一家に一冊あるべき、良書である。
時々読み返して、現在の日本と東アジア情勢の、大前提を確認したい。
しかし、歴史のディテールは複雑すぎて、何も覚えられないので、盲が啓かれた・新鮮に感じた・重要な観点のみを備忘録。
⚫︎東アジアは、今も、冷戦構造が固定化したままの、特殊な地域。
⚫︎東アジア各国は、いずれも「鎖国」的な政策をとっていたが、「西洋の衝撃」を受け、近代化を迫られる。その近代化の速度に、大きな違いがあった。
⚫︎アジアで一番早く近代化を達成した日本は、西洋列強を模倣し、産業革命を起こし、資本主義を導入し、「一等国」の仲間入りを目指して、植民地主義になる。
伝統的な支配体制と、華夷秩序の維持にこだわった中国と朝鮮は、日本の対外拡張に巻き込まれていった。
⚫︎江戸幕府は「鎖国」的政策をとっていたが、実際には、長崎に入港する商人に、海外の情勢を報告させ、「風説書」として編纂していた。
この世界情勢の知識が、開国の判断や、明治維新以降の「脱亜入欧」論に、大きな役割りを果たす。
特に、アヘン戦争における清朝の敗北の経緯は、重要な情報であった。
⚫︎孫文や蒋介石など、自国の革命・近代化を志した者たちは、日本の先例に学んだ。
彼らと日本国内との、交流や支援は、意外なほど深い。
その後、日本によって侵略が行われるわけだが、彼らには、争いあい、いがみあうだけでなく、政治的な損得の判断の中にも、愛憎ともいえる、複雑な感情の機微があった。
⚫︎1989年の天安門事件は、中国が民主化する最後のチャンスだったかもしれない。
その失敗のあとは、民衆自体が拝金主義に走り、「改革・解放」路線が、より推進され、一党独裁の経済大国へと向かう。
⚫︎東アジア各国に共通する課題は、少子高齢化。
儒教的な価値観が根深く、家族主義が強いため、女性へ育児・介護などの負担がある。
「子どもは社会が育てる」という価値観に、舵を切れるか?
⚫︎また、共通して、格差の拡大・固定化の問題も抱える。
結婚できない若者たちを増やし、少子化に拍車をかけている。
⚫︎忘れてしまいがちだが、90年代前半、平成になったころの外交関係・歴史認識は、現在と、まったく雰囲気が違っていた。
天皇が中国を訪問し、非自民政権の、細川・羽田・村山内閣では、率直に、侵略への反省が述べられていた。
⚫︎中国が、靖国参拝に反対する論理は、「戦争責任二分論」である。
「日本の一般国民は無辜の被害者であり、侵略の責任はすべて軍閥にある」
「だから、一般国民とは、手を取り合える」
この赦しの論理に沿えば、一般国民の代表である総理大臣が、A級戦犯を合祀した靖国神社に参拝するのは、絶対におかしいのである。
⚫︎日本兵として戦争に参加した、朝鮮と台湾の戦死者が、自らと遺族の意思に反し、靖国神社に合祀されているのは、人格権の侵害である。