古本で購入。
「文化大革命」とは何であったか。
この一種途方もない問いから、中国の「失われた10年」を総括しようというのが本書。
一般的に(僕もだけど)、文革というのは
「大躍進・人民公社政策の失敗によって低下した権威を回復しようと毛沢東が引き起こした権力闘争」
というイメージが持たれている。
...続きを読む著者はそれも事実であるとしながら、
「共産党の官僚主義化に対する危機感」
という分析をしている。
大衆路線を忘れ官僚主義化した特権を握る高級幹部(いわゆる「実権派」)こそ、文革における打倒対象であった。
しかし結局、毛沢東の「空想的社会主義」によって中国の経済は破綻し、農村は荒廃した。
文革の尖兵となった紅衛兵は毛沢東の制御を離れ、残虐なる迫害・弾圧の徒と化し、大衆テロに堕した。
事実上の「内乱」となった文革において、犠牲者は1000万人を超えると言われている(中国政府の見解は2000万人。この他3600万人説、7000万人説など諸説あるが、どれも異常な数字だ)。
教育の中断や青年の下放による人的資源の喪失も甚だしかった。
古い物の否定という価値基準の下、多数の文化財が破壊され、失われた。
文化大革命は失敗した。
毛沢東が打倒を目指した実権派は、文革以前と同様の、特権を行使する階級へと返り咲いた。
1981年6月の「歴史決議」において、中国政府は文革を
「指導者が誤って発動し、反革命集団に利用され、党、国家や各族人民に重大な災難をもたらした内乱」
「わが党が犯した最大の過ち」
とコメントしている。
建国20年に満たない中国で起きたこの狂気の一幕がいったい何であったのか。
現在も総括・清算のできていない重大事である。
それは文革時代に下放によって農村に送り込まれて上海市民権を失った人々が、その回復を求めていることからも明らかだ。その他にも社会のあらゆる部分へ爪痕を残していることだろう。
現代中国を知る上で、文革を知ることは欠かせない。
ざっとしたあらましを知っていないと少々わかりづらいが、簡潔で読みやすい本だと思う。