるでしょう。告発はあたらないと思いつつ、言い訳をしないのが美徳だと考えて、あえて反論しないケースもあるでしょう。その一方で、批判は間違っていると確信して反論する著者ももちろんいます。 こうした光景はめずらしくないだけに、あらかじめ弁明や正当化、謝罪や説明を表明する著者がいることにも不思議はありません。本書は「序文」に注目して、作家たちが序文でいかなる戦略を展開しているのかを紹介しつつ、個々の戦略を分類しつつ説明していきます。すでに起きているものであれ、まだ起きていないものであれ、攻撃に対する防御のために利用される戦場が序文であり、そこには文学者たちが編み出した戦略と戦術があるのです。 目次を見ていただければお分かりのように、想定されている「攻撃」は実に多種多様であり、それに応じて「防御」の戦術も多種多様です。西洋古典から近代文学に至るヨーロッパ文学に造詣が深いだけでなく、修辞理論にも通じた著者が、渉猟した膨大な作品から実例を選りすぐりました。そこで繰り広げられている作家たちの戦いの場に、本書で立ち会ってください。文学作品を読んでいる時には見過ごしてしまう巧妙なテクニックの数々を目撃し、驚愕すること、請け合いです。 [本書の内容] 第I部 序文の防御戦略を記述するさまざまな理論 第1章 伝統レトリック 第2章 メタ談話 第3章 ポリフォニー 第4章 読 者 第5章 言語行為 第6章 ポライトネス 第II部 攻撃側のさまざまな訴因 第7章 涜 神 第8章 猥 褻 第9章 剽 窃 第10章 背徳と反体制 第11章 性別や人種に関する規範に違反 第12章 有害無益 第13章 虚偽と実在指示 第14章 ジャンルの規則に違反 第15章 悪 文 第16章 不出来
-
-この女! きらい! パパをいじめて、きらい……。死の床に横たわった父の身体の下に隠された、美しい女の写真は、幼ない未来子に、生まれて初めて人を憎む気持を教えた。あれから、何年の歳月が、流れたことだろうか。あの女、演劇界の女王といわれる鳳しのぶの一人娘として、映画界入りした未来子は、たちまちスターの座についたのだった……。華やかな日々、肉体を通りすぎた何人もの男たち……。いつしか母と似た道を歩むようになった未来子の心は、だが、いつもひえびえと孤独だった。硝子細工のような繊細華麗な女体に、妖しく燃える炎を秘める、ひとりの女優の愛と性を描く。
-
-「モンスターU子の嘘」作者の悪女小説。 「演じること。それがわたくしのすべてです。女優・清宮朝子も藝の神様が与えて下さった役だと思い、一生懸命演じております。わたくしに素顔なぞいりません――」 誰もが目を奪われ、憧憬の眼差しを向ける銀幕のスタア・清宮朝子は、数々の名作を残すも、突如、姿を消してしまう。 それから、月日の流れた平成二十五年春。ある保険会社のテレビCMを機に再燃した清宮朝子ブームを背景に、彼女を大伯母にもつ女優・清宮凜子、そして彼女の母で元女優の清宮祥子は、某テレビ局の開局六十周年期年のドキュメンタリードラマ「清宮朝子を探して」の製作記者発表会見に臨んでいた。伝説の女優を係累に持つ凜子が、再現ドラマで朝子を演じるという話題性で、多くの報道陣が詰めかけていたのだ。半世紀を経て、謎の失踪を遂げた朝子の狂気の第二幕が今、上がる。
-
4.37回結婚した彼女が真実に愛する人は? ハリウッド黄金期に活躍した大女優が人生の最期に明かした秘密と贖罪の物語 雑誌『ヴィヴァン』の新人記者モニークは、隠遁生活を送る往年の大女優エヴリン・ヒューゴの独占記事を任される。エヴリン自身がモニークを指名してきたというのだ。なぜ自分が選ばれたのか困惑しながらも、モニークは女優が住むマンハッタンの高級アパートメントに向かった。現在79歳のエヴリンはグラマーで優雅な女優として一時代を築き、七度に及ぶ結婚生活を送り、その波乱に満ちた伝記を執筆し死後出版するよう提案してきた。怪しみながらも同意したモニークは、悲痛の事実を知らされることに… 号泣必至と話題、全米ベストセラー小説!
-
3.5
-
-来年、四十二歳になる千晶は、体のあちこちに衰えを自覚するようになり、それらを改善しようとホットヨガに通い始めた。忘れ物を取りにスタジオを訪れると、そこでヨガ友達の友子と顔を合わせた。 友子の口の悪さは皆が知るところだが、自分の顔に大きなコンプレックスを持っている千晶に向かって、歯に物を着せぬ言い方をする。 「千晶ちゃんね、痩せるだけじゃ意味ないのよ。あなたはプロポーションより、まず首から上に着目した方がいいって。四十を過ぎた大人の女性はトータル・ビューティーじゃないと意味ないのよ」 友子の辛辣な言葉にも理性を保ち、我慢してきた千晶だが、今回ばかりは……。 ミステリー界の新星、聖神吾の渾身の書き下ろし。
-
4.0女優とADが織りなすいつかのあなたの物語。 スキャンダルで仕事を失った女優の園田梨枝が10年ぶりに地元の田舎町に帰ってきた。理由は、謹慎明けの復帰仕事として渋々受けた「密着ドキュメンタリー撮影」のため。しかし、現場にやってきたのは生意気なバラエティ班AD・瀬野咲ただ一人。全くソリが合わない二人の前途多難な撮影がスタートする。 なるべくこっそり撮影をしたい梨枝の気持ちとは裏腹に小さな町で広まる噂。やがて、撮影のことを内緒にしていた梨枝の家族たちの耳にもその噂は入る。 父・康夫と大喧嘩の末、町を飛び出した梨枝。その父は今、末期ガンで生死の境を彷徨っていた。父の病状を知りながら、父を避けていた梨枝の帰郷に怒り心頭の家族。 果たして、ドキュメンタリー撮影の行方は? 梨枝と康夫の確執の顛末は?崖っぷちの女優と若手ディレクターが最後に見つけた自分達の居場所とは--? 新進気鋭の映像作家・有働佳史の初長編映画『女優は泣かない』がいよいよ2023年12月より全国劇場公開されます。公開に先駆けて小説版が登場。熊本を舞台にした「いつかの自分の物語」を小説版でもお楽しみください。
-
-
-
-金のためなら何でもやる、恐るべし女流探偵――その名は木俣マキさん。今回の依頼はセレブからであり、「夫の逢引現場を押さえよ」だ。 して、その場所は「山荘 雪うさぎ」。早速現場へと向かった彼女だったが、生憎の吹雪で他の宿泊客共々、閉じ込められてしまう。そしてそんな中、翌朝に一人の死体が…… だがなんと、それは依頼人の夫だった! 早くも金づるを失った木俣さん、はてさてどう出る? 【主要登場人物】 ●木俣マキさん(24):わがまま&身勝手が服を着ているような、瓶底眼鏡の女流探偵。(実は、超美形)。一に金、二に金、三、四がなくて五に男 ●田部是也(28):そのオタクな助手、あるいは召使い。通称「おにぎり君」。マキの魅力に呪縛されたままこき使われる、残念な男 ●船虫警部(38ぐらい):四恋署(よっこいしょ)の、これでも刑事課課長。通称ハゲ虫さん。ボロクソに言われながらもマキを頼りにしている。
-
-
-
-転んでも、ただでは起きない……どころか、倍返しさせるまでは起きない。通った跡には、一本たりともぺんぺん草を生えさせない。どんな悪銭でも平気な顔で身に付ける。恐るべし女流探偵――その名は、木俣マキさん。おまけにその風貌も黒ずくめに瓶底眼鏡と、他の追随なんぞ許しやしない。当作品は、そんな彼女と弟子の“おにぎり”こと田部クンが巻き起こすドタバタ現代活劇。身勝手な彼女、最後には必ずこう言い放つのであった――「木俣だけに、キマッタ!」【登場人物】●木俣マキさん(24):わがまま&身勝手が服を着ているような、瓶底眼鏡の女流探偵。(実は、超美形)。一に金、二に金、三、四がなくて五に男●田部是也(28):そのオタクな助手、あるいは召使い。通称「おにぎり君」。マキの魅力に呪縛されたままこき使われる、残念な男●船虫警部(38ぐらい):四恋署(よっこいしょ)の、これでも刑事課課長。通称ハゲ虫さん。ボロクソに言われながらもマキを頼りにしている。
-
-エンターテインメント性の高いホラー小説集。 一郎は生まれつきの霊媒体質であった。 自らの除霊力を生かして霊障に苦しめられる人々の力になりたい。 そう考えた一郎は、「除霊堂」と名乗って、地元函館で除霊・運命鑑定の事務所を始めた。 夜歩く人形、武士の怨霊、殺戮の九尾の狐……。 除霊堂は日々寄せられる相談に応え、不可思議な問題の解決に挑んでいく。 <目次> 序章 三人寄れば地獄行き 夜歩く人形 武士の怨霊 踏まれた神 愛の行方(ゆくえ) 顔が三つある死霊 悲しい女神 巫女(みこ)の末裔(まつえい) エンゼルさんをした少女たち 呪いの家と霊能者 決戦! 陰陽師 孔雀明王使い・龍我 バリ島の呪術師 殺戮(さつりく)の九尾の狐 <著者紹介> 吉田 開(よしだ かい) 昭和三十一年北海道函館市生まれ。昭和五十四年東北学院大学経済学部経済学科卒 業。三十代のときに弘法大師より霊能力・除霊力を授かり、以来八十件ほどの除霊を 行っている。また、占い(運命鑑定)もおこなっており、その数は四、五百件ほど。 除霊師・運命鑑定師・調理師。趣味は囲碁と懐メロ。酒好き。除霊堂奇譚は処女作。
-
4.1
-
3.7J・D・カー生誕百周年の記念祭に伴い日本に上陸した幻の本――とある未解決犯罪実録集に、カーが解決を示唆する走り書きを残したことによって『カーの設問詩集』と呼ばれている一冊だ。そこには、巨匠は真相に至ったものの、なぜか未解決のままとなっている「ジョン・ディクスン・カーの最終定理」と呼ばれる不可能犯罪の概要が載っていた。この書物を持ち主から借り受けた大学生・友坂は、所属するゼミの教授や友人たちを別荘に集めて推理合戦を楽しむが、彼らは想像しえない“不可能犯罪”の渦中に巻き込まれる。短編「ジョン・D・カーの最終定理」を完全改稿のうえ長編化した傑作ミステリ。/解説=宇田川拓也
-
-
-
-飼い犬ジョン万作は度々、鎖を千切って逃亡をはかる。それを追う主人公は謎の宗教の存在を知る「ジョン万作の逃亡」を含む5つの作品を収録。椎名誠の第一小説集。 本作用に表紙イラストを椎名誠が描き下ろし。巻末には、「対談 椎名誠×目黒考二」「電子書籍版あとがき」「椎名誠の人生年表」を掲載。 <目次> 悶絶のエビフライライス 米屋のつくったビアガーデン ラジャダムナン・キック ブンガク的工事現場 ジョン万作の逃亡 対談 椎名誠×目黒考二 電子書籍版あとがき 椎名誠の人生年表
-
-
-
4.2
-
3.8
-
3.0
-
-◎AKB48 北原里英 主演で映画化!◎死を賭けた「ババヌキ」――生き残るのは運じゃない。『リアル鬼ごっこ』『王様ゲーム』を超える、恐怖とサスペンス、そして頭脳戦!◎生き残りたければ、「ババヌキ」をしなさい。日本児童の学力低下を食い止める法案「義務教育延長法」が制定された。義延法では特に、日本の若者の人間力の向上を目指した。若者の優劣は、生命力と交渉力と僅かな運で決まる。選別するシステムの名は「校友カード」――それは、〈ババヌキ〉だった。◎赤沢千夏は県立の進学校に通う高校3年生。文科省の指導により、今日から3年生全員での“合宿”が行われる。合宿初日、担任からクラス全員で“ババヌキ”をすることが発表される。カードは各自10枚。カードの交換の仕方は各自の自由。決められた時間内であれば、校舎内の移動も自由。但し決められた時間には教室に戻っておかなければならない。カード交換により、手持ちにペアカードができたら教師に提出することができる。カードを全部教師に提出するか、「契約システム」を使って他人にカードを引き取ってもらうことができればクリア。カードの中には1枚だけジョーカーが含まれており、最後までジョーカーを持っている者が負け。ゆるい雰囲気ではじまった“ゲーム”だったが、その日の“敗北者”が決まった瞬間、生徒たちはこれが自らの命を賭けた“ババヌキ”であることを知るのだった…。生死を賭けたババヌキに最期まで生き残るのは誰なのか…。◎映画『ジョーカーゲーム』DVD、絶賛発売中!
-
3.0◎私立恵比寿中学 鈴木裕乃 映画初主演で映画化!◎さあ、“脱出ゲーム”の始まりです。今度のJOKER GAMEは残酷……。前作を超える、恐怖とサスペンス、そして頭脳戦! 本当の“恐怖のゲーム”は、ここから始まる! ◎日本児童の学力低下を食い止める法案「義務教育延長法」によって、生徒それぞれが命を掛けて行った『ババヌキ』。その死のゲームに敗北を喫した7名の少女たちが「矯正施設」に送られた。そこで待ち受けていたのは、新たな試練、『死の脱出ゲーム』。ジョーカーが仕掛けた数々のトラップをクリアして、彼女たちは悪夢のような死の連鎖から逃れる事は出来るのか?◎全国の高校で実施された「ジョーカーゲーム」により“敗者”となった者たちが集められた『矯正施設』。そこでは、女性指導官・大島由美のもと、7人の女子高生たちが暮らしていた。“矯正施設”という名称とはうらはらにのんびりとした生活を送っていた。弛緩したムードの漂う中、ある日「身体検査」が行われ、注射を打たれる。たちまち眠りに落ちる7人――そして目覚めた彼女たちを待っていたのは……謎の人物からのメッセージ。「さぁ、“脱出ゲーム”の始まりです。部屋には様々なヒントが隠されています。そのヒントを見つけ、皆で協力して解答を見つけ出し、この部屋から脱出してください」各自はヒントを解くためのアイテムをもたされており、共闘しなければ抜け出せない。だが……それぞれの思惑のもと、互いに疑心暗鬼に陥る7人。そして第一の犠牲者が……パニックに陥る残りの6人。果たして彼女たちは全ての謎を解き、生きてここから脱出する事が出来るのか?◎映画『ジョーカーゲーム 脱出』DVD、絶賛発売中!
-
-
-
-
-
-どこへでも行ける青年、 どこへでも行かせるアメリカ。 自動車を愛し、熟知していること。 そこが北米大陸のアメリカであること。 この2つさえあれば、人はどこにでも行くことができる。 目的も要件も思い出も仕事も家族も恋人も 「どこへ行ってもいい」という自由の前には関係がない。 モーテルを出て、外へ行くこと。 走り続けるに十分な広さがあること。 そこに一人でいることがもたらす大きな微笑には一点の曇りもない。 【著者】 片岡義男:1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。
-
-語りかける書簡からは肉声のような雰囲気が行間から立ちあがる。 1851~62年に書かれた手紙と日記を時期ごとに五章に分け、夫々の期間中に交わされた書簡、記録されたジャーナルを時系列的に訳し、解説を施す。 「私は敬愛という心情が本当に好きだが、それと同じくらい嫌悪するのは強い好奇心だ。しかし、長年の体験から実感するのは、残念ながら、人間一般には好奇心の方が敬愛よりはるかに顕著だということだ」(Letters Ⅲ376)
-
-「ずっとそんなふうに自分を苦しめたままでいることはできないよ──」 生きることへの深い洞察とリアリズムの融合した英国小説の真髄、新訳で登場。 【作品のあらすじ】 19世紀、大英帝国として栄華を極める前夜のイギリス田園地帯。製粉と酒造を生業とするタリヴァー家で、個性豊かな少女マギーは父と母、そして誰よりも愛する兄トムと暮らしていた。しかし穏やかで牧歌的な生活は、裁判敗訴をきっかけにした父の死により一変してしまう。父の怨敵に激烈な復讐心を燃やす兄。マギーは宿敵の息子フィリップから激しく純粋な恋情を向けられ、その心に応えたいと願いながらも、しかし兄との絆を断ち切ることはできない。追い打ちをかけるようにマギーの心は、いとこルーシーと婚約寸前の恋人スティーヴンとの狂おしい愛に揺れ動く。人として生きるのなら過去の絆を断ち切るわけにはいかない──少女マギーの葛藤が英国社会の日常を背景に辿られ、当時の知性と現実を描き出す英国小説の傑作。
-
-ジョージ・エリオットのリアリズムの進展と作者自身の道徳観の成熟の関係を探る。ジョージ・エリオットは道徳の基礎にシンパシー(共感)を置き、彼女のリアリズムの目的は、読者の登場人物への理解とシンパシーを高めて「人類の団結」を図ることであった。本書は「リアリズム」を、「登場人物の心理や外部事実の合理的で詳細な記述があること」と「物語中の出来事の蓋然性が高いこと」という基本的要件で捉える。そして物語中のシンパシーに乏しい人間の描き方のリアリズムの進展に焦点を当て、その背後にある作者自身のシンパシーの対象が拡大していることを読み取る。作品のリアリズムの進展は作品から見て取ることができ、また作者のシンパシーの対象の広がりはシンパシーに乏しい人間の描写に顕著に表れるからである。エリオット作品のリアリズムを通時的に論じる場合、初期作品はリアリズムに沿っているが中期作品以降は「道徳的寓話」であると見なすのが、エリオット存命の時代から20世紀半ばまでの定説であった。1948年に発表されたF・R・リーヴィス『偉大なる伝統』以降は、エリオットの後期作品が19世紀イギリスのリアリズム小説の傑作と見なされるようになった。しかし作品に登場するシンパシーに乏しい人物は、相変わらず個人もしくは社会にとって一律に有害であると考えられ、彼らの被害者的心理や、個人もしくは社会に対する影響の吟味はなされなかった。本書は従来の見方とは異なり、シンパシーに乏しい人物が、家族や社会にとって有害で追放されるか改悛させられねばならない存在から、後期作品においてシンパシーに乏しいままで家族をより大きな絶望から救うという肯定的価値をもつ存在へ、あるいはその被害者的心理も描かれる存在へと変化しているというリアリズムの進展をテキストの「描写」および「物語の時代背景」から検証する。このことは同時に、作者のシンパシーの対象の拡大を示している。 目次 第1章 エリオットの小説のリアリズム 第2章 エリオットの道徳観とシンパシーとリアリズム ──「ジャネットの悔悟」の比喩表現を例として 第3章 語り手の心の鏡に映らないヘティ ──『アダム・ビード』のリアリズム再考 第4章 洪水の結末とシンパセティックなトム ──『フロス河畔の水車場』におけるリアリズムの進展 第5章 シンパシーとシンパシーの欠如の交差 ──『ミドルマーチ』における道徳観の成熟とリアリズムの進展 第6章 『ダニエル・デロンダ』におけるモダニズム的手法の採用 ──人間の根本的善性への信頼の揺らぎ
-
-1894年4月21日にロンドン・アベニュー劇場で初演され、絶賛されたバーナード・ショー初の商業的成功作。 1885年のセルビア‐ブルガリア戦争を舞台に、街に逃げてきた兵士と名家の令嬢の出会いとロマンスを描きつつ、軍国主義を鋭く批判する。後に英国作家ジョージ・オーウェルが「おそらく、彼が書いた中でもっとも機知に富み、技術的にも完璧で、非常に軽い喜劇であるにも関わらず、後世に渡って語り継がれる劇となった」 と述べて絶賛した本作だが、残念ながら、現在ではほとんど手に入らない状況にある。 そこで、今回、第五弾となる上地王植琉の私訳古典シリーズでは、『武器と人』を新たな訳とともに注釈付きでお送りする。 本作は分冊版の「第一幕」から「第三幕」までに「あとがき」を加えた完全版です。
-
-1894年4月21日にロンドン・アベニュー劇場で初演され、絶賛されたバーナード・ショー初の商業的成功作。 1886年のセルビア‐ブルガリア戦争を舞台に、街に逃げてきた兵士と名家の令嬢の出会いとロマンスを描きつつ、軍国主義を鋭く批判する。後に英国作家ジョージ・オーウェルが「おそらく、彼が書いた中でもっとも機知に富み、技術的にも完璧で、非常に軽い喜劇であるにも関わらず、後世に渡って語り継がれる劇となった」 と述べて絶賛した本作だが、残念ながら、現在ではほとんど手に入らない状況にある。 そこで、今回、第五弾となる上地王植琉の私訳古典シリーズでは、『武器と人』を新たな訳とともに注釈付きでお送りする。 分冊版全三巻。本作は「導入」と「第一幕」を収録しております。
-
-『新聞王』ウィリアム・ハーストに才覚を見出だされ、ジャーナリストとして活躍した、ラルフ・デラヘイ・ペイン(1871-1925年)の『The Steam-shovel Man』。 1913年にパナマ運河の開通を見越して刊行された本作は、当時の風俗からパナマ運河の工事状況、そして南米をめぐる諸々の陰謀など、二十世紀初頭の南米の風俗を知ることができる傑作。長らく未邦訳となっていたが、この度、新訳&原書の挿絵付き&注釈付きで登場した。 不況のあおりを受けて失業した父親の代わりに、ウォルター・グッドウィンはパナマ運河に出稼ぎに向かうことになる。しかし、いざ到着してもなかなか仕事は見つからず、知らず知らずの内に南米を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれることになる……。 私訳古典シリーズ第十三弾
-
-星塔小史という謎の人物によって書かれ、明治41年(1908年)に出版された本作。 『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』でも紹介された、森鴎外『舞姫』と夏目漱石『坊っちゃん』の絶妙なパロディ冒険小説――『蛮カラ奇旅行』が、百年の時を経て(今さら)現代語訳&注釈付きで蘇る! バンカラ世界旅行なる、ハイカラを撲滅しに日本を出た島村隼人。道中で襲い来る悪漢を殺したり、人助けをしたり、とにかく鉄拳制裁の名の下にバンカラが暴れまくる。とにかく言動のすべてが狂っている。コンプライスなどお構いなし!もはやこれは明治期の「なろう小説」ではないだろうか!? こんな痛快な小説が明治期にありました……上地王植琉の私訳古典シリーズ第六弾! 完全版は分冊版第一巻から第三巻の内容に、「あとがき」を加えたものになります。
-
-星塔小史という謎の人物によって書かれ、明治41年(1908年)に出版された本作。 『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので21万字くらいかけて紹介する本』でも紹介された、森鴎外『舞姫』と夏目漱石『坊っちゃん』の絶妙なパロディ冒険小説――『蛮カラ奇旅行』が、百年の時を経て(今さら)現代語訳&注釈付きで蘇る! バンカラ世界旅行なる、ハイカラを撲滅しに日本を出た島村隼人。道中で襲い来る悪漢を殺したり、人助けをしたり、とにかく鉄拳制裁の名の下にバンカラが暴れまくる。とにかく言動のすべてが狂っている。コンプライスなどお構いなし!もはやこれは明治期の「なろう小説」ではないだろうか!? こんな痛快な小説が明治期にありました……上地王植琉の私訳古典シリーズ第六弾! 全三巻。第一巻は「はしがき」から「その十 盗賊の巣窟」までを収録しております。
-
3.7ビジネスマンの命運は、たった1枚の紙切れに左右される! テレビ・ビデオ・音響機器メーカーとして世界中で事業を展開する大企業、エコー・エレクトロニクス工業の宣伝部副部長・広岡修平に、突然、辞令が突きつけられた。異動先は「人事部付」。それまで社内の出世レースのトップグループに入っていた広岡に、左遷される理由は思い当たらない。 仕事に対する情熱と正義感では引けをとらず、社内でも高く評価されていたはずの広岡が脱落したのは、なぜか? その内実を自ら調査し始めると、自らの後任者が現会長の息子であることが判明。ファミリー企業に巣食う利己的な思惑と、会社内に蔓延する保身、讒言、足の引っ張り合いの実態が見えてきた……。 ビジネスマンの人生を左右する「辞令」のカラクリを暴き出すビジネス小説界の「現代の新古典」! 解説・加藤正文
-
-
-
3.0
-
3.4
-
4.3
-
-
-
-
-
4.2
-
3.7
-
4.5
-
-
-
-徳富蘆花『不如帰』の浪子、島崎藤村『破戒』の丑松、樋口一葉『十三夜』のお関……。著者が明治期に発表された数々の名作の中から、人権にかかわる問題に着目し、作中の人物を通して、その時代の断面を検証、解説。 時代を超え、現代を生きる私たちの自己点検にもつながる人間認識の確立という新たな視点を提言した良書。 目次 まえがき――本書を読む人のために 第一章 樋口一葉「十三夜」の世界 第二章 泉鏡花「照葉狂言」の世界 第三章 与謝野晶子「みだれ髪」の世界 第四章 徳冨蘆花「不如帰」の世界 第五章 田山花袋「重右衛門の最後」の世界 第六章 木下尚江「火の柱」の世界 第七章 島崎藤村「破戒」の世界 第八章 白柳秀湖「駅夫日記」の世界 あとがき
-
-構想30年!! 橋本治が挑んだ、空前絶後・前代未聞の全体小説、3000枚超の遺稿と共に遂に刊行! 千州最大の都会である比良野市では、志附子湾を埋め立てて「人工島」を作る計画が着々と進んでいた。それを知った国立千州大学二年生のテツオとキイチは、すでにある市民運動に共感することが出来なかったので、新しい反対運動を立ち上げる。彼らにとって唯一ピンと来るのは、「人工島? そんなのいらないじゃん」という、そのことだけだったのだ。大学ではテツオとキイチを中心に同好会が組織され、人工島建設への反対運動が動き始めるが、話はやがて彼らの父母、祖父母、兄弟、近所の人々の人生にまで脱線し、街全体の歴史とそこで生きる人々の姿が浮かび上がっていく。架空の地方都市を舞台に、この国の姿を描いた未完の大長編!! 創作の秘密を明かす500枚を超える「人名地名その他ウソ八百辞典」と、本作品の舞台である架空の街、比良野市及びその周辺について著者自身が描いた「人工島戦記地図」付。
-
3.7
-
4.0
-
-
-
3.0
-
-
-
5.0
-
5.01巻396円 (税込)新たな一歩を踏み出す場所 神社にまつわる14編のアンソロジー 初詣や七五三などの節目に、そして願い事をしたり大きな決断をしたりするときに、人々は神社を訪れます。 街の喧騒を離れ、穏やかなひとときを過ごすために神社に足を運ぶ人もいるでしょう。 本書はそうした「神社」を舞台にした、14編の泣ける物語を収録しています。 ライト文芸の世界で活躍する14人の著者が紡ぐ14編の物語を読み、 心休まるひとときを過ごしませんか。 そして、これまでご好評いただいている「泣ける話」シリーズですが、本書より収録12編を14編にし、1編あたりの分量も増え、大きくボリュームアップしています。 なお、以下の1編はマイナビ出版主催の短編小説コンテストの受賞作です。 【優秀賞】 『巫女のバイトをする理由』伊瀬ハヤテ 【収録作品】 『やさしくて、少しかなしいまぼろし』/桔梗楓 無気力に生きる黒田は仕事で回っていた神社である日、いないはずの妻の姿を見て…… 『巫女のバイトをする理由』/伊瀬ハヤテ 進路のことで友人との間がギクシャクしている実来。バイト先の神社に友人が来て…… 『バス停』/杉背よい 一年ぶりに帰郷した麻由利の前を通り過ぎた自転車。乗っていたのはアキだった。 『鎮守の森のあふちの実』/一色美雨季 妊娠中に浮気未遂をした夫と関係を続けるべきか迷う千佳。久しぶりに訪れた神社で…… 『神出ボーイミーツ鬼没ガール』/鳩見すた 八歳の夏に出会ったときから「あの日まで」、風子はずっと神出鬼没だった。 ほか9作品収録 『神頼みではなく、亀頼みを。』矢凪/『ひとつ足して』霜月りつ/『舞い散る、舞い継ぐ』溝口智子/『いつか見た日の』猫屋ちゃき/『お稲荷さん、引き取りにまいりました』日野裕太郎/『御神木は語らない』編乃肌/『幼き願い』朝来みゆか/『越えてぞ行かまし八重垣を』那識あきら/『ナギの葉っぱ』ひらび久美
-
3.0全編グロテスクな拷問シーンが繰り広げられる伝説の奇書 反逆者ダミアンの公開処刑に沸きかえるパリの大広場。興奮する群集の渦の中に若きあのサド候爵がいた。ダミアンに科せられる拷問の光景に見入りながら、侯爵は、これから自らを待ちうける荒波を前にして、短かいながらも数奇な自分の人生を振り返るのだった。彼に快楽を教えてくれた叔父サド神父、人を肉体から解放するために活動をした破戒同盟、異端の教えを口にするアンブレ師……。1757年3月28日、くい入るように拷問を見つめるサド侯爵は興奮に酔いしれていた。 “サディズム”という言葉の語源となったサド侯爵ことマルキ・ド・サドを主人公に、苛烈で残虐極まりない拷問スプラッタシーンが次々と繰り広げられる衝撃の作品。「電子版あとがき」を追加収録して、ついに復刊! ●友成純一(ともなり・じゅんいち) 1954年福岡生まれ。1976年、早稲田大学在学中に「透明人間の定理リラダンについて」が幻影城新人評論部門に入選。映画評などでも活躍したのち、1985年「肉の儀式」で小説家デビュー。官能的でバイオレントな作風が注目を浴びる。以後、スプラッター小説のパイオニアとしてだけでなく、SF、ホラー、怪獣小説などでも鬼才ぶりを発揮し、多くの著作を発表。またロンドン関連の著書も多い。現在はバリ島在住。
表示されていない作品があります
セーフサーチが「中・強」になっているため、一部の作品が表示されていません。お探しの作品がない場合は、セーフサーチをOFFに変更してください。