講談社文芸文庫の検索結果
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未明の闘争 オーサーズ・カット
1990年、日本のバブル景気崩壊と前後して、これまでの文学作品と一線を画した作風の『プレーンソング』で出現した小説家保坂和志。 その後芥川賞など数々の文学賞を受賞しつつ、小説とはどのようなものかを思考しつづけた作家が2013年に満を持して世に問うた長篇『未明の闘争』は野間文芸賞を受賞。 この作品で、作者は底流としてある「思考の流れ」に思いつくかぎりのエピソードを乗せ、たゆたわせている。 それらを読んでいくことはとても楽しく気持ちが良い。しかし、読みすすめるうちになにかを深く考えざるをえない気持ちになってくる……。 そのような稀有な体験を読者に味わわせてくれる小説である『未明の闘争』の本質を損なうことなく、そのエッセンスを再構成したダイジェスト版をここに刊行する。 -
村上春樹の世界
同世代・同時代の小説家である村上春樹に深い関心を持ちつづけた文芸評論家・加藤典洋が節目節目に発表してきた作品論や書評を集成。小説家に対し一貫して好意的だったが時に厳しくもあった批評の射程は、デビュー作『風の歌を聴け』から最新長編『騎士団長殺し』にまで及んでいる。本書は村上春樹の小説世界に分け入る際の良い手がかりになるだけでなく、「批評」とはどのような営みなのかを読者に知らず知らずのうちに伝えてくれる、他に類を見ない評論集。遺稿「第二部の深淵――村上春樹における「建て増し」の問題」収録。 -
猛犬 忠犬 ただの犬
こよなく動物と自然を愛し続けた著者の自伝的小説。少年から青年へと成長していく過程でさまざまな犬との出会いと別れを綴った作品。……「動物文学」というカテゴリーを確立し、国民の支持を得た戸川幸夫の原点ともいうべき自伝的小説。もの心つく前から動物好きであったという著者が、さまざまな気質の犬と育った幼い頃から、運命的な犬との出会いをする旧制高校時代までを、愛情を持った動物への的確な観察眼で描き切る。それは犬への鎮魂歌であるとともに、おのれの成長の証であった。動物文学の第一人者が犬と語り続けた自伝的小説。 -
黙阿弥
黙阿弥の真の姿と心の奥の風景を描く曾孫からの鎮魂の評伝。 ――坪内逍遙に“明治の近松、我国のシェークスピア”と称された河竹黙阿弥。その78年の生涯を、秘蔵の原稿や手記をもとに、曾孫にあたる著者が心をこめて描いた評伝。幕末から明治への激動の時代を生きた黙阿弥の作者魂と、江戸作者の矜持。それは現代にも通じるひとつの「生」の記録でもある。 ※本書の初出は、「別冊文藝春秋」(1991年夏~1992年秋)に「孤影の人」という題で発表され、単行本は、文藝春秋より1993年2月に『黙阿弥』と改題され刊行しました。底本は、文春文庫『黙阿弥』(1996年)を使用し、著者により若干の訂正をいたしました。 -
物語批判序説
かつて人は自分だけが知っていることを自分の言葉で語った。だが19世紀半ばの「フランス革命より遥かに重要」な変容で、人は誰もが知っている事実を確認し合うように誰もが知る物語を語り始めた。フローベール『紋切型辞典』を足がかりにプルースト、サルトル、バルトらの仕事とともに、なお私たちを覆う変容の正体を追う。明晰にしてスリリング。知的感興が横溢する、いまこそ読まれるべき不朽の名著。 -
憂国の文学者たちに 60年安保・全共闘論集
冒頭に置かれた「死の国の世代へ」は「闘争開始宣言」という副題を持つ詩である。そこでは誰の保護も受けずに生きた個人のイメージが描かれる。 60年安保闘争での敗北を経て書かれた「擬制の終焉」では社会党や共産党などの党派的な左翼運動や市民・民主主義的な啓蒙主義を完全に否定し、真の前衛運動ないし市民運動の成長に期待を寄せた。 1969年、東大安田講堂に籠もった学生が警察力によって排除された直後に書かれた「収拾の論理」において、丸山真男に代表される大学の知識人の欺瞞を批判し、徹底的に論争を続ける旨宣言して結ばれる。 日本がバブル景気で沸き立っていた1988年に書かれた「七〇年代のアメリカまで」では、その後の東西冷戦終結でアメリカ合衆国が唯一の超大国となる……というあまりに単純化された物言いとまったく異なるアメリカへの視線が浮かび上がっている。 本書に収録された13篇がモチーフとするのは60年安保闘争や全共闘運動といった過去の出来事だが、むしろ執筆当時の文脈から切り離されて現代において読まれてこそ、個人と権力の関係をより切実に感ずることができ、その真価を発揮するものと思われる。 -
雪あかり 曽野綾子初期作品集
新鮮清澄、才気迸る源流の光景。初期の代表作7篇収録――進駐軍の接収ホテルで働く19歳の波子の眼をとおし、敗戦直後の日本人従業員と米国軍人らとの平穏な日常が淡々と描かれた、吉行淳之介の「驟雨」と芥川賞を競い、清澄で新鮮な作風と高く評価された出世作「遠来の客たち」をはじめ、「鸚哥とクリスマス」「海の御墓」「身欠きにしん」「蒼ざめた日曜日」「冬の油虫」、表題作「雪あかり」を収録。才気溢れ、知的で軽妙な文体の、初期の作品7篇を精選。 ◎「ここに集められた作品はすべて、壁の手前の若書きの作品である。この頃以来半世紀間、私は書き続けて来た。平均して一年間に二千枚、それより多い年も少ない年もあるけれど、多分トータルで十万枚は書いたように思う。十万枚、絵でも書でも書けば、どんな凡人でも一つの世界は作るだろう。源流の光景を見て頂くのは、申しわけないが、光栄である。」<「著者から読者へ」より> -
陽気なクラウン・オフィス・ロウ
こよなく愛したC・ラムを巡る英国への旅。香り高き紀行文学――英国の名文家として知られ、今もなお読み継がれているチャールズ・ラム(1775~1834)をこよなく愛した著者が、ロンドンを中心に、ラムゆかりの地を訪れた旅行記。時代を超えた瞑想が、ラムへの深い想いを伝え、英国の食文化や店内の鮮やかな描写、華やかなる舞台、夫人とのなにげない散歩が、我々を旅へと誘ってくれる。豊かな時間の流れは、滞在記を香り高い「紀行文学」へ。 ◎「この『陽気なクラウン・オフィス・ロウ』では、作者がいわばロンドンの空気の中に丸ごと溶け込み、心ゆくまでロンドンという大都会の古びた湯船にゆったりと身を横たえ、ラムへの尽きぬ思いに浸っているということだろう。この滞在記にただよう一種沁み沁みとした哀感は、ここに由来する。」<井内雄四郎「解説」より> -
裸々虫記
日本は高度経済成長も終わっていたが、反面で国際的な責務を果たせと要求されるようになり始めた時期、奇妙な事件や出来事がメディアで賑やかに報じられていた。 ふと目に留まったものを手がかりにして、古井由吉の思考と文章はうねるように展開する。 純文学の代表的な作家と目され、代表作となった長篇小説『槿』により谷崎潤一郎賞を受賞して間もない古井由吉が小説雑誌で連載を始めたものが、単純な時事エッセイに納まるはずはなかった。 日常の底に埋もれている人間の「業」を言葉によって鋭くえぐりつづけるものとなった。 なお、「裸虫」とは人間のこと。「裸」を重ねて「裸々」とし、「ララ」と訓むことですこしでも人間の営みを楽しく書いていこうという試みだった。 -
『別れる理由』が気になって
1968年から1981年という長きにわたり文芸雑誌「群像」に連載され、1982年に全3巻で刊行されると野間文芸賞を受賞した、小島信夫の『別れる理由』。 長期におよんだ連載中、「筆者と編集長しか読まない」と揶揄されたことすらあったという大長篇小説に江藤淳『自由と禁忌』以来久々にスポットライトを当て、江藤淳を含む同時代の他の評者が掴まえそこねた作品世界の全貌を初めて明らかにする作品論が本書である。 現代日本文学の最高傑作、あるいは天下の奇書、どちらとも取れる『別れる理由』は平易な文体で描かれるが、やはり小説でしかなしえない異様な世界を形成している。 そのような作品がいかなる状況下で成立したのか、その作中に流れる時間はいかなるものなのか、作家小島信夫が執筆当時に考えていたことはいかなることなのか、……多彩な要素に満ちた大長篇小説小説にきっちりと寄り添うことで筆者坪内祐三が掴んだものに触れるとき、読者は批評的な読解の愉しみを知ることになるのである。 -
わが文学生活
編集者によるインタビュー、また「群像」および「小説現代」で長く担当した編集者との対談を、作家自らが構成した貴重な文学的自伝。高い芸術性と人気を備える小説家、洒脱な随筆や座談の名手、ヘンリー・ミラーや井原西鶴の作品の現代日本語への翻訳者、豪腕アンソロジスト……多彩な相貌が臨場感を湛えて語られる本書は、吉行淳之介を知るための必読書となろう。 -
わが別辞 導かれた日々
昭和51年(1976年)没の檀一雄、舟橋聖一から平成6年(1994年)没の吉行淳之介まで、冥界に先に旅立った22人の師友に捧げられた感謝と惜別の情。 若き日より老年に至るまで文学を自らの道と定めて険しい道を生きた作家・水上勉が、文学についての語らい、旅、酒席やゴルフなど、さまざまな時間をともに過ごした文士たちを想い、心を込めて綴った追悼文集の白眉。 とくに小林秀雄に7篇、大岡昇平と中上健次には5篇が捧げられており、著者より年長年少を問わないその交わりの深さと追悼の念の痛切さに、読む者として感慨を禁じえないのである。 -
私の長崎地図
生まれ育った町を振り返りながら書き綴った「私の長崎地図」を中心に、筆者の長崎へ対する思いが溢れる小説、随筆を編纂した作品集。――生まれ故郷・長崎。しかし、そこは再訪するのに四半世紀の時を必要とした地でもあった。強い郷愁と訪れることへの不安が、町の色や海の香に彩られた過去から、現在に至る心の風景を紡ぎ出す。長崎を舞台にした「私の長崎地図」「歴訪」「色のない画」などの小説や随筆を精選したこの作品集は、『私の東京地図』と対をなす著者の魂の彷徨である。※本書は『佐多稲子全集』(講談社・昭和52年11月~昭和54年6月刊)、『小さい山と椿の花』(講談社・昭和62年10月刊)、『思うどち』(講談社・平成元年6月刊)を底本としました。 -
わたしの本はすぐに終る 吉本隆明詩集
戦後思想界の巨人・吉本隆明の本質は詩人だった。 吉本はまず私家版の詩集『固有時との対話』(1952年)、同じく私家版詩集『転位のための十篇』(1953年)で、まず詩人として歩みはじめる。その後、武井昭夫との共著『文学者の戦争責任』(1956年)に収められる戦前の左翼文学者の「転向」問題を扱う評論を発表しはじめることで、文壇や論壇でも知られるようになっていく。 その後も吉本隆明は文芸評論家や思想家としての仕事と並行して詩の創作をつづけ、抒情、論理、抽象、追憶、喜怒哀楽…読むものを惹きつけてやまぬ、まさに豊穣というほかない世界を作り上げたのだった。 本書は、著者自撰の『吉本隆明全集撰 1 全詩撰』(1986年)の後半部分(前半は文芸文庫既刊『吉本隆明初期詩集』に収録)を占める「定本詩集4」「定本詩集5」「新詩集」「新詩集以後」という1950年代半ばから80年代まで書き継がれた詩作群、70年代~80年代の雑誌連載をもとにした『記号の森の伝説歌』『言葉からの触手』という2冊の著作、90年代に雑誌掲載された「十七歳」と「わたしの本はすぐに終る」という2篇の詩で構成される。 講談社文芸文庫既刊の『吉本隆明初期詩集』と併せ、吉本隆明による詩の世界を集大成するものとなっている。 -
橋本治文芸論集
恐るべき幅広さで創作と評論を発表しつづけた橋本治。 若いころから師匠のように敬愛してきた山田風太郎。小説家としてデビューしてからその大きな影響を自覚することとなった久生十蘭。純文学としてではなく幻想文学として読み込んでいた芥川龍之介、川端康成、三島由紀夫。そして、江戸川乱歩、小林秀雄、寺山修司、有吉佐和子……橋本治のフィルターを通して見えてきた近現代日本文学の作品の姿は、読者がこれまで抱いてきた先入観を打ち破り、より鮮やかで生き生きとしたものに見えてくる。