文学や編集に携わる8名の手による万葉集エッセイ集、といえばよいか。
出だしから中西進氏による『旧約聖書』と『万葉集』のリンクが展開され、度肝を抜かれる。良き文学とはほかの文学と共鳴するものとはいうが、まさかそんなところと響き合うとは。しかも万葉集の第一人者の一人中西進氏からそんな。おみそれしました。
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川合康三氏の「山上憶良と中国の詩」、高橋睦郎氏の「いや重く謎」あたりは若干硬めの印象を受けるかもしれないが、基本的には一流の文化人たちによる平易な万葉集エッセイである。いや平易と言ったが完全に万葉集知りませーん何書いてあるんですかーな人には向かないかもしれない。ちょっとは齧った人向け。だが、ちょっと齧って関心がある人には気軽な万葉集読み物として勧められると思う。個人的にはこの本で松岡正剛氏を少し見直した(?)。
難点があるとすれば取り扱われる歌に多少の偏りが見られる気がすること。ただ明らかなほどではなく、寧ろ私の気のせいかもしれない。総合的にはバランスの取れたよい本です。