名称未設定さんのレビュー一覧
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とにかく怖い
いや、なにがコワいって表紙のクマがこれでもかってくらいコワいんですけど、読んだら中身はもっと怖かった。
大正時代の北海道開拓民の山村を巨大な羆が襲い6人惨殺...という実話を基にした小説だが、前半はエイリアン並みの、姿の見えない巨大羆と、その陰惨な襲撃シーンに恐怖する。
一転して後半は、羆を恐れる村人たちの緻密な心理と、羆を追い詰める老マタギのハードボイルドな描写に一喜一憂しながら読み進めることになる。
Wikipediaで「三毛別羆事件」を参照すれば分かるが、ストーリーはほぼ実話。そこに、迫真の心理描写を加えたのがこの小説のすばらしいところだろう。まちがいなく傑作だ。 -
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こんどはチェチェンか!
1作目はチャイナ、2作目はアイルランド、3作目はロシアと、世界の裏社会と日本の警察が派手な戦いを繰り広げる本シリーズの最新作。
ついにチェチェンが舞台だ!もう次はアラブに行くしかあるまい。
それはさておき、本作も素晴らしい出来で満足。暴力の支配する荒廃した地からやってきた少女と、暴力を内に秘めながら克服した警察官の心のやりとりを軸に、いろいろな要素がぶち込まれた網目模様のドラマが破綻なく成立していて楽しめました。
あいかわらず装甲機兵の戦闘シーンは迫力があるけど、それすら今作では脇役っぽい。
ラストは、今後の伏線か?
それにしても......警官が死に過ぎ。 -
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ソーシャルメディアに接するノウ
ソーシャルメディアを中心としたメディアとの接し方についての津田マガのQ&Aコーナーをピックアップして書籍化したものだそうです。メルマガをとっていないのでとても参考になりました。
ソーシャルメディアとの距離感に迷っている人にはとても役に立つノウハウが詰まっているので価値ある1冊といえると思います。
結局は情報の信頼性を確認するのは自分の知識や行動なので、本を読む、人に話を聞く、ここに集約されていくわけです。そのためのツールとしてもソーシャルメディアを活用すべし、ということでしょう。
それと、巻末のドワンゴ川上量生氏との対談。川上氏のキャラクターはいつも通りだけど、津田さんの政治 -
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う~む、黒い。
Amazonのタコ社長じゃなかった、カリスマCEOであるジェフ・ベゾスの評伝。
ヘッジファンドから独立して、
自転車操業のような黎明期からあっというまに世界市場を席捲して行くスピード感は圧巻です。
でも、当然ながら急成長する企業にありがちなブラックぶりも余すところなく描かれています。
ベゾスの強烈な個性についていければよし、ついて行けないものは自ら去り、無能と見なされたものは情け容赦なく切り捨てる。ワークライフバランスは禁句....
とりあえず、働きたくない企業No.1決定です!
市場を取りに行くときのライバル企業への攻撃もタブーなき焦土作戦のオンパレード。法務部門は大変そ -
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日本のトレッキングの父
2013年5月に亡くなった、日本のトレッキングの父ともいえる加藤さんの小品。実質的にこれが遺作になるのでしょうか?
ジョン・ミューアを日本に紹介し、ジョン・ミューア・トレイルやアパラチアン・トレイルを実際に踏破し、そして日本でも信越トレイルなど魅力的なロングトレイルの整備に力を注いだ偉大な人。
本書はALSで起きることもできなくなるなかでまとめられたそうです。最後のメッセージとでも呼べるような、とてもやさしい語り口が印象的です。
本書を入口にして、多くの若い人たちが加藤さんの多くの著作に触れて、そして実際にトレイルに出ていくようになればいいですね。 -
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これが本当にラストか
これが伊藤計劃のラスト短編集ということで、心して読みました。
まあ、先に『屍者の帝国』を読んでいたんですが。
全体に絶筆らしいというか、未完成、あるいは習作的なもの寄せ集めという印象ではありますが、遺されたテクストに触れるのは感慨深いものがあります。
なかでも短編としてダントツの完成度を感じさせてくれる表題作には驚かされました。対立する部族に生まれて、殺し合いを強いられる子供達の救いのなさと、欺瞞に満ちたかりそめの平和維持。伊藤さんってこんなに暴力的でワイルドな作品を書くんだ、と思ったりして。
あ、『メタルギアソリッド』は読んでいないのでそっちがどういう作品なのかは知りません。 -
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放蕩者列伝?
茶人に興味をもったきっかけは『へうげもの』なんですが、いくらなんでも「創り過ぎ」だろうと思っていた人たちが、けっこういい感じのデフォルメだってことがわかって、楽しさ10倍ドン、です。
武野紹鴎~今井宗久~千利休~古田織部~小堀遠州といったあたりの流れがよくわかって満足。
それと同時に、茶の湯と切り離せない「名物」にかかわる人々の放蕩ぶりに感激ひとしおです。
特に荒木道薫。信長に叛いて逆に攻められ、落城の折に一人茶壺を抱えてトンズラしたおかげて家臣妻子皆殺しにあってもしぶとく生き延びたその業の深さはあっぱれとしかいいようがありません。
その後江戸の時代でも名物に身代を注ぎ込んだ大名・ -
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スパイ小説の金字塔
ル・カレの世界を堪能させていただきました!
荒木飛呂彦風にいうならば、男が泣ける、男の悲哀を感じさせるサスペンス、というところでしょうか。★5つでは足りません!
実は、紙の本で積ん読数年。その間に新訳が出て、電子化されて、やっと読みました!何でもっと早く読まなかったんだろう?
まあ、確かに本をパラパラっとめくった時に感じる重苦しいオーラに、つい本棚に戻してしまう、ということを繰り返していました。
電子書籍にはその拒絶感がありませんね(笑)。
内容に関しては随所で語り尽くされていますが、とにかく暗く,重く、緻密でスリリング。
組織に潜む2重スパイを捜し出すことを命じられた、老いた -
- カート
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試し読み
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風化しない名作!
ハインラインの代表作と言われるものの一つ。流刑地であり搾取される生産地である月世界の革命の物語です。
半世紀前の作品ですが、まったく風化していない!間違いなく名作です。
3章構成になっていて、盛り上がるのは最終章ですが、そこまでがちょっと長いかも。
でもいろいろな要素が詰まっていて面白いです。
革命の組織論が延々語られるのはアレなんだけど、
月の中央コンピュータ「マイク」の万能ぶりは、当時のコンピュータへの夢が詰まっている感じです。
そして定番だけどやっぱり邦訳タイトルがかっこいい。
原題[The Moon Is a Harsh Mistress]
のMistressを -
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上質な家族のドラマ
数十年ぶり(!)に吉田秋生作品を読みました。
こんな絵だったっけ?というのは置いておいて(笑)、
離婚や死別といった家族をめぐる重いテーマを、軽く、明るく、面白く描いています。それでいて深い。
素晴らしい作品に出会えました。
主人公が4姉妹というのもいいですね。
家族それぞれの事情が複雑なストーリーとして絡み合って、物語に厚みがあります。上質な家族ドラマを見ているよう。
ちょっと出来過ぎなくらい絶妙に交錯する登場人物たちの日常に、鎌倉という「場所」がリアリティを与えてくれています。
そう、やっぱり鎌倉という土地があってこその物語なんですよね。久々に訪ねてみたくなりました。 -
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ロマンか悲劇か?
終戦に際しての、架空の(?)秘宝をめぐるドラマ。
現在と終戦時という二つの時間軸で話は進みます。
同時に、さまざまな登場人物の視点が複合的に描かれてストーリーの厚みを感じさせます。
GHQ側の視点でも話は進みますが、
マッカーサーってそんな人だったのか?という大いなる疑義が心に湧き上がってとても落ち着かない気分にさせられます。
ありそうな気もする、ってところがロマンなのでしょうね。
でも、やはり少女たちの運命の扱いが.....自分にとってはちょっと痛かったです。
映画は未見なのですが、そこがどう扱われているのかも気になりました。 -
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TOEIC批判?
日本の企業が社内英語を公用語にするってどうよ?とは誰でも思うところ。
社内が人員的にもグローバル化していて必要があって英語が公用語化している会社ならまだしも、
今後グローバル展開に必要だといって日本人の会議や書類を英語化するなんて、そりゃおかしいでしょ。
ということいついて専門家の立場で一刀両断しているのが本書です。
特にそれらの会社が判断基準にしているTOEICは槍玉に挙がっていて、
たとえば700点以上、というのがどの程度のものなのか、
ビジネスとして使える程度なのかについて相当厳しいご意見を述べられています。
まあ、実際そのとおりなんでしょうね。
英語力がどうという前 -
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サイバーパンク!
日本のサイバーパンクもやるなあ!というのが感想。
最初は、あまりにウィリアム・ギブスンっぽい(もちろん黒丸尚訳の)文体にどうしようか、読むのをやめようかとさえ思いましたが......読み進めると、俄然面白くて気にならなくなりました(笑)
人物設定、ガジェット、世界観、バトルアクション、そしてカジノのめくるめく頭脳戦、と読みどころ満載で一気に読んでしまいました。お腹いっぱい。
特に、生身の人間と言うタガを外したバトルシーンは、もう想像力を超えていますね。いったいどんな事になっていたのか、映画で確かめたくなりました。まだ未見なので。
ところで、読んでいるといろんな作品にインスパイア -
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交渉現場の空気が伝わる
原典から、とあるので憲法原文の英語版を解説している本かと思って手に取りましたが違いました。
GHQから日本側にドラフトが手渡されてから受諾するまでのやり取りを記録や手紙の英文で検証するのですが、
登場人物としてGHQ側はホイットニーとケーディス、日本側は松本大臣と白洲次郎に焦点が当たっています。
有名な<symbol>という言葉をめぐるやりとりなど、言葉に歴史が左右されていく過程がとても面白くて楽しめます。
同時に、それぞれのプレイヤーの個性が英文から読み取れる、ということも本書の楽しみの一つです。
特に白洲次郎とケーディスのやり取りは、その結末も含めてドラマのような展開 -
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サスペンス!
偏愛というと独善的な感じがしますが、本書は荒木氏流の「映画の見方」といえるんじゃないでしょうか?自分はこの映画をこう観る、というのを延々と熱く語っているわけですが、まったく押し付けがましくないところがいいです。マンガの参考にするために長年研究した成果ともいえるでしょう。
前作はホラーでしたが、本書のテーマはサスペンス。有名作も無名作もTVドラマもアニメもあり、というところが荒木氏らしくて楽しいです。良い映画の判断基準に「泣ける」が入っているのがイイ。
そしてなにより、あのメインキャラのモデルがクリント・イーストウッドだという事実を明かしていて、しかもイーストウッドにあった時にジョジョ立ちを