教育 - 筑摩書房の検索結果
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沈黙するドイツ ――反ユダヤ主義、ガザ、イスラエル
なぜドイツのエリートたちは ガザ攻撃を批判する市民を弾圧し イスラエルを無条件に支持するのか ――ドイツ政界の「イスラエル・ロビー」 その知られざる実態を明らかにする イスラエルによるガザ攻撃をめぐり、ドイツでは警察がパレスチナ連帯デモを弾圧し、政治家やメディアはイスラエルを批判する文化人を「反ユダヤ主義」だと糾弾してきた。ホロコーストに対するドイツの歴史的責任は、今やイスラエルへの軍事支援の正当化に持ち出されている。イスラエルの行動に自らは沈黙し、市民にも沈黙を強いるエリートの論理には愛国主義と国策が絡む。軍産複合体と反ユダヤ主義監視団体からなる「イスラエル・ロビー」、それが生み出す腐敗の実態をも明らかにする。 【目次】 序章 沈黙するドイツ 第1章 デモや集会への弾圧 第2章 大学や文化人への弾圧 第3章 イスラエルと連帯する愛国主義 第4章 闘う民主主義と「新しい反ユダヤ主義」 第5章 「イスラエルの安全保障はドイツの国家理性」演説 第6章 国際ホロコースト記憶同盟の反ユダヤ作業定義と連邦議会 第7章 弾圧の先兵 第8章 反ユダヤ主義監視活動と「検閲産業複合体」 第9章 ドイツの政軍産複合体 第10章 反ユダヤ主義監視事業の不祥事 第11章 反ユダヤ主義研究のバイアス 第12章 イスラエル・ガザ戦争に関する世論調査 第13章 政界におけるせめぎ合い 終章 言論弾圧の理由・効果・主体 参考文献 図版出典一覧 あとがき -
世界地図と地球の時間 ――グリニッジ標準時と本初子午線
20世紀、世界は標準化された―― ロンドンの天文台が司る、巨大システム いま、この本を手に取ってくれたあなたは、地球上のどこにいるのか。それが地球上のどこであれ、正確に「ここ」と示すことができる便利な指標がある。「緯度」と「経度」である。 経度と緯度を調べれば地球上の座標が定まり、時計を見れば、今が何時かすぐわかる。経度差から外国の時間も計算できる。便利だが、あまりに当たり前で、もはや意識すらされないこの時間と空間の指標が、世界で統一されたのは、19世紀末から20世紀中頃のことであった。同時に、イギリスのグリニッジ天文台という施設を基準とした世界中を覆うこの巨大なシステムが、各地域で各民族に流れていた時空の感覚を塗り替えてきた。いつ、どうして、時計と地図は標準化されたのか。その歴史に迫る。 === 【目次】 はじめに 第一章 世界地図を編む人々――並び立つ本初子午線 1 世界の最西端 2 大西洋からパリへ 3 「この船」の現在地を知る 4 それぞれの本初子午線 第二章 グリニッジ天文台――空間と時間が交差する場所 1 地図の帝国 2 陸地測量部の設立、インドの地図化 3 海図に描かれる世界 4 時間の帝国 第三章 多様な基準線、異なる時間――本初子午線をめぐる論争 1 なぜ本初子午線の統一が必要になったのか 2 ある鉄道技師のアイデア 3 ピラミッドを基準とする 4 メートル法との駆け引き 第四章 本初子午線をめぐる外交――時間と空間の国際秩序 1 国際子午線会議の開幕 2 本初子午線と世界標準時の成立 3 合理的で科学的な判断 第五章 時間と空間の輸入――標準化への長い道のり 1 日本標準時をつくる 2 「太陽の時間」と「人工の時間」 3 標準化のゆくえ おわりに あとがき === -
天皇はなぜ戦争を語ったのか ――新資料で読み解く『独白録』の謎
新資料「天皇の戦争責任に関する研究」と 『昭和天皇独白録』の秘められた関係とは? 昭和史の謎に迫る画期的歴史ノンフィクション 「大日本帝国政府」の文字がある表紙をめくると、現れたのは「天皇の戦争責任に関する研究」と題した報告書で、用紙には「外務省」の文字――これは東京裁判の直前に戦犯裁判を免れるために、天皇に戦争責任がないことをいかに説明するかを外相吉田茂側近の東京帝大法学部教授が追究したものであった。戦後80年という時空を通して眠り続けたこの報告書から見えてきたのは『昭和天皇独白録』との相関と、何のために天皇は戦争を語ったのかという大きな謎を解く鍵であった。さらに、敗戦により責任を問われることになった日本の指導者たちの弁明を様々な新資料を駆使して掘り起こし、戦後日本の原点ともいえる歴史の謎の真相に迫る。 【目次より】 第一章 「天皇の戦争責任に関する研究」 第二章 外務省法律顧問 第三章 米国大統領からの親電 第四章 「独白録」の出自と論点 第五章 盧溝橋以後の一二項目 第六章 内外法政研究会 第七章 想定の起訴状 第八章 弁護団の内情 -
日本城郭史
日本人にとって城とは何か。 先入観を打ち砕く、おどろきの城郭研究。 日本の城といえば、姫路城のような天守閣のある建築物。だが、このような形の城郭が成立したのは信長・秀吉の時代になってからである。古代の城柵から近世の御城まで、史料に現れる城をたどってみると、日本という国のかたちが見えてくる。国家の平安を乱す野蛮な軍事施設から、地域の秩序を保つ平和の要へ――。城をめぐる日本人の思考様式を探る、文献史学からみた城郭の歴史。現代人の城郭観も変わる! === 【目次】 序章 城とは何か? 第一章 古代の城郭 第二章 古代から中世へ1――東北の戦乱と王朝の城郭観 第三章 古代から中世へ2――中世城郭の出現 第四章 鎌倉時代の城郭 第五章 南北朝・室町時代の城郭 第六章 戦国時代の城郭 第七章 中世から近世へ 終章 城郭史研究のフロンティア === -
古典注釈入門 ――歴史と技法
古典と読者を結ぶいとなみの全貌 歴史と技法をわかりやすく語る、唯一無二の入門書 日本語の古典を読む際に必ず参照する「注釈」。先人の知的格闘の痕跡であるその営みの全体像を、歴史から技法に至るまで丁寧に解説した入門書。 === 日本語の古典を読む際に参照する「注釈」。それは、時代が下るごとに作品が読めなくなっていくのを何とか乗り越えようとした、先人たちの知的格闘の結晶である。本書は一条兼良、北村季吟、本居宣長といった注釈者や、室町期の『河海抄』から戦後の岩波「古典大系」にいたる注釈書をとりあげ、秘儀から実証、そして科学へという流れの下に注釈の歴史をたどる。さらに本文の確定や典拠の指摘、頭注形式といった具体的な技法にも踏み込んだうえで、将来あるべき姿を展望する。読者を古典と結びつけ、一人では到達できない地平へ導く注釈。その豊饒な世界をわかりやすく解説した、類例のない入門書。 【目次】 序章 注釈で古典を読む Ⅰ 注釈とは何か 第一章 古典を読むことの意味 第二章 注釈が目指すもの Ⅱ 注釈の歴史を辿る 第一章 古代・中世の注釈――秘儀としての注釈 第二章 近世の注釈――実証としての注釈 第三章 近現代の注釈――科学としての注釈 Ⅲ 注釈の技法 第一章 作品世界に深く分け入る 第二章 わかりやすく読むための工夫 終章 注釈の未来に向けて あとがき/文庫版あとがき -
日中15年戦争
「戦争へのあこがれ」に抗して 多様な人びとの視点とともに描く全体像 1931年から1945年まで15年の長きにわたる戦争で、日本はどの国にまけたのか? 多様なひとびとの視点を通して全体像を復元する。解説 一ノ瀬俊也 === 1931年から1945年の15年にわたる戦争で、日本はアメリカにのみならず中国にも敗北したのだ 著者は、陸軍の企図・満州利権・戦費調達など国内の政治経済的背景に加え、中国側の論理も含めて戦争の経緯を解く。生々しい戦場の実態や兵士の証言など、個々人にも強い焦点をあてた著者特有の記述が、戦争の真の全体像を浮き彫りにし、戦後日本社会の深層に与えた影響も説明する。歴史教育現場からの発言を続けた著者が豊富な史料を交え、人間の内なる「戦争へのあこがれ」に抗すべく、平和への熱情を注ぎこんだロングセラー。 【目次】 概観 日中戦争と太平洋戦争 一つの質問/忘れられた感覚 第1章 中国革命にはむかうもの 国民革命と日本/山東出兵 「田中外交」の展開/張作霖爆殺事件 第2章 乾いた大陸 満州事変 一九三一年九月十八日 日中十五年戦争の開始/ゼロアワーへの道 満州事変はなぜ起こったか/関東軍と陸軍参謀本部 ある「謀略」の構造 第3章 満州占領 「王道楽土」の現実 たたかいの日々/「満州国」の誕生 第4章 上海のたたかい ある「序曲」 「爆弾三勇士」/「国際都市」上海のたたかい/上海停戦協定 第5章 万里の長城をこえるとき 「ドミノ理論」のゆくえ 国際連盟・脱退/「王道楽土」の幻影/「華北分離工作」の形成 第6章 統一中国への道 大長征 よみがえる中国共産党/「幣制改革」 経済統一の進展/西安事変 第7章 日中全面戦争の開始 「七夕」の夜の銃声 蘆溝橋事件/一九三七年夏・東京/「支那事変」の成立 第8章 苦悶する中国 南京「陥落」/第二次国共合作の成立 八路軍の誕生 第9章 「国民政府を対手とせず」 いわゆる「不拡大派」の敗退/近衛声明/どこへゆく? 近衛内閣 第10章 たたかいの日々 徐州・漢口・広東 一九三八年 徐州 「対支消極持久」方針の成立/『麦と兵隊』ノート/一九三八年 漢口・広東 第11章 生と死の構造 ひもじさの間奏曲/まずしき兵站線/死者たちの群像 苦痛のカルテ 第12章 北のくにの「銃後」 「赤紙」がきた/「銃後」万華鏡 第13章 もう一つの「中華民国」 ある「偽国」の成立 汪兆銘工作/「中華民国」政府の成立 和平交渉の終末点 第14章 「点と線」への道 華中と華南のたたかい/百団大戦 八路軍が反撃する/八路軍のたたかい方 ただ一つの「秘密の兵器」 第15章 「軍国化」の経済構造 軍国財政と国民生活/国家総動員法の成立と展開/軍国日本の土台 戦争が社会を変える 第16章 ある「共和国」の誕生 「辺区」の抵抗の構造 巷にて/晋察冀辺区のなりたち/「辺区」展開図 第17章 ある中国理解者の生涯 尾崎秀実の生と死 尾崎・ゾルゲ事件/彗星の出現/ある死刑囚の最期 “Ecce Homo” 第18章 日中戦争から日米戦争へ 日中戦争と日独伊三国同盟/日中戦争と日米交渉 第19章 たたかいのはてに 12枚のカード たたかいのなかのたたかい 終局 文庫版解説 戦争の全体像復元の壮大な試み 一ノ瀬俊也 -
ゲームで生きていく ――eスポーツが変える教育とキャリア
「好き」を本当の武器にしよう 「ゲームばっかりしてないで勉強しなさい!」 「ゲーム禁止!」 そう叱る大人はいまだ多いが、世界のeスポーツ人口は6億人を超え、一つの文化・産業になっている。教育効果に関する最新研究から、プロ以外の道も見据えたキャリア戦略まで、「本気」になったら知るべき情報が一冊に。 ▼△▼△▼△▼△▼△▼△ eスポーツは遊びじゃない。 「好き」を本当の武器にしよう! ▼△▼△▼△▼△▼△▼△ ◎著者からのメッセージ ゲームに本気になることは、本当に「悪いこと」なのか。そして、eスポーツに真剣に取り組むことで、人は何を学び、どんな道を開けるのか。本書では、さまざまな研究成果や具体的な事例を見ながら、その答えを一緒に探していきたいと思います。 ◎本書でわかること ・eスポーツの歴史と現状 ・eスポーツで非認知能力を伸ばす方法 ・「ティルト」に負けない強さについて ・強いチームの特徴はどこにあるのか ・世界各国でのeスポーツ教育導入例 ・eスポーツの市場分析 ・なぜeスポーツは「観る」文化が育ったのか ・「ゲームで生きていくから大学は不要」は本当か? ・プロも含めた広いキャリアをつくる方法 ・AI時代になぜeスポーツが重要になるのか === 【目次】 はじめに──「ゲームが好き!」でなにが悪いの? 第Ⅰ部 eスポーツで学ぶ 第1章 データで解き明かすeスポーツのリアル 第2章 eスポーツで身につく非認知能力 第3章 世界が注目する「eスポーツ教育」革命 第Ⅱ部 eスポーツで生きていく 第4章 熱狂を生み出すコンテンツとしてのeスポーツ 第5章 eスポーツで生きていくためのキャリア戦略 第6章 巨大なビジネスの中で「支える」仕事 終章 AI時代のeスポーツの未来 === -
世界をつくった奴隷の歴史
世界史の裏側はこんなにも暗い―― アフリカから一二〇〇万もの黒人が強制連行され売買された大西洋奴隷貿易。ほかにも古代ローマ、イスラーム世界、ブラジルやアメリカ、中国、そして日本を含め、あらゆる文明において奴隷制が存在した。歴史上、奴隷制は一八八八年を最後に廃止されたが、今でも多くの地域に自由を奪われた人々がいる。世界史は、惨たらしい扱いを受けた貧しい奴隷たちの歴史と共に形づくられてきた。強制労働、虐待、性的搾取――隠された支配と抵抗の痕跡を辿り、いまなお続く人類史の欺瞞を暴く。 === 【目次】 はじめに 森鷗外『山椒大夫』/奴隷となった安寿と厨子王/厨子王の逃亡/奴隷とは/いま奴隷制を考えることの意味/本書の構成 第一章 古代ローマの奴隷制――本格的奴隷制のはじまり 本格的奴隷制のはじまり/古代ローマの政治体制/ローマの軍隊/ポエニ戦争/ローマの支配拡大と奴隷の流入/グラックス兄弟の改革/シチリアにおける奴隷叛乱/剣闘士奴隷スパルタクスの苦悩/スパルタクスの叛乱/カエサルの『ガリア戦記』/家内奴隷/女性の奴隷と解放奴隷/エリート奴隷の存在 第二章 イスラーム世界の奴隷制――文明を越えて イスラーム教の誕生/イスラーム世界の拡大と奴隷制/主人と奴隷との関係/アッバース朝カリフとその腹心/黒人奴隷ザンジュの叛乱/奴隷購入のルート/マムルーク/中央アジアのトルコ人/マムルーク朝の誕生/女性奴隷の立場/ハレムと宦官、奴隷少年/サトウキビと砂糖/イスラーム文明とヨーロッパ文明の交流 第三章 ブラジルにおける奴隷制――砂糖プランテーションの形成 地中海から大西洋へ/イタリア人の役割/大西洋奴隷貿易の始まり/コロンブスの「新世界」発見/先住民インディオの人口崩壊/アシエント奴隷貿易/ブラジルの発見とパウ・ブラジル貿易/カピタニア制の導入と砂糖プランテーション/先住民の叛乱/総督制のもとでの先住民の奴隷化/黒人奴隷制への移行/砂糖革命 第四章 アメリカ合衆国南部における奴隷制――綿花プランテーションの発展 チェサピーク湾沿岸のタバコプランテーション/米作・藍作プランテーション/イギリス綿工業の発展/アメリカ合衆国南部の綿花プランテーションの拡大/「奴隷飼育業」と奴隷制の拡大/奴隷叛乱と解放への道 第五章 中国の宦官――皇帝と臣民の媒介者 中国の奴隷制/いかにして宦官となるか/皇帝と宦官の密接な結びつき/明の宦官/鄭和の海外遠征/宦官の学校と王振/究極の奴隷 第六章 日本の奴隷制――奴婢から「からゆきさん」まで 奴婢/寛喜の大飢饉と人身売買/倭寇による人間の略奪/戦国時代における乱取り/豊臣時代の日本人奴隷/日本人奴隷とポルトガル商人/ガスパール・フェルナンデス・ハポンの事例/からゆきさん 第七章 現代の奴隷制――解放されない人びと 現代の新奴隷制/スィリという少女/コートジボワールのカカオ農園/ブラジルの奴隷制撲滅国家計画/児童婚のリアル/現代奴隷法 終章 世界史のなかの奴隷制 奴隷は商品か/奴隷解放の意味/世界史のなかの奴隷制/尊厳をとりもどすための闘い あとがき === -
仕事と日本人 新版
「仕事」や「はたらく」ことの姿や性格が、 近世から近代、そして現代へと、いかに変容したかを跡づけた。 これが本書だ。 加藤陽子さん(東京大学教授) 著者は「再び「仕事」の主人となる」ための道を模索している。 松沢裕作さん(慶應義塾大学教授) 江戸時代から現代までをたどる「仕事」の日本史200年 「働かざる者喰うべからず」。日本では、働こうとしない怠惰は、罪深いものと考えられている。しかし、こうした仕事観が常識となったのは、それほど昔ではない。私たちの御先祖様は仕事を勝手に休んでいた。「仕事の主人」たりえたのだ。それに比べて現代の労働のなんと「不自由」なことか─―。仕事のあり方をたどり、近代的な労働観を超える道を探る「仕事」の日本史二百年。 解説 松沢裕作 【目次】 第1章 豊かな国の今、問われる選択 1 仕事の入り口の戸惑い 2 若年者の不安定就業―フリーターとスラッカー 第2章 「労働」という言葉 1 「怠惰な」日本人 2 「労働」という言葉の意味と由来 3 「働」という漢字 4 輸入学問・経済学のなかの「労働」 5 忌避される対象としての労働 第3章 「仕事」の世界、「はたらき」の世界 1 イギリスの経験 2 速水融の勤勉革命論 3 勤勉革命の背景 4 「はたらき」は際限のない長時間労働だったのか 5 労働集約的な農家経営と手工業生産 第4章 「労働」観念の成立 1 工場の成立 2 職人の転身 3 職人たちの転落 4 都市の下層社会 5 工女たちの世界 第5章 時間の規律 1 近代における時間の観念 2 労働時間の制限 3 作業時間の標準化 4 定年制 第6章 残業の意味 1 残業の誕生 2 残業の捉え方 3 「義務としての残業」と「責任としての残業」 4 増収の手段としての「残業」 5 残業手当とサービス残業 第7章 賃金と仕事の評価 1 賃金の成立 2 賃金の長期的な変動 3 学歴と俸給 4 「労働」の評価と「仕事」の評価 第8章 近代的な労働観の超克 1 西欧近代のゆがみとしての「労働」観 2 労働の現在 3 再び「仕事」の主人となること あとがき 文庫版へのあとがき 引用・参照文献目録 解説 ポスト・バブル期の「経済学批判」 松沢裕作 -
京の社 ――神と仏の千三百年
この本を持っていけば、京都旅行ががぜん面白くなる 有名寺社を巡って学ぶ神と仏の一三〇〇年の歴史 === 古代から近代まで、神社の歴史がすべて一望できる貴重な都市、京都。本書はその京都を舞台に、各時代を代表し、それぞれの神社の系統の特色を持つ約二十社を取り上げ、神仏の歴史をひもといた画期的な入門書。下賀茂神社や八坂神社、伏見稲荷など、よく知られた観光名所ばかりなので、旅行気分で学ぶことができる。神社といえば古代から一貫して不変の存在と認識されることが多いが、時には仏教寺院と一体であり、祀られる神も同じ神社の中で時代ごとに変わってきた。祭や神社の建築様式などを仔細に検討し、国家神道が創られる明治以前の神々の多様な姿を明らかにする。(解説 佐々田悠) 【目次】 はじめに──なぜ京都を選んだか 第一章 県主の神から王城鎮護の神へ──二つの賀茂神社 第二章 稲荷の翁と東寺──伏見稲荷大社 第三章 比叡山の鎮守 日吉山王権現──日吉大社 第四章 八幡大菩薩の宮寺──石清水八幡宮 第五章 初めて人を祭った社──北野天満宮 第六章 牛頭天王の社──祇園社(八坂神社) 第七章 神社と神職の家元──吉田神社 第八章 神になった武将たち──豊国大明神と東照大権現 第九章 流された天皇と維新の志士たち──白峰神宮・水無瀬神宮・霊山護国神社 第十章 神になる天皇──平安神宮・護王神社・梨木神社 あとがき 参考文献 解説 変わりゆく社と生きる 佐々田悠 -
武器と農具の江戸時代 ――刀狩りから幕末まで
百姓にとって自然は敵か味方か? 戦はなくなったが、百姓は鉄砲を手放さなかった。その謎を解き明かすべく、動物への対応や農耕の営みといった自然と人々との関わりを明らかにする。 === 豊臣秀吉の「刀狩り」により、すべての武器が没収され、民衆は武装解除されたといわれている。その後、江戸時代は平和となり、武器は必要とされなくなった。しかし、百姓は取り締まりからのがれて、鉄砲を所持し、使っていた形跡があったのである。生き物への慈愛を謳った綱吉、鷹狩りを復活させた吉宗。度重なる不作の危機のなか、なぜ、百姓は鉄砲を必要としたのか。鳥、猪、鹿などの獣との関わり、農耕の営みなど、百姓が自然といかに向き合ってきたのかを描いた『鉄砲を手放さなかった百姓たち』を、改題増補を加えた一冊。 【目次】 はじめに――鉄砲を手にした百姓 第1章 鉄砲改めの始まり――家綱政権(一六五一~一六八〇) 1 刀狩りの真実 2 将軍と鷹 3 鉄砲改めとは 4 使い続けるために 5 銃規制の原点 第2章 生類憐みのかげに――綱吉政権(一六八〇~一七〇九) 1 見直される生類憐み 2 紙玉の威力 3 殺生厳禁の風潮に染まって 4 憎悪を強める百姓 第3章 復活した鷹場とともに――享保の改革(一七一六~一七四五) 1 鷹将軍・吉宗 2 激減していた鳥 3 大岡忠相の登場 4 関東を鳥の禁猟区にして 5 形式だけの鉄砲管理 第4章 暗躍するアウトロー――大御所時代(一八三七~一八四一) 1 アウトローの出現 2 出まわっていく鉄砲 3 改革組合村が主体となって 4 追認された隠し鉄砲 第5章 上知令とあわせて――天保の改革(一八四一~一八四三) 1 庶民の敵・忠邦 2 事務処理に追われる大目付 3 改革を成功させるために 4 忠邦の改革プラン 終章 鉄砲を選んだ百姓 1 荒廃していた山間部 2 移動していく獣 3 雑木林を拠点に荒らす獣 4 百姓にとって鉄砲とは おわりに――“武器”から“農具”へ 補論1新たな刀狩り論へ 補論2日本人は銃とどのように向き合ってきたのか――銃社会日本の歴史 文庫版あとがき -
「政治家」昭和天皇 ――本当に象徴だったのか
最新研究と新資料でいま明らかになる 天皇の実像 戦後の政治外交史研究においては、天皇・皇室そのものを論じることは稀であり、いわば「天皇なき戦後史」が常態化している。歴史学系と政治学系の研究の狭間にあって空白地帯になってきたからだ。そこで本書は、日本国憲法のもとで昭和天皇は本当に象徴だったのか、つまり、天皇は政治外交に関わっていなかったのかを、第一線の研究者の最新の知見を結集して問うものである。昭和天皇の政治外交との具体的な関わりを通じて、「政治家」としての実像を浮かび上がらせることを目指す。 【目次より】 はじめに――なぜ昭和天皇と戦後日本の政治外交を論じるのか(小宮京) 第一章 『昭和天皇拝謁記』を読み解く――治安維持の観点から(中澤俊輔) 1 昭和天皇と共産主義 2 地方巡幸の警備問題 3 血のメーデー事件と破防法成立 おわりに 第二章 昭和天皇の岸信介批判――石橋湛山の岸信介宛私信をめぐって(増田弘) 1 石橋の僅差での逆転勝利 2 石橋・岸対立の本質 3 岸首相宛の石橋書簡発出 4 昭和天皇の岸批判の真意 5 石橋書簡の評価と意義 第三章 岸信介と安保改定――皇室のアイゼンハワー訪日中止要請をめぐって(井上正也) 1 安保改定と皇室 2 安保闘争の激化 3 岸政権の退陣 第四章 昭和天皇の御下問を読み解く――皇室の未来と政治との関わりをめぐって(小宮京) 1 皇室の未来を憂慮する 2 政治との関わりを模索する おわりに 第五章 昭和天皇と田中角栄――皇室と政治の攻防(舟橋正真) 1 天皇訪米問題 2 内奏漏洩事件 おわりに 第六章 三木武夫と昭和天皇――解散総選挙をめぐって(竹内桂) 1 日本国憲法下の衆議院解散 2 三木武夫と昭和天皇の関係 3 昭和天皇在位五〇年記念式典と衆議院解散の問題 おわりに 第七章 「おことば」外交――昭和天皇の和解と苦悩(服部龍二) 1 鄧小平来日と昭和天皇――福田内閣期 2 全斗煥来日と昭和天皇――中曽根内閣期 3 「戦争責任」の呪縛 おわりに コラム1 「天皇メッセージ」と主権(河野康子) コラム2 内奏とは何か(小宮京) コラム3 「おことば」とは何か――昭和天皇の「意思」とのあいだ(内藤一成) あとがき(小宮京) 人名索引 -
言語学に消えそうなことばを守れるのか
いま、記録しなければ 調査・分析で何が分かるのか? ことばとは何か? フィールドから考えた言語の本質。 ことばが滅びたりうまれたりするとはどういうことか、ことばには大小あるとは? パキスタンの山奥でゼロから現地調査してきた著者が案内する言語学の世界。 あらゆる言語は言語学的に見れば等しい価値を持っている。等しい能力をそなえていて、等しく大切なものだ。それなのになぜ、社会的には不平等で扱いが異なるのか。現代社会のあり方や思想にも関係する言語の本質に迫る。 === 【目次(抜粋)】 第一章 ことばと言語学 ・私たちが使っている日本語はひとつのことば? ・英語はグローバルな言語だから偉い? ・独自の書きことばを持ってないことがある!? ・言語学をやれば何カ国語も話せるようになる? ・フィールドへ出ていく言語学もある 第二章 社会の中のことば ・世界共通語を作れば便利なのか? ・ことばは文化を色濃く反映している ・話す人がいなくなるとことばは滅びる ・ことばが滅びる時/ことばが生まれる時 === -
中国の戦争観 ――アヘン戦争から軍事大国化まで
「平和を熱愛する民族」がたどった 知られざる闘いの歴史とは―― 隣の大国は本当に強いのか? 力による現状変更を警戒する「中国脅威論」vs. 「中華民族酷愛和平」(中華民族は平和を熱愛する)という自己認識 なぜ中国の行動をめぐる議論はすれ違うのか? その答えは中国の歴史にあった! 中国は軍事力を増強し続け、今やアメリカに次ぐ超軍事大国となった。しかし、その戦争観は「平和を愛する民族」と「政権は銃口から生まれる」の間で、時代ごとに二転三転する。近隣諸国や米国・ロシアとの関係など、様々な問題を抱える東アジアの大国は、軍事という手段をどのように捉えてきたのか? 軍閥、党軍、徴兵制、ジェンダー、武士道、ナショナリズム、欧米や日本の侵略への抵抗から、激しい内戦を経て、軍事大国となった現在まで、戦争観の変遷を読み解く。 「一見して理解しがたいものとも見える中国の戦争や平和に対する考え方が、どのような歴史的な経緯の中で作り上げられてきたのか。そこに特徴があるとすればどのようなものなのか。本書の検討が、中国という巨大でわかりにくいものの論理を理解するために、いくばくかの手がかりを提供することができれば幸いである。」(本文より) === 【目次】 はじめに──「中華民族は平和を熱愛する」? 第一章 伝統中国との連続と断絶──清末 1 伝統中国の軍隊と社会 2 十九世紀の危機 3 清の近代化の試み 4 「尚武」の流行 第二章 「軍閥」の時代──中華民国北京政府期 1 革命戦争と新国家の模索 2 北京政府期の戦争論と平和論 第三章 政党国家体制と「党軍」──中華民国南京国民政府期 1 国民革命の展開 2 南京国民政府の軍事政策 3 日中戦争とその影響 第四章 東西冷戦と中ソ対立の下──毛沢東時代の中国 1 東西冷戦と中国の軍事 2 中ソ対立と先鋭化する中国 第五章 現代世界のなかの中国──改革開放から大国化へ 1 改革開放と中国の変容 2 中国の大国化とナショナリズムの問題 おわりに あとがき 関連年表 参考文献 === -
ナチスに抗した若者たち ――その生き方を問う
愛と自由に生きた 普通の若者たちの物語 発覚すれば死が待つ活動へと 彼らを駆り立てたものは何か ナチス政権下のドイツで、ナチスに不信感を抱く若者が少数ながらいた。政権成立当時子どもだった彼らは、一九四〇年代初頭に青年期を迎え、共感しあえる同世代の仲間とグループを形成してビラ散布や市街地での落書き、秘密の勉強会などの行動で反ナチの意思を示した。彼らは、ナチス体制の何に反発したのか。発覚すれば死が待つ行動へと彼らを駆り立てたものは何か。ごく普通の若者たちの姿を通じて、「名もない人々にとってのナチス・ドイツ」がいかなる時代あったのかを描いていく。 【目次より】 まえがき 第一章 ヒトラー万歳(ハイル・ヒトラー)と言え 1 われらの時代が来た 2 生徒たちよ自律的であれ――教師エルナ・シュタールとリヒトヴァルク校の生徒たち 3 ナチスのやつらはろくでなしだ――ヘルムート・ヒュベナーと幼馴染 4 父さんは犯罪者じゃない――共産党員の親をもつ子どもたち 第二章 仲間との日々 1 新しい世界 2 教養人の自負――ハンブルク・白バラ 3エーデルワイスは自由の花だ――エーデルワイス海賊団 4 皆が知るべきこと――ヒュベナー・グループ 第三章 決断のとき 1 知性のビラと直感のビラ 2 これ以上ドイツを壊すな――エーデルワイス海賊団 3 十代の素顔――エーデルワイス海賊団 4 誰かが後を継がなければ――ハンブルク・白バラ 第四章 我らの信じた道 1 使命感と恐怖心――ハンブルク・白バラ 2 行動の意味――エーデルワイス海賊団 3 別離と再起 終章 抵抗する若者たちが残したもの おわりに 主要参考文献 図版出典一覧 事項索引 人名索引 -
国民防空 ――日本的危機対応の失敗と教訓
この国の落とし穴は 有事対応にある 「想定外」による失敗を繰り返さないために 第一次大戦後に来たるべき空襲に備え提唱され、軍・当局・国民が一丸になって進めた「国民防空」。関東大震災の経験を宣伝材料にして驚くほど急速に浸透したが、安易な想定や精神力依存、同調圧力による普及などの欠陥も多く、新技術を用いた米軍空襲には機能しなかった。この国民防空の組織や技術は、戦後の災害対策や国土計画・都市計画に引き継がれ現在に至っている。現代日本の危機対応の原点ともいえる国民防空の成立と普及過程を検証し、その教訓を未来へと伝える。 【目次より】 まえがき 第一章 関東大震災から動き出した「国民防空」 1 「国民防空」の内容と展開過程 2 関東大震災と軍の教訓 3 防空研究にみる関東大震災の影響 第二章 大阪市・東京市の非常変災要務規約と防空演習 1 大阪への震災影響と東京の動き 2 防空演習の実相 3 防空演習への批判 第三章 時間を要した防空法成立と審議過程 1 防空法成立前の経緯 2 帝国議会の審議 3 関東大震災等の影響 第四章 国民防空に関する技術の開発動向 1 軍の研究会と二つの火災実験 2 軍と学会等による研究体制 3 米国の空襲技術の開発 第五章 防空計画・指導要領と「都市の防空的構築」 1 防空計画と指導要領 2 「都市の防空的構築」の構想 3 専門家による防空の都市づくりに関する提案 4 函館大火と静岡大火 第六章 防空意識の涵養 1 国民防空に関する言説 2 『国民防空読本』と『時局防空必携』 3 『写真週報』にみる防空啓発 4 東京市・都の広報と関東大震災 5 様々な媒体による防空啓発 第七章 国民防空の手本になった「神田和泉町・佐久間町」 1 「神田和泉町・佐久間町」の事蹟 2 防空の模範として脚光を浴びる 3 国民防空の手本になる 4 戦後への影響 第八章 「国民防空」の浸透 1 防空訓練の思い出 2 防護団・警防団と燈火管制 3 町内会・隣組と「常会」 4 生活基盤になった町内会・隣組 終章 国民防空の「失敗」を繰り返さないために 1 都合よく使われた関東大震災 2 町内会・隣組を通じて浸透した「国民防空」 3 「国民防空」の目的――戦争継続のための国民統制 4 「思い込み」で進んだ国民防空 5 国民防空の失敗を繰り返さないために 6 これからの危機対応に向けて おわりに 国民防空の展開 関連年表 参考資料 -
ファシズムの解剖学
危機は本当に消えたか 運動の始まりから、権力の掌握と行使、そして破局へ その過程を精緻に分析し、現象の本質に迫った名著 20世紀を代表する政治的産物、ファシズム。それは、民族共同体の没落への恐怖を強迫的なまでに抱くとともに、民族の活力や純潔への熱狂に駆られた政治行動の一形態である。本書は従来の思想的定義に留まらず、ファシストの「行動」や保守派・社会との「相互作用」に焦点をあて、その機能的側面を解剖する。イタリアとドイツの事例を軸に、第一次世界大戦の経験から誕生し、権力の掌握と行使を経て、自壊へと到る運動の過程を精緻に分析。現象の本質を余すところなく論述する。ファシズム研究の第一人者による集大成であり、現代の危機を捉えなおすための視座を与えてくれる名著。 【目次】 序文 ドイツ語版および日本語版への序文 第1章 序論 第2章 ファシズム運動の始まり 第3章 根をおろすファシズム 第4章 権力の掌握 第5章 権力の行使 第6章 ファシズム破局への行程――過激化か、それとも拡散か? 第7章 戦後のファシズム、ヨーロッパ以外のファシズム 第8章 ファシズムとはなにか? 注記 訳者あとがき 文庫版訳者あとがき 人名索引 事項索引 -
サバイバル春秋戦国時代
誰が勝つのか? 覇者が牛耳を執った春秋時代。 秦、楚、斉、燕、趙、魏、韓が死力を尽くした戦国時代。 その550年をいっき見 周の東遷(紀元前七七〇年)から秦の始皇帝が全土を統一(紀元前二二一年)するまでの五五〇年間が春秋戦国時代です。権威を失った周の王に代わって、覇者が会盟を牛耳った春秋時代。秦、楚、斉、燕、趙、魏、韓が死力を尽くして争った弱肉強食の戦国時代。熾烈な戦乱の世に新しい権威のあり方を説き、生存のための戦略を授けた諸子百家。春秋戦国時代のエピソードには日本人になじみ深い故事成語の由来もいっぱい。血で血を洗う古代中国へご案内します。 === 【目次】 プロローグ 春秋戦国時代とはいつのことか/春秋五覇と戦国七雄/諸子百家の時代 第一部 春秋時代編 第一章 周王朝の衰退と乱世の始まり 第二章 春秋の覇者の誕生 第三章 南の覇者たち 第二部 戦国時代編 第四章 下剋上の始まり 第五章 戦国七雄の攻防 第六章 戦国時代の終わり――始皇帝の天下統一 === -
史料が語るビザンツ世界
千年の帝国を人々はどう生きたか 貴重な史料の数々で案内するビザンツ世界 千年におよぶビザンツ帝国の歴史の中で、人々はどのような生を送ったのか。皇帝、宦官から異民族まで、貴重な史料の数々を通してその実像に迫る。 === ローマ帝国の東西分裂後、千年余りにわたって存続したビザンツ帝国。ローマに比してその実態が語られることの少なかったビザンツ世界を、歴史書や各種の勅令、聖人伝など豊富な史料から読みといたのが本書である。専制君主として君臨しつつもたびたび暗殺や処刑の対象となった皇帝、時に政治を左右するほどの実権を握った宦官、理想的キリスト教徒として民衆の精神的支柱となった修道士、尊敬や敵対の念を抱きながらビザンツと交流したイスラーム世界・カトリック世界の隣人たち──。史料に刻まれた人々の営みから、ビザンツ世界の多様な相貌が浮かび上がってくる。巻末に詳細な史料解題を付す。 -
伝説の出版社 博文館
明治半ばに彗星のごとく現れた出版社・博文館は、たちまち出版界に革命を起こした。書物を廉価で供給し、魅力的な書籍や雑誌を次々に刊行。世代を超えた広範な読者を獲得するとともに、取次・書店などによる流通ルートを整備した。東京堂書店や共同印刷、博報堂などのルーツともなった一大文化王国・博文館はいかにして築き上げられたのか。貪欲な〈近代読者〉の誕生と、豊穣な文学世界の成立の経緯、そして近代出版業という知的システムの構築過程を総合的に描き出す。 【目次】はじめに/序 章 赤手のアントレプレナー/第一章 出版革命の夜明け──『日本大家論集』/第二章 戦争特需の写真雑誌──『日清戦争実記』/第三章 児童文学を創出したカリスマ──『少年世界』/第四章 文芸界の新潮流──『文藝倶楽部』/第五章 巨大なオピニオン・リーダー──『太陽』/第六章 最高級の趣味雑誌──『新青年』/第七章 辞書というベストセラー──『辞苑』/終章 伝説の出版社がもたらしたもの/あとがき/主要参考文献事項索引/人名索引 -
フィリピンと日本人
日本とフィリピンの歴史は合わせ鏡のようなところがある。戦国時代に来日したスペイン人宣教師のほとんどはフィリピンから来た。朝鮮出兵後の豊臣秀吉がフィリピンを狙うのではないかとスペインは警戒した。徳川幕府がキリシタン大名・高山右近を国外追放した頃にフィリピンにいた日本人は三千人を超えるという。独立を目指した英雄ホセ・リサールは明治の日本に憧れた。スペイン、米国の植民地として受けた苦難、日本軍政下での惨劇、そして戦後の政治腐敗……。しかしいま、その国力は躍動のさなかにある。とびきり社交的なフィリピン人気質の裏の壮絶な歴史に、私たちは何を学ぶことができるか。 -
一四一七年、その一冊がすべてを変えた
ルネサンス前夜のイタリア。教皇庁の書記官ポッジョ・ブラッチョリーニは、古代の文献を探し求める人文主義者でもあった。1417年、ドイツに旅に出た彼は、修道院で一冊の写本を発見する。それは、古代ローマの詩人ルクレティウスの『事物の本性について』。千年以上の眠りから偶然にも目覚めたこの作品は、キリスト教的世界観と真っ向から対立する宇宙論を高らかに歌い上げていた。ポッジョはこの詩を世に送り出し、それを読んだモンテーニュら様々な思想家・芸術家によって新しい時代が花開いていく──。一冊が引き越こした歴史を生き生きと描く、ピュリッツァー賞受賞の傑作。 解説:池上俊一 -
草莽論 ――その精神史的自己検証
明治維新を語るうえで外せない「草莽」。吉田松陰の「草莽崛起(そうもうくっき)」という言葉で知られる通り、それは、野にありながら天下危急のときにおのれを顧みず、大道に立つ壮士たちをさす。孟子に由来するこの言葉は、江戸時代後期に特異な思想的背景を孕むようになり、維新前夜、つかの間の煌めきを放った。その精神を鮮烈な筆致で描き出したのが、二・二六事件の先駆的再評価などで名高い評論家・小説家・歌人、村上一郎である。蒲生君平、高山彦九郎といった「草莽の処士」のさきがけから、頼山陽ら文化・文政の文人、水戸学、そして松陰と系譜的に論じ、その終焉を見届ける比類なき名著。解説 桶谷秀昭 -
頭山満 沈黙の昭和史 ――「宮中某重大事件」百年目の真実
昭和天皇は頭山満の死に際して勅使を遣わし、その葬儀は国葬の様相を呈した。無位無官の頭山がなぜ異例の扱いを受けることになったのか。それは皇太子時代の婚約破棄問題(宮中某重大事件)をめぐって、昭和天皇と頭山の間には秘められた絆があったからだ。この問題への沈黙を守り通した頭山と天皇の密かなつながりを解き明かすとともに、右翼の巨頭とされてきた頭山の真実の姿を、100年の時を超え史料に基づき正確に描き出す。 【目次】はじめに──だから昭和天皇は頭山満に感謝した!/第一章 頭山満と杉浦重剛の出会い/第二章 東宮御学問所──皇太子裕仁親王の帝王学/第三章 色盲遺伝と宮中某重大事件/第四章 宮中某重大事件とメンデルの法則/第五章 浪人を統率する頭山満/第六章 昭和天皇の時代と頭山満/第七章 頭山邸への勅使差遣/第八章 国葬級と言われた頭山満の葬儀/おわりに/あとがき -
ホロコースト後のユダヤ人 ――約束の土地は何処か
第二次世界大戦が終結し、ナチの強制収容所から解放されたユダヤ人たち。吹き荒れたホロコーストですべてを失い、普通の人間の生活を取り戻すことを望む彼らの多くは、元の居住地に帰らず、戦後の混乱期にヨーロッパを去ることになる。彼らが実際に行きたかったのはどこだったのか。それに対してイギリスやアメリカをはじめとする国際社会やシオニストたちはどのような行動をとったのか。東ヨーロッパから連合国占領地域のキャンプへ、さらにパレスティナへと移動をつづけたユダヤ人難民(DP:Displaced Persons)たちを通して、もうひとつの現代史を抉り出した野心作。 -
ラテン語とギリシア語
ヨーロッパ文明の礎であるラテン語とギリシア語。印欧語族の古層に属する両言語は、近代語が失った複雑な規則を持つことから、現代人が習得するのは容易ではない。本書は文字、発音から形態に至るまで、二つの言語を対比させながらその全体像を描き出す。名詞や形容詞の格変化、動詞の細かな時制と態(ギリシア語特有の「アオリスト」や「中動態」)、その動詞がさらに変化した分詞──。様々な特徴を古典の例文とともに見ることで、複雑さに支えられた豊かな表現を持つ、ラテン語とギリシア語の輪郭が浮き彫りになる。古典語のエッセンスを凝縮したコンパクトにして本格的な案内書。 解説 吉川斉 -
ボスニア内戦 ――グローバリゼーションとカオスの民族化
1990年代に入り、解体へと向かうユーゴスラヴィア社会主義連邦共和国。ボスニア・ヘルツェゴヴィナの独立をめぐって、国内のセルビア人、クロアチア人、ボシュニャク人の間で対立が激化し、ほどなくして泥沼の争いに進展する。1992年から3年半に及んだこの戦争は、剥き出しの残虐性に貫かれていた。本書は、近代初期からの歴史を辿りながら、複雑な背景をもつ戦争の実態を解明する。〈民族浄化〉はいかなるメカニズムによって生じるのか。なぜ現代世界からは大量虐殺がなくならないのか。本書が描き出す〈特定の集団の選択的抹殺〉の実像は、ジェノサイド再発の抑止へ向けて重い問いを投げかける。 -
京劇 ――「政治の国」の俳優群像
中国の伝統劇として真っ先にイメージされる京劇。しかしその始まりは、中国文明の歴史を考えると意外に新しい。本書は清朝期に京劇が成立し、日清・日中戦争や国共内戦、文化大革命を経て現代に至るまでの歩みを、主要な俳優たちの波乱の人生と共に活写する。演劇は文字が読めなくても楽しめるため、民衆支配の手段を求めた康熙帝から毛沢東に至るまでの政治権力と密接に結びつき、ナショナリズムのシンボルや外交の道具にもなった。漢詩・漢文とは異なる「小伝統」としての京劇から歴史を照射することで、民衆の感覚に根差した生き生きとした近代中国像が浮き彫りになる。サントリー学芸賞受賞作。 -
入門 男らしさの歴史
人は男に生まれるのではない。男になるのだ、と言えます。そして、時代が変われば、男らしさも変化します。……それをとらえるのが男性史研究です。そこでは英雄や偉人も登場しますが、男らしく生きる/生きようとする「ふつうの」男性も、男らしさに苦しむ男性も、男らしさから落伍した男性も重要な研究対象です。――「はじめに」より ・決闘に応じる男の名誉 ・徴兵を拒むのは臆病なのか ・男もハイヒールをはいていた/男はいつの時代も変わらないのか? 【目次】はじめに/第一章 男らしさはつくられる――男性史の誕生/第二章 男のからだを魅せる――身体とスポーツ/第三章 男同士でわかりあう――大学・クラブ・決闘/第四章 「男らしさの学校」に入隊する――徴兵制と「慰安婦」/第五章 戦わない男、戦えない男、戦いの果てに――誰が英雄か/第六章 「クィアな」性を生きる――「変態」は社会によってつくられる -
米と小麦の戦後史 ――日本の食はなぜ変わったのか
日本人の食生活に不可欠な小麦。しかし国民全体に普及したのは戦後のことである。その背景には、第二次大戦と朝鮮戦争を経て膨大な余剰小麦を抱えるようになったアメリカと、戦後復興の中で安価な食糧と開発資金を必要としていた日本の思惑の一致があった。われわれは輸入小麦にいかに依存するようになり、その陰で米はどう扱われてきたのか。NHKディレクターが関係者の証言や資料から戦後食糧史の空白に迫った貴重な記録。文庫化にあたり、トウモロコシなど飼料穀物の対日市場開拓を追った補論「それは小麦だけではなかった」を収録。食料安全保障を考えるうえで必読の一冊。 解説 鈴木宣弘 -
軍律法廷 ――戦時下の知られざる「裁判」
交戦下において軍律違反者を処断する軍の審判機関、軍律法廷。旧日本軍は先の大戦において、多数の敵国兵や現地住民をこの軍律法廷にかけて死罰などに処したが、その関連資料はことごとく処分され、いまだ全容は解明されていない。本書では、名古屋大空襲の際に捕縛した米兵11人を軍律法廷にかけて斬首した一件をめぐる戦犯裁判、「イトウ・ケース」に注目し、その記録から軍律法廷の実相に迫っていく。それは非道な殺害行為を正当化する建前に過ぎなかったのか、それとも戦時の無法を食い止める役割を果たしていたのか。史料を丹念に読み解き、その知られざる実態を明らかにする。解説 新井京 -
不登校のあの子に起きていること
不登校の小中学生は約34万人。もしクラスの子が、自分が、わが子が、不登校になったとき、どんな困難や解決方法があるのか。学校に行かない・行けない彼らをとりまく環境はどうなっているのか。子どものつらい気持ち、親の孤立などの現状を伝える。 【目次】第一章 三四万人という数字の背景──不登校の現状/第二章 学校に行かないのもつらい──子どもの気持ち/第三章 軽視されている保護者の孤立──親の気持ち/第四章 ゲームと寝坊のスパイラル──家庭での対応方法/第五章 先生も不登校のプロじゃない──学校との相談・交渉/第六章 不登校ビジネスに要注意──適切な居場所探し/第七章 不登校は「お先真っ暗」なのか──その後の進路 -
写真が語る敗戦と占領
ポツダム宣言を受諾した日本は、1945(昭和20)年8月15日、終戦を迎えた。そして新たな支配者となったGHQによる民主化と非軍事化、天皇の人間宣言、新憲法の公布、東京裁判と戦争責任の追及がはじまった。80年前の占領下日本で、私たちはどんな地獄を見て、何を糧に生き抜いたのか。焼け跡に生まれた自由市場ヤミ市、街を闊歩する進駐軍とパンパンガール、東西冷戦下で目まぐるしく進む復興。本書は1951(昭和26)年のサンフランシスコ平和条約締結によって国際社会に復帰するまで、焦土から復活へと向かう混沌と激動の日本の姿を、250点の貴重写真でたどる。 -
差別語からはいる言語学入門
片輪、めくら、特殊部落……。公には使ってはいけないとされるこれらの言葉。しかしなぜこれらは「差別語」であり、使用する側にもされる側にも、そう感じさせるのだろう? 例えば「屠殺」の場合、生きているウシと食材としてのギュウという2つの言葉を用意せずにはいられなかった私たちの感覚に、問題を解くカギがあるのではないか。自ら公の場で使用し、糾弾された経験を持つ著者が、一つ一つの言葉が持つ文化的背景などから、差別語の差別語たるゆえんを解読。避けて通ったり排除したりするだけでは何の解決にもならない、日本語の、日本社会の根本問題に取り組む。 -
ピース・フィーラー ――支那事変和平工作史
支那事変(日中戦争)の特徴は、戦争遂行と和平への努力が、ほぼ全期間を通じ並行してなされたことにある。この和平工作の舞台には外交官のみならず、中国通の経済人やジャーナリストなど様々な人物が登場した。本書はまず、極秘裡になされたがゆえに捉えづらい和平工作の基礎事実を確定し、これに従事したピース・フィーラーたちの実像を描き出す。宇垣工作、汪兆銘工作をはじめとする数多の試みは、なぜ一つとして成功しなかったか。日本側の事変処理政策や政府声明の決定過程を詳しく追跡することでその原因を解き明かした。日中関係、戦時外交を考えるうえで欠かせない名著。 -
読み手に届く 文章技術
読み手の理解を想定し、「認識の共有」を作り出す。これが、しっかり伝わる文章を書く王道です。自分の考えを適切な表現と組み立てで相手に届ける一生モノの技術を具体例とともに紹介します。 【目次】第1章 差分――書き手と読み手の知識の差/第2章 構成――整理の行き届いた文章構成/第3章 視点――共感できる視点の設定/第4章 根拠――主張を支える根拠の選定/第5章 定義――前提となるキーワードの定義/第6章 引用――信頼できる典拠の引用/第7章 推薦――AIを用いた適切な推敲/第8章 設計――初対面の相手のための情報設計/第9章 配慮――読み手の印象への配慮/第10章 総合――文章が生まれる過程 -
法学の誕生 ――近代日本にとって「法」とは何であったか
日本が、驚くほど短期間に近代化を果たしえたのは、西洋法の継受に成功したからである。だが、「法」を自らのものとして運用するには、それを支える法的思考様式、つまりは「法学」を受容することが不可欠だった。法学とは西洋社会に深く根差した思想であり、文化である。全く異質な文化的土壌をもった日本社会が、それまでにない思考様式を受容するのには幾多の困難があった。いったい日本人は、いかにしてそれを乗り越えたのか? 欧米列強と対等に伍するため、国を代表する俊英たちが競って法学を学び、近代国家としての骨格をつくり上げた明治日本。先人たちの苦闘の歴史をあざやかに描き出す。 -
中華とは何か ――遊牧民からみた古代中国史
中華思想は文明の優劣で人々を区別する発想である。文明のある世界を中華とし、その周辺には野蛮な夷狄がいる。そして夷狄は中華に何も残さなかったものだと長らく考えられてきた。しかし注意深く歴史をみていくと、夷狄であるはずの遊牧民はむしろ中華文明の形成に積極的に関わり、新たに持ち込み、主体的に選別し、継承してきたことがわかる。中華文明拡大の要因は、あらゆるものを内部に取り込んで膨張していく性質にある。逆に言えば、気づけば夷狄も中華になっているのだ。本書は、中国史を遊牧民の視点から捉えなおすことにより、中華の本質に迫る一冊である。 -
情報敗戦 ――日本近現代史を問いなおす
この国において、政府やメディアなど権力の「大本営発表」への批判精神が皆無なのは八十年前と同じ。知識人も庶民もしっかりとした歴史を見る眼を持たず、歴史に無関心なため、いま再び「情報敗戦」に直面しているのだ。正しい歴史観を持たない限り、日本は今後も新たな敗戦への道をひた走るだけだろう。松本清張や辺見庸、アレントやサイード等々、内外の知識人たちの遺してきた貴重な史論や思想を手掛かりに、日本社会に隠された「情報のカラクリ」を暴き、歴史の虚実を検証する。 【目次】はじめに――「情報のカラクリ」/序章 問題の発見/第1章 史観で眺める日本/第2章 「昭和維新」と満洲/第3章 清張史観の遺したもの/第4章 戦後日本とは何か/第5章 世界史的大転換/第6章 人間とは何か/第7章 「民主主義は暗闇の中で死ぬ」(Democracy Dies in Darkness)/結章 絶望に抗う/あとがき――なき妻へ -
江戸・東京水道全史
徳川家康による都市建設の当初から、江戸の水道は高低差を緻密に計算し、複雑な地形を利用する形でつくられてきた。中心部の小石川上水、それを発展させた神田上水、そして玉川上水を基盤とした水道は、明治以降には近代化され引き継がれてきた。急速な工業化や関東大震災からの復興、戦後復興・高度成長を経て水道がいかに拡張され、また経営されてきたか。江戸・東京の経営史を専門とし、東京都水道局に長年勤務してきた著者による、世界屈指の都市の決定版水道史。 【目次】プロローグ/I 江戸時代/第1章 家康と水道/第2章 天下普請の時代/第3章 城下町・江戸と神田上水/第4章 玉川上水の新設/第5章 上水経営の実際/II 明治時代~現代/第7章 近代水道にいたる道のり/第8章 近代水道の成立と関東大震災──拡張の始まり/第9章 大東京と水道/第10章 拡張に次ぐ拡張の時代──戦災復興期から高度経済成長期まで/第11章 量から質へ──低成長時代から現在まで/あとがき/索引 -
言葉を復元する ――比較言語学の世界
言語はいかにして生まれ、変化するのか。そのメカニズムを解明するのが比較言語学という学問だ。現存する言語や死語となった言語を突き合わせることで記録以前の言語を再建し、各言語を歴史的に位置づけていくその試みは、ソシュールをはじめとする多くの学者たちを魅了してきた。本書では、ヒッタイト語などの印欧アナトリア諸語のみならず、ギリシア語、ラテン語、古教会スラブ語、古期アイルランド語、ゲルマン語、サンスクリット語など、多数のインド・ヨーロッパ語に通じた世界的な比較言語学者が、その本質や具体的アプローチを丁寧に掘り下げて紹介する。第一人者による最良の入門書。 -
自己肯定感は高くないとダメなのか
自己肯定感は、日々葛藤しつつ生きていくことで少しずつ高まるもの。成長途上の若者が自分はまだ未熟だなと思うのは自然な事。ほめたらのびるものではない。高校生の7割が「自分はダメな人間だ」と思うことがあるという。そもそもどのようにして測定されているのだろうか。その心理メカニズムを解明すると、何を鍛え、何を高めればいいのか、本当の自己肯定感を育む方法が見えてくる。 【目次】第1章 自己肯定感っていう言葉を最近よく耳にする/第2章 日本の若者は自己肯定感が低いって言われるけれど……/第3章 自己肯定感はどのように測定されるのか?/第4章 ほめられても真の自己肯定感は高まらない/第5章 ほんとうに大切なことに目を向けよう -
民のモラル ――ホーガースと18世紀イギリス
徹底的な史料の読み込みと、図像の分析で文化史研究に新たな地平を拓いたあの先駆的な名著に、図版を増補。本書では18世紀ころのイギリスで行われていた制裁の儀礼「女房売り」「シャリヴァリ」から食糧蜂起にいたる、いじめと騒ぎの歴史をひもとき、イギリス民衆の正義や秩序の意識を解読。さらにジェントルマンの日記やローカル新聞の記事、裁判記録などから、統治者といえども時代の作法・約束事にしたがわざるをえなかった事情を明らかにする。そうした観点からホーガースなどの風刺画を解析してみると―。当時のイギリスの街中を旅して、人々と出あえるような、出色の一冊。 -
日本語の外へ
湾岸戦争をアメリカのTV放送だけで追ってみる、という試みから始まった本書は、アメリカを突き動かす英語という言葉の解明へと焦点を移していく。母国語によって人は規定され、社会は言葉によって成立する。たえず外部を取りこみ攻撃し提案していく動詞中心の英語に対し、日本語とは自分を中心とした利害の調整にかまける言葉だと著者は結論付ける。言語にはそれぞれ美点と歪みがある。日本語のなかで生きる私たちは日本語という「歪み」を通してしか考えられない。「戦後」という時空間は、実はその「歪み」そのものなのだ。ではその歪みから自由になることはできるのだろうか。「歪み」を熟知したうえで「歪み」を駆使すれば、日本語の外へでていくことはできる、と著者は書く。英語と日本語への熟考が、やがて読み手を世界の認識の根源まで導く鮮やかな思考の書。 1997年は加藤典洋の『敗戦後論』と片岡義男のこの本の出現で画期的な年として記憶されることになるだろうと思った。(高橋源一郎『退屈な読書』より) -
皇帝たちの都ローマ ――都市に刻まれた権力者像
帝国の首都として繁栄を極めたローマ。世界に類を見ない壮麗な都市と建造物は皇帝たちの熾烈な権力闘争の場であり、その政治的意図を示す舞台でもあった。本書ではカエサル登場以前の紀元前2世紀から、コンスタンティノープル遷都にいたる330年まで約500年のローマの都市計画と建造物を一望し、そこに刻まれた各皇帝の政策や思想、歴史を読み解く。凱旋門、神殿、コロッセウム、浴場、広場や水路などを備えた都市はやがて変革期を迎え、皮肉にも都市に蓄積された歴史の重みによって終止符を打たれることになる。帝国の興亡を浮かび上がらせるスリリングなローマ都市史。 -
閔妃暗殺 ――朝鮮王朝末期の国母
1895年10月8日、朝鮮駐在特命全権公使・三浦梧楼指揮の下、日本の官僚と軍人が朝鮮王朝の王宮・景福宮に乱入し、王妃を殺害するという大事件が発生した。本書はその顛末を詳述したもの。韓国でも翻訳出版され、大きな反響を得た。日本で「閔妃暗殺」と呼ばれるこの事件は韓国では「乙未事変」と呼ばれ、日本人にとっての「忠臣蔵」のように誰もが知る歴史的出来事となっている。一方、日本では歴史教科書への記載も少なく、認識している人も多くはない。いったい誰がなぜこのような凶行を計画したのか? 未来のために、日韓関係に深い傷を残したこの大事件の全容を知る。 -
中世政治思想講義 ――ヨーロッパ文化の原型
社会とは神が人間に与えた秩序であり、その安定と維持こそが中世キリスト教世界における政治であった。ローマ教皇と神聖ローマ皇帝という二つの中心が社会的機能と責任を担う。だが、時に激しく対立し、グレゴリウス改革や叙任権闘争を極点として、統治の本質が根底から問われる事態へと発展する。聖書解釈に基づく両者の理論対決は、政治思想の錬磨を促さずにはおかない。普遍的で超越的なものを志向する意志と密接不可分な「合理性」がここに芽生え、やがてそれがヨーロッパ人の思惟構造を形づくっていくのである。中世の核心を伝えるだけでなく、近代の性格をも照らし出す類まれな講義。 -
ことばの学習のパラドックス
赤ちゃんはなぜことばを正しく理解できるようになるのか? この謎を解く鍵として1980年代に登場したのが「制約」理論だ。人間にはことばに関して正しいかどうかを判断する基準が生得的に備わっている、というのだ。しかし研究が進むにつれ、言語間でのカテゴリー化の違いなど、この理論だけでは説明のつかないことが出てきた。そこで著者が導いたのが「制約」は人間の発達の過程で外的状況や言語にあわせて柔軟にコントロールされる、という仮説だ。本書ではそのメカニズムが巧みな実験により明らかにされていく。認知科学の分野をリードしてきた著者の原点となるデビュー作。 -
ことばが変われば社会が変わる
ことばは社会の見方や価値観をゆるがす一方で、社会もまたことばの使われ方に影響を与えている。新しいことばのインパクトとそれに対する抵抗や躊躇、こんがらがった関係を事例とともにのぞきこみながら、私たちがもつ隠れた意識を明らかにし、変化をうながす。 【内容のほんの一例】ことばが社会を変化させるメカニズム/ことばが変わることにはどの社会でも強い抵抗がある/「伝統」や「習慣」をカラッと転換させるカタカナ語/「男になる、男にする」と「女になる、女にする」/なんでも略す日本人と「意味の漂白」/「ご主人・奥さま」?「夫さん・妻さん」?/――ひとの配偶者の呼び方がむずかしいのはなぜ?/「正しい日本語を話したい」と考えてしまう私たち/既存の価値観がすべてではない -
写真が語る満州国
満州民族、漢民族、朝鮮民族、蒙古民族、日本民族が協力し争いのない平和な国づくりを目指した満州国。満州躍進の象徴となった特急「あじあ」号、日満親善のアイコンとなった満映の李香蘭、智謀・石原莞爾参謀が「世界最終戦争」のために引き起こした満州事変、清朝復活の執念にとらわれた皇帝溥儀、国策で満州に渡った二七万人の満蒙開拓団……。五族協和の王道楽土を夢見た約一五五万人(軍人を除く)の在留邦人はどう暮らしたか。ソ連による満州侵攻、日本敗戦によって、彼らに何が起こったか。わずか一三年あまりで消えた実験国家の建国から崩壊まで貴重写真でひもとく。 -
ナチズムの記憶 ――日常生活からみた第三帝国
第三帝国といえば、ゲシュタポの監視のもと恐怖と暴力で国民を支配したイメージがある。しかし、当時を回想する住民証言から現れるのは、ナチズムへの不満や批判ではなく、むしろ正反対の「ナチスの時代はよい時代だった」という記憶だ。ごく平凡な普通の人びとが、ナチズムとは一定の距離をおきながらも、非政治的領域のルートを通じ、政策を支持するようになる。農村ケルレと炭鉱町ホーホラルマルクという、二つの地域での詳細なインタヴュー資料を中心に、子どもや女性までもが、徐々にナチ体制に統合されていった道程をあばきだし、現代のわれわれにも警鐘を鳴らす一冊。