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Posted by ブクログ
官僚制は文書主義をとっている。そして私は文書屋だ。目の前の問題を解決するにあたり記録をひっくり返したことは一度や二度ではない。
それゆえ、徳川家で「将軍職にありながら太政大臣にもなるのは、これまで起きたことの組み合わせだが微妙に前例がない」という事例が紹介されていてもんどりうつような思いをした。俺の責任で妥当な処理を考えないといけないの?! 先例になるじゃん! 困る〜。
本書では、歴史学の論文の書き方は「予告→引用→敷衍」の積み重ねだと説明されている。そして本書自身でも、論文の紹介が「予告→引用→敷衍」の形式をとっていることに気づいた。著者は徹底して歴史学者なのだろう。
自分のテーマ・関心を持ちながら、史料を誠実に読んで知見を得るという作業は地道なものだと思う。もちろん先行研究はあらかた把握しなければならない。その成果を一般人が享受できるのだと思うと、頭が下がるばかりだ。
Posted by ブクログ
「歴史は、うっかりすると『使えてしまう』危険なものです」という一文に、ドキリとする。
昨今は「自分の頭で考えて、情報を精査する」ことが求められる場面が多い。
文献や史料を使って過去の姿を解明する「歴史」という学問のその姿勢は、そういった「情報を精査すること」に役立つのではないかと私は常々思っている。
そのあたりのことを本書が言語化してくれているのではないかと期待して読んでみたが、まさにドンピシャな本だと思う。
271pにある「ひとが言葉を用いて何かを述べているとき(中略)その根拠を問うことの重要性は」のあたりに、それが現れていると思う。
歴史論文を読むときの注目点、注意点、汲み取り方のようなものは、うっすらとぼんやりと、受け取れたと思う。「ちゃんとわかった」わけではないとは思うけど。
実際に論文をあれこれ読み進めるときに、時々本書を読み返そうと思う。
Posted by ブクログ
歴史学者が、歴史的事実をあつかった論文をどのように執筆し、どのように読んでいるのかということを、具体例にそくして解説している本です。
本書で具体例としてとりあげられている論文は、著者自身の「逓信省における女性の雇員と判任官」と、政治史、経済史、社会史の立場にもとづいて書かれた論文三編です。まず著者の論文では、史料批判のしかたが具体的に解説されており、史料によってなにがわかり、なにがわからないのかということを厳密に考えながら叙述が展開されているところに、歴史学の立場だということが明らかにされます。
つづく三つの論文は、それぞれの執筆者のいだいている歴史的な関心や、その背景をなしていると考えられる共通の問題意識などが明示化されたうえで、どのように史料が読まれ、どのようなしかたで論証がおこなわれているのかということが、ここでも非常に具体的に説明されています。
ただし著者は、それぞれの論文が執筆者の関心にもとづいて書かれており、それぞれの関心におうじて異なる歴史の描像が現われるという立場にくみしているわけではありません。むしろ著者は、たとえ問題関心が異なっていても、史料批判にもとづいて論証が組み立てられている以上、史料はさまざまなしかたで「使えてしまう」という点に目を向けています。このことが正しく把握されていないことが、かえって歴史をめぐる恣意的な言説が生まれる温床でもあります。
著者は、歴史にかんする言説から学問的な史料批判をくぐり抜けていないものを排除することが、かならずしも望ましいかどうかわからないと、慎重な態度をとっています。ただそれでも、歴史の認識をめぐる問題が生じたとき、人びとが立ち返るべき史料の読みかたについておおまかではあっても理解をもちあわせていることで、混乱に巻き込まれずにすむということはできるかもしれません。
Posted by ブクログ
歴史学とは、資料を正しく読み解き、論文等に知見をまとめていくだけかと思っていたが、自分が想像していた以上に緻密で繊細なプロセスを経ていることに驚いた。
本書はいわゆる歴史家の方が実践しているスキルの紹介に留まらない、知的解釈の困難さが読み取れるが、さすが専門家とも言うべきほどに内容はやや難解である。歴史に触れる機会が少ない自分のような読者にあっては、少々内容に入るまでに骨が折れることも多かったように感じる。しかし、難しいだけではなく、興味深いトピックを選び抜く筆者の審美眼と文章力は確かなものであり、最後まで読ませる楽しさをあわせ持つ点は素晴らしいの一言である。
再度、歴史や周辺知識を身に付けた上で挑戦したい一冊だ。
Posted by ブクログ
内容的には、近代史を分析するのにあたって、歴史家はどう考えてどう資料を使うのか、政治史、経済史、社会史という観点から論文を分析して解説したもの。勉強にはなった。
【目次】
はじめに――歴史家は何をしているのか
第一章 歴史家にとって「史料」とは何か
1 根拠としての史料
2 記録を残す
3 記録を使う
4 歴史学と文書館
第二章 史料はどのように読めているか
1 史料の引用と敷衍――史料批判の前に
2 逓信次官照会を読む――「史料があること」が「何かがおこなわれたこと」を示す場合
3 新聞記事を読む――史料に書いてあることをどの程度疑うか
4 御成敗式目を読む――史料の書き手と歴史家の距離
第三章 論文はどのように組み立てられているか(1)―― 政治史の論文の例
1 歴史学の論文と歴史研究の諸分野
2 政治史の叙述――高橋秀直「征韓論政変の政治過程」
3 政治史叙述の条件
第四章 論文はどのように組み立てられているか(2)――経済史の論文の例
1 マルクス主義的経済史
2 経済史の叙述――石井寛治「座繰製糸業の発展過程」
第五章 論文はどのように組み立てられているか(3) ―― 社会史の論文の例
1 社会史のなかの運動史
2 社会史の叙述―― 鶴巻孝雄「民衆運動の社会的願望」
第六章 上からの近代・下からの近代 ―― 「歴史についての考え方」の一例
1 歴史についての考え方と時代区分
2 「近代」、このやっかいなもの
3 歴史研究との向き合い方
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