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旧制高校に入学した頃の文学との出逢い、詩作、敗戦後の同人雑誌参加、大学中退、大衆雑誌記者時代、肺結核。芥川賞受賞までのエピソードや、父吉行エイスケのこと等著者の交友・文学の“核”を明晰な文体で瑞々しく回想。ほかに「拾遺・文学放浪」「註解および詩十二篇」を収める。
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Posted by ブクログ
ヘミングウェイはかつて「おれたちはみな、生まれたときから固有の才能が備わっている」と言ったけど、吉行淳之介にもやっぱり固有の文学的才能が備わっていた。原色の街とか驟雨を読めば、その才能の片鱗を感じとることができる。 吉行淳之介は自分でも「ものを書く才能が自分にあるのかもしれぬ」と高校生の時に考えてい...続きを読むたという。若い頃は誰でも一度は、自分にはなんでも出来る才能があると勘違いすることがあるけれど、吉行淳之介のそれは勘違いなんかではなく、きっと確信に近いものだったのかもしれない(羨ましい)。 私は赤線地帯の娼婦との関係性を描いた「原色の街」が好きだ。経験を素材にして書いたものだと思っていたが、実は違うらしい。「このときまで私はそういう地域に足を踏み入れたことは、二、三度しかなかったし、娼婦に触れたことは一度もなかった。もともとこの作品で私は娼婦を書こうともおもわなかった」と言っている。つまり娼婦との生々しいやり取りはすべて創作だったわけだ(なんてこった)。 職業作家になるつもりがなかったのに、結果的に職業作家になり大成したことを考えると、なにか見えない力に導かれていたのではないかとも思えてくる。父である吉行エイスケのことを述懐しているのも興味深かった。第三の新人としてデビューした当時は酷評されていたのも意外だった。新しいものの毀誉褒貶が激しいのはいつの時代でも変わらないものらしい。週刊誌で女性とのスキャンダルが報じられて円形脱毛症になったというのも、吉行淳之介の人間性がダイレクトに伝わってくる。吉行淳之介に興味のある方は、好奇心が満たされる内容になっているのでけっこうオススメです。
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