中島隆博の一覧
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ユーザーレビュー
期待以上の内容。中国思想の断片をつまみ食い的に知ることができれば、程度の思いだったが、単なるクロニクルではない、思想の流れを非常に解りやすく提示している。あとがきに網羅的でないとの謙遜があったが、むしろ網羅的でないからこそ遷移の様子がくっきりと浮かび上がるし、得てして中国哲学史は孔孟、朱熹、道家、王
...続きを読む 陽明にフォーカスが当たりがちだが、決してこれらに集中しすぎないことで相対的、網羅的に思想史を俯瞰できる。
Posted by ブクログ
本書は副題の「諸子百家から朱子学、現代の新儒家まで」通り、中国3000年の哲学史を叙述したものであるが、単に各思想家の思想や哲学を紹介するにとどまらず、それら思想を世界史的な連環のなかに位置付けて読み解くことを試みた「新しい哲学史」と言えるだろう。
たとえば第2章で取り上げられるおなじみの孔子も司
...続きを読む 馬遷が描いた「異様な異邦人」として捉えられ、歴史のヘテロトピア(異質性、異邦性)の重要性が強調され、中国<哲学史>のスタートして措定される。まさに「はじめに」の「グローバル・ヒストリー」の部分(p.16)で問題提起されている歴史学が前提としている諸概念の「哲学史的」見直しの可能性、「普遍化すること」への可能性を開いていくのである。
自分なりにもう少し整理してからきちんとレビューしようかと思うが、取りあえず備忘として。
Posted by ブクログ
本書は、世界哲学史シリーズのふりかえりと、シリーズで語られなかった漏れを補完することが目的である。
見た目、各章の流れや、並べ方については、どうして、そうなっているのは、理解できませんでした。読むの長い時間がかかってしまいました。
<ふりかえり>
古代Ⅰ 世界と魂がテーマであった。世界哲学の始
...続きを読む 点をどこにおくか、それはギリシアである。哲学とは、ギリシアから始まる大系であることを始点におく。
古代Ⅱ ギリシアからローマへの流れとキリスト教の成立が軸となる。この時期に世界宗教が成立したことを捉えて、その成立には、聖なるテクストの整備が必要であったことを論じる。
中世Ⅰ 中世のはじまりと、古代が用意してくれた哲学をつかみなおすこと、それが、ルネサンスへとつながっていくことを解説しています。それとイスラームへの考察。
中世Ⅱ トマス・アクィナスを例に「神学大全」を中世スコラ哲学とキリスト教との集大成といて論じています。この時代は、個人の覚醒という概念を次の時代につなげています。
中世Ⅲ バロック、大航海時代、宗教改革、利子の問題から、プロタンティズムへ。
近代Ⅰ 感情と理性の対立、啓蒙の世紀を扱います。科学が発展するにつれて、宗教は世俗化していきます。
近代Ⅱ マルクス主義、プラグマティズムの成立。ヨーロッパの列強による植民地主義は、現代までその禍根を残すことになります。キリスト以前の古代の発見、文献学、実証主義。
現代 20世紀は戦争の世紀であり、哲学は、ナチスなどの全体主義や、科学技術に対抗できずに、戦争という悲劇をもたらした。哲学はこうして、反省を強いられる。
<世界哲学と辺境>
哲学を内部と外部ととらえて、その境界を辺境ととらえ、辺境へとおもむくことを旅ととらえる。辺境と接し、刺激を受けることで新しい思考を生んでいく。
中央で生まれた宗教は、辺境に生きる落差に苦しむ人々を搾取から救済すること、それが普遍的な宗教と説く。
<世界哲学としての日本哲学>
まず、空海が紹介される。三蜜 身体・言語・心、関与しあう知の在り方を、空海は、世界哲学を実践したと語る。
つぎに、道元の正法眼蔵を扱う、荻生徂徠の先王の道、本居宣長の漢意(からごごろ)、和辻哲郎、西田幾太郎、鈴木大拙、井筒俊彦へと続く。
井筒は、再び、空海の真言密教の核心へともどってくる。日本の哲学を時系列に再構築したものである。
<世界哲学のスタイルと実践>
哲学を論ずるのは、その論理性からなのか、それとも、その哲学を記述している言語の文法からなのか、伝えられ、翻訳されたテキストをどう読み解くかという問題を扱っている。
<漏れ>
・ふりかえりに、近代の哲学は、デカルトに始まるという紹介があり、そこで、デカルトの情念論が、この冒頭にあるのであろうか。わからなかった。
・フランシスコ・ザビエル宜しく、イエズス会と中国との関連性が述べられている。それまで中国の原典までさかのぼっていなかった、中国研究は、四書におよぶようになるのである。
・考える私をめぐっての論議。鈴木大拙は、考える私を、空にすること、そして、シモーヌ・ヴェイユに対しても大拙の考えが受け継がれていく。「善は四方八方にあるのに、おまけにみずから身まで差し出しているのに、意志には善が見えない。意思をどれほど行使しても、善は手に入らず、みずからの力を放棄したときにようやく願いが始まる。」という考えが示されていた。
・インドの論理学についての紹介、インドの論理学は、「因明」といい、主張、論理因、実例の三項目かを提示するもの。インドでは、推論という形式の論理が、学術的基盤になっている。
・イスラームの聖典であるクルアーンはアラビア語でかかれていて、その論争は、本来の論理学と、アラビア語の文法の解釈からくるものとがある。それを言語神秘主義と、象徴文字論といっている。
・道元が再び登場する。「日本の生んだ最も偉大な哲学者のひとり」である道元の修行と悟りを軸として、自己とはなにか、世界とはどのようになりたつのかをかたっています。「自己をわするるといふは、万法証せらるるなり」。包括性、一貫性、透徹性、綿密性に富んだ道元の思想は、「正法眼蔵」を先駆として、西洋哲学と比較されていたことを語っている。
・ロシアの現代哲学、ロシアの知識人は、自らを、西洋哲学なのかそれとも東洋哲学なのか、という問いで悩みつづけている。ビサンチンに伝わった東方キリスト教は、ロシアにも伝えられで、西欧とはちがった発展をした。また、共産主義のもと、冷戦後は、近代の超克にも近い形での影響をうけた。
・イタリアの現代哲学は、フランスやドイツとちがって、国家の縛りをうけてこなかった。イタリアの哲学は、感性の学、思想からではなく、美学から出発していることを示される。
・ユダヤ哲学は、19世紀からのユダヤ人の西洋世界への同化の失敗と、大戦による、西洋的価値の崩壊という二重の危機に遭遇した。それゆえ、現代のユダヤ哲学は、西洋哲学を全面的に否定する。
・ナチスの農業政策については、アーリア人が森から平野にでてきた農耕民族であること「森への愛着」そして、血と土が語られてる。この場所のナチスの農業が挿入された理由はわからない。
・ポスト世俗化、チャールズ・テイラーを軸に、宗教と世俗の二分法がかたられている。
・モンゴル仏教について、共産主義を生き残ってきた僧侶については、現世の救済のためのシャマニズムとして生き残ったという話。宗教家ではなく、呪術師としてである。
・ジョン・ロールズの正義論がかたられています。脱西洋主義、聖徳太子の17条憲法、イスラームのサラディン王国、ネルソン・マンデラのタウンミーテイングが非西洋的な事例として紹介されている。
目次は以下の通りです。
はじめに
Ⅰ 世界哲学の過去・現在・未来
第1章 これからの哲学に向けて 「世界哲学史」全八巻を振り返る
1 「世界哲学史1 古代Ⅰ 知恵から愛知へ」
2 「世界哲学史2 古代Ⅱ 世界哲学の成立と展開」
3 「世界哲学史3 中世Ⅰ 超越と普遍に向けて」
4 「世界哲学史4 中世Ⅱ 個人の覚醒」
5 「世界哲学史5 中世Ⅲ バロックの哲学」
6 「世界哲学史6 近代Ⅰ 啓蒙と人間感情論」
7 「世界哲学史7 近代Ⅱ 自由と歴史的発展」
8 「世界哲学史8 現代 グローバル時代の知」
第2章 辺境から見た世界哲学
1 辺境から見た哲学
2 辺境とは何か
3 源泉としての辺境
4 哲学における辺境
5 非中心への希求としての世界哲学
第3章 世界哲学としての日本哲学
1 空海へのリフ
2 フィロロジー
3 世界崩壊と自我の縮小
4 古さはいくつあるのか
5 反復せよ、しかし反復してはならない
6 世界戦争と生
7 戦後の日本哲学の方位
第4章 世界哲学のスタイルと実践
1 哲学のスタイル
2 テクストと翻訳
3 世界哲学の実践
Ⅱ 世界哲学史のさらなる論点
第1章 デカルト「情念論」の射程
第2章 中国哲学情報のヨーロッパへの流入
第3章 シモーヌ・ヴェイユと鈴木大拙
第4章 インドの論理学
第5章 イスラームの言語哲学
第6章 道元の哲学
第7章 ロシアの現代哲学
第8章 イタリアの現代哲学
第9章 現代のユダヤ哲学
第10章 ナチスの農業思想
第11章 ポスト世俗化の哲学
第12章 モンゴルの仏教とシャーマニズム
第13章 正義論の哲学
あとがき
編・執筆者紹介
人名索引
Posted by ブクログ
本書は、第一次世界大戦後から、現代までの世界を描いています。
万能であった科学が破綻をし、幸福をもたらすだろうことか、災難をもたらしたのが、第二次世界大戦であった。
全体主義の台頭を許し、世界を分断に至らしめた状況に対して、深い反省のもと、その問いに答えるのが本書であることが冒頭に述べられている。
...続きを読む
過去から現代へ、世界をめぐる哲学の旅はまだ終わっていない。
別巻があるので、シリーズの総括と、現代のさらなる論点はそこで語られる。これは、現代Ⅰと考えていただいたほうがいいかもしれない。
本書は、主義、論と、哲学者の名前、著者と、その概説でほぼ埋められていて、難解極まりない。所詮、数行で、哲学者が意図している思想を言語化できるはずもなく、その連綿とつづく、思想の系譜については、つながりや、共通点、差異についても説明が不十分と思われる。各章についても、併記されていて、関連性をもったものもあるが、基本的には独立しています。つまり、複数の書が、一定の関連性のものに一つにまとめられています。章末には、参考文献が紹介されているが、参考ではなく、ほんとうに内容を理解をするために必要な文献であり、必読文献と感じた。
気になったものは、以下です。
・論理実証主義(カルナップ)いわゆる分析哲学、論理・数学の主張は、分析命題であり、経験科学の主張は、総合命題である。
・二元論 分離的二元論(エア)⇒ヒュームの法則。ムーア、ミル:功利主義、ヴィトゲンシュタイン:論理哲学論考、哲学探究、クリプキ:規則のパラドクス)
⇒混合的二元論(クワイン、オースティン、サール、アンスコム)⇒化合的二元論(濃い倫理的概念:ウィリアムズ、サイモンブラックバーン:徳認識論
・20世紀前半のヨーロッパ大陸思想概観 ①独:新カント派 コーエン、リッケル ②墺:マッハ 論理実証主義が、ドイツ現象学 フッサール、ハイデガー、ベリクソンへつながっていく
⇒ポンティ、サルトルへ⇒、戦後、ベンヤミン、アドルノら、フランクフルト学派へ
・構造主義 ストロース、フロイト ⇒ラカン、レヴィナス ⇒社会哲学へ引き継がれ、フランス構造主義、ポストモダン主義への流れを生み出していく
・20世紀の流れ:経済的かつ政治的 資本主義:アメリカ と 共産主義:ソビエト連邦 へ移行していく
・ヨーロッパ世紀末的思想 クリムト、ランボー 、スペングラーの「没落する自意識」
・大衆社会を捉えた哲学者 西:ガセット、オルテガ 大衆は、自分自身を指導することも、社会を支配することもできない、大衆を批判的に見る。
・ベンヤミン:大衆を複製化された技術を受容する存在 ⇒フッサール:イーデンで現象学を創始。⇒実証主義的傾向から離れて、生活世界に根ざした本来の知の基盤に立ち返らなければならない⇒自然科学とその技術を過信した世界からの反省⇒ハイデガー:技術批判「存在と時間」、他ユンガー、ヘルダーリン
・仏:ポスト構造主義 リオタール、近世の理念である、進歩、平等といった「大きな物語」への懐疑、知の問題がより分散的、多元的になることをポストモダンと呼んだ。
差異と二項対立、ダブルバインド思考のドゥルーズ、デリダらポスト構造主義、アガンベン、フーコー:権力論、レヴィナス;他者と相対主義、メリヤスー:相関主義、非哲学的内在主義:ラフュエル、破壊的可塑性:マラブー。
・ジェンダー:女とは誰なのか
・人は女に生まれるのではない、女になるのだ。ボーヴォワール。
・解剖学上の性差(セックス)と身体に与えられた文化的社会的な意味(ジェンダー)との区分
・近代の「批評」を、現代において再定義する。ボードレール:フランス象徴主義、スウェーデンボルグ、フーリエ、ランボー、ラマルメら象徴の詩学、ベルクソンの記憶の哲学、サルトルの想像力の哲学、シュールレアレズム、実存主義、構造主義、ポスト構造主義は、批評と哲学の言葉に互いに共鳴しあっている。
・近代日本の批評を独自の書法で完成させたのが、小林秀雄。本居宣長⇒平田篤胤⇒折口信夫⇒井筒俊彦:日本が生んだ東洋解釈学の巨人⇒そして、小林秀雄
・イスラームのファルサファ=フィロソフィア:イスラーム世界の新プラトン主義:英知
・クルアーンとハディース:クルアーンはすでに確定しているテキストであるに対して、クルアーンは現在も校正をしつづけている規範。
・イスラームにとって、テキストの言葉は単なるその字義を理解することではなく、身につけて実践していくことである。
・現代イスラーム哲学とは、単なる翻訳されたテキストではなく、理解するためのもの。日本人は、「理解できない」、ただの日本文化の1つとして翻訳されたテキストとしての認識である。
・現代のイスラーム哲学:復古主義、伝統主義、近代主義、イクバール、ハーン、ファールーキー、ダラス
・中国の現代哲学:清朝末の西洋文化の中国への輸入期、文革後の1980年代の文化ブーム、改革開放
・昨今の中国の現代哲学の特徴、政治哲学への並々ならぬ関心である。1990年代は、リベラリズムから中国経済の大発展と大国化に伴って、国家主義の風潮が台頭してきた。
・「日本哲学」は、西洋と東洋の異質な文化が接触する中で多元的対話を行いながら発展してきた。西洋と神道、仏教、儒学、国学の知との蓄積。
・西周「哲学」:日本哲学の父、「理外の理」、船山信一:観念論、井上哲次郎:現象即実在論、西田幾太郎:日本型観念論の大成者
・仏教思想との融合:井上円了、「哲学一夕話」、「哲学の中道」、清沢満之
・西⇒井上⇒西田の連続性、純粋経験の哲学の継承の道。
・アジアの中の日本、20世紀末から停滞、衰退期へとはいった。
・明治日本で哲学が仏教と出会ったのと同様のことが中国大陸にもみられたことは、東アジア的哲学のある種の宿命を示している。
・西田幾太郎と、牟宗三は、近現代の東アジアを代表する哲学者と目される。それは、東アジア近代の共通課題としての哲学と仏教との結びつきを高いレベルで成し遂げたからである。
・丸山眞男、枝谷行人は、日本のポストモダン批判
・近代の超克(困難を乗り越え、それにうちかつこと):①自分たちは十分に近代化されている ②美化された伝統思想への根拠ない自信を前提としていた。
・敗戦後の日本にとって哲学とは、西洋の現代思想であり、それ以外ではなかった。
・アフリカ哲学 ①北アフリカのイスラーム哲学、②アフリカ出身であるが、欧米哲学の文脈で語ることができる哲学 ③サハラ砂漠以南の哲学
・タンペルのエスノフィロソフィー、コンゴの存在論、認識論
・ムビティのアフリカの時間概念
・まとめ:問題提起 ①グローバルな世界哲学というものがあり得るのか? ②現代の新しい地平 ラテンアメリカやアフリカの哲学との出会い
・一元論か多元論か、多元的世界観は、世界のうちなるあらゆる種類の断絶や対立を実在的なものとみなしつつ、それでも、それぞれの局面には隣接的なるものと同時に、連結的、連合的なものの存在の余地があることを承認する哲学である。
目次は以下の通りです。
はじめに
第1章 分析哲学の興亡
1 科学主義と「事実/価値」の分離
2 分離型二元論の展開
3 分離型二元論から混合型二元論へ
4 化合型二元論への道
第2章 ヨーロッパの自意識と不安
1 はじめに ヨーロッパ大陸思想概観
2 大衆社会と思想 オルテガとベンヤミン
3 実証主義および技術への懐疑
4 今日への課題 結論にかえて
第3章 ポストモダン、あるいはポスト構造主義の論理と倫理
1 フランスのポスト構造主義とその世界的影響
2 ポストモダンの論理
3 他者と相対主義
4 否定神学批判とその先へ
5 人間の終焉以後、ポストモダンの倫理
第4章 フェミニズムの思想と「女」をめぐる政治
1 ジェンダーは嫌われる アンチ・ジェンダーの時代に
2 人間と御名との間で 生物学的決定論から逃れる
3 女の多様性の再想像 本質主義論争から「ジェンダーであるセックス」へ
4 おわりに ふたたび、アンチ・ジェンダーの時代に
第5章 哲学と批評
1 批評を再定義する
2 意味の構造
3 無限の神、無限の意味
第6章 現代イスラーム哲学
1 はじめに
2 文化の翻訳と伝統イスラーム学
3 日本文化としての「現代イスラーム哲学」
4 イスラーム史におけるハディースの徒
5 オリエンタリズムとイスラームの現代
第7章 中国の現代哲学
1 はじめに
2 西学東漸と現代哲学の輝かしい黎明期
3 現代哲学の再登場と1980年代の文化ブーム
4 中国の現代哲学の新しい流れ
第8章 日本哲学の連続性
1 はじめに
2 観念論展開の起点
3 現象即実在論の確立
4 「日本型観念論」の完成と発展
5 おわりに 西・井上・西田の連続性
第9章 アジアの中の日本
1 思想的伝統という問題
2 東アジア的な哲学は可能か
3 美化ではなく共同の探究へ
第10章 現代のアフリカ哲学
1 はじめに 西洋中心主義の陰で
2 「暗黙大陸」の言説から汎アフリカ主義へ
3 アフリカに哲学はあるか
4 エスノフィロソフィーとその批判
5 現代のアフリカ哲学のテーマと傾向
6 まとめ
終章 世界哲学史の展望
1 「世界哲学史」全8巻を振り返って
2 世界と魂
3 多元的世界観へ
あとがき
編・執筆者紹介
年表
人名索引
Posted by ブクログ
近代Ⅱ 自由と歴史的発展
本書は、19世紀の哲学を扱っています。
難解、つらかった。各哲学者の考えが断片的に紹介され、教科書的に並べられているのは、やむをえないか。
時代を下るにつれて、その登場人物も概念や事象も膨大に多くなっていく。連綿と続く思想の系譜と変遷は驚くほど複雑であり緻密である。
国
...続きを読む や、キーワードが分散されているので、行ったり来たりしないといけない。
哲学者の考えを正確に理解するためには、オリジナル・テキストにちゃんと向き合わないとわからない。各巻末にある文献もそれらをつなぐキーとなっています。
気になったことは次です。
・ロマン主義というのは、ナポレオンに対抗したドイツの啓蒙主義思想である。ロマン主義はやがて西欧全体へと広がっていく。
・ヘーゲルのいう自由は、4つのステップで発展する。①中国、インド、②エジプト、中近東世界、③キリシヤ文明、④近代的西洋=キリスト教的ゲルマン人国家
・ダーウィンの進化論、「種の起源」。生物種に多様化を促すものは環境である。
・イギリス アダム・スミス 「国富論」分業という新しい富の生産方法が発展することによって公益と私益が調和し、自由経済論を推進するなら、全体として矛盾なく発展していく。
・ヘーゲル、フィヒテら、ポスト・カント時代の哲学者。フィヒテはフランス革命を賛美していたが、ナポレオンのドイツ侵攻に対して、反フランス的となり、「ドイツ国民に告ぐ」という講演を行った。フィヒテも国民国家としてのドイツをめざしたのである。カント 啓蒙君主:君主制⇒民主政への段階的移行 → フィヒテ いきなり民主政
・ドイツ観念論 カント から ヘーゲルへ。ヘーゲルの死は、哲学時代の終わりと、科学の時代の幕開けを意味する。
・ショーペンハウアーは、「哲学の時代」の哲学者としてすべてを説明しようとする体系哲学者である。存在論・自然哲学・美学・倫理学・宗教哲学を包括した「ただ一つの思想」を展開した。
・ショーペンハウアーの問い、「この世は生きるに値するのか」⇒自身が導いた答えは、”否”。だれも救済してくれない世界では、自立して自力で自分を救済しなければならない。
・フロイト ショーペンハウアー、ニーチェから影響を受ける
・ニーチェ ショーペンハウアーの問いに、”諾”と答えたい。が、ニーチェの出発点になった、「生の肯定」を目指した哲学者である。「神は死んだ」。それは神の否定ではない。神はすでに存在を否定されていて、いないのはわかっている。人間はどうしようもなく悪しき存在であり、世界は悪に満ちている。それを誰も救ってはくれないことを言っている。「神の影」を打倒するための新しい闘いなのだ。
・マルクス主義とは、政治的共産思想と、生産財の共有の経済思想を併せ持った考え方である。
・マルクスは、世界史を生産様式の変化として捉え、専制政治⇒民主政&貴族政⇒君主制 の次にくるのが、共産主義社会である。物質的諸条件を含めて唱えらえたのが、唯物史観である。
・マルクスの理論に、哲学的な意味を付加したのが、エンゲルスである。
・「共産党宣言」の骨子はブルジョア社会のなかで成長した生産力とブルジョア的生産関係との矛盾が深まり、恐慌として現象するとともに、プロレタリアートが賃金労働者として生活するために団結することを学びアオシエーションを形成していく。こうして、「階級と階級対立をともなう旧ブルジョア社会にかわって、各人の自由な発展が万人の自由な発展のための条件となるようなひとつのアソシエーションが現れる」。マルクスとエンゲルスの共著であり、1848に出版されている。
・アメリカ:進化論は、神による創造を否定するものとして、論争が生じた。功利主義 ベンサム⇒ミル
・プラグマティズムの発展:プラグマティズムとは実践のための哲学をいう。その発展は3段階になる。
①古典的プラグマティズム 19~20世紀にかけて パース、ジェイムス、デューイ
②ネオ・プラグマティズ 20世紀後半 クワイン、ローティ、パトナム プラグマティズムの精緻化
③ニュー・プラグマティズム 21世紀初頭 ミサック、ブランダム パースの再評価 テロ、経済格差、金融危機、環境、バンデミックなどの危機の克服
・実用的な知識学問を学校に適用した(料理、大工仕事)。問題解決のためのアプローチ、やがて、教育は民主主義に不可欠にプロセスになっていく。
・数学と哲学:ここに挿入されていることは違和感を感じる。いわゆる、「アーベル-ルフィニの定理」(5以上の任意の整数 n に対して、一般の n 次方程式を代数的に解く方法は存在しない)と、代数学の基本定理(次数が 1 以上の任意の複素係数一変数多項式には複素根が存在する)がでてくる。ラグランジュ⇒ガウス⇒アーベル⇒ガロアへの代数学の発展の系譜である。
さらに、アーベルールフィニの定理を証明するために発展した数学的概念として、関数解析、群論、それに続く、幾何学、解析学への応用としての、リー群、エルランゲンプログラム(学ぶべき幾何学の目録、射影幾何学、双曲幾何学、楕円幾何学など)が紹介されている。
・解析関数論に続いて、リーマンの業績が紹介される。リーマン面、楕円曲線、局面幾何学(=微分幾何学)、位相、多様体。集合論、群・環・体などが続いて紹介されていく。
・19世紀の数学は、概念記法、記号論理学などと相まって、厳格な公理化、形式化が施されていき、代数学、幾何学、解析学を複雑にからみあう包括的なアプローチがなされていく。
・フランス:フランス革命、ナポレオン帝政、七月王政から、第2共和政、第3共和政へ。観念学、クザン派、ラヴェッソン、ベルクソン
・近代インド:イギリスは、インドの宗教には手をつけなかった。ベンガル・ルネサンスによる新知識層の誕生。
・セキュラリズム(世俗主義)、スピチュアリティ(精神性・霊性)が同居する特異な国家。ラーマクリシュナによる神秘主義と、インドに空く穴。
・日本:文明開化、それは明治初期の西洋への同化運動。急速な西洋文化の吸収。文明の道徳性を説いた福沢諭吉、
・日本人にとって、鎖国状態からの黒船襲来、開国の流れの中で、西洋の風習、学術、技術などの文明のあらゆる異質な要素との接触を余儀なくされた経験をせざるを得なかった。
・文明開化への疑問。物質的な文明へ批判、西洋文化の上皮のみを模倣したものにすぎない。
・大東亜戦争、近代の超克。
目次は以下の通りです。
はじめに
第1章 理性と自由
1 はじめに
2 理性のロマン主義
3 進化と淘汰
4 第三の道
第2章 ドイツの国家意識
1 フランス革命とナポレオン
2 カントとフランス革命
3 フィヒテの政治哲学
第3章 西洋批判の哲学
1 西洋哲学の転回点
2 ショーペンハウアー
3 ニーチェ
第4章 マルクスの資本主義批判
1 マルクスと「マルクス主義」
2 哲学批判
3 経済学批判
第5章 進化論と功利主義の道徳論
1 人間の由来、道徳の起源
2 ベンサムの功利主義
3 ミルの功利主義
4 おわりに
第6章 数学と論理学の革命
1 はじめに
2 カントからフィヒテへ
3 代数方程式論からガロア理論へ
4 ガロア理論と群論の、関数論や幾何学、微分方程式論への拡がり
5 おわりに
第7章 「新世界」という自己意識
1 プラグマティズムとは何か
2 パース
3 ジェイムズ
4 デューイ
5 進化し続けるプラグマティズム
第8章 スピリチュアスムの変遷
1 スピリチュアスムの歴史的背景
2 メーヌ・ド・ビラン
3 クザン
4 ラヴェッソン
5 ベルクソン
第9章 近代インドの普遍思想
1 「近代」とインド、そして「宗教」
2 スピリチュアリティとセキュラリズム
3 ブラーフマ・サマージの系譜
4 近代インドに空く<穴> ラーマクリシュナと神
第10章 「文明」と近代日本
1 「文明開化」のゆくえ
2 西洋中心主義をこえるもの
3 19世紀の多面性
あとがき
編・執筆者紹介
年表
人名索引
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