あらすじ
前人未踏の一万日連続登山に挑んだ、毎日登山家・東浦奈良男氏の驚愕の四半世紀にわたるライフヒストリーと、その非凡かつ個性的な人格の全容を、本人への取材、膨大な日記の解読、関係者の証言などをもとに浮き彫りにする。
東浦氏は1984年の定年退職翌日から、なんと28年間にもわたることになる、一万日登山を開始した。この千日回峰行(7年間で1000日)十回分に値する途方もない挑戦は、「毎日連続して登る」というさらに驚異的なスタイルで実践された。
不可能と思える目標を掲げ、雨の日も風の日も登り続け、生きながら神の領域に近づいた驚異的な日々はもとより、行動中に水を飲まない、登山用具は廃品活用のオリジナルなど、一般的な登山の常識を無視した登山スタイルは興味深い。また、過剰ともいえる強靱な意志は、信念なき時代、登山界のみならず、社会一般に対しても強いインパクトを与える刺激的なパフォーマンスともいえる。
東浦氏は、苦行とも思える前代未聞の挑戦を、なぜ、つづけたのか? その謎に迫る渾身のルポ。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
著者は答えを探す。
なぜここまで毎日山登りを続けるのか?
たとえひき逃げにあっても、妻が倒れても。
そして一万日の記録が途絶えた先に著者は答えを見つける。
そこには著者と取材対象者との微妙な距離感も伝わってくる。
そして著者のあとがきを読んで違和感が残る。
なぜ?と。
だけど、
最後に雑誌編集長の追悼文があるが、そこで全ての疑問がふっと理解出来て感動につながる。
この本に関係した編集者、著者の東浦氏に対しての尊敬の念が最後の一行に詰まっている。
聖者のごとし
1万日連続して登山続ける。目標を立てること自体が想像を絶する。
そして実践。
雨が降っても、車にはねられても、オペル冒険大賞の授賞式に出席するために上京するときにも、どんなに低くても一日一山を26年のぼり続け、それを膨大な日記に残した。
これはもはや趣味ではなくて人生をかけた「行」だ。
小さな「行」を積み上げて、奈良男さんは聖者になったんだと思う。
Posted by ブクログ
世界最高峰登頂。8000m峰の制覇。そういう記録はもちろん輝かしく凄いことなのだけど、東浦奈良男さんの挑戦はよりリアルに凄味を感じた。人それぞれに山へ上る理由があり、山の楽しみ方がある。その一つの極地。登山を愛するすべての人に読んでもらいたい本。