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夢の分析 生成する〈私〉の根源
私たちが見る夢は「神託」か「無意味」か? 仕切りのないトイレの夢、海に落ちて沈んでいく夢……。こうした夢が語る内面性と超越性の対立。古代から現代に至る人々の夢を辿りつつ、近代的な主体の誕生を読む。 【目次】 はじめに 夢を分析するということ 第一章 夢をめぐるフロイトとユング 1 反復夢とはなにか 2 精神分析と夢 3 神経症=意識と無意識の妥協形成 4 現実と幻想 5 夢を読む視点 「ごまかす」か「ごまかさない」か 6 予知夢をめぐって 換喩と隠喩 第二章 落ちる夢 超越性をめぐって 1 〈私〉という主体のあり方 2 垂直軸と水平軸 3 シャーマニズムの治療観 4 治癒夢の変遷 夢を「みる」から「つくる」へ 第三章 トイレの夢 内面性をめぐって 1 排泄 〈私〉をめぐる「せめぎあい」 2 「個人空間」としてのトイレ 3 神経症と祝祭 4 フィロバティズムとオクノフィル 5 内面性 川沿いの家の夢 6 「意味するもの」と「意味されるもの」 7 自意識としてのトイレの壁 8 対立するもののダンス おわりに 言霊論と記号論 注 -
本当はこわいシェイクスピア 〈性〉と〈植民地〉の渦中へ
『ヴェニスの商人』の人肉裁判、なぜ「血を流してはダメ」と気付いたの? ――名作にまつわる「こわい」問題群に挑む! アントニーはクレオパトラの何がそんなに良かったの?キャリバンとプロスペロー、関係のホントのところは?美少女も金貸しも奴隷も妖精も、みーんな性的で病的? 本当は<性>と<植民地>、そして<他者>をめぐる挑発が満載されたシェイクスピア名作群のスリリングな読み。 シェイクスピアは恐い。なぜならその演劇は私たち自身のなかに巣くう性差別主義を暴くからだ。シェイクスピアは怖い。なぜならその演劇は私たち自身が安住する植民地主義を撃つからだ。シェイクスピアは強い。なぜならその演劇は私たち自身の解放の可能性を指し示すからだ。だからシェイクスピアは面白い。でも、この本に書かれたシェイクスピアのほうが演劇そのものより面白い。 【目次】 プレリュード(前奏曲) 恋愛から植民地へ 第一楽章 キャリバンは怪物か? 『テンペスト』の魔術と呪術 間奏曲1 一四九二年に何が起こったか? 第二楽章 シャイロックの財産はどこへ? 『ヴェニスの商人』と放浪する資本 間奏曲2 イギリス人が見た〈他者〉とは? 第三楽章 デズデモーナに子どもができたら? 『オセロ』と逸脱する性 間奏曲3 シェイクスピアに現代の文化批評理論を適用する? 第四楽章 クレオパトラの鼻の高さは? 『アントニーとクレオパトラ』と魔女の血筋 ポストリュード(後奏曲) シェイクスピアとポストコロニアル批評のために ブックガイド・ヴィデオガイド あとがき 索引 -
武器としての<言葉政治>
<小泉>圧勝の謎!歴代首相の政治術、「言葉」から完全査定! 利益分配が不可能な現代、民主主義を動かす要因は「議員の数」から「国民の支持率」へ劇的に変わった。その変化を前に、首相たちはいかにして「言葉」で国民の意識を変え、支持を動員してきたのか。言葉によって新たな政治的現実を創出し、不人気政策にすら国民的支持を動員する新・政治モデル〈小泉型政治手法〉。戦後歴代首相の「言葉の力」との比較から、この新しい政治手法の可能性と限界をダイナミックに考察する。 【目次】 序 〈言葉政治〉とは何か 第一部 〈言葉政治〉能力から見た歴代首相の評価 第一章 〈言葉政治〉の諸類型 1 言葉とはどういう武器なのか 2 政治を振りまわす言葉 第二章 〈言葉政治〉の時代区分 1 民主主義のレトリックの時代 2 国家建設のレトリックの時代 3 課題解決のレトリックの時代 第三章 稚拙・未熟な〈言葉政治〉 1 〈言葉政治〉から見た首相のタイプ 2 稚拙な〈言葉政治〉 竹下登、森喜朗、村山富市 3 理屈者の〈言葉政治〉 橋本龍太郎、宮澤喜一 4 未熟な〈言葉政治〉 細川護熙、海部俊樹、小渕恵三 第四章 〈言葉政治〉の衝撃 1 〈言葉政治〉の本格化 中曽根康弘 2 〈言葉政治〉の真骨頂 小泉純一郎 第二部 不利益分配時代を動かす〈小泉型政治手法〉 第五章 〈小泉型政治手法〉の有効性 1 議会の支持より国民の支持 2 利益分配政治から不利益分配政治へ 3 首相使い捨てvs. プチカリスマ 4 シニカルなニュースショーへの対応 第六章 〈小泉型政治手法〉の陥穽 1 ポピュリズム批判の是非 2 政治のパーソナル化の過剰 3 期待はずれの恐怖 あとがき 還暦を迎えた戦後政治 参考文献 索引 -
道教の世界
「道」とはなにか。高度な哲学的思弁と卑俗な民俗信仰の入り交じる、混沌と矛盾に充ち満ちた不可思議な思想。教団・経典の解説から「気」の思想、妖怪怪異の世界にいたるまで、複雑怪奇な道教の世界の神髄を縦横無尽に解き明かす。 【目次】 はじめに 第一章 しいたげられた心の救い 老子/宗教/自然観 第二章 転変する世界の肯定 教団/経典/神統譜 第三章 その喧騒のただなかで 山岳信仰/仙人/女神 第四章 陰気が陽気を犯すとき 文学/怪異/年中行事 第五章 体のなかは虫だらけ 民俗/医療/日本文化 第六章 十中八九でたらめでも 学術史/学者/現在 あとがき 参考文献 索引 -
中国現代アート 自由を希求する表現
激動する歴史の中で人はいかに表現したか 文化大革命、毛沢東崇拝の嵐から「社会主義市場経済」へと、激動する現代史の中で、中国のアーティストたちはいかにして自由な表現を実現させてきたのか。いまや世界でもっとも注目される中国現代アートの展開をたどり、作品の数々を紹介。政治や経済の文脈からは決して知ることのできない、現代中国のエネルギーの根源を体感する! 【目次】 はじめに 第一章 中華伝統と革命伝統 中国現代アート史概観 1 二重の「負の遺産」と二つの衝撃 2 毛沢東様式の成立まで 3 文革打破 自由への宣言 4 試行錯誤の現代アート 第二章 解放を希求する表現 中国のパフォーマンス・アート 1 北京東村のパフォーマンス・アート 2 パフォーマンスと当局の介入 3 桎梏からの解放 第三章 「社会主義市場経済」下のアート 1 中華伝統と革命伝統の客体化 2 中国キッチュ 3 行為としての革命の記憶 4 大資本主義の行く末 第四章 描く女性、描かれる女性 「鉄の娘」からイノセントへ 1 プレモダンからモダンへ 商品化される女性と女性像 2 毛様式の女性たち 3 鉄の娘、アートの死滅 4 「星星」の女たち 5 イノセントからの女性アート 第五章 変革と保守 二〇〇〇年代の「前衛」アート 1 「前衛」の変容 2 アート工場の誕生、そしてミニマリズムへ 3 紅い激情への誘惑 「左手と右手」展 4 アートの異化効果 5 脳の中の自由 上海ビエンナーレ2004 6 新たな思想 終章 「世界」に参入する中国現代アート 1 救済としてのアート 2 「世界」と交わる 3 アートと自由 あとがき 主な参考文献・美術展 索引 -
中華人民共和国誕生の社会史
「普通の人々」の現実から描く「革命前夜」。共産党の指導者の闘いや知識人たちの言説ではなく、貧困と暴力、腐敗の中で生きた街の人々のリアリティから、21世紀の大国となった「中華人民共和国」の誕生を描く。 【目次】 プロローグ 第1章 「〓勝」を生きる 1 戦後基層社会の出発点 2 退役兵士たちの戦後 第2章 繰り返される悪夢 1 戦時徴発の再開と抵抗 2 抵抗の屈折と内向化 3 社会のきしみと不信感 第3章 富裕者を一掃せよ 1 都市貧民の救済と管理 2 富裕者への厳しい視線 3 敵意のたどりつく場所 第4章 滅びゆく姿 1 社会秩序の崩壊へ 2 難民流入とその対策 3 末端行政の空洞化 第5章 革命後に引き継がれた遺産 1 食糧徴発の継続と強化 2 土地改革とその社会的条件 エピローグ 注 参照文献一覧 あとがき 索引 -
対話の哲学 ドイツ・ユダヤ思想の隠れた系譜
わたしは世界の中心ではない。わたしはあなたから語りかけられるときに新しく生まれる存在だ。近代ドイツのユダヤ哲学を基に、自己中心主義からの真の脱却をめざす。西洋哲学2500年の誤謬を覆す新たな哲学 ! 【目次】 序章 現代の思想状況と二〇世紀転換期のドイツ・ユダヤ人 第一章 ドイツ・ユダヤ人と啓蒙主義 1 ユダヤ人の歴史 2 ヨーロッパ的〈教養〉の理想とユダヤ人 3 啓蒙主義とモノローグの思考 第二章 関係は関係なきもののあいだになりたつ ヘルマン・コーヘン 1 あるユダヤ人のカント主義 2 『ユダヤ教の源泉からの理性の宗教』 3 カッシーラーとローゼンツヴァイク 第三章 西洋哲学はモノローグの思考である フランツ・ローゼンツヴァイク 1 ローゼンツヴァイクの西洋哲学批判 2 新しい思考とメタ倫理的人間 第四章 モノローグの言語から対話の言語へ プラトン、オースティン、フンボルト 1 伝統的な言語理解 プラトンの言語論 2 オースティンの言語行為論 3 フンボルトの対話的言語論 4 二〇世紀におけるフンボルト・ルネサンス 第五章 対話の一般的構造 1 呼びかけと応答の文法 2 対話者という〈他者〉 3 対話の時間的構造 4 現代における「対話の哲学」 あとがき 引用文献 索引 -
聖徳太子の歴史学 記憶と創造の一四〇〇年
「聖徳太子」はいかにつくられ、変容してきたか? 「日の本のかやうにあしくなりたるも、皆上宮太子の愚よりはしまれり」――。遺物信仰の対象として熟成した「聖徳太子」に攻撃を加える江戸の知識人。フェノロサ、岡倉天心らの古美術調査がもたらした近代の転回。『日本書紀』の原像にはじまり、現在のコンテクストが成立するまでを描く記憶と創造の物語。 【目次】 序章 「聖徳太子」か「厩戸皇子」か 第一章 「聖徳太子」の原像 1 『日本書紀』のなかの「皇太子」 2 多くの名をもつ「皇太子」 3 聖は聖を知る 4 日本国の尸解仙 第二章 「聖」はめぐる 1 「聖徳」は、やはり「聖」 2 「上宮太子」と申す聖 3 生けるが如し 第三章 攻撃される「聖徳太子」 1 「上宮太子」の愚 2 林羅山、「春秋の法」を説く 3 檄を飛ばす荻生徂徠 4 タブーに挑む片山蟠桃 5 「笑語」する平田篤胤 第四章 法隆寺の「聖徳太子」 1 奈良博覧会 2 七種の宝物 3 梵網経に随喜の涙 4 聖霊奉還と宝物献納 5 宝物献納その後 第五章 「古美術」調査から生まれた「聖徳太子」 1 美術取調 2 仏教のコンスタンティヌス大帝 3 不世出の英傑厩戸皇子 4 近代の「聖者」 第六章 子どもたちの「聖徳太子」 1 天皇の年代記 2 小さな「聖徳太子」伝の出現 3 小さな「聖徳太子」伝の完成 4 「国民の覚悟」を担う 5 ゆるんだ政治の立て直し 終章 「聖徳太子」とは何か 参考文献 あとがき 主要人名・書名索引 -
信長とは何か
天下統一は必要だったか? 「武」の人信長。「力」のみを信じ、戦国大名でただ1人、天下統一をめざした男。だが、「力」に拠るものがいずれ「力」に倒れるのは必然であった。天下統一は必要だったのか? その日本史上の意義とは何か? 「信長」を根本から問い直す画期的論考。 【目次】 はじめに 第一章 「大うつけ」 若き日の信長 第二章 桶狭間 第三章 天下布武 第四章 岐阜城の信長 第五章 岐阜城下と楽市令 第六章 上洛 第七章 信長の敵 戦国時代とは何か 第八章 合戦と講和 第九章 公家になった信長 第一〇章 安土城下町(1) 城と家臣 第一一章 安土城下町(2) 町と楽市令 第一二章 本能寺の変 信長を殺したもの あとがき 年表 参考文献 索引 -
思想史のなかの臨床心理学 心を囲い込む近代
中世神学からフロイトへ意識と無意識の役回りが逆転! 「心」を「個人の内面」と同一とする発想が生まれた近代。意識の重視、言葉と意識の結びつきへの信頼を軸とする理論は、歴史の中で初めて生まれた心の捉え方であった。西洋近代文明の申し子・臨床心理学の「意識」観が、中世の「認識」観に較べていかに際立つかを検証する。 【目次】 プロローグ 臨床心理学の実像を求めて 第一章 「意識の学」としての精神分析 1 意識すれば治る!は本当か 2 革命思想から産まれた心理療法 3 臨床心理学の「体ハラスメント」 第二章 意識はどう扱われてきたか 1 意識は信用がなかった 2 神学と錬金術と心理学 3 古い無意識は近代まで生きのびた 第三章 「意識の国」の臨床心理学 1 派閥が「専門」になる時代 2 実証主義と「人間教」の関係 3 無意識の「発明」と意識のアンビヴァレンツ 第四章 無意識の宗教としての臨床心理学 1 臨床心理学誕生の舞台 2 新しい二元論は「心の囲い込み」 3 個人心理という神話とその限界 註 参考文献 -
ブッダ論理学五つの難問
論理と倫理が1つになる場所へ! イラク戦争がなぜダメか、ブッダの答えは? ブッダはほんとうに「一切を知る者」なのか? 仏教経典に完全保存された「論理学」はそれをあざやかに証明する。合理的であることは真理であること。存在論からイラク戦争まで、現代論理学が沈黙する「難問」に、ブッダが残した明快な「答え」。論理と倫理が1つになる場所へ! 【著者からのコメント】 インドの文献は、けっして読者に媚びることはない。だから、やさしくもないしわかりやすくもない。でも、本当のことを知りたいと思う人には、求めるものが自然に心に入ってくるように、そんな風に書かれている。 わたしもそんな本を書いてみたいと思って、力いっぱいやってみましたが…うまくいったでしょうか。 【目次】 まえがき 序論 論理の語り方 第一章 現代論理学は一切を語れるわけではない……一切を知る者であるとブッダが言ったこと 第二章 ブッダ難問に答える 【難問1】なぜ西洋論理学では因果を語ることができないか……生ずる性質のものは滅する性質のものである 【難問2】ブッダはどのようにして一切を語るのか……討論を通じてともに語るにふさわしい人は 【難問3】語りえぬものには沈黙せねばならないか……ただ感受されたもの、渇愛にいたるもの、悩みもだえるだけのものである 【難問4】因果の道を行くものはなぜ愚か者であってはならないのか……自己を愛しく求めるものは他を害してはならない 【難問5】因果の理法によって生きる者には自己は語りえないか……「尊師よ、誰が識別作用という食べ物を食べるのですか」「正しい問いではない」と尊師は言った インド哲学・仏教の一般書ならびに現代論理学関係書のご紹介 練習問題の解答 あとがき 注 索引 -
「歓待」の精神史 北欧神話からフーコー、レヴィナスの彼方へ
ここに現代思想のカギがある! 何ものかわからないものの訪れを無条件に受け入れて喜ぶ。この「歓待」の精神は、一方では、現代思想の重要なキーワードとして、ますます注目をあびている。フーコーやレヴィナスやデリダの思考は、どのような射程をもつのか。北欧神話に「歓待」の根源的なかたちを見出し、現代思想に架橋することで、新たな倫理を構想する、清新な論考。 【目次】 はじめに 第一章 北欧神話の基本構造 一 共同体としての存在 二 「内」と「外」を区切るもの 境界としての存在 三 北欧神話の基本構造 四 境界 第二章 「歓待」の萌芽 北欧神話が語り継いだもの 一 「時間」 二 世界および人間の創造 存在者の不安 三 「歓待」 四 北欧神話に見る「歓待」の萌芽から、現代へ 第三章 神話から現代倫理へ フーコーとレヴィナスを架橋として 一 フーコー 二 レヴィナス 第四章 「歓待」の倫理 一 「歓待」の非共同体性 二 「歓待」のパラドクス 三 シャーマニズム 四 パレルゴンロジック 第五章 「歓待」が生みだすもの 「共ー同体」へ 一 ローカルな共同体 二 「法」から「歓待」へ 三 「共ー同体」へ 終章 環境思想としての「歓待」の倫理 一 ディープ・エコロジー 二 今日の自然観 三 聴覚的自然観 注 あとがき -
日米同盟はいかに作られたか 「安保体制」の転換点 1951-1964
池田勇人政権こそが、日米安保の岐路だった。アメリカから「貢献」「負担」を迫られ日本が応じる―「大国」に脱皮せんとする池田政権が強化し、現在まで日米関係の根底に据えられてきたこの構図の核心に迫る。 安保闘争の余韻が残る中、「大国日本」を志向する池田勇人政権は、日米安保体制の大きな岐路に立っていた。アメリカが「負担」の分担を求め、日本がそれを受け入れるという今日に至る構図を決定づけた外交プロセスとはいかなるものか。歴代首相と、外相・外務省の意図と動向、そして「天皇外交」の実相……。外交文書を緻密に読み込み、解明する! 【目次】 はじめに 第1章 「独立」の希求と日米安保体制 一九五〇年代 第1節 日米安保体制の形成 1 日米安保条約の調印と日本再軍備 2 警察予備隊から保安隊へ 3 自衛隊創設への道 第2節 安保改定の実現 1 鳩山一郎政権の挫折 2 安保改定に向けて 3 安保改定とその意義 第2章 日米「イコール・パートナーシップ」の形成 第1節 池田勇人政権の成立 1 池田政権の「新政策」 2 総選挙と日米関係の修復 第2節 池田=ケネディ会談の成果 1 ケネディ政権の対日政策 2 池田=ケネディ会談 3 「イコール・パートナーシップ」の演出 第3節 アメリカの「主要同盟国」へ 高まる日本への期待 1 池田政権の米欧日「三本柱」論 2 アメリカの期待と不満 第3章 防衛問題をめぐる日米関係 第1節 池田政権の防衛政策とアメリカ 1 第二次防衛力整備計画の策定 2 中国の脅威をめぐる相克 3 高まるアメリカの軍備増強要求 第2節 「核密約」と米原潜寄港 1 「核密約」の確認 2 米原潜寄稿の実現 第4章 池田政権のアジア反共外交と日米関係 第1節 池田政権の「ビルマ重視路線」とアメリカ 1 ケネディ政権の対日要求 韓国とインドへの支援 2 「ビルマ重視路線」の形成と展開 3 タイとラオスへの援助 4 日緬経済技術協力協定の締結 第2節 インドネシアへの積極的関与 1 池田のアジア大洋州諸国訪問 2 紛争の激化と日米の対応 第3節 ベトナム問題と日米関係 1 池田政権の対南ベトナム政策 2 対南ベトナム緊急援助の実施 おわりに 注 主要参考文献 あとがき 索引 -
嘘の真理(ほんと)
「なぜ嘘をついてはいけないの?」 21世紀のフランスを代表する哲学者ジャン=リュック・ナンシーが「これまでで一番難しい」テーマ、〈嘘〉について語った楽しい哲学入門! 自らの少年時代や身近な社会問題を例にあげながら、聴衆である子どもたちとともに嘘について考えます。「誰でも嘘をつくんですか?」 「良い嘘もある?」 「動物は嘘をつくことができる?」 「嘘は真実にもなりえますか?」 「他人が嘘をついているのを見抜く方法は?」……あなたならどう答えますか? やわらかに、ときに茶目っけたっぷりに語られる「嘘の真理(ほんと)」は、「信頼」の問題へ、さらに著者が生涯をかけて考え続けた「共同体」の問題へと展開していきます。「嘘は根本的に、まさしく他人への関係なのです」。 ナンシーとその思索を明快に紹介した訳者解説とともに贈る、哲学への極上の招待! 【本書の内容】 嘘の真理(ほんと) 質問と答え 訳者による解説 訳者あとがき -
仏教の歴史 いかにして世界宗教となったか
インドで誕生した仏教は、いかにして世界に広まったか。その鍵は、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教など他の一神教とは異なり、仏教は現地の言語に翻訳されることを積極的に認めたことにある。本書の著者、ジャン・ノエル・ロベール氏によれば、仏教が中国に伝播するのは、同じインド・ヨーロッパ語族のユーラシア西部に伝わるよりもずっと困難だったはずだという。 チベット、モンゴルから中国、朝鮮、さらに日本へ、また、東南アジアやヨーロッパでは全く別の姿を見せながらも「仏教」としてひとつのまとまりを見せる「世界宗教」の変遷と広がりを、フランス屈指の東洋学者が平易に解説する。 なお著者は、日本語、中国語はもちろん、チベット語、サンスクリット語、ラテン語、ギリシャ語など多くの言語に通じ、日本仏教の研究などにより、2021年、第3回日本研究国際賞を受賞している。 チベット文献学の第一人者で、著者と旧知の今枝由郎氏が翻訳し、充実した訳注と解説を付した。巻末には関連年表、索引も完備。著者による「日本語版のための序文」も掲載。 原著=Petite histoire du bouddhisme: Religion, cultures et identites,.Edition J’AI LU, Paris, 2008 -
アガンベン 《ホモ・サケル》の思想
イタリアの思想家が注目を浴びるようになって、すでに久しい。中でも世界の思想を中心で牽引してきたのが、ジョルジョ・アガンベン(1942年生)である。そして、今日に至るまで多数の著作をコンスタントに発表し続けてきたアガンベンの代表作が《ホモ・サケル》と題された全4巻計9冊に及ぶプロジェクトであることに異論はないだろう。その構成は、以下のとおりである。 I『ホモ・サケル』1995年(邦訳:以文社) II-1『例外状態』2003年(邦訳:未来社) 2『スタシス』2015年(邦訳:青土社) 3『言語活動の秘跡』2008年 4『王国と栄光』2007年(邦訳:青土社) 5『オプス・デイ』2012年(邦訳:以文社) III『アウシュヴィッツの残りのもの』1998年(邦訳:月曜社) IV-1『いと高き貧しさ』2011年(邦訳:みすず書房) 2『身体の使用』2014年(邦訳:みすず書房) 1995年から2015年まで、実に20年をかけて完結したこのプロジェクトは、いったい何を目指したのか? 日本語訳も残すところ1冊となったいま、《ホモ・サケル》に属する4冊のほか、アガンベンの翻訳を数多く手がけてきた著者が、その全容を平明に解説する。 プロジェクトの表題として掲げられた「ホモ・サケル(homo sacer)」とは、ローマの古法に登場する、罪に問われることなく殺害でき、しかも犠牲として神々に供することのできない存在のことである。ミシェル・フーコーが「生政治(biopolitique)」と名づけて解明に着手したものの完遂することなく終わった問いを継承するアガンベンは、この「ホモ・サケル」に権力の法制度的モデルと生政治的モデルの隠れた交点を見る。裸のまま法的保護の外に投げ出された「ホモ・サケル」の「剥き出しの生(la nuda vita)」の空間が政治の空間と一致するようになり、排除と包含、外部と内部、ビオスとゾーエー、法権利と事実の区別が定かでなくなること――それが近代における政治の特徴にほかならない。 現在進行形の重大な問いを壮大な思想史として描き出した記念碑的プロジェクトは、われわれにとって尽きせぬヒントにあふれている。その最良の道標となるべき1冊が、ここに完成した。 [本書の内容] プロローグ アガンベンの経歴 第I章 〈閾〉からの思考 第II章 証 言 第III章 法の〈開いている〉門の前で 第IV章 例外状態 補論 「夜のティックーン」 第V章 オイコノミア 第VI章 誓言と任務 第VII章 所有することなき使用 第VIII章 脱構成的可能態の理論のために エピローグ 「まだ書かれていない」作品 -
カイエ・ソバージュ
神話を学ばないということは、人間を学ばないということに、ほとんど等しいかと思えるほどなのです――(本書より)。宇宙、自然、人間存在の本質を問う、はじまりの哲学=神話。神話を司る「感覚の論理」とは?人類分布をするシンデレラ物語に隠された秘密とは?宗教と神話のちがいとは?現実(リアル)の力を再発見する知の冒険。/ この一連の講義では、旧石器人類の思考から一神教の成り立ちまで、「超越的なもの」について、およそ人類の考え得たことの全領域を踏破してみることをめざして、神話からはじまってグローバリズムの神学的構造にいたるまで、いたって野放図な足取りで思考が展開された。そこでこのシリーズは「野放図な思考の散策」という意味をこめて、こう名づけられている。――「はじめに カイエ・ソバージュ(Cahier Sauvage)について」より -
金太郎の母を探ねて 母子をめぐる日本のカタリ
日本人なら誰でも知っている「金太郎」の母は誰だったのか? 奥山に住み、人を食らう恐しい鬼女「山姥」こそ金太郎の母だったことを出発点に、彼女の行方を求めて、古代から中世を旅していく。首を斬られ、肉体は朽ちているのに、わが乳飲み子のために乳房だけ残して乳を出す母の姿を御伽草子が描いているように、決して切っても切れない母と子の関係を探った果てに、「金太郎は日本人の祖である」という驚愕の事実と出会う。 -
完全解読 カント『実践理性批判』
世界初のこころみ 超難解哲学書を徹底的に読みつくす 大好評、知の高峰を読み平らげるメチエ「完全解読」シリーズ第3弾。カント三批判書の第二書にして、「善」の根拠を論理的に証明し「倫理」を哲学的に基礎づけた近代哲学の金字塔を徹底的に読み込む。現代の正義論もこの書なしにはあり得なかった! -
英語の階級 執事は「上流の英語」を話すのか?
「上流」の人は‘Pardon?’を使わない?! ワーキング・クラスからアッパー・クラスまで、話し言葉から見えてくる英国階級文化の世界! カズオ・イシグロ『日の名残り』の執事スティーヴンズ、『ダウントン・アビー』の執事カーソン、そしてP・G・ウッドハウスが生み出した名従僕ジーヴズ。英国の映画や小説には教養にあふれ洗練された英語を話す執事がよく登場する。あの言葉遣いや話し方は、「上流の」英語なのか――? ‘Pardon’や‘toilet’といった日本人にも身近な英単語は、実は英国では階級の指標になってしまう言葉づかいだった! 「執事の英語」を入り口に、アッパー・クラスや、ロンドンの「コックニー」、ビートルズの登場で世界的に有名になったリヴァプールの「スカウス」などの訛りのある英語、さらにアメリカ英語に英国人が抱く微妙な感情やBBC英語、RP(容認発音)まで、著者自身の経験も交えつつ、話し言葉と「階級」が織りなす複雑で、奥深い文化を描き出す。 何気ない表現から見えてくる、もう一つの英語世界にようこそ! 【本書の内容】 はじめに 序 章 「礼儀正しい」英語はややこしい? 第1章 執事の英語が語るもの――「洗練された」ロウワー・ミドル・クラス 第2章 「U」と「non‐U」――何が「上流」で、何が「上流ではない」のか 第3章 アメリカの悪しき(?)影響――アメリカ英語と階級の複雑な関係 第4章 アッパー・クラスの英語と発音――『マイ・フェア・レイディ』の舞台裏 第5章 ワーキング・クラスの英語――魅力的な訛りの世界 終 章 標準的な、「正しい」英語とは?――BBCの試行錯誤 おわりに――「外国人」の英語 主な参考文献 -
倭国神話の謎 天津神・国津神の来歴
復元される神々の物語! 4世紀神話の原像とは? 4世紀に成立した皇室の王権が改変した「それまでの倭国の歴史」。その痕跡は、今も膨大な神話群として残されている。別説・異説として顧みられなかったそれら神話を「すべて」読み尽くすことにより、神々の系譜を解明。戦後神話研究に新局面が拓かれる。(講談社選書メチエ) -
ことばと身体 「言語の手前」の人類学
わたしが話す。あなたが自分の体にふれる。このとき、何が交されているのか? わたしたちが会話をしているとき、そこではことばだけが交わされているのではない。どんなに些細な、他愛のないおしゃべりであっても、自分の体にさわったり、身ぶりをしたり、ごく短い間があったり、ときには何かを演じたり、身体まるごとつかったコミュニケーションが繰りひろげられている。ブッシュマンの家族、日本の大学生、民俗芸能という多様な会話の現場を、徹底的にミクロに観察することで、コミュニケーションとは何か、社会とは何かという大いなる問いに挑む。現象学、社会システム理論、言語行為論などを参照しながら、徹底的に「身体」に根ざして考える"唯身論"人類学の試み。(講談社選書メチエ) -
マイケル・ポランニー 「暗黙知」と自由の哲学
20世紀の「万能人」のユニークな思想 本邦初の本格紹介。科学の根源を問い、暗黙知理論を提唱した異色の科学哲学者。科学のみならず経済学・哲学・宗教学の分野においてもユニークな思考を展開した希代の天才の思想の全貌を初めて紹介する。(講談社選書メチエ) -
大英帝国の大事典作り
ブリタニカ、OED、DNB。大辞書、大事典プロジェクトにとり組んだ巨人たちの物語! 『ブリタニカ百科事典』Encyclopaedia Britannica 『オックスフォード英語辞典』Oxford English Dictionary 『イギリス国民伝記辞典』Dictionary of National Biography……。18世紀後半から19世紀後半にかけて、イギリス人はこの3つの大辞書、大事典を編纂した。世界をリードする気概にあふれた当時のイギリス社会は、なぜ、このような大事業を敢行したのか。それらは、どのように利用され、効果を発揮したのか。近代の知のインフラを整備した人々と歴史を検証する。(講談社選書メチエ) -
「女装と男装」の文化史
古今東西を問わず、演劇や文学、映画、アニメ、漫画に数限りなく登場してきた「女装する男」と「男装する女」。彼/彼女たちは、なぜ性の境界を超えようとしたのか?“変態”“異常”“倒錯”という言葉で片付けてしまうだけでは気がつかない、性と愛の現実がそこにある。「男と女」という単純な二項対立がsexとgenderの視点をからめると無限の性別へと変化していくさまをつぶさに論じ、人間の生の多様性に軽やかに迫る。(講談社選書メチエ) -
崇高の美学
化石からヒロシマまで……現代を問い直す思考。カントによって確立された「崇高」という概念が、ヒロシマの惨劇を生んだ現代を考え直す思考として生まれ変わる! 化石への凝視からはじまる美学の新たな可能性。 【目次】 はじめに 序論 石ころへのオマージュ 第一章 「崇高」とは何か 1 「崇高」という語の起源から 2 バークまでの崇高美学の歴史 修辞学から新しい大地の美学へ 第二章 崇高美学の体系化 バークからカント、そして現代へ 1 バークの「崇高」概念 2 バークからカントへ 『判断力批判』の意義とその限界 3 カントからふたたびバークへ 現代崇高論との交叉点 第三章 山と大地の「崇高」 カントの人倫的崇高を迂回する道 1 ジンメルによる山岳美学と崇高 造形芸術および廃墟との比較 2 ラスキン『近代画家論』にみる地質学的美学 3 「地」を愉しむ「渓歩き」へ 第四章 アメリカ的崇高と原爆のヒロシマ 自然 vs.技術 1 「アメリカ的崇高」と現代テクノロジー社会の帰趨 2 アメリカン・テクノロジーの帰結、あるいはヒロシマの出来 註 あとがき -
海から見た日本人-海人で読む日本の歴史
日本は海人列島である。「単一的」な外見の下に重層する多彩な貌……「海」をキーワードに人類学・神話学・考古学などさまざまな分野の知見を学際的に綜合し、日本人の複合的構造性を解明する。従来の日本人論を一新する画期的論考! 【目次】 はじめに 序章 和洋洋折衷の島 小笠原から 第一章 ホモ・サピエンスと日本列島 1 人類の起源と最初の移動 2 日本人の起源論争 3 近年の見解 4 日本語の系譜 5 「日本人」をどう考えるか 第二章 海を越える黒い石と白い貝 1 人類の海上渡航 2 海を越える黒い石 3 日本列島と黒曜石 4 海を渡った貝 5 南太平洋のイモガイ製腕輪 6 旅というハビトゥス 第三章 海を渡ってきた稲 1 海を越えた稲 2 稲の遺伝子、ヒトの遺伝子 3 弥生時代の景観 4 倭の水人 5 倭人の心象風景 第四章 海人の比較考古学 1 海を越える人々 2 海人の民族考古学 3 日本古代の海人 4 海人という生き方 第五章 海を越える魂 1 魂を運ぶ舟 2 東南アジアにおける船のシンボリズム 3 海辺の聖地 4 星の航海士 5 儀礼としての航海 第六章 海人列島残照 1 海人列島 2 琉球から 3 海人文化ルネサンス おわりに 引用文献 索引 -
ミシシッピ=アメリカを生んだ大河
「偉大なる褐色の神」を旅する ミシシッピはアメリカという林檎を貫く「芯」である。 この川を知らなければアメリカは語れない! ニューオーリンズの情熱的なクレオール文化。デルタの苛酷な環境が生んだブルース。公民権運動の舞台メンフィス……なぜジャズはニューオーリンズで生まれたのか。先住アメリカ人が辿った涙の旅路とは? NYや西海岸を見てもわからない、アメリカの本質を探る4千キロ縦断の旅。 【目次】 プロローグ アメリカのなかのミシシッピ 第一章 ミシシッピ七つの道 1 探検の道 2 輸送の道 3 人が変えた道 4 移住と入植と政治の道 5 自然の道 6 文化の道 7 国家の精神的な中心としての道 第二章 川がはぐくんだ文化 河口からニューオーリンズへ 1 河口の「発見」 2 ニューオーリンズの町と住人 3 ジャンバラヤとガンボの国 ケイジャン・カントリー 4 プランテーション王国 第三章 デルタをゆく 1 オールド・リヴァー・コントロール 2 ナチェズに魅せられた人びと 3 ヴィクスバーグと南北戦争 4 デルタ地帯 綿花・ブルース・ナマズ 5 メンフィス 公民権運動と音楽の史跡 6 ミシシッピを往来する木・船・人 第四章 ミシシッピとマーク・トウェイン セントルイスからハンニバルへ 1 セントルイスが生んだ人びと 2 ハンニバル=マーク・トウェインのふるさと 第五章 ミシシッピから歴史が見える ノーヴーから四つ子都市まで 1 ノーヴーとモルモン教 2 「川の町」としての四つ子都市 第六章 源流へ 1 双子都市 ミネアポリスとセントポール 2 源流の探索者たち エピローグ ミシシッピとは何か 参考文献 -
パウロとペテロ
2人がいなければ今日のキリスト教はなかった! イエスの筆頭弟子にして復活後の教会指導者ペテロ。迫害者から異邦人伝道者へと回心したパウロ。古代ローマ帝国の片隅ではじまった運動を世界宗教にまで伸展させた2人の実像は? そして、彼らのユダヤ人・異邦人への宣教戦略とは? 2大伝道者の足跡を辿る1冊。 【目次】 序章 世界宗教への立役者 第一章 ペテロ イエスの筆頭弟子から最初のキリスト教伝道者へ 1 アンティオキアの出来事 2 召命以前のペテロ 3 弟子への召命の出来事 4 イエスと弟子仲間との生活 5 イエスへの信仰告白=ペテロのメシア告白 6 イエスの受難に直面して=イエスの否認 7 使徒としての宣教準備 8 筆頭使徒としての活動 9 エルサレムにおける教会の指導者として 10 ユダヤ人伝道の担い手として 第二章 パウロ 教会の迫害者からキリストの伝道者へ 1 パウロが生きた時代 2 回心以前のパウロ 3 ダマスクス途上での回心 4 ペテロとの面談 第三章 ユダヤ人の伝道者ペテロの足跡 1 ペテロの伝道活動 2 律法の重要性をめぐって 3 ペテロの伝道の特徴 4 その後のペテロ 第四章 異邦人の伝道者パウロの活動 1 伝道者としての足跡と伝道戦略 2 アンティオキア教会の新しさ 3 使徒会議 4 第一次伝道旅行 キプロスとガラテヤで 5 ガラテヤの信徒に宛てた手紙 6 再び伝道の旅へ 7 三度目の伝道の旅 小アジアのエフェソを本拠に 8 パウロの最後 終章 伝道者ペテロとパウロ 文献案内 註 あとがき -
イタリア的 「南」の魅力
時代はイタリア イタリア人が日本語で書いた最新イタリア案内 明るく暗く、貧しく豊か、悲観的な楽観主義者。矛盾するものが矛盾なく同居する不思議な国。「不信の文化」「カーニバルとユートピア」「南型の思想」をキーワードに、日本人の知らないイタリア人の素顔を、食・宗教・音楽・政治に探る。イタリア人が日本語で書いたイタリア案内! 【目次】 序章 「mangiare(食べる)、cantare(歌う)、amore(恋愛)」ってなに? イタリア人は「陽気」で「気楽」か 第一章 食にみるイタリア それは貧しさから始まった 第二章 イタリア人の宗教観 「常識」としてのカトリック 第三章 歌うイタリア 「イタリアン・ポップス」の深く多彩な世界 第四章 イタリア政治の不思議な世界 カーニバルとユートピアのあいだ 第五章 イタリア的悲観主義 明るさは暗く、暗さは明るい 終章 イタリアから何が学べるか 新しい人間観へ 註 参考文献 あとがき -
「株式会社」長崎出島
お奉行様から花魁まで、みんなこの街の「社員」だった 街全体が丸ごと「会社」だった不思議な都市。対外貿易のためだけに創られ、事業所長=奉行からプロフェッショナルな地役人、テクノクラート・オランダ通詞、そして長屋住まいの日雇い稼業の労働者から丸山の花魁にいたる全住民が組織化され、街をあげて貿易会社の社員のように働いていた。日本の出島=江戸時代の長崎を活写する。 【目次】 序章 「組織」としての都市 第一章 貿易と繁栄 1 貿易都市の黎明 2 キリシタン都市長崎 3 長崎をつくった人々 4 都市長崎の成長 第二章 「株式会社長崎」の誕生 出島・唐人屋敷・長崎会所 1 オランダ東インド会社 2 出島とオランダ人 3 長崎の唐人たち 4 システムとしての長崎貿易 第三章 長崎のお役人たち 1 代官一〇〇〇両奉行三〇〇〇両 2 プロフェッショナルな地役人 3 日雇い稼業 第四章 貿易都市・歓楽都市 1 歓楽都市「長崎」 2 遊女=歓楽都市の主役 第五章 都市と組織の間で 1 武士と町人の矛盾 「長崎喧嘩」の深相 2 フェートン号の衝撃 3 米不足の脅威 終章 ボーダーを越えて 1 「会社都市」の終焉 2 「異域」という生き方 新たな「出島」への可能性 参考文献 あとがき 年表 索引 -
手塚治虫=ストーリーマンガの起源
ベストセラー『人は見た目が9割』著者による日本初の本格漫画評論! 手塚治虫の何が具体的に新しかったのか?なぜ戦後日本という時・場所に生まれ、かくも洗練された表現技法を手にするに至ったのか?「手塚治虫」という天才の膨大な発明群を1コマ1コマ精査し、ストーリーマンガの起源に遡行する。日本のマンガ研究はここから始まる! 第28回サントリー学芸賞【芸術・文化部門】受賞 【目次】 はじめに 第一章 手塚以前の漫画と戦後の漫画状況 1 手塚以前の漫画 2 先行する児童文化 3 手塚治虫、登場 第二章 アニメ、映画、SFと手塚マンガ 1 アニメの影響 2 映画の影響 3 SFの影響 第三章 手塚はマンガの何を新しくしたのか 1 演劇の影響 2 手塚の斬新さ 第四章 ストーリーマンガの方向性 1 『漫画少年』 2 劇画との葛藤 3 ストーリーマンガとは何か 註 あとがき 索引 -
ブリティッシュ・ロック 思想・魂・哲学
ハイデガーの実存の「開け」の概念とロック。「新たな霊性を啓くメディア」としてのロック。テクノロジーとロックの関係、新たな芸術ジャンルとしてのロックなど、思想の側からロックという「現象」を深く読み解く未曾有の論考。 【目次】 第一章 ロックの歴史 1 はじめに ロックとはなにか 2 ロックの誕生 ロックンロールに始まる 【略】 8 ピンク・フロイドとイエス 9 EL&Pとジェネシス 10 カンタベリー・ロックとその系譜 11 パンク・ロックの勃興 12 ヘヴィ・メタル・ロックの逆襲とパラノイア的心性の問題 13 ロックの巨大産業化とサブジャンルの複雑化 14 ロック・ジャンルのトライブ化 第二章 ロックという哲学思想 1 ニーチェ的経験からはじまる 2 〈悲劇〉としてのロック 3 ロックは「意志」の産物である 4 ロックを歌う「声のきめ」 5 「声」と「気分」の密接な関わり 6 自己開示を導くものとしてのロック 7 ロックを語ることの「自己表出」性 第三章 ロック・霊性を啓くもの 1 神秘主義思想とロック・ミュージシャン 2 アレイスター・クロウリーとジミー・ペイジ 【略】 6 シュタイナーの「音階体験」理論とロック・コード・スケール 7 ロックとオレクシス(絶対を希求する欲望)との結びつき 第四章 現代アートのなかのロック 1 ロック的な美意識の誕生 2 レコード・ジャケットのアート感覚 ヒプノシスの世界 3 ロジャー・ディーンとマーカス・キーフの仕事 4 アートスクール出身のロック・ミュージシャンたち 【略】 8 ブライアン・イーノとヴィデオアート 第五章 ロックの歌詞の世界 1 歌詞を通してロックを探る 2 ラブソング 【略】 6 内省的なメッセージを持つ歌詞 「エピタフ」 7 「スターレス」をめぐって 8 「天国への階段」のメッセージ 9 歌詞の文学性 第六章 ライフスタイルとしてのロック 1 ヒッピー・カルチャーとロングヘア 【略】 6 ドラッグ・カルチャーとロック 第七章 ロックは滅んだか 1 ロックは音楽ではない? 2 アンチ・ミュージシャンとしてのブライアン・イーノ 【略】 5 デジタル・テクノロジーがロックに引導を渡したか 第八章 ロックの未来形 1 ロック・スピリットの帰趨するところ 2 音楽シーンの衰退? 3 ロックの未来形? あとがき 索引 -
「社会」の底には何があるか 底の抜けた国で〈私〉を生きるために
『「社会」の誕生』(2011年)、『「社会」のない国、日本』(2015年)に続く講談社選書メチエ「社会三部作」、完結。 前著以降の約10年、日本は幾度も自然災害をこうむり、実質賃金が上がらぬまま円高から円安に移行し、物価高に苦しめられている。それに呼応して、さまざまなレベルで分断や分離が進行しているように見える。そして、著者もこの期間に人生の苦難を経験し、三部作の構想をいかに完結させるか、完結させられるかを考え続けた。 「日本ではフィクションつまり作り話が増殖し、蔓延し、しまいには事実や現実に取って代わってしまった。庶民の実態とはかけ離れた「好況」、「経済成長」、科学的事実を無視あるいは隠蔽した「安全・安心」、違法な証拠隠滅さえ厭わず明らかな嘘を押し通す国政の運営等々。あげくの果てには荒唐無稽な陰謀論の不気味な浸透……」――そんな現状認識から始める著者は、こう断じる。「今日ついに我々は、ばらばらになり、互いに共に生きられなくなっている。強者・弱者、マジョリティ・マイノリティの話だけではない。人が人として、個人が個人として生きられなくなっている。人々は分断され、「互いに同じ人間同士」であると思えなくなっている」。 それが証拠に、コロナ禍で叫ばれた「ソーシャル・ディスタンス」に、この国の人々はいとも容易に適応したではないか。では、「社会」が存在しないとは、「社会」が存在しないところで生きるとは何を意味しているのか。――この根本的な問いに答えるために、著者は「社会」を成り立たせる最も根底にあるものを問うことを決意した。前2著での議論を簡潔に振り返り、その末に到達する結論とは? 誰もが考えるべき問いを静かな感動とともに伝える完結篇にふさわしい名著。 [本書の内容] 序 章 分解する日本社会 第1章 社会の誕生、人間の誕生、社会学の誕生 一 トクヴィル──民主主義と人民 二 デュルケーム──社会学の創造 三 ベルクソン──社会的事実の基底 四 永井荷風──日本「社会」の不在 第2章 社会的生の規範性と社会学の基底 第3章 社会を成す=為す個人──デュルケーム道徳教育論 一 道徳性の第一、第二要素──規律の精神と集団への愛着 二 道徳性の第三要素──意志の自律性 三 意 志──生たる社会 第4章 合意に依らない民主主義 一 トクヴィル民主主義論の基底 二 ベルクソンの民主主義論 三 民主主義の根底 第5章 社会の根底 一 生という事実 二 賭けの網 三 生という絶対所与 四 社会と社会学の現実性=実在性 五 民主社会を生きるということ──平等と自由、意志の自律と多様性 終 章 現代日本を生きるということ -
ときは、ながれない 「時間」の分析哲学
時間は流れるものではない? 「わかったつもり」をひっくり返す! 哲学の大家による、脳を揺さぶる論理的思考のレッスン。 私たちが常日頃から経験し、わかったつもりになっている「ときのながれ」なるものは、実はどこにも存在しない! 「ゆるい関係説」「カテゴリーミステイク」「現在主義」など、キーフレーズを通して当たり前の認識を検証し、「カントの散歩」「棚から無理数」「みずみずしくない水」など、不思議で魅力的なメタファーを自在に操りながら、「時間」という限りなく身近でどこまでも深遠な概念について、読者が自分の頭で考えることをやさしく促す。哲学の大家が自らの実践を通して示す、知的刺激に満ち、あらゆる応用可能性にひらかれた、究極の論理的思考マニュアル! [目次] はじめに 第1章 そもそも時間とは? 第1節 目に見えない時間は信じない? 第2節 ポーランド国旗:うごきがない変化 第3節 説明とカミソリ:なにも起きなければ時間はない? 第4節 なにものでもない:時空の片方 第5節 欅家と欅家の人びと 第6節 欅家は欅家の人びとの集合ではない 第7節 前後あとさき:時間はいれもの? 第8節 欅家の桃子:ゆるい関係説 第9節 カントの散歩:時計とは? 第10節 時間をはかる:なにをはかる? 第2章 時間はもの? 第1節 フルーツゼリー:空間の「メタ容器」説 第2節 ナプキン:時間は境界 第3章 インテルメッツォ:ジョン・マクタガート・エリス・マクタガートの介入 第4章 ときはながれる? 第1節 両国橋から見おろす:「ながれる」の意味 第2節 棚から無理数:「ときはながれる」はナンセンス 第3節 みずみずしいスイカ:みずみずしくない水 第5章 いまあるのみ? 第1節 オプティミスト従姉:未来はある? 第2節 過去はあった:過去はない 第3節 秒針のうごき:伸び縮むいま 第4節 まざる? とけこむ?:過去の記憶 第5節 ときのループ:普遍時制 第6節 リアリティー:未来、過去、現在すべてあり おわりに -
メランコリーの文化史 古代ギリシアから現代精神医学へ
憂鬱(メランコリー)――この厄介なる気分を、人類はどのように捉え、対処し、表現してきたのか? 古代から現代に至る芸術・医学・哲学を渉猟し、時に死や恐怖と、時に創造的知性や天才と結びつけられ、また治療の対象ともなってきた「メランコリー」の系譜を明らかに。さまざまな災厄に見舞われる現代という時代――親しい人との別れ、死や病への恐怖、ストレスフルな仕事や人間関係、経済格差、パンデミック、気候変動……――を知的に捉え、生き抜くためのパースペクティブは、その「遺産」のなかからもたらされる。 泰斗による決定版文化史。 [本書の内容] 第1章 古代から中世へ 1 古代の苦悩 2 病理から気質へ――四体液説 3 天才の憂鬱――プラトンからアリストテレスへ 4 医学の中世 5 土星のメランコリー 第2章 ルネサンスと宗教改革 1 幾何学の憂鬱 2 宗教改革 3 遠近法の誕生 4 宗教的メランコリー 第3章 近代の始まり 1 モンテーニュ 2 デカルト 3 治療されるメランコリー 4 バロックの想像力 第4章 現代へ 1 精神医学と悪魔 2 精神分析の登場 3 喪とメランコリー 4 根源的な喪失 -
ウィトゲンシュタインと言語の限界
本書の著者ピエール・アド(1922-2010年)は、古代ギリシア思想や新プラトン主義の研究者として、コレージュ・ド・フランス教授を務めました。その著作は、古代哲学のみならず、フランシス・ベーコンやデカルトなどの17世紀思想、ゲーテ、ヘーゲルからニーチェ、ベルクソン、ハイデガーに至る19~20世紀の思想まで、幅広い知識に裏打ちされた類を見ない豊饒さをそなえています。その著作はヨーロッパの知識人に大きな影響を与えるとともに、アメリカでも多くの読者を獲得してきました。 ところが、日本では2020年に『イシスのヴェール』(法政大学出版局)が出版されるまで、訳書は1冊も存在せず、それゆえ注目を浴びることもなかったというのは、豊かな翻訳文化を育ててきた国では奇妙な欠落だったと言わざるをえません。2021年には『生き方としての哲学』(法政大学出版局)の邦訳が出版され、ようやく日本でもこの碩学の思想に触れる準備が整いつつあります。今こそ、アドがフランスで初めて本格的にウィトゲンシュタインを紹介した人物でもあること、そして唯一無二の解釈を残していたことを伝える本書を読むべき時だと言うことができるでしょう。 研究者にさえ顧みられずにきた本書に収められた論考は、『論理哲学論考』と『哲学探究』しか出版されていなかった時期に書かれたものにもかかわらず、後続の者が見出すことのできなかった側面を明確に浮かび上がらせるものにほかなりません。アドは深い教養に導かれて、ウィトゲンシュタインの思想の中に古代のストア派や懐疑主義、新プラトン主義とのつながりを、あるいはショーペンハウアーとのつながりを見て取ります。その結果、ウィトゲンシュタインの著作は独自の「哲学」を記述しただけのものでなく、第一級の「哲学史」でもあることを明らかにするのです。 本訳書では、アドの解釈の画期性をよりよく理解できるよう、気鋭のウィトゲンシュタイン研究者である古田徹也氏の重厚な「解説」を収録しました。さらに「訳者後記」では、合田正人氏がアドという人物を中心にした知的ネットワークの広大さを深い思い入れとともに綴っています。本書の中で、これまで知らなかったウィトゲンシュタインの顔を見ることができるでしょう。 今後のウィトゲンシュタイン研究にも大きな一石を投じることになる重要著作の邦訳を選書メチエの1冊としてお届けいたします。 [本書の内容] 序 ウィトゲンシュタイン『論理哲学論考』における言語の限界についての考察 ウィトゲンシュタイン 言語の哲学者 I ウィトゲンシュタイン 言語の哲学者 II 言語ゲームと哲学 解説 ウィトゲンシュタイン哲学の「新しい」相貌(古田徹也) 訳者後記 -
演奏家が語る音楽の哲学
音楽ではなく、譜面を通してそれまで「不在」であった音楽とのあいだに通路を開き、広く交歓を可能にする想像力を持つ者である。 音楽は演奏家を抜きに現実化しない。人間によってしか血の通った音楽を、楽譜の向こう側にある音楽を蘇らせることはできないのである。 本書は芸術大学で指導する一方、演奏家としても第一線で活躍中のフルーティストによる、演奏という観点から見た音楽論である。つねにその瞬間瞬間の現れとしての音楽を生み出す者だからこそ得られる洞察、そこから個性と普遍という大きな問題へも視野を広げていく。 [本書の内容] 第一章 音を奏でる人類 第二章 「音楽そのもの」との交歓 第三章 音楽に表れるのは個性か普遍性か 第四章 音符の奥に立ち上がる音楽 第五章 響かせること、響きを合わせること -
第三の精神医学 人間学が癒やす身体・魂・霊
本書の表題に掲げられた「第三の精神医学」とは、いったいどのようなものなのか、と思われることでしょう。それは、長年にわたって第一級の精神科医として臨床経験を重ねてきた著者が、われわれに向けて投げかける重要な提案です。 著者は言います。「10年、20年と診療を続けるうちに、さまざまな年齢の患者さんたちが、教科書に記されているような症状の背後に、若いころから同じ悩みを引きずっていることに気づき、私はこれこそが精神病の本質であるとの確信を抱くようになった」。では、その「精神病の本質」とは何でしょうか。それは動物実験や脳の分析では決して明らかにならない「人間本来の価値」であり、「生きる意味」そのものだ、というのが答えです。 当たり前のことに聞こえるかもしれません。しかし、18世紀後半に開始された近代的な精神医学の歴史を振り返るなら、その当たり前のこと到達できずにいた現実が分かります。本書は、フランスのフィリップ・ピネル(1745-1826年)に始まる歴史をていねいにひもときながら、1) エミール・クレペリン(1856-1926年)によって確立された、脳を観察する神経組織病理学と疾病分類学に基づく身体・自然科学的な精神医学、2) ジークムント・フロイト(1856-1939年)に代表される、個人心理学としての心理・精神分析的な精神医学、という二つの大潮流を跡づけていきます。その上で、これらのいずれにも与しなかったカール・ヤスパース(1883-1969年)に「第三の道」を見出し、その可能性を最大限に引き出そうと試みるのです。 第三の精神医学では、人間は「身体」、「魂」、「霊」という三つの層が折り重なった存在として捉えられます。本書は、それぞれの層を分かりやすく解説するとともに、それぞれの層に生じた障害への対処法をも紹介します。その結果、「心の病気」の「治療」とはいったい何をすることなのかが本当の意味で明らかになるでしょう。 多くの人が心の問題に悩まされ、苦しんでいる今日、本書はささやかな、しかし力強い希望の光を放っています。 [本書の内容] 序 章 精神医学と世俗化 第一章 宗教的存在としての人間 第二章 人間の精神構造 第三章 愛の秩序 第四章 心の病気とは何か 第五章 心の病気の治療 終 章 エマオへの道 -
名前の哲学
「名前」ほど、日常にありふれたものでありながら不思議なものもない。自らをあらわす自分の名前さえ、ほとんどの場合、自分ではない他の誰かに付けられたものであり、死後まで自分の存在は、その誰かに付けられた名前によって語られることになる。なにより自分の名前は、自分で使うよりも他者から呼ばれることのほうが圧倒的に多い。最も身近で最も遠い、それが「名前」である。 「名前」をめぐる哲学は、西洋の形而上学では真理についての文脈で考えられてきた。初めて「名前」を哲学の対象にしたプラトン、アリストテレスにはじまり、その流れを受け継いだ二〇世紀のミルやフレーゲの名前論をひもとけば、伝統的な西洋哲学がいかに「名前」を厄介者としてきたのかが浮かび上がる。 ところが、ヴィトゲンシュタイン、ローゼンツヴァイク、ベンヤミンの三人の思想を解き明かしていくと、真理論の舞台から解き放たれて、名前の哲学はこれまでにない生き生きとした姿を見せはじめる。著名なジャック・デリダの三部作にかぎらず、先鋭的な名前論はなぜユダヤ系の思想家から生まれるのか――。その背景には、名前と同化をめぐるユダヤ系の人々の苦難の歴史があった。 外側から貼られた単なるレッテルではない、「呼びかける」ものとしての名前がひらく、新たな時代の共同体論。 [本書の内容] まえがき 名前――もっともありふれた不思議なもの 第1章 名前の哲学史――古代ギリシアから二〇世紀まで 第2章 生活形式――ヴィトゲンシュタイン 第3章 対話――ローゼンツヴァイク 第4章 純粋言語――ベンヤミン 終章 名前の哲学が教えること 注 書 誌 あとがき -
ワイン法
500円のワインより1万円のワインは、ほんとうに20倍もおいしいのか?ロマネコンティ グラン・クリュと格安ワインの差を生み出すのは、品種か? 製法か? 醸造家か? 歴史か? あるいは国家か?高級ワインを高級たらしめているのは、ただ「美味しさ」だけではない。特定の産地、特定の生産者のワインだからこそ高く売れるのである。産地名、生産者名、ヴィンテージ、ぶどうの品種名……これらの情報が、ブランドをブランドたらしめているとも言える。とりわけワイン王国フランスにて繰り広げられた、ブランドを守るための数百年にわたる戦いと、そこから生み出された法と制度すなわち「ワイン法」について、第一人者が語り尽くす!1855年格付け、1889年グリフ法、そしてEU法。苛烈な競争、疫病と害虫、税と規制などをめぐる生産者たちの戦いは、AOC(原産地呼称制度)などのブランドを守る法と制度へと結実した。そしてAOCは、GI(地理的表示)として世界に広がり、いまや日本でもヨーロッパのワイン法は大きな意味を持つ。本書で語られることは、わたしたちの生活、ビジネスにも直結する大きな問題となっている。ワインを愛する人のみならず、人々の生活が動かす歴史に興味のある人、世界の食を動かす制度はいかなるものかを知りたい人、いずれの読者にも、驚きと発見をもたらす、無二の解説書!【本書の内容】プロローグ―ワイン法はなぜ生まれ、何を守るのか/第1章 「本物」を守る戦い―原産地呼称制度の萌芽 1 フランス革命とワインの自由化 2 黄金時代の到来 3 「本物のワイン」を守る戦い/第2章 「産地」を守る戦い 1 不正ワインとの戦い 2 混迷する「産地」画定 3 原産地呼称制度の誕生 4 「コントロール」される原産地呼称へ/第3章 生き残りをかけた欧州の戦い 1 欧州統合下のワイン政策 2 ワイン共通市場制度の発足 3 本格化する生産管理/第4章 新たなプレーヤーとの戦い―畑=テロワールの思想と品種=セパージュの思想 1 新世界の「発見」 2 悩ましい新世界/第5章 「危機」から新時代へ―欧州産ワインの戦い 1 一九九九年のEUワイン改革 2 抜本的な改革をめざして―二〇〇八年の改革 3 二〇〇八年の改革は成功したか? コラム 補糖禁止のねらい コラム EUワイン法におけるラベル記載事項 コラム ボトルに関するEU法の規制 4 新時代のワイン法へ 5 ワイン法と日本 -
AI時代の労働の哲学
この本は、人工知能技術の雇用・労働条件・生活に対するインパクトについて考察してみよう、というものではありません。むしろそこから一歩引いて、「我々は人工知能技術の発展が社会に、とりわけ労働に及ぼすインパクトについて考える際に、どのような知的道具立てを既に持っているのか?」を点検してみる、というところに、本書の眼目があります。――「はじめに」より *AI(人工知能)が人間の仕事を奪う――これは「古くて新しい問題」です。馬車は自動車になり、工場はオートメーション化される。技術(テクノロジー)は、いつの時代も仕事を変えるのです。では、AIのインパクトは、これまでの機械化と同じなのか、決定的に違うものなのか。「労働」概念自体から振り返り、資本主義そのものへの影響まで射程に入れて検討します。 -
熊楠の星の時間
著者中沢新一氏は、長年にわたり南方熊楠についての考察を深め、多くの論考を発表してきました。1990年代に刊行された『森のバロック』(読売文学賞)、『南方熊楠コレクション』(全五巻)などが、その代表作です。また、「宗教学・人類学・民俗学を綜合して「対称性人類学」で新たな思想を展開しています。また独自のフィールドワークによる「アースダイバー」(『アースダイバー』、『大阪アースダイバー』、『週刊現代』連載中の「アースダイバー 神社編」)新しい知見と感性を切り開く可能性をもっています」(南方熊楠顕彰会の受賞理由の概略)。2016年、第26回南方熊楠賞が授与されました。21世紀に入ってから、著者はますます熊楠の重要性を認め、彼の思想の可能性を掘り起こし、発展させるために、2014年には「南方熊楠の新次元」と題する4回の講演・対談を主催しました(明治大学野生の科学研究所)。本書は、その時の講演「アクティビスト熊楠」「明恵と熊楠」(改題「熊楠の華厳」)に加えて、熊楠の心の構造を探った「熊楠のシントム」、海のエコロジーを探究する「海辺の森のバロック」、本書の全体像を提示する「熊楠の星の時間」を収録した、新熊楠論です。思想家・中沢新一が提示する、熊楠哲学の放つ強力な火花に驚愕し、目を開かれることになるでしょう。未来を切り開く一冊です。 -
歌麿『画本虫撰』『百千鳥狂歌合』『潮干のつと』
習作期の新進絵師・喜多川歌麿、ブームを経て定着していた「天明狂歌」、そこに目を付けた新興版元・蔦屋重三郎。これらを組み合わせたら――こうして生まれた「狂歌絵本」のうち、『画本虫撰』『百千鳥狂歌合』『潮干のつと』の「歌麿三部作」を翻刻。美人絵の代名詞・歌麿の描く「虫・鳥・貝」と唐衣橘洲ら「狂歌三大人」を初めとする狂歌のコラボが、得体の知れない迫力を生む。※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。