【感想・ネタバレ】The Indifference Engineのレビュー

あらすじ

ぼくは、ぼく自身の戦争をどう終わらせたらいいのだろう・・・・・・戦争が残した傷跡から回復できないアフリカの少年兵の姿を生々しく描き出した表題作をはじめ、盟友である芥川賞作家・円城塔が書き継ぐことを公表した『屍者の帝国』の冒頭部分、影響を受けた小島秀夫監督にオマージュを捧げた2短篇、そして漫画や、円城塔と合作した「解説」にいたるまで、ゼロ年代最高の作家が短い活動期間に遺したフィクションを集成。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

生誕50周年記念限定カバー版。

この強烈に作品を理解りたいという感覚をもたらしてくれる数ある作家の内の一人。これが愛するということ、カリスマということか。

変な話、夭折の作家というのは、もう続きが見られない、新たな境地を辿れないからこそ、数少ない断片の希少性が上がるわけで、亡くなって良かったなんて全く思わないが、渇望の度合いは他の比じゃないんだよな。

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2025年06月27日

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やっぱ伊藤計劃ですわ!とニコニコせずにはいられない素敵な短編集だった。現実世界に対する皮肉が込められた視点、それでいて悲観的ではないユーモアに富んだ描写、世界観に説得力を持たせるSF的なディテールといった具合に、伊藤計劃らしさを余さず感じられる作品だと感じた。

「The Indifference Engine」
上記の3要素が最も色濃く感じられたのがこの短編。虐殺器官とハーモニーを読んでからしばらく時間が空いていたが、一気に伊藤計劃ワールドに引き戻される感覚だった。俺は今伊藤計劃を読んでいるんだ〜!みたいな。極々身近なものとして暴力を振るい振るわれる主人公は、エリスンの少年と犬を彷彿とさせる。

「セカイ、蛮族、僕。」
初めの一文の唐突さと勢いに3度見してしまった。また委員長のベタベタなツンデレ長台詞の後速攻で犯してるのも大笑いした。こういうSF(?)もいいよね、めっちゃ楽しい。

「From the Nothing, With Love」
書き出しの意味が終盤に理解できるところや意識というテーマがハーモニーに共通していた。人間のようなAIについて扱う作品は多々あるが、AI(というのも正確ではないが)のような人間という側面から物語を描くのはさすが。手紙の下りでタイトルの意味が分かった時にはオシャレ〜!これ書くのかっけえ〜!と天井を仰いでしまった

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2025年04月15日

Posted by ブクログ

引き寄せられるような疾走感と、たっぷりの皮肉と、途方もない退廃と、途轍もない喪失感。
そういったものたちが、残されていった。
その先がないことが、とても、寂しい。

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2017年11月29日

Posted by ブクログ

ボンドとスナッチャーと
グレイフォックスと蛮族とワトソンと。

コジプロ作品に関係する2つはどちらも興味深く、特にスナッチャーは面白かった。先に虐殺器官を読んだので、読み比べる楽しさもあった。

蛮族の短編は文章を怒りと憎しみを感じる程にまたそれが面白いなと感じた。

ボンドの話としては伊藤計劃らしさというものがチラチラと垣間見れ、個人的には凄く好きだ。

屍者の帝国は、すべて読んでから感想を書こう。
楽しみだ。

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2014年12月06日

ネタバレ 購入済み

これが本当にラストか

これが伊藤計劃のラスト短編集ということで、心して読みました。
まあ、先に『屍者の帝国』を読んでいたんですが。

全体に絶筆らしいというか、未完成、あるいは習作的なもの寄せ集めという印象ではありますが、遺されたテクストに触れるのは感慨深いものがあります。
なかでも短編としてダントツの完成度を感じさせてくれる表題作には驚かされました。対立する部族に生まれて、殺し合いを強いられる子供達の救いのなさと、欺瞞に満ちたかりそめの平和維持。伊藤さんってこんなに暴力的でワイルドな作品を書くんだ、と思ったりして。

あ、『メタルギアソリッド』は読んでいないのでそっちがどういう作品なのかは知りません。
というわけで、その『メタルギア』のスピンオフである『フォックスの葬送』は、あまり馴染めませんでした。

噂の『屍者の帝国』の未完の冒頭部分もやっと読めました。このまま伊藤さんが完成させていたらどんな作品になったんでしょうね?

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2014年01月31日

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ネタバレ

最後は『屍者の帝国』だったが、フランケンシュタイン、ホームズ、吸血鬼ドラキュラなどが下敷きとなった作品で好みの題材だしこの先も超面白そうなのに絶筆なのが本当に本当に残念!!!

『セカイ、蛮族、ぼく。』は冒頭から食パンをくわえて走ってくるというコミカルな女性が、僕にぶつかってきて転倒したので犯した。という2度見するスタートから始まり、本編中でもう一人強姦する。
好きでやってるわけじゃない、蛮族という血に従ってるんだ、などと、今の時代では問題アリな作品だが、依頼されて同人誌に寄稿した作品だという説明で少しは納得できた笑
著者作品はそこまで書かなくても良いんじゃないか?と突っ込みたい女性の性・強姦描写が度々あるのだけが素直に好きになれないところ。戦争というものはそうゆうものだというのは分かるのだが、作品内にわざわざ複数回登場させなくてもな、などと女読者である私は思ってしまうのである。
この作品を読んだ後に次の『A.T.D:Automatic Death ⬛︎ EPISODE : 0』という作品を読んでしまうと、は〜女ってやつは男主体の世界では所詮、お涙頂戴の飾り物ってわけね、などと思ってしまう。(創作的に)


『The indifference Engine』
虐殺器官のスピンオフ作品で、ウィリアムズも登場する。戦争に使われる子供、戦争は終わった、といわれても自分の中ではまだ続いている戦争。これまた脳いじりが登場し、顔を見ても敵か味方か、種族の判別がつかないようにされる。

『From the Nothing, With Love.』
ミステリー要素が強く、クリスティネタも登場する。最初はいつにも増して堅苦しい語り口調の主人公だなと読みずらさを感じていたが、理由に納得である。落ちがラヴクラフトっぽくて好き。

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2025年08月22日

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私をわたしと認識しているワタシは私なのか?
答えの出ない問いを自分の貧弱な脳味噌で捏ねくり回し、考えるのに疲れたら、蛮族くんにアックスを頭蓋に振りおろしてもらえる素敵な小説です。

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2025年08月05日

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10年以上ぶりの伊藤計劃、今の時代に読んでも全く色褪せてなくてすごかった。とにかく面白い。
表面的にはスパイ物、あるいは戦争物でいかにもオタクが描きそうなストーリーだが、なぜか伊藤計劃の文章は登場人物の生き様から強烈なメッセージを感じた。どの短編も題材や設定が違えど、生きるとは何か、をどうしてこうも考えされてしまうのだろう。

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2025年03月06日

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単語やら難しい表現が飛び交うが特に気にせずわかった気持ちになって読めばおもしろい。
その分野に明るい読者であれば何倍もその魅力は増すと思う。

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2023年07月14日

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虐殺器官やハーモニーに対する補完作品や、メタルギアソリッドやある有名映画のオマージュ作品かな?
From the nothing, with love.が、伊藤計劃の他の作品とも違ったまた独特の世界観のある作品で、なかなかな着眼点に基づくSF作品で特に良かったです。

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2022年11月18日

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伊藤計劃の世界観が詰まった短編集。人間とはというテーマでリアルかつ残酷に物語を描いている。おそらく、もっと深く詳細なテーマがあり、今の自分では読み取れ切れないのが残念。虐殺器官、ハーモニーを再読したくなった。

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2021年03月12日

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虐殺器官との繋がりもあり、面白かった。
自分は、この中では『the indifference engine 』が一番面白かった。虐殺器官と比べてみることができ、また、「戦争が終わっても、本当の意味での戦争は終わっていない」というのがとても印象的だったからだ。
その他の作品で、読みづらいものや難しいものもあったが全体的にとても面白かったと思う。
衝撃的だった作品は、『セカイ、蛮族、ぼく』だ。冒頭から凄かった。曲がり角でぶつかる、漫画、ゲームで定番のシチュエーションで、伊藤計劃さんらしくないと思ったが、その後で納得(というか圧倒された)した。長さは短いが、内容が深かった。
『屍者の帝国』の冒頭も収録されていた。面白かったので、今度本編を読んでみようと思った。

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2021年07月18日

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ネタバレ

「虐殺器官」などの長編を思わせるキーワードがちらほら。書いた時期とか、元の作品とかを知らないので、むむむ…となるところも多いのですが…

この方の、ひらがなの使い方が好き。
書いてある内容は殺伐としているのに、なんとなくやわらかく感じてしまうし、心地いい。

読んでいるうちに、「身体」というのはただの「うつわ」なのだと思わされる…ような気がする。

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2020年11月19日

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伊藤計劃の短編やコミックの原作を務めた作品を集めた作品集。『虐殺器官』で描かれた戦争や悲劇に対する考察や、『ハーモニー』で描かれた意識、自由意志などそれぞれの作品に補完の関係があり、呼応している。「007」シリーズや「メタルギア」シリーズに対するオマージュの作品もあり、伊藤計劃の作品は自身の作品群の枠を拡張し、メディアの形式を超えて遺伝子が引き継がれているのだと感じた。

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2020年03月10日

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"短編集、The Indefference Engineという表題の作品が強烈な印象を残す。
ホテルルワンダの世界そのまま。
007への愛情あふれる作品もいくつかある。
最後に収録されている「屍者の帝国」は最近別の作家の手を経て発売された。"

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2018年10月28日

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 書籍というきちんとした形でまとめられていなかった作品を集めた作品集。
 6つの短編に、2つの劇画、1つの他の作品の解説、という構成になっている。
 やはり6編の短編はどれも極上。
「セカイ、蛮族、ぼく。」という短編だけは少し毛色が違っているが、残りはどれも伊藤計劃らしさが漂ってくる作品となっている。
 きっちりと論理立てされており、だからといって息苦しさを感じさせることもなく、読むものを良質のエンターテインメントへと誘ってくれる。
 最後の「屍者の帝国」のみ未完(遺稿でもある)。 
 のちに円城塔が後を引き継いで完成させているが、購入してはいるがまだ未読(評判はあまり芳しくないようだが……)。
 どの作品も面白いのだが、やはり一番強く心に残ったのは「本当に惜しい才能を失ってしまった。もっと彼の作品を読んでみたかった」という残念な気持ち。
 特に未完に終わっている「屍者の帝国」の「これから先、どんな展開が待っているんだろう」と期待に胸を躍らさせてくれる内容を読んでしまうと、本当に残念でならない。

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2018年01月04日

Posted by ブクログ

夭折の天才、伊藤計劃の遺稿を含む短編集。同人誌に掲載した試作や未完の作品が多く、「お試し」感の強いラインナップで、一読しての印象は「なんか中途半端だなー」というのが正直なところ。
ただし、完結している作品ももちろん収録されてまして、この完成度が恐ろしく高いです。「虐殺器官」と同じ世界線にある表題作はもちろんのこと、鴨的には「From the Nothing, with Love」が衝撃的な出来。ぱっと見はあの世界的に有名なスパイ・アクション映画のパスティーシュで、なんでこの映画が題材なんだよ!と心の中で突っ込みながら読み進めたわけですが、これがちゃんとSFしていて、しかもいかにも伊藤計劃らしい深堀りした思索が静かに展開されていて、短編にも関わらずお腹いっぱいな読み応え。

うーん、鴨の全く個人的な感触ですが、伊藤計劃は短編向きの作家だったんじゃないのかな、という気がします。
長編は一通り読みました。スゴく面白かったんだけど、正直かなりリダンダントな印象を受けて、読後感は今ひとつでした。今にして思うと、鴨は伊藤計劃作品に「フツーのSF」を求め過ぎていたのかもしれません。先日師匠が初めて伊藤計劃作品を読んで、「村上春樹っぽいね」と評しておりました。正にその通りで、SFとして読む前に、この人の作品は「物語」なんでしょうね。歳を重ねて円熟した伊藤計劃がもし作品を世に出したら、どれほどの傑作になったんだろう、と今更ながらに思います。惜しい才能を無くしたなー。

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2017年08月03日

Posted by ブクログ

羊水の中で溺れてるみたいな気持ち悪さがありながらも、「かぁぁぁぁっこいい!!!」と唸りたくなる、劇場感。死がすぐ側まで、いやそれどころか内側まで、入り込んできているのに、まるで生まれ変わりの準備をしているみたいな安心感を感じるというか。中毒性高い。もっと生きてもっと多くの作品を残してもらいたかった…。表題作のThe Indifference Engineが一番好き。争うために歴史がいる。人を殺して死ねと教えたお前らが助け合えとのたまう。じょおおおおおだんじゃない!という不条理はそこらじゅうに転がっている。

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2016年09月27日

Posted by ブクログ

表題作と007の話が面白かった。
表題作は今のシリアと照らし合わせて。
007はメタを作品構造として取り込んだ質の良いオマージュ。
他の作品はオリジナルの影響から抜け出しきれてない感じ。執筆順がどうなっているか分からないけど、作風のオリジナリティ獲得の軌跡として読むと面白い?
この先にハーモニーや虐殺器官があるわけで、その2点をつないだ延長線上に必ずあるはずだった傑作を読めないのが本当に惜しい。

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2016年02月27日

Posted by ブクログ

短編の色んなところに長編の要素。

from the nothing, with loveで出てくる博士がアクロイド博士、会話で出てくるアガサクリスティーににやり。

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2015年03月07日

Posted by ブクログ

『女王陛下の所有物』で007の解釈にヤラレタ!!という感じになります。
難解なものもありますが、どれもこの世代の感覚が研ぎ澄まされた結晶とも言うべき短編集です。
つくづく早世されたのが惜しい方だと思います。

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2015年03月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「女王陛下の所有物」★★★
「The Indifference Engine」★★★★
「Heavenscape」
「フォックスの葬送」
「セカイ、蛮族、ぼく。」★★★★★
「Automatic Death ■episode 0」★★★
「From the Nothing with Love」★★★★★
「屍者の帝国」

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2019年04月29日

Posted by ブクログ

「The Indifferent Engine」「From Nothing, with Love」「屍者の帝国」が良かった

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2014年07月17日

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伊藤計劃の原石というか原点というかそういう感じの短編がおさまった作品集。あれはこれを研ぎなおした作品なのか。と、ニヤニヤしながら読んだ話はさておき。

個人的なお気に入りは007をモチーフにしたFrom The Nothing...。007はそういうコンテンツとしてあってもいいんじゃないかと錯覚してしまった。もうこれはぜひともダニボンで映像化してほしい。のも、さておき。


そこはかとなく漂う「死」のにおい。死ぬために生きている、生かされている人たちの物語。な、印象。

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2014年06月20日

Posted by ブクログ

デビューから長編二作、『屍者の帝国』へと続く流れを俯瞰できる短編集。作品によって完成度はまちまちだが、どれも筆者が描きたいものがしっかり伝わってくる、濃い作品ばかりだった。収録作のいくつかは既読だったけど、前後を考えつつ興味深く再読できた。特に『From the Nothing, With Love』は長編二作を繋ぐ非常に重要な作品で、単体としても十分の完成度があった。本当に「これから」が期待される作家だったのだなと感じた。『ディファレンス〜』から生まれた二人の作家がどういう作品を生み出すのか、期待大。

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2016年01月17日

Posted by ブクログ

もともと『ハーモニー』が好きで、SNSで紹介されているのをきっかけに手に取った一冊。正直、SNSで見かける絶賛ほどの期待値には届かなかったけど、普通に面白い。短編集ということもありテンポもよく、一気に読み進められる構成になっている。

なかでも印象的だったのは、伊藤計劃氏の過去作とつながりを感じられる点。直接的な続編ではないものの、世界観や設定がリンクしているような作品がいくつかあって、ファンにはニヤリとできる仕掛けが随所に散りばめられている。時系列や設定の裏側に想像を巡らせながら読むのが楽しい。

伊藤計劃作品をすでに読んでいる人にはより深く楽しめる構成だし、初めて読む人にも短編としてサクッと入れる入口として悪くない。重厚なテーマ性を期待しすぎると肩透かしかもしれないけど、テンポの良いSF短編集としては十分楽しめた。

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2025年05月17日

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著者の恥部を覗き見ているような感覚。

虐殺器官や、ハーモニーの前身。学生時代に書いた漫画など。所々チープな場面はあれど、天才の片鱗は十二分に感じられる。
ただ、メタルギアソリッドを知らないと物語に入り込めない短編もあり、読むのに骨が折れた。さすがにこの為だけにゲームはできない。

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2022年07月30日

Posted by ブクログ

プロパティ所有物 デフォルト初期状態 コンフィグレーション設定値 小銃弾の硝煙 薪のような人間の腕も、裸に剥かれた死体もないことだ。 戦争は終わっていない。僕自身が戦争なのだ。 その屍体の数はアメリカ合衆国の責任のもと正当化されるのだ あまりに抹香臭くて 鼻梁の中央めがけ 人類の弔鐘となった最後のキノコ雲を見つめる 細雨さいう 深奥しんおう 古強者ふるつわもの 天国の周縁 民間の艦船 勝鬨をあげろ 僕の野蛮は発動させるべき閾値に既に達しつつあるというのに 矛盾の針先 眼窩の空洞 冷笑家シニシスト テムズの川面 じょうさい城砦 神の子の顕現 隔壁のコンクリート はいえつ拝謁を賜った あらわれる顕れる 八十万人ものツチ族が、同じ言葉を話すフツ族によって虐殺された。 映画『ホテル・ルワンダ』 ただし但し書き いはつ衣鉢を継ぐと目される創り手達が

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2020年04月16日

Posted by ブクログ

伊藤計劃さんの『虐殺器官』を読んだ時の興奮を今も憶えている。
続く、『ハーモニー』の緊迫感も忘れない。
本書は、その伊藤計劃さんの短・中編集で、『虐殺器官』の世界観を現す作品も含まれる。もちろん既視感がつきまといはするが、この既視感が無いと本書は楽しめないと思う。

最近、書店に行けば必ず伊藤計劃さんのコーナーが確保されており、嬉しく思うが、ご本人が亡くなっているので、伊藤計劃作品をめぐる評論合戦になってしまうのが少し寂しい。

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2016年02月14日

Posted by ブクログ

一見して「ありえない」世界を作り出し、それを「ありえる(かもしれない)」と思わせることができるもの。SFというジャンルを仮にこのように定義するならば、伊藤計劃は、SFがもつ威力を思い知るのにもっとも適した作家のひとりだと思う。

「嘘ではない。だがな、お前が教えられてきたのは、戦争が始まってからSDAがまとめた歴史ではあるんだ。戦うには歴史が必要だ。俺たちが戦う拠り所となり、奴らと俺らとを隔てるのに必要な歴史がな」
「戦争のために、嘘の歴史を作ったんだろ」

たとえばこれは、表題作の中のやりとり。
小説で描かれるものを何でもかんでも現実世界と結びつけようとするのは野暮な読み方かもしれないけれど、この台詞に、いまの自分たちはまったく思い当たりがないとは言えない。この小説の「ありえない」世界と、いまの自分たちが生きる現実世界は、まったく関係がないとはもちろん言えない。
この小説にはいちいち微細に描写した残酷表現が無数にある。倫理的に、どうしたって目を背けたくなるような表現がある。まさに「ありえない」と言いたくなるような。でも、残念ながら、この小説で描かれる世界は現実に「ありえる」のだろう。それも意外とすぐ近くにあるのかもしれない。

…とかなんとか、いろいろ考えることのできるSFらしいSF。

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2015年05月31日

Posted by ブクログ

表題作The Indifference Engine と From the Nothing,With Love は面白かった。しかし虐殺器官とハーモニーに比べると、全体的に文章表現が劣っていると感じた。ちょっとテーマや構成に凝りすぎているのと、ここまで難解だとだいぶ読者が絞られるだろうなあという印象

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2015年02月07日

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