講談社学術文庫作品一覧
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-「A級戦犯」被告28人はいかにして選ばれたのか? 昭和天皇「不訴追」の背景は? 無視された証言と証拠、近衛の自殺、木戸の大弁明――アメリカに眠る膨大な尋問調書から明かされる真実。極東国際軍事裁判をめぐる歴史ドラマが、ここに開幕する! 第一人者による東京裁判研究の金字塔! 「A級戦犯」被告28人はいかにして選ばれたか 「天皇不訴追」決定の真実、無視された証言と証拠、近衛の自殺、木戸の大弁明──アメリカに眠る膨大な尋問調書から明かされる真実。極東国際軍事裁判をめぐる歴史ドラマが、ここに開幕する! 「A級戦犯」28人はいかにして選ばれたのか。天皇不訴追の決定プロセスの真実とは。釈放されていく「大物」たち、免責された毒ガス・細菌戦。冷戦が本格化してゆく中で、無視された証言・証拠……アメリカに残されていた膨大な尋問調書を丹念に読み解き、語られざる歴史の実相と当事者達の人間ドラマを描き出す。東京裁判はこうして始められた!
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-地球をおおいつくそうとするひとつの世界システムに「地域の論理」たちは繊細なたたかいを挑む。閉ざされつつある世界に、新しい超空間への通路を開く。ボストーク――東の方。人間を乗せた最初の宇宙船の名前である。偉大なる叡智=ソフィアは、科学技術文明と近代資本主義が世界を覆い尽くす時こそが、真実の危機だと告げる。バルトーク、四次元、熊楠、マンダラ、シャーマニズム、製鉄技術、方言、映画とイヨマンテ……。多様なテーマで通底する「無意識」に、豊饒な叡智を探求する。/『東方的』は、……西欧的な知のあり方の行き詰まりを踏まえて、「東方的」な「ソフィア」(叡智)の方向に新たな可能性を見出そうとした、美しい希望の書物である。(略)その「明確なモチーフ」は……、「第四次元、あるいは日常的なリアリティを超えた高次元の霊的な世界が、われわれが普段住んでいる物質的な世界と接触した時、何が起こるか」ということに帰すのではないかと思う。――<沼野充義「解説」より抜粋>
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-花のみやこか、懐かしきふるさとか――。日本列島の文化の歴史は、海の外からやってきた最新の情報があつまる都会への憧れと、生まれ育った郷土への思い入れのはざまで紡がれてきた。奈良、京都、のちには江戸・東京という「みやこ」に対する「地方」の憧れと反発、さらに中国大陸や欧米という「中央」に対する「辺境」日本の憧れと反発という二重の交錯を見据え、そこに織りなされる綾を丹念に描き出した唯一無二の列島文化史。 夷なる日本が華なる中国に劣らないと主張した京都生まれの伊藤仁斎と、関東出身で田舎固有の文化に価値を見出し江戸学芸を京から自立させた荻生徂徠。日本文化や日本的なるものの一貫性を否定した内藤湖南と「国史」の範囲に苦悩した黒板勝美。日本文化が基底のところで一体のものであることを前提にしたことで「郷土を捨象した」と批判された、民俗学の父・柳田国男が敬意をいだいていたのは、田舎に「いにしえのみやび」を見出した本居宣長だった。 古代の青銅鏡が示す畿内王権や記紀神話にはじまり現代にいたるまで時代を縦横無尽に扱いながら、独自の視点で日本文化の形を照らし出す。(原本:平凡社、1991年) 【本書の内容】 はじめに 第一章 都市の論理――先進・後進論の背景 第二章 反都市文明――「地方」主張の論理と背理 第三章 国家という単位――単一の「国」と「くに」の複合 第四章 民衆知と文字文化――ひとつの試み あとがき 解 説(長﨑健吾)
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4.5永仁の徳政令――日本史上、飛びぬけて有名なこの法の本質を「「もとへもどる」という現象」と喝破し、躍動する13世紀の社会を深く鮮やかに描き出した不朽の名著、待望の文庫化! 日本人は「所有すること」をどのように捉えていたのか。サブスクリプション制やフリマアプリの登場によって、所有の概念がかつてないほど揺らいでいる今こそ読みたい、中世人の法と慣習を解き明かす一冊。(原本:岩波新書、1983年) 「今国家の債務を消すために、その他一切の債権債務を破棄する、つまり天下一同の徳政を実行すれば、日本経済は収拾のつかない混乱におちいるかもしれないし、意外にも大したことなくすぎてしまうかもしれない。いずれにせよ、少なくとも現時点ではそれが「夢のような話」にすぎないことはいうまでもない。 だが、中世社会ではそれは夢ではなかった。永仁徳政令B‐3条のように、あるいは室町幕府の徳政令がもっぱらそれを主張していたように、債権債務破棄の徳政令を発布するという現実的な道があったからである」(第一〇章「新しい中世法の誕生」より)。 日本の歴史のなかでも、単行法としてずば抜けて有名な法「永仁の徳政令」。永仁五(1297)年に出されたこの法は、21世紀の日本のみならず、制定された13世紀当時から有名な法であった。現在からは想像もつかないが、法の実在さえ法廷でまじめに争われた時代にあって、ある法の存在を同時代の人々が短時日のうちに共有したということ自体が、極めて異例のことであった。実際に、永仁の徳政令の立法からわずか二週間後には、この法に基づいた訴訟が起こされて、土地が返却されている。その後も、この法に基づいて多くの土地が売り主のもとに戻ることになった。 新幹線もSNSもない時代に、なぜこのようなことが可能だったのか。そしてなぜ徳政令は、現在もなお異色の有名法であり続けているのか。そもそも幕府自身は当初そう言っていなかったにもかかわらず、この法はなぜ「徳政」と呼ばれたのか。 永仁の徳政令にまつわる数々の謎を解き明かし、売買や贈与から浮かび上がる所有に対する意識や、「天下の大法」と呼ばれる社会規範の存在、幻の政治改革「弘安徳政」、さらにその背後にある合理主義的な政治的思潮の登場に至るまで、この不思議な法を軸に中世社会の本質に迫る。著者のエッセンスがふんだんに盛り込まれた日本中世社会史の金字塔! 【主な内容】 一 無名の法、有名の法 二 徳政令の出現 三 なぜ徳政なのか 四 天下の大法 五 贈与と譲与 六 消された法令 七 前代未聞の御徳政 八 人の煩い、国の利 九 徳政の思想 一〇 新しい中世法の誕生 あとがき 解 説(小瀬玄士)
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4.0ポピュリズム、ポストトゥルース、グローバリズムに直面する今こそ読む――"アメリカのデモクラシー"その根源への探究デモクラシーこそは歴史の未来である――誕生間もないアメリカ社会に トクヴィルが見いだしたものは何か。歴史的名著『アメリカのデモクラシー』では何が論じられたのか。「平等化」をキーワードにその思想の今日性を浮き彫りにする、鮮烈な思考。あらゆる権威が後退し混沌の縁に生きる私たちは、いまこそトクヴィルに出会い直さなければならない!いま日本の思想界をリードする著者が、第29回(2007年) サントリー学芸賞(思想・歴史部門)を受賞し、現在に至る地位を築いた好著の文庫化。文庫化にあたり、現在の政治・思想状況をふまえた「補章」を増補。トクヴィルの「今日的意義」は増すばかりである。ある意味で、「トクヴィル的」とでも呼ぶべき状況がますます強まっている―(「補章」より)【本書の主な内容】第一章 青年トクヴィル、アメリカに旅立つ第二章 平等と不平等の理論第三章 トクヴィルの見たアメリカ第四章 「デモクラシー」の自己変革能結び トクヴィルの今日的意義補章 二十一世紀においてトクヴィルを読むために
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-「挑戦の書」として『神学大全(スンマ)』を読む! 「スコラ学の代表的神学者」が書きあらわした、邦訳にして45冊に上る大著。 そのような物々しさに惑わされず、「ひとりの修道者としてのトマス」による「一冊の書物」として『大全』を読む。 すると、アクチュアルな探究者としてのトマスの姿が浮かび上がり、 彼から現代に生きる私たちへのメッセージが聞き取れる。 神とは何か。 創造とは、悪とは、そして人間の幸福とは? キリスト教の根源にトマスはいかに挑んだか。 斯界の第一人者が、やさしく、そして誠実に、核心を読み解く。 【本書より】 トマスの言う「神学」はその全体が知恵の探究であり、そして知恵のみがわれわれに人間の幸福をあきらかにしてくれるのですから、知恵の探究はそのまま真実の幸福への道を切り開く営みにほかなりません。言いかえると『神学大全』における知恵の探究は、トマスという一人の人間が、人間であることを学び、人間であることの完全な実現―それが「幸福」の意味です―をめざして行ったパーソナルな探究の記録であり、キリスト信者であろうとなかろうと、人間であることを真剣に受けとめる者にとってはけっして無縁な書物ではないと思うのです。 【本書の内容】 はじめに―『神学大全』をどう読むか 第一章 挑戦の書としての『神学大全』 第二章 神の問題―「五つの道」の意味 第三章 「交わり・即・存在」―人格[ペルソナ]のパラドックス 第四章 創造と宇宙論 第五章 「悪」の問題 第六章 すべての人が幸福を欲しているか? 第七章 トマスの政治哲学―「共通善」の復権 おわりに―「トマス主義者」ではないトマス ※本書は2009年に講談社選書メチエより刊行された同名書の文庫化です。
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-本書は、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》で知られる「トリスタン伝説」の最古の姿を伝える書の本邦初となる全訳です。 ケルト起源のトリスタン伝説は、11世紀後半から12世紀初頭にウェールズとブルターニュに伝えられ、語り継がれていったと推測されます。多様に発展した物語を12世紀後半に古フランス語でまとめたものがトリスタン伝説の原典(エストワール)ですが、残念ながらこれは散逸しています。 しかし、この原典に基づいて物語を作る人たちが現れます。その一人が同じく12世紀後半に活躍したフランスの詩人ベルールでしたが、作品は断片しか残されていません。それと同じ時期、同じ原典に基づいてドイツ語で物語を書いたのがアイルハルトであり、その作品こそ本書にほかなりません。完全な姿で残されたこの作品によって、私たちは原典の内容を推測できます。ここにはトリスタン伝説の最古の姿があるのです。 韻文で書かれた本書は、その後「民衆本」と呼ばれる散文作品として流布し、16世紀にはハンス・ザックスによって戯曲『トリストラントと美しきイザルトの悲恋』に翻案されました。一方、ベルールと同様に原典(エストワール)を基にして12世紀後半にフランス語で『トリスタン物語』を書いたトマの系列としては、ドイツ語で叙事詩『トリスタンとイゾルデ』を書いたゴットフリートがおり、ワーグナーに着想を与えました。 複雑な経緯をたどって伝承されたトリスタン伝説は、現代でも小説にされたり(ローズマリー・サトクリフ)、映画にされたり(ジャン・ドラノワ)、多くの人を魅了し続けています。その最古の姿がようやく日本語で味わえるようになります。 [本書の内容] 1 聴衆への前置き 2 トリストラントの出生と養育 3 トリストラントのマルケ王宮廷への旅 4 トリストラントとモーロルトの闘い 5 トリストラントの傷を治すためのアイルランドへの旅 6 トリストラントのアイルランド求婚の旅 7 愛の媚薬 8 ブランゲーネ 9 トリストラントとイザルデの愛をめぐっての揉め事 10 有罪の判決と逃走 11 森での生活 12 アルトゥース騎士ヴァルヴァーンとトリストラント 13 追放後のトリストラントとイザルデの一度目の逢瀬 14 ハヴェリーン王のもとでのトリストラント 15 追放後のトリストラントとイザルデの二度目の逢瀬 16 追放後のトリストラントとイザルデの三度目の逢瀬 17 ケヘニスとガリオーレ(1) 18 追放後のトリストラントとイザルデの四度目の逢瀬 19 追放後のトリストラントとイザルデの五度目の逢瀬 20 ケヘニスとガリオーレ(2) 21 トリストラントとイザルデの愛の死
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3.0明治中期、宮中近代化のために招聘され、新宮殿での憲法発布式典を見届けて帰国したお雇い外国人、モールの日本滞在記。威厳ある若き天皇への謁見、知性と品位を備えた皇后への賞讃、「宮中衣裳問題」での伊藤博文との衝突など、欧化を急ぐ立憲国家成立期の宮廷社会を知る必読文献。さらに関西、箱根、日光、磐梯山への旅など、各地の風物も豊かに描く。(講談社学術文庫)
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5.0今日に至るまで絶大な影響を及ぼし、議論を引き起こし続けているフランスの哲学者ジル・ドゥルーズ(1925-95年)は、デイヴィッド・ヒュームやアンリ・ベルクソンなどを対象とした哲学史研究から学問的経歴を開始し、主著『差異と反復』(1968年)、そして『意味の論理学』(1969年)を公刊して、その地位を確かなものとした。 飛躍を求めたドゥルーズは、精神科医フェリックス・ガタリ(1930-92年)との「二人で書く」企てに挑戦し、物議を醸した『アンチ・オイディプス』(1972年)、『千のプラトー』(1980年)を送り出す。さらに晩年には映画論や芸術論に取り組み、その全容は公刊が始まった講義録を通して、より明らかになりつつある。 こうした多彩な相貌を見せるドゥルーズの「哲学」全体を貫く「原理」はあるのか? あるとすれば、それはどのようなものだったのか? 「20世紀最後の哲学者」の方法と対象を精緻に分析し、その核心と実践的意義に迫った本書は、広く評価され、多くの読者を得てきた。生誕100年、没後30年を迎える2025年、改訂を施し、新稿を加えた決定版として、講談社学術文庫に登場する。 [本書の内容] 第I章 自由間接話法的ヴィジョン――方 法 1 自由間接話法 2 哲学研究の課題 3 哲学の課題 第II章 超越論的経験論――原 理 1 超越論哲学と経験論哲学 2 無人島 3 出来事 4 超越論的な原理 5 超越論的な原理の発生 第III章 思考と主体性――実 践 1 思考の強制 2 思考の習得と方法 3 物質に付け加わる主体性 第IV章 構造から機械へ――転 回 1 ガタリとの出会い 2 構造と機械 3 構造と構造主義 4 セリー、ファルス、原抑圧 5 『アンチ・オイディプス』と分裂分析 第V章 欲望と権力――政 治 1 ミシェル・フーコーの歴史研究 2 『監獄の誕生』における二つの編成 3 権力と二つの編成 4 一元論と二元論 5 欲望と権力 6 欲望のアレンジメントと権力装置 文献一覧 研究ノート I 自然主義について II 総合的方法 III 法/制度/契約 IV 個の心と衆の心 V 国家と考古学 追加された研究ノート I スピノザにおける個体の概念と微分法 II 類似的他者の概念 III ドゥルーズの政治的発言 IV 絵画とアナロジー V 目と手、ビジュアルとマニュアル、エジプトとギリシア
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5.0没後20年を過ぎた今も世界中で多くの読者を獲得し続けている哲学者ジル・ドゥルーズ(1925-95年)。初の単著『経験論と主体性』(1953年)から『ニーチェと哲学』(1962年)、『カントの批判哲学』(1963年)を経て『ベルクソニスム』(1966年)に至る哲学者のモノグラフィーを発表したドゥルーズは、続いて『差異と反復』(1968年)と『意味の論理学』(1969年)を解き放ち、世界に衝撃を与えた。進化を続ける哲学者は、次に精神分析家フェリックス・ガタリ(1930-92年)との協働を始動させ、『アンチ・オイディプス』(1972年)と『千のプラトー』(1980年)という恐るべき著作を完成させる。その後、記念碑的な映画の哲学『シネマ』全2冊(1983年、85年)、ライプニッツ論『襞』(1988年)といった単著の執筆に戻ったドゥルーズは、最後にもう一度、ガタリとの共著『哲学とは何か』(1991年)を発表。そして、1995年11月4日、みずから命を絶った。 本書は、1976年から83年――『千のプラトー』から『シネマ』へと至る時期にドゥルーズ本人の薫陶を受け、その指導の下で博士論文を書いた著者が、主要著作の読解を通して師の歩んだ道のりをたどり直し、初めて1冊にまとめたものである。2001年に講談社選書メチエとして出された原著は、20世紀最大の哲学者の全容に触れたい人の「最初の一冊」として広く親しまれてきたが、このたび、大幅な加筆・訂正を経た決定版をお送りする。 ひたすら愚直に、そして誠実に主要著作を読み解いていった約20年前の作業を現在のまなざしで見直した著者は、「いまはドゥルーズについて書くべきことを書き終えなければ、と思う。量ではなく、質の問題、いやまさに強度の問題である」と書いている。こうして生まれ変わった本書は、今後も新たな輝きを放ち続けるだろう。 [本書の内容] この本にいたるまで――学術文庫版に寄せて プロローグ――異人としてのドゥルーズ 第一章 ある哲学の始まり――『差異と反復』以前 第二章 世紀はドゥルーズ的なものへ――『差異と反復』の誕生 第三章 欲望の哲学――『アンチ・オイディプス』の世界 第四章 微粒子の哲学――『千のプラトー』を読み解く 第五章 映画としての世界――イマージュの記号論 第六章 哲学の完成 エピローグ――喜びの哲学 文献一覧 あとがき 学術文庫版あとがき ジル・ドゥルーズの生涯と主要著作
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4.0日本人はなぜ、いつ、「読者」になったのか? そして何を、どのように、読んできたのか? 出版資本と鉄道による中央活字メディアの全国流通、旅行読者の全国移動、新聞縦覧所と図書館という読書装置の全国普及――官・民による、これら三つの全国的要素の融合から、明治期に活字メディアを日常的に読む習慣を身につけた国民、すなわち「読書国民」が誕生してくる過程を、出版文化研究の第一人者が活写。私たちの読書生活の起源がここにある! [目次] はじめに ■第一部 流通する活字メディア 第一章 全国読書圏の誕生 第二章 「中央帝都の新知識」を地方読者へ――新聞社・出版社による地方読者支援活動の展開 ■第二部 移動する読者 第三章 車中読者の誕生 第四章 「旅中無聊」の産業化 ■第三部 普及する読書装置 第五章 読書装置の政治学――新聞縦覧所と図書館 第六章 図書館利用者公衆の誕生 あとがき 学術文庫版へのあとがき [主なトピック] ○暴力沙汰まで! 「東京vs.大阪」新聞市場争奪戦争 ○過疎地域を開拓せよ! 新聞社・出版社による地方読者支援活動 ○駅は戦場! 漫画雑誌の隆盛はここから始まった ○お部屋訪問! 温泉地の貸本屋 ○「情報にお金を払う」習慣を生んだ新聞縦覧所 ○自由民権運動は下からの「読書国民」の創出 ○読書の価値を再発見した日清戦後の一等国意識 ○まるで監獄……帝国図書館の規律空間 ○樋口一葉も友人と……女性が一人で行けない図書館
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3.5speechを「演説」と訳したのは福沢だった。 そして福沢自身、抜きん出た名演説家だった。 日本の近代化・文明化のためには、独立した個人が自らの思想を大いに論じ合わなければならない。 明治という時代が大きく動き出す中で、日本のよりよき未来を、熱く巧みな弁論で語り尽くした、その記録。 著作で見せるのとはひと味違う、福沢のライブ感溢れる言葉が、時代を超えて日本人の心を撃つ! 今日における福沢の思想史的再検討をリードする編者が、残されている速記録や原稿から「名演説」を厳選し、わかりやすい解説を付して編集した、画期的演説集。 【本書より】 日本世界をもっとわいわいとアジテーションをさせて、そうして進歩するように致したいと思う。それが私の道楽、死ぬまでの道楽。何卒皆さんも御同意下さるように。 【主な内容】 第一章 「演説」と「交際」の創始 演説はなぜ必要か/政府の専制から人民の政府 など 第二章 実業界へ出でよ 智識交換・世務諮詢に不景気なし/道徳は説くのではなく示せ など 第三章 立憲国家の国民へ向けて 経済学芸への注意を怠るな/学問に凝る勿れ など 第四章 個人の独立、国家の独立 銭は「人生独立の母」なり/政論の下戸となるな/学者は飼い殺せ など 第五章 次世代へのメッセージ 老却せる老生からの勧告/排外主義と自尊自大の戒め など 編者解説
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3.7急成長を遂げた周辺国からの侵略恐怖、増加する貧窮移民の不安、友好国へのぬぐいがたい不信、新たな感染症の脅威……「ドラキュラ」の恐怖と魅力の源泉には、黄昏を迎えた大英帝国の外国恐怖症があった。ゴシック・ホラーの金字塔に織り込まれた、ヴィクトリア朝イギリス社会の闇を描き出す! 世界でもっとも有名な吸血鬼「ドラキュラ」。 数ある吸血鬼作品のなかでも特権的な地位を得て、現代に至るまで映像化が繰り返され、日本では吸血鬼の代名詞にもなっています。 そのドラキュラの恐怖と魅力の源泉には、19世紀末イギリス社会に蔓延する深刻な外国恐怖症がありました。 「太陽の沈まぬ帝国」、「世界の工場」と謳われた栄光は過ぎ去り、軍事・経済ともに急成長を遂げつつある周辺国からの侵略恐怖、増え続けるユダヤ人など貧窮移民への不安、搾取してきたアジアの植民地から入ってくる新たな感染症の脅威……。 落日の大英帝国に生きる人々は心の奥底で何を恐れ、そしてドラキュラは生みだされたのか。 『パンチ』などに掲載された風刺画をふんだんに使いながら、ゴシック・ホラーの金字塔から読み解く世紀末ヴィクトリア朝の社会! イントロダクション 第1章 ドラキュラの謎 第2章 ドラキュラの年は西暦何年か 帝国主義の世紀末 第3章 侵略恐怖と海峡トンネル計画の挫折 第4章 アメリカ恐怖と「栄光ある孤立」の終焉 反ユダヤ主義の世紀末 第5章 ユダヤ人恐怖と外国人法の成立 第6章 混血恐怖とホロコースト パストゥール革命の世紀末 第7章 コレラ恐怖と衛生改革 第8章 瘴気恐怖と細菌恐怖 おわりに――ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究 増補 もうひとつの外国恐怖症――エミール・ゾラの〈猥褻〉小説と検閲 学術文庫版あとがき 引用史料一覧 コラム 吸血鬼の系譜/シャルコーの催眠術/一八九三年一〇月二日のピカディリ・サーカス/ダイヤモンド・ジュビリー/火星人/海峡トンネル・パニック/ベアリング銀行の投機失敗/ロスチャイルド一族の結婚/ロンドンとテムズ川の汚染……ほか
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4.7ソウラヴァ(首飾り)とムワリ(腕輪)をそれぞれ逆方向に贈与していく不思議な交易「クラ」。「未開社会の経済人」は、浅ましい利得の動機に衝き動かされる存在なのか? 物々交換とは異なる原理がクラを駆動する。クラ交易は、魔術であり、芸術であり、人生の冒険なのだ。人類学の金字塔が示唆する「贈与する人」の知恵を探求する。(解説・中沢新一)
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-日常は哲学的な問いに満ちている――日常的観点からは当然のように思われることでも、哲学の歴史をひもとけば、これをめぐって多くの紛糾した議論がなされてきた。 何の変哲もない代わり映えしない風景。昨日も今日も変わらない出来事の繰り返し。それらを見て聞いて普段通りと感じる〈私〉の繰り返し。私たちの日常は、日々繰り返している物の知覚と出来事の理解から成り立っている。 本書は、このように私たちの日常の秩序を支える純然たる物としての物の知覚と、物の世界での出来事の理解を、哲学史にでてくる概念や専門用語を使わず、日常の言葉で哲学的に省察する。世界の見え方を刷新する画期的論考。 *『知覚する私・理解する私』(勁草書房、1993年)を改題・増補して文庫化。 [主な内容] はしがき 第一章 知覚における対象性成立の論理 第二章 知覚的質と本当に在るもの 第三章 因果的理解と行為 第四章 法則の概念と出来事の始まり 本文の哲学史的背景についての注解 注 あとがき 学術文庫版あとがき
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4.8日本が緒戦の勝利に酔っている頃、アメリカはすでに対日占領政策の立案を始めていた! 「真珠湾」から半年余、わが国が緒戦の戦勝気分に酔っていた頃、米国ではすでに対日占領政策の検討に着手していた。そして終戦。3年の歳月を要した米国による戦後日本再建の見取り図はどう描かれ、それを日本はどう受け止めたか。またそれを通じ、どう変わっていったか。米国の占領政策が戦後日本の歴史に占める意味を鳥瞰する。吉田茂賞受賞作。
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5.0これぞ、梅棹の学問のありかたの神髄! 「なんにもしらないことはよいことだ。自分の足であるき、自分の目でみて、その経験から、自由にかんがえを発展させることができるからだ。知識はあるきながらえられる。歩きながら本をよみ、よみながらかんがえ、かんがえながらあるく。これは、いちばんよい勉強の方法だと、わたしはかんがえている」(「福山誠之館」より) (講談社学術文庫)
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-本書の中心は太地五郎作氏の著作『熊野太地浦捕鯨乃話』です。古式捕鯨とそれを行った人々の思考と感情を、内部から正確に観察し繊細に表現した驚異的な著作です。国際社会からの深刻な問い「日本人はなぜ捕鯨をあきらめないのか」という問いに対して、答えるための必読書です。 捕鯨には二つの側面があります。 一つは海中を泳ぐ「富」=鯨を捕らえた後、その富を貨幣へと変えるマニファクチュアの原初形態があったことです。鯨を、肉、油、髭、骨、皮などに分けて、利用しつくすための加工過程のすべてが集合し緊密に組み合わされています。 そして、二つめが鯨を捕るという行為に、組み込まれた「戦争機械」において、人間は媒介を通さず、直接的に自然の力と戦うことです。物理的な力では鯨に劣る人間が、知力をもって集団で鯨に対峙し、執拗な攻撃を加え、鯨を弱らせ、最後に羽刺と呼ばれる若者が海中に飛び込み、一騎打ちをおこないます。その戦いで鯨を仕留めることが、この戦争機械の活動の終了地点となります。 この古式捕鯨の二重構造は、とても日本的と言えるでしょう。非農業的マニファクチュアと農業型ものづくりマニファクチュアは、「半農半漁」を営んでいた海民の生活形態の二重構造と関係が深いと思われます。 以前の輝きを失った日本のものづくりは、農業的マニファクチュアを基礎として発達をとげてきたが、その方法論は、非物質的情報産業が中心の現代では通用しなくなっているのかもしれない。 日本はものづくり、産業の根本に立ち返った自己認識を必要としている。そのとき「異形のマニファクチュア」としてそのレガシーを今日に伝える、太地古式捕鯨の本質を再考することは、未来の文化再生に向けて重要な意義を持つ。本書は、過去を追慕するだけにとどまらない、未来的な意味を持っています。 【目次より】 学術文庫版序文(中沢新一) 太地五郎作『熊野太地浦捕鯨乃話』について 原本口絵より 熊野太地浦捕鯨乃話(太地五郎作) ・太地捕鯨の起源 ・徐福来熊の批判 ・事務所の事 ・大納屋の事 ・山見の事 ・沖合の事 ・勢子船の事 ・六鯨の事 ・鯨切り捌きの事 ・明治十一年の大惨事 和田金右衛門「明治十一年寅十二月二十四日 旧十二月朔日也 背美流れの扣へ」 追 記 ・太地にて初めて洋式にて鯨を捕りたる ・きおいの式 鯨潮を吹く吹かぬの説に就いて実例を説明して置く 熊野太地浦捕鯨の談 昔の鯨の捕り方 ・捕鯨の起源 ・熊野捕鯨の終末の原因 ・太地にて初めて洋式捕鯨の事 鯨肉の料理に就いて 原本あとがき 鯨を捕るということ(サイモン・ワーン) 解 説 中沢新一
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4.0河童、鬼、天狗、人魚、龍、雷獣、そして予言獣。異界からやってきた”不可思議な生き物“は、多くの日本人を魅きつけ、ある時は恐れられ、ある時は敬われながら伝承されてきた。江戸時代から明治時代を中心に、各地の絵図・ミイラ・報道記事を通して、妖怪という名前には収まらない奇想天外な生き物たちのめくるめく世界に迫る。絵図を多数収録! 【目次】 1章 幻獣名鑑 河童 鬼 天狗 人魚 龍 雷獣 その他の幻獣たち 2章 予言する幻獣 件 アマビコ アマビコの系譜 予言獣の共通性 吉祥の幻獣たち 異形の幻獣 3章 記録のなかの幻獣 メディアと幻獣 江戸の幻獣文献 幻獣のデザイン 4章 幻獣の背景 予言獣の創造 諷刺としての幻獣 ミイラの伝承
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3.0「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」(川端康成)は英語で「The train came out of the long tunnel into the snow countory」(サイデンステッカー)。世界を表現する際の「視点」 の違い。英語は「神の視点」を得ることによって主語の誕生を準備したが、「虫の視点」を持つ日本語にはそれは必要なかった。英語の歴史を踏まえ両言語と文化の違いを考察。
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-サルの社会に分け入り、文化を見出し、人間性の起源に迫る―― 世界をリードした日本の霊長類学(サル学)の原点がここにある! 今西錦司・伊谷純一郎らとともに日本の霊長類学のオリジネーターの一人として活躍した河合雅雄。意匠を凝らした筆致でもって生き生きと描かれる、サルの群れのリーダー交代劇、メスの巧みな繁殖戦略、イモ洗い行動の伝播などのありさまに、読者はきっと「息をのみ、眉をひそめ、思わず膝を打って微笑むことになる」(山極壽一氏解説より)でしょう。 加えて強調すべきは、何より研究者本人たちが実に生き生きと、楽しそうに研究に没頭している様子が紙面からありありと伝わること。ゆえに本書は、日本の学問が一番元気だった時代の「生きられた記録」でもあるのです。 解説:山極壽一 [目次] ○ニホンザルの生態 1 ニホンザル/2 ニホンザルの生活/3 ポピュレーションの動態 ○社会構造 1 社会構造/2 群れ社会の諸形態/3 社会構造の変容 ○社会構造を支えるもの 1 幸島の群れ/2 順位制/3 社会関係の調整機構/4 駆け落ちしたリーダー候補 ○クラスとグループ 1 リーダークラス/2 サブリーダー/3 ナミオス/4 ヒトリザル/5 メス/6 母と子/7 社会的成長 ○性 1 その生理/2 性行動 ○ニホンザルの文化[カルチュア] 1 一般に見られるカルチュア的現象/2 幸島の群れのカルチュア/3 知能とカルチュア ○コミュニケーション 1 音声によるコミュニケーション/2 行動による伝達 ○日本のサル学 ○あとがき ○再版にあたって ○解説 ニホンザル研究の一里塚――河合さんのやり方 山極壽一
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3.5日本人とは何か。われわれは一体何を望み、何でありたいのか。長い西欧体験にみがきぬかれた知性が、鋭い洞察力を駆使して日本人のありように迫り、将来のあるべき方向を模索した日本人論八編を収録。十数年前に書かれたこれら諸論文は、その歳月を忘れさせる先見の明に貫ぬかれていて、今日の私たちが直面している諸問題をあざやかに浮彫りにしており、日本人と日本文化について思索するすべての人に知的興奮を与えずにはおかない。
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4.3
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3.0山に富み、森林に覆われ、海に囲まれた列島。そこに棲む日本人は自然の恵みを享受し、生計を立て、カミに礼を尽くしては人生の節目とした。また、参詣・巡礼に言寄せた遊山や漂白・旅の渡世は、楽も苦も味わう深さをもたらした。 近世に固まったそうしたスタイルは、しかし高度経済成長期を境に変容を余儀なくされる。見失われた日本人の暮らしと人生の豊穣はどんな形だったのか。民俗学者がフィールド観察と研究の蓄積をもとに語る。
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4.4
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3.7明治以降、夥しい数の日本人論が刊行されてきた。『武士道』『菊と刀』『「甘え」の構造』などの本はなぜ書かれ、読まれ、そして好評を博すのか。そこには、私たちを繰り返し襲う「不安」がある。欧米文明に遭遇し、戸惑う近代日本人のアイデンティティの不安の在処を抉り出す。本書は、日本人論の総決算であり、150年間の近代日本の物語でもある。(講談社学術文庫)
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-長くヨーロッパの文化と思想を研究対象としてきた著者は、ここ20年ほど、日本の文化と思想の研究にとりくみ、その流れを歴史的に追跡してきました。その成果がついに一書にまとまったのが、本書です。題して、『日本精神史』。 「精神」とはなにか。 ヘーゲル研究者としてスタートした著者は言う。「あえて定義づければ、人間が自然とともに生き、社会のなかに生きていく、その生きる力と生きるすがたが精神だ」。 テキストとして残された思想はもとより、土器や銅鐸、仏像、建築、絵巻、庭園など、あらゆる文化を渉猟し、縄文時代から江戸時代の終わりまでを、一望のもとに描く、まさに畢生の大作です。 ただし、著者は、難解であることを潔しとしません。ヘーゲルのわかりやすい翻訳で脚光をあびたように、あくまでも流麗な文体で、明解に描いていきます。 思想も絵画も仏像も、ひとしく日本の精神の歴史としてとらえ、あらためて、日本とはなにかを問いかける清新な傑作と言えます。 待望の文庫化! 【目次より】 第一章 三内丸山の巨大建造物 第二章 火炎土器と土偶 第三章 銅鐸 第四章 古墳 第五章 仏教の受容 第六章 『古事記』 第七章 写経 第八章 『万葉集』 第九章 阿修羅像と鑑真和上像 第十章 最澄と空海と『日本霊異記』 第十一章 『古今和歌集』と『伊勢物語』 第十二章 浄土思想の形成 第十三章 『枕草子』と『源氏物語』 第十四章 『今昔物語』と絵巻物 第十五章 東大寺の焼失と再建 第十六章 運慶の新しい造形意識 第十七章 法然と親鸞 第十八章 『正法眼蔵』
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-12世紀末に臨済宗開祖・栄西が中国から持ち帰って以降、 日本人に欠かせない飲み物となった日本茶。 その味と製法はどのように変わり、私たちに受け継がれたのか? 茶畑の日光状態とうまみの関係、番茶・煎茶が誕生した理由、 幕末の海外輸出秘話から、多彩な茶葉の特徴と製法、淹れ方や茶器選びまで――。 長く深く愛された、日本の「心」を味わい尽くす! *本書は2006年に刊行された『お茶は世界をかけめぐる』(筑摩書房)を改題したものです。 内容 プロローグ 日本茶セミナー 第一章 村上の春 第二章 煎茶以前のこと 第三章 煎茶の発明 第四章 世界に旅立つ日本茶 第五章 世界をめぐる日本茶 第六章 日本茶故郷へ帰る ーー台湾から見た日本茶の高度成長 第七章 日本茶の現在 エピローグ 釡炒り茶の復権 内容紹介) 三代将軍家光の時代には、宇治から江戸まで碾茶の新茶を運ぶ、お茶壺道中が定例化されます。(中略)あの、「♪ズイズイズッコロバシ……」という戯れ唄にある「♪茶壺に追われてトッピンシャン、抜けたらドンドコショ……」という一節は、十万石の大名行列と同等の格式をもって旧暦六月前後の農繁期に行われたお茶壺道中に対する、沿道からの怨えん嗟さ の反応でした。「またあの面倒なお茶壺が来るなあ」―――第二章「煎茶以前のこと」より あとがき コラム〈日本茶データファイル〉 1 碾茶 2 煎茶 3 玉露 4 釡炒り茶 5 蒸し製玉緑茶 6 お茶の葉の選び方
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4.4世界に孤立して国運を誤るなかれ──日露戦争後の祖国日本の動きを憂え、遠くアメリカからエール大学教授・朝河貫一が訴えかける。歴史学者としての明解な分析に立って、祖国への熱い思いが格調高く述べられ、読む者の心に迫る。彼の忠告も空しく、軍国主義への道をつき進んだ日本は、戦争、敗戦へと不幸な歴史を辿った。日米の迫間(はざま)で、日本への批判と進言を続けた朝河。彼の予見の確かさと祖国愛には、今もなお学ぶべきものが多い。 目次 ●前篇 日本に関する世情の変遷 日本に対する世評の変化 満州における日本に対する世の疑惑の由来 反動説──感情的反対者──利害的反対者 東洋における世界の要求 一八九九年以前 一八九九年以後 日露戦争以後 ●後篇 日本国運の危機 ・第1章 戦後の日本国民多数の態度に危険の分子あることを論ず 国権説は機に後れたり 国勢は劇変して国民の態度はこれに副わず 国民の危険なる態度、国運の危機 ・第2章 日本と米国との関係に危険の分子少なからざることを論ず 米国人の日本に関する感情の変遷 日本人の米国に関する思想の浅薄 日、清、米の重大なる関係 米国と新外交、清国の信頼 米国人民の東洋に関する輿論 米国為政者の東洋に関する思想 ローズヴェルト氏、タフト氏 結論 日本国民の愛国心
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-イザナギ、イザナミ、アマテラス、そしてスサノヲ。一地方の霊格として独自の性格や尊崇を有していた神々は、どのようにして日本神話を代表する神格を獲得していったのか。歴史学と民族学・比較神話学という二つの潮流をふまえ、素朴な「原像」が宮廷神話へと発展していった過程を追い、信仰や祭祀の形成との関係を通して古代国家成立の実像に迫った日本神話学、不朽の一冊。
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-東京は京都より敬語が多い? 「ご遠慮ください」は失礼? 「お前」は敬語だった? 貴人は「する」より「なる」? 「敬語は日本語の美しさである。しかし、度をすぎるとうんざりする。」敬語はなぜ生まれたのか。尊敬と相殺される親愛の感情は、どう表現したらいいのか。原日本語、上代から奈良、平安、そして現代へ。敬語の起原と変遷をたどり、情況にふさわしい使い方を考える。一級の言語学者がじっくり向き合う、敬語の歴史と実用。(解説・滝浦真人) 底本:『日本の敬語』角川新書、1959年 【本書の内容】 第一章 序説 一 英語と日本語 二 日本の敬語は文法的 三 日本の敬語は相対性敬語 四 敬語の起原と階級 五 敬語の起原とタブー 六 アイヌの妻女 七 アイヌの婦人語と敬語 八 アイヌ代名詞の構造 九 日本代名詞の構造 一〇 名詞の敬称 一一 結 論 第二章 起原:どうして日本の敬語が起ったか 一 原日本語と敬語法 二 上代日本語の敬語法1 「ます」考 三 上代日本語の敬語法2 「せす・けす・めす・をす・なす・こやす」考 四 上代日本語の敬語法3 「たまふ」考 五 上代日本語の謙称動詞1 「たぶ・たばる・まつる」考 六 上代日本語の謙称動詞2 「まをす(申)」考 第三章 変遷:奈良から平安への敬語のずれ 一 上代敬語と古代敬語の対比 二 平安時代の敬語助動詞の起原 三 奈良・平安の相違 四 万葉語における「頂戴す」について 五 「見めす」の忘却 六 「せす」のまちがい 七 御立為之の誤訓 八 物語文学と敬語 九 後代の敬語 第四章 現代の敬語:どうあり、どうなるべきものか 一 序 論 二 名詞・代名詞 三 動詞 四 地方別 五 現代敬語の無軌道さについて 第五章 結論 一 敬語のとどかない名歌 二 歌から見た敬語の本質 三 結びの言葉 付録 これからの敬語 解説 滝浦真人
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-珈琲は、いつ、どのようにして日本に伝わり、広まったのか。世界の珈琲発見伝説・珈琲の異名熟字一覧・日本初の珈琲店の話から、江戸時代の長崎での交流、海外渡航者、はたまた海外漂流者の体験まで――膨大な史料を渉猟し、驚きに満ちた珈琲の歴史を明らかにする。生活文化史の古典である幻の名著、待望の復刊!(序・古波蔵保好/解説・旦部幸博) [本書の内容] 序によせて 古波蔵保好 一、珈琲の始まり 二、世界の珈琲 三、日本の珈琲の始まり 四、珈琲研究に手掛かりを与えた人々 五、日本の珈琲文献 六、珈琲異名熟字ほか 七、日本への渡航者と珈琲 八、海外漂流者の珈琲記事 九、海外渡航者の珈琲記事 十、新日本と珈琲 十一、その後の日本の珈琲 十二、珈琲の栽培 あとがき 解説 旦部幸博
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4.0現存する最古の歴史書『古事記』、『日本書紀』にはじまり、『大鏡』などの「鏡物」、『平家物語』などの軍記物語、鎌倉幕府による『吾妻鏡』や江戸幕府の『本朝通鑑』、『徳川実紀』、水戸藩が編纂した『大日本史』、そして『大日本史料』をはじめ現在まで続くものもある明治政府の歴史編纂事業にいたるまで、この国では1300年以上にわたってそれぞれの時代に、さまざまな人々の手で歴史書が編まれてきました。これらの編纂にあたった人々は、どのような目で歴史を眺め、そしていかなる態度で歴史を書いたのでしょうか。歴史に向き合う姿勢はどのような変遷を遂げてきたのでしょうか。 本書は、古代から現代にいたる歴史書を、時代を追って50以上にわたって取り上げ、それぞれの成立事情や特色を平易に解説したものです。歴史叙述の変遷の軌跡から、この国の歴史そのものが照らし出されます。 六国史研究の大家であるとともに、東京大学史料編纂所所長をも務め自身も史料の編纂に携わった、戦後の日本史学の礎を築いた著者が贈る、第一級の史学入門! (原本:至文堂、1966年) 【本書で取り上げられている主な歴史書】 『帝紀』、『旧辞』、『古事記』、『日本書紀』、『日本後紀』、『続日本後紀』、『類聚国史』、『日本紀略』、『本朝世紀』、『扶桑略記』、『栄花物語』、『大鏡』、『今鏡』、『水鏡』、『増鏡』、『愚管抄』、『将門記』、『陸奥話記』、『平家物語』、『保元物語』、『平治物語』、『太平記』、『梅松論』、『釈日本紀』、『神皇正統記』、『吾妻鏡』、『百錬抄』、『六代勝事記』、『五代帝王物語』、『元亨釈書』、『善隣国宝記』、『本朝通鑑』、『寛永諸家系図伝』、『武徳大成記』、『東武実録』、『武徳編年集成』、『御撰大坂軍記』、『寛政重修諸家譜』、『徳川実紀』、『続徳川実紀』、『続徳川実紀』、『後鑑』、『大日本史』、『中朝事実』、『武家事紀』、『藩翰譜』、『読史余論』、『古史通』、『史疑』、『折焚く柴の記』、『続史愚抄』、『野史』、『大勢三転考』、『古事類苑』、『大日本史料』など。
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3.0日本人は何を食べていたのか。本書は京都・山科家の日記や奈良・興福寺の文書をひもとくことで、中世の公家と僧侶の食生活を再現し、その背景をなす製法の歴史へと接近する。中世から近世にかけて日本酒としてのかたちを整えていく酒。醤(醤油)、味噌、納豆といった大豆発酵食品……。日本の食文化を最も特徴付ける発酵技術と発酵文化の歴史を追い、その原点に迫る。これが日本食の原型だ! (講談社学術文庫)
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-青銅鏡、墨、刺繍、タタラ製鉄、漆、べっ甲細工、扇、鯉のぼり、蒔絵(まきえ)、焼き物、竹細工……。二十世紀後半、科学技術史家である著者は、職人の仕事場を訪ね歩き、伝統の技とその現状を報告する。現代へとつながる、中世~近代の日本における職人の変遷を概観し、苦しくも誇り高き手仕事を再評価する。職人の盛衰から日本文化を読み解く試みでもある。
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3.0明治維新以来、「西洋化」は日本の国策であり、西洋は日本人のモデルであり続けた。では、西洋人が自らの政治・経済・文化・社会の来歴を探求した歴史学を、日本人が学ぶことにはどんな意味があったのだろうか。明治から昭和まで、先駆者たちの生き方と著作から、「西洋史家の誕生と苦悩」のドラマを描く。 明治20年、帝国大学に着任したお雇い外国人教師、ルートヴィヒ・リースが、ドイツでランケが確立した近代歴史学を講義したのが、日本の歴史学の始まりだった。リースの弟子で日欧交通史を開拓した村上直次郎、慶應義塾に学び経済史学の草分けとなった野村兼太郎、ルネサンス論の大類伸、イタリア史の羽仁五郎。マルクスとウェーバーへの深い理解から大きな業績を残した大塚久雄。そして、戦時下の西洋史家たちは「大東亜戦争の世界史的意義」をどのように論じたのか。 また、1920年代にウィーンに留学し、西洋の「受け売り」でも「追随」でもなく、みずから「原史料を直接考究する」主体的学問を確立した上原専禄は、戦後、13世紀のモンゴルの世界征服の時代を「世界史の起点」とする新たな世界史の構想を得るに至る。 [原本:『西洋史学の先駆者たち』中央公論新社2012年刊を増補] 目次 序に代えて 第一章 ドイツ史学の移植――ルートヴィヒ・リースとその弟子たち 第二章 歴史の経済的説明――欧州経済史学の先駆者たち 第三章 文化史的観照を超えて――大類伸のルネサンス論とその周辺 第四章 「原史料の直接考究を第一義とすること」――上原専禄とドイツ中世史研究 第五章 近代資本主義の担い手を求めて――大塚久雄の近代欧州経済史研究 第六章 「大東亜戦争の世界史的意義」――戦時下の西洋史家たち 補章 世界史とは何か――上原専禄の世界史像と地域概念 学術文庫版あとがき 参考文献 人名索引
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3.7地名には歴史的・文化的に貴重な価値が含まれています。日本の地名はバリエーションも多く、その起源についてもさまざまなものがあります。 地名の成り立ちや命名の仕方について研究する地名学は、柳田國男も取り組んでいた。もともとは地理学との関係が深いが、歴史学、民俗学、言語学などのアプローチが必要でもある。 いくつか具体的にみてみましょう。 大和語(ツル=水流=津留など)・アイヌ語(ホロ=大=美幌など)・朝鮮語(フル=火・村=布留など)・マライ語(アゴ=真珠の首飾り=英虞など)などを起源とするケース、もともとの地名が方言によって違っているケース(タロウ=太郎・田老=巨大または小平地など)、時代の流行によっているケース(開墾が盛んだった時代は、「田代」「新開」「新田」など)がなどです。 また、地名は発生した後に、その伝播のしかたにも特徴があります。もともとの地名が伝わっていくときに、扇状に伝わるということがあります(親不知付近では混在している「しとる」「してる」が、南では扇状にその範囲が広がる)。また、「空洞」と呼ばれる「地名のない部分」が発生したりします(たとえば中国・四国地方では、山の呼び名に「岳」を使用しないことが多い)。 地名を研究することで、隠された歴史の痕跡を読み取ることが可能なのです。 「文化化石」としての地名を研究する学問として、「地名学」を提唱した著者が、その集大成として刊行されたのが、本書です。 また、本書巻末には約1000項目の「日本地名小辞典」が付いております。 身近な地名の謎に迫るためにも好著ですし、歴史学・民俗学の補助としても役に立つ一冊です。 【原本】 『日本の地名 付・日本地名小辞典』(角川新書 1964年刊) 【目次】 はじめに 第一章 地名学とはどんな学問か 第二章 どうして研究したらよいか 第三章 むずしい地名の意味をどうして解くか 1 富士山のフジの意味 2 「名古屋」の意味 3 「船越」の意味 第四章 地名にはどんなタイプがあるか 1 語根型 2 民族型 3 時代型 第五章 地名はどんな形で分布するか 1 波紋形の分布 2 相似関係の分布 3 現状に境界線が集まる現象 4 「空洞」といわれる「地名のない部分」の現象 5 伝播する地名 6 双子地名 第六章 地名の発生年代は決められるか 第七章 地名の正しい書き方 第八章 郷土の地名の調べ方 第九章 地名研究の参考書 おわりに 付録 日本地名小辞典
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-朝鮮半島からの渡来人を抜きに日本の古代は語れない。全国に分布する彼らの高い文化水準を伝える遺跡に注目した著者は、20年余にわたる踏査の旅へ出発した。次々と掘り起こされる、忘れられあるいは隠された真実。そこから考察された両国・両民族の歴史的関係は我々を呪縛する〈帰化人〉史観の訂正を迫る。壮大な紀行の第一歩となった本巻は、関東編を収録する。(講談社学術文庫) ※この電子書籍の底本である、講談社学術文庫の原本は、1983年4月に講談社より講談社文庫として刊行されました。『日本の中の朝鮮文化 相模・武蔵・上野・房総ほか』は、講談社学術文庫を底本とし電子化した電子書籍のほかに、講談社文庫を底本とし電子化した電子書籍『日本の中の朝鮮文化(1)』も配信中です。内容は同一のものとなります。あらかじめご了承ください。
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3.8日本列島を徹底踏査した民俗学の巨人が、『古事記』『日本書紀』『万葉集』『風土記』などの古代文献を読み返し、それらと格闘の末、生まれた日本文化論。稲作を伝えた人びと、倭人の源流、畑作の起源と発展、海洋民と床住居など、東アジア全体を視野に入れた興味深い持論を展開する。長年にわたって各地の民俗を調査した著者ならではの着想を含む遺稿。(講談社学術文庫)
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-※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 日本を代表する国語学者の代表作「口語篇」(1950年)と「文語篇」(1954年)を1冊に収録した初の文庫版。 ヨーロッパの言語学に依拠した明治以降の国語学に抗して独自の体系を築いた稀代の学者・時枝誠記(1900-67年)。人間の心の中で起きる言語の働きに注目し、言語を実体的な対象として捉えることを拒む時枝は、文の構成要素となってそれに対応する意味を生み出す「詞」と、それを心の中で生きさせる働きそのものである「辞」を区別する。そして、「辞」が「詞」を包含し、そのまとまりがより大きなまとまりに包含されていく「入れ子構造」を基本に据え、「言語過程説」と呼ばれる独自の理論を築き上げた。 言語過程説は『国語学原論』(1941年)として発表されたが、この一般理論は具体的な日本語を説明できなければ、単なる理論で終わってしまう。だから、時枝は口語と文語のそれぞれについて、文法の詳細な解説を形にする必要があった。それこそが、本書にほかならない。 「時枝文法」の全容を明らかにした本書は、日本語に潜む文法の実相を、広い読者に向けて、全力で説き明かそうとした渾身の作であり、日本語について考える上で避けて通ることのできない不滅の古典である。読みやすさに配慮して旧字体は新字体に変えつつも、かな遣いについては時枝自身が望んだ「旧かな遣い」を保持した本文庫版を、前田英樹氏による情熱あふれる「解説」とともに味読する喜び。 【本書の内容】 [口語篇] はしがき 第一章 総 論 第二章 語 論 第三章 文 論 第四章 文章論 [文語篇] はしがき 第一章 総 論 第二章 語 論 第三章 文 論 第四章 文章論 注意すべき動詞活用例 解 説(前田英樹)
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-本書は古代から江戸時代までにおよぶ日本の通史である。ただし、大化の改新や本能寺の変といった政変や戦乱の歴史ではなく、たとえば大和朝廷時代の臣(おみ)、連(むらじ)、伴造(とものみやつこ)にはじまり律令制を経て鎌倉幕府の組織、さらに室町幕府、江戸幕府の組織に至るように、租庸調から年貢に至る税制、荘園制をふくむ土地制度、裁判制度など、この国を成り立たしめている制度の歴史、いわばこの国の「かたち」の歴史を一望する。 「佐藤君とは違って、僕は中田さんの講義を聴いたからねえ」。かつて石母田正は楽しそうに佐藤進一に語ったという。戦後日本史学の礎を築いた二人の巨人の間でこのような会話をせしめた「中田さん」こそ、中田薫その人であり、本書は、「中田さんの講義」の一つ、東京帝国大学で行われた日本法制史講義公法篇の講義録である。 中田薫(1877-1967年)は、日本における法制史研究の創始者で、法制史はもちろんのこと、前述の会話からも明らかなように日本史学にも絶大な影響を残した。西欧のみならず中国など世界中の法に通暁し、厳密な近代的法概念によって論理的に前近代の法や社会を分析することを通して、その後の日本の歴史像の土台を築いた。 当時の法律雑誌に「聞いて居ては頗(すこぶる)る面白い。通常なら乾燥無味な法律の条文解釈とは別に川柳が出たり、江戸文学の顕著な傑作や貴い珍奇な文献が読み上げられたりするので、その時は無性に面白い。それでいよいよ試験となると最もつらい一科目である」と評された名講義を、講義最終年度にあたる昭和十(1935)年度の講義録を底本に、他年度の講義録や弟子たちによる貴重なノートを参照しつつ編纂。『人物叢書 中田薫』(吉川弘文館、2023年)で入念な調査を重ねその人生に迫った編者による渾身の講義録。 【本書の主な内容】 第一編 上世 第一期 大化前代 天 皇/人民の階級/官制(中央官制)/地方制度/税制および兵制/土地制度/法源/刑法および裁判手続ほか 第二期 大化後代 天皇および皇族/人民の階級/氏姓制度/中央官制/官職(官吏法)/位階の制/地方制度/戸籍および計帳/土地制度/財政/兵制/庄園/法源/刑法/裁判所(司法制度)ほか 第二編 中世 天皇および朝廷/将軍および幕府/人民の階級/庄園/封建制の発達/地方制度/土地制度/財政/法源/刑法/裁判所(司法制度)ほか 第三編 近 世 天皇および朝臣/将軍および幕臣/幕府の中央官制/人民の階級/地方制度/土地制度/財政/封建制/法源/刑法ほか 編者解説
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3.0茶道の美と精進の思想―和の食、かくして極まれり。 「懐石」と「会席」は何が違うのか。 利休の「一汁二菜」「一汁三菜」はなぜ正統となったのか。 「乾杯」の日本的起源とは。 茶道から生まれた様式がいかにして日本料理の伝統を形づくったのかを、資料から丹念に考察する。 和の食、その精髄たる懐石料理の誕生から完成、そして後世への継承という歴史の中に、 日本文化のエッセンスを見いだす類稀なる論考。 【本書より】 何故、懐石という新しい料理の様式が生まれたのか。その歴史的前提を明らかにしなければならない。料理に限らず、文化は一つの様式に固定してしまうと、それを内部から突き破る革新が起こって、また新しい創造的な歩みがはじまる。いわば本膳料理の行き詰まりを打破する革新であったと、さきに懐石を位置づけたのだが、では、本膳料理とは何か― 【本書の内容】 唐菓子と柏餅―序にかえて 第一部 懐石誕生 懐石の誕生 近世公家の懐石 千家茶会記にみる懐石 茶書にみる懐石の心得 第二部 懐石以前 大饗料理 本膳料理 精進料理 第三部 料理文化の背景 中世の食文化点描―大工・荘園・都市 日本の食事文化における外来の食
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5.0〈日本にとって冷戦とは何だったか。冷戦にとって日本とはいかなる存在だったか?〉 1945年8月に崩壊した旧日本帝国の空間をいかに管理するかをめぐる同盟国間の対立が激化、ここにこそ冷戦、とりわけアジア冷戦の起源があるという認識から、本書は出発する。 連合国という同盟関係は、枢軸国という敵の消失とともに内部での齟齬が拡大し、12月のモスクワ外相会議において形式的にも終焉を迎えた。そして同時に、のちのサンフランシスコ条約の規定にいう、旧大日本帝国が「放棄」した台湾、朝鮮半島、千島、満洲といった地域の主導権をめぐって、英米ソ中の各国による主導権争いが始まる。モスクワのケナン臨時大使が、冷戦の開始を告げる著名な電文を送るのに先立つこと2ヵ月前のことである。帝国崩壊後の日本列島やポスト帝国空間の管理をめぐる対立こそ、広島への核兵器投下が核時代への移行を告げたことと並んで、冷戦の文字どおりの第一頁となったのである。 冷戦の起源は、ヨーロッパをめぐる米ソ対立にあるというのが、欧米と日本いずれの歴史学でも自明とされてきた。この場合の冷戦とは、戦後国際政治の中で米ソが覇を争った状況を指している。しかしながら、米ソだけがその過程に関わったわけではない。グローバルな冷戦の起源において日本こそは枢要な現場であり、そしてアジア冷戦においては終始重要な舞台であり主題であり続けた。そうした視角から、本書の論考は展開される。 旧大日本帝国、東欧、そして核。この三要素による多元的利害関係のもとに米ソ中英仏が駆け引きを繰り広げる中、日本政治、とりわけ日本共産党の動向と響き合い、歴史が展開してゆく様を、ロシアはじめ各国の史料から丹念に描き出す話題作、全面増補改訂! 【本書の内容】 序章 第一章 日本占領と冷戦の起源 第二章 日本管理、東欧管理、核管理 第三章 冷戦のなかの日本(一九四六―一九五〇) 第四章 同盟・戦争と講和 第五章 危機の中の日本共産党 第六章 五五年体制―冷戦の再編成 終章
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5.080年前、空からの爆撃で、日本の都市は焼き尽くされた。この無差別空襲は、全国都道府県のすべてにおよび、終戦の日まで続けられ、その死傷者数はいまだ確定されていない。 本書は、戦史研究家・平塚柾緒氏が主宰する太平洋戦争研究会による全国各地への取材・調査と、アメリカ国防総省などから入手した膨大な写真をもとに、北海道から沖縄まで、日本本土への米軍の空襲の実態を解き明かす。 日本への米軍機の空爆は、昭和17年4月の「ドゥーリットル空襲」に始まる。その後、「超空の要塞」B29の投入によって昭和19年から本格化する日本本土への空襲は、おもに軍需工場を標的にした「精密攻撃」、昭和20年3月の東京大空襲を皮切りに5月まで続いた大都市への焼夷弾による無差別爆撃、さらに5月以降の全国中小都市への焼夷弾爆撃へとエスカレートし、広島・長崎への原子爆弾の投下にいたった。 その間に日本本土へ出撃したB29機はのべ3万3041機。連合国軍機が投下した爆弾は約16万トン。この「爆撃の嵐」にさらされた日本国民の体験とはいかなるものだったのか。日本列島をカバーするデータと、250点あまりの貴重写真から、あらためて考えていきたい。〔原本:2015年、洋泉社刊『日本空襲の全貌』〕 目次 はじめに――八〇年前、米軍の無差別攻撃で日本の都市は焼かれた 第一章 B29の開発と本土攻撃の開始 第二章 狙われた日本の軍事産業 第三章 東京大空襲への道:ルメイの無差別攻撃 第四章 炎につつまれた五大都市:名古屋・大阪・神戸・横浜・川崎 第五章 地方都市への拡大 第六章 アメリカの原爆投下作戦 〔特別ルポ〕原爆誕生の地・トリニティサイトをゆく
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4.0男女同権はすくなくとも社会通念上は、あたりまえの前提となって久しい。 だが、日本の各地には、女性の立ち入りを禁止する聖域や、特定の神事には女性を参加させないという慣行が現在も存在している。 そして、大相撲の土俵についての「禁制」は、たびたび物議をかもしてきた。 「女人禁制」とはいかなる背景から生まれ、変化する政治や社会の中で受け継がれてきたか。 なぜ、時に激しい批判にさらされながらも、人々はそれを守ろうとするのか。 女性たちは禁制をどのように受容し、あるいは抵抗し、つくり変えてきたのか。 「差別」として批判をする人々と、「伝統」として守ろうとする人々。 この対立構図は、当事者達にとって調停不可能であり、今後も継続することが予想される。 本書では、文化人類学的分析を柱にしつつ、宗教学、民俗学、歴史学、国文学、社会学など様々の分野の成果を取り込んで、 暗黙の前提を覆し、賛成か反対か、伝統か差別かという二分法を乗り越える視点を提示するものである。 第一人者が、真の解決に不可欠な知見を、この一冊でわかりやすく示す! 【本書の内容】 学術文庫版の刊行に際して 女人禁制の現在―プロローグ 女人禁制への視角 大峯山の現状 山と女性 女人結界 仏教と女性 穢れ再考 あとがき 二十年の後に―学術文庫版あとがき
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4.0近代国家と資本主義の正当性とは? 「人間的自由」の本質に立ち戻り近現代思想を根本から問い返す! 「国家」と「資本主義」の矛盾を克服し、その獰猛な格差原理を制御する新しい時代思想はいかにして可能か。ポストモダン思想をはじめとする20世紀社会思想の対抗原理の枠組みが失効したいま、資本主義的自由国家の「正当性」をどう哲学的に基礎づけるか。カント、ヘーゲル、マルクスら近代哲学に立ち戻り現代社会の行き先を再検証する画期的論考。 ヘーゲルは、「人間的自由」の本質は必ず近代の「自由国家」を必然化し、またそれは「放埒な欲求の体系」(競争的資本主義)へ転化すると考えた。そして近代国家の「人倫」の原理だけが、この矛盾を内的に制御し克服しうると主張した。……われわれはヘーゲルが近代国家論を完成したと考えたこの場面に立ち戻り、ヘーゲルの構想を、もういちど人間的自由の本質からはじめて“解体構築”しなおす必要があるのだ。――<本書より>
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-センセーションを巻き起こした『種の起源』から12年、ダーウィンは本書で初めて人間の「由来」と「進化」を全面的に扱った。人間は、肉体的形態、心的能力、知的能力、道徳的性質のすべてにおいて「下等動物」と連続性をもっている。そして、お互いに助け合い、守り合う「種」こそが「存続をめぐる争い(生存競争)」を生きのびる。ダーウィンが進化論に託した希望が示されるもう一つの主著、待望されてきた文庫版初の全訳!
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4.5体格、体力、手先の器用さなどの「自然」に基づく不平等ではなく、地位、身分の区別、貧富の差といった「人為」によって作り出された不平等は、人間を惨めで不幸にする。そんな不平等の起源と根拠を問い、不幸を回避するための道筋を示す。格差社会が深刻化している今、ますます重要性を帯びるルソーの主著を、原文を感じさせる日本語で新訳! 断片のみが残された作品『戦争法原理』の復元されたテクストを本邦初訳で併録した。
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4.0
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5.0『脳とクオリア』に書かれていることは、それなりにオリジナルなことだと信じている。刊行から二十年以上が経った今でも、類書はあまりない。内容も古くなっていない。それは、本書の価値であると同時に、意識研究、より広く言えば脳科学研究、さらには人工知能研究の現状を示しているとも言える。――「文庫版へのあとがき」より*私たちの心の中で起こっていることは、すべてニューロンの発火である。これが、恐ろしく複雑な分子機械である脳の、単純な作動原理でもある。しかし、ニューロンがシナプス結合を通して、お互いに複雑に影響し合うことによって、私たちの心の中には、熱帯雨林の生態系のような豊かなクオリア(質感)が生じる。クオリアが多彩で、柔軟性に富んでいるということは、そのまま私たちの脳の中の情報処理の多彩さ、柔軟性の反映なのである。そして、この一つ一つのクオリアを、私たちの心は、他とは混同しようのない個性をもったものとして捉えている。つまり、私たちが感覚をとおして世界を認識するということは、クオリアの自己同一性を通して世界を認識するということである。クオリアという質的表現が、数字や量による表現とは比べ物にならないくらいの多様なものを感覚し、認識することを助けているのだ。自然科学としての「因果的自然」と、クオリアが表す「感覚的自然」――すなわち「脳」と「心」は、どのように結ばれるのか? 「クオリア」という感覚的自然にとっては自明な属性は、因果的自然と、どう結びつけることができるのか? 私が私であることの不思議、意識の謎に正面から挑む、科学者の主著!
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