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疫神記 合本版
「ワシントン・ポスト」紙の年間ベストに選出されたパンデミック超大作 日本の天文愛好家の発見した新彗星が地球近傍を通過した翌朝、十五歳の少女ネッシーが消えた。そして姉のシャナが発見したときには、無意識状態で歩き続ける不可解な存在と化していた。話しかけても無反応。一方で、行く手を阻めば全身から高熱を発し、激しく痙攣する。鎮静剤を打とうとすれば、注射針が折れるほど皮膚は硬化していた。 ネッシーが単なる夢遊病でないことはすぐに証明される。同じ夢遊状態で現れた男が、強引に押し込まれたパトカーの車内で爆発したからだ。この映像は瞬く間に拡散する。未知の感染症、中東のバイオテロ、合衆国政府の陰謀、ミュータント……数多の憶測が飛び交い、その間にも同じ症状者が次々現れ、ネッシーのうしろで列をなしていく。 表舞台に距離を置いていた感染症専門医のベンジーは、事態を洞見していた予測型AI「ブラックスワン」の導きで調査団に参加。ネッシーたちに帯同するが、手がかりすら掴めない。混乱が深まるなか、恐るべき真菌ウイルスが顕現する--。 -
1日1本、365日毎日ホラー映画
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 6年間、毎日1本、ホラー映画を見続けた男が選ぶ究極のホラー映画ガイド。 本書には『エクソシスト』や『シャイニング』といった誰もが知ってる作品は収録しておりませんのでご注意ください。 これがあれば、僕の観たしょうもないクズ映画の数々にわざわざ全部当たってみる必要がない。 僕は2,500本のホラー映画を観た。きみたちはそこまでしなくていい。きみたちの観るべき映画のうちの365本がここにある。 この本にある全作品を制覇した人はいないとほぼ断言できるのは、リストから大ヒット作や有名作品をほとんど除外しておいたからだ。 僕は親愛なる読者のみんなが表面的なホラー映画ファン以上のレベルであることを前提にしている。だから、『ZOMBIO/死霊のしたたり』みたいな映画を今さら勧めるような侮辱はしたくない。 だが、僕は残忍なモンスターじゃないから、たぶん聞き覚えがあるであろう準人気作もスパイスとしてまぶしておいた。 アメリカで異例の評判を取った外国映画、数々のホラー・サイトでトップ10入りを果たしたインディーズの逸品……大規模公開されてそれなりの収益も上げたのに僕の見るところでは世間の記憶から消えてしまった映画も入れてある。 要するに、もしもきみがこのジャンルでまったくの素人だったら、これはきみのための本ではないかもしれないが、ぱらぱらめくってみれば、ホッとできるようなおなじみのタイトルがいくつか見つかると思う。(本文より抜粋)――ブライアン・W・コリンズ ■脚本家や映画サイトも推薦! 彼のくれた最大の贈りものは、カルト化して誰も文句をつけない作品であっても欠点を指摘しようとする意欲だ。私がすでに認識ずみの欠点もときにはあったが、多くの場合はブライアンの既成概念にとらわれない発想のおかげで、それまで見えていなかったものが見えるようになった。 ――トッド・ファーマー[脚本家] 「ホラー映画批評の集大成、真打ちあらわる」 ──インディーワイヤー 「ホラー映画界よ、彼の声を聞け。 ブライアン・コリンズほどこのジャンルを全力で推している人間はそうそういない」 ──ドレッド・セントラル ■目次より スペシャル・サンクス/序文──トッド・ファーマー/ボンクラによるまえがき/ジャンル用語集 僕がこの本を書いたワケ(もっと言うと、きみがこの本を買ったワケ) 1月 アジアン・ホラー 2月 スラッシャー映画 3月 殺人キッズ 4月“静か~な”ホラー 5月 バットシット・クレイジー・ホラー 6月 モンスターと“モンスター”たち 7月 インディーズ・ホラー 8月 “ジャンクフード”ホラー 9月 ヴァンパイア映画 10月 “オルタナ”ホラー 11月 ゾンビと人喰い 12月 世界めぐり 終わりに/解説――人間食べ食べカエル/注釈/INDEX -
きのこのなぐさめ
悲しみの淵にいた私を、そこから連れ出してくれたのは、きのこだった――。マレーシア人の著者は、文化人類学を学ぶ交換留学生としてやって来たノルウェーでエイオルフと出会い、恋に落ちた。夫婦となった二人は深く愛し合い、日々のささやかなことも人生の一大事についても、何でも話し合う仲だった。ある朝、いつものように自転車で職場に向かったエイオルフが突然倒れ、そのまま帰らぬ人となる。最愛のパートナーを失った著者は、喪失の痛みのさなか、ふと参加したきのこ講座で、足下に広がるもうひとつの世界、きのこ王国に出会う。きのこたちの生態は、不可思議な魅力に満ち満ちていた。苔むす森でのきのこ狩りの効用と発見の喜び。きのこ愛好家間の奇妙な友情と不文律。専門家・鑑定士への「通過儀礼」。絶品きのこトガリアミガサタケ。悪名高いシャグマアミガサタケ。色・形・匂いの個性とその奥深さ。とっておきの、きのこレシピ。悲しみの心象風景をさまよう内面世界への旅と、驚きと神秘に満ちたきのこワンダーランドをめぐる旅をつづけ、魂の回復のときを迎える、再生の物語。約120種類のきのこが登場。 -
出版創作イベント「NovelJam 2018秋」全作品
この書籍は、2018年11月23日から25日にかけて開催された出版創作イベント「NovelJam(ノベルジャム)」に参加した32人が、初日に提示されたお題「家」に基づきゼロから生みだした16作品を合本したものです。 NovelJamとは「著者」と「編集者」、そして「デザイナー」が集まってチームを作り、小説の完成・販売までを目指す『短期集中型の出版創作イベント』です。今回も合宿形式で実施し、創作漬けの濃厚な3日間となりました。そこから生まれた熱い創作の成果をお楽しみください。 チーム いちばん堂 『あなたが帰る場所は』一之瀬楓 『みんな釘のせいだ』最堂四期 ふくだりょうこ/杉浦昭太郎 チーム Bukkowasu 『リトルホーム、ラストサマー』藤宮ニア 『いえ喰ういえ』維嶋津 宮坂琢磨/CAROL チーム 東蛇(イースト・スネイク) 『しのばずエレジイ』坂東太郎 『異世界?いかねぇよ』白色黒蛇 武原康滋/田島佳穂 チーム みかんグミ 『ハコニワ』吉川キイロ 『フェイク・ポップ』西山保長 腐ってもみかん/古海あいこ チーム モリサワ 『あなたは砂場でマルボロを』森田玲花 『マイ・スマート・ホーム』沢しおん 天王丸景虎/恩田未知子 チーム アンジェロと雪の女王 『おかえり、ただいま、また明日』藤谷燈子 『みそしる戦争』太田有紀 アンジェロ/新月ゆき チーム GOMERA 『川の先へ雲は流れ』藤城孝輔 『【大好き】センパイを双子コーデでコロしてみた!』西河理貴 波野發作/ほさかなお チーム RISE 『帰りゃんせ』日野光里 『BOX』澤俊之 つきぬけ/米田淳一 -
出版創作イベント「NovelJam 2018」全作品
この書籍は、NPO法人日本独立作家同盟が2018年2月に開催したイベント「NovelJam(ノベルジャム)」で生み出された16作品を合本し、審査員による講評や写真などを追加したものです。 「NovelJam」とは「著者」と「編集者」、そして「デザイナー」が集まってチームを作り、小説の完成・販売までを目指す『短期集中型の出版創作イベント』です。2泊3日の合宿形式で生まれた熱い創作の成果をお楽しみください。 『DIYベイビー』山田しいた(著) 『グッバイ、スプリング』寧花(著) 小野寺ひかり(編)山家由希(デザイン) 『バカとバカンス』天王丸景虎(著) 『REcycleKiDs』ふくだりょうこ(著) 野崎勝弘(編)波野發作(デザイン) 『その話いつまでしてんだよ』森山智仁(著) 『ひつじときいろい消しゴム』根木珠(著) 米田淳一(編)杉浦昭太郎(デザイン) 『魔法少女リルリルリルリと俺の選択』アンジェロ(著) 『ユキとナギの冒険』牧野楠葉(著) ハギヨシ(編)古海あいこ(デザイン) 『平成最後の逃避行』藤崎いちか(著) 『怪獣アドレッセント』腐ってもみかん(著) 和良拓馬(編)藤沢チヒロ(デザイン) 『味噌汁とパン・オ・ショコラ』渡鳥右子(著) 『舞勇傅(ぶゆうでん)』冨士山絢々(著) 谷口恵子(編)w.okada(デザイン) 『ツイハイ』渋澤怜(著) 『僕は彼の肉になる』金巻ともこ(著) ふじいそう(編)澤俊之(デザイン) 『たそかれ時の女神たち』飴乃ちはれ(著) 『オートマティック クリミナル』高橋文樹(著) 澁野 義一(編)嶋田佳奈子(デザイン) -
世界の書店を旅する[増補新版]
すべての書店は羅針盤である 本と出会い、仲間と集い、ときに抵抗する場として……かつてあった/いまも続く書店と書店主、そこを訪れ、支えた人びと。幾多のエピソードに光を当て、書店の未来に寄りそう紀行エッセイ。 目次には「世界最古の書店」「政治的であるべく運命づけられた書店」「世界の果ての本と書店」など興味深いテーマが並び、読者を書店への旅にいざなう。書店の歴史をひもとき、図書館との違いを考察し、日々足を運ぶ本屋、あるいは旅先で訪れた書店での体験を通じて、書店が果たしてきた歴史的、社会的な役割について思いを馳せる。 本書のもうひとつのテーマは「旅」である。本書に登場する書店の数は三百軒を超え、著者が訪れた国は五大陸に渡る。 読書人口が減り、町の書店が消えていくという現象は日本だけの話ではない。「書店」という存在のみが果たしうる有機的な役割について、本書が訴えかけるものは大きい。スペインで2025年に刊行された増補新版に基づき、各章の前後にエピグラフを付し、新たなエピローグ、ロジェ・シャルチエによる解説、著者が訪れた世界各地の書店の写真を集めたページ(「パノラマ」)を追加。各章に図版多数。 [目次] はしがき――シュテファン・ツヴァイクの古い短編小説から出発して 1 旅はいつも 2 アテネ 最初の一歩 3 世界最古の書店 4 〈シェイクスピア・アンド・カンパニー〉 5 政治的であるべく運命づけられた書店 6 東方世界(オリエント)の書店 7 北米――東から西へ 8 中南米――北から南へ 9 脱神話化されたパリ 10 書店チェーン 11 世界の果ての本と書店 12 ショー・マスト・ゴー・オン 13 日々の本屋 14 バーチャル書店 エピローグ――すべての始まりの終わり 世界の書店を旅する――パノラマ 解説――旅へのいざない ロジェ・シャルチエ 訳者あとがき ウェブサイト一覧 映像作品一覧 参考文献 -
火山の下
世界の作家たちが愛読した幻の傑作 ポポカテペトルとイスタクシワトル。二つの火山を臨むメキシコ、クアウナワクの町で、妻に捨てられ、酒浸りの日々を送る元英国領事ジェフリー・ファーミン。1938年11月の〈死者の日〉の朝、最愛の妻イヴォンヌが突然彼のもとに舞い戻ってくる。ぎこちなく再会した二人は、領事の腹違いの弟ヒューを伴って闘牛見物に出かけることに。かつての恋敵ラリュエルも登場し、領事は心の底で妻を許せないまま、ドン・キホーテさながらに破滅へと向かって突き進んでいく。 ガルシア゠マルケス、大江健三郎ら世界の作家たちが愛読した20世紀文学の傑作、待望の復刊! -
「潮風」シリーズ【全5冊合本版】
小さな海辺の食堂を舞台に温かい人間模様を描く、感動のシリーズ全5冊がまとめて読める! 合本だけの特典として書き下ろしストーリーと撮りおろし写真、手書きサインを収録した愛蔵版。突然、母が家を出て行ってしまい、小さな食堂を経営することになった海果。最初は手探りだったものの、とれたての魚介類と、地元の有機野菜を使った料理は徐々に評判を呼び、店は軌道に乗りはじめた。わけあって一人暮らしの13歳の女の子・愛に加え、迷子のサバトラの子猫も海果の家で暮らすことに。潮風の中で始まる恋と友情、そして新しい夢……。葉山の海辺にある小さな料理店を舞台に、自分の居場所を見失った人々が、心を癒していく姿を温かく描くシリーズ。爽やかな感動の物語。 合本だけの特典として、本編完結後の海果の姿を描く書き下ろしストーリー「ウイニング・ボールを君に」、手書きサインを収録。 ※本電子書籍は下記の5冊を1冊にまとめた合本版です。 『潮風キッチン』『潮風メニュー』『潮風テーブル』『潮風マルシェ』『潮風サラダ』 -
奥のほそ道
ブッカー賞受賞!「傑作のなかの傑作」と絶賛 過酷な〈死の鉄道〉建設と、ある女性への思い 1943年、タスマニア出身のドリゴは、オーストラリア軍の軍医として太平洋戦争に従軍するが、日本軍の捕虜となり、タイとビルマを結ぶ「泰緬鉄道」(「死の鉄路」)建設の過酷な重労働につく。そこへ一通の手紙が届き、すべてが変わってしまう……。 本書は、ドリゴの戦前・戦中・戦後の生涯を中心に、俳句を吟じ斬首する日本人将校たち、泥の海を這う骨と皮ばかりのオーストラリア人捕虜たち、戦争で人生の歯車を狂わされた者たち……かれらの生き様を鮮烈に描き、2014年度ブッカー賞を受賞した長篇だ。 作家は、「泰緬鉄道」から生還した父親の捕虜経験を題材にして、12年の歳月をかけて書き上げたという。東西の詩人の言葉を刻みながら、人間性の複雑さ、戦争や世界の多層性を織り上げていく。時と場所を交差させ、登場人物の心情を丹念にたどり、読者の胸に強く迫ってくる。 「戦争小説の最高傑作。コーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』以来、こんなに心揺さぶられた作品はない」(『ワシントン・ポスト』)と、世界の主要メディアも「傑作のなかの傑作」と激賞している。 -
石の扉 キャリントン中・短篇集
シュルレアリスム×メキシコ魔術 エルンストと出会いシュルレアリストになり、メキシコに渡り独自のシュルレアリスムを発展させたキャリントン。「〈石の扉〉よ、私を通して、外に出して」とリフレインする少女――占星術・錬金術・魔術が渾然となり、死者の国からハンガリー王を探す魂の遍歴の壮大なメタフィクション「石の扉」ほか、不気味で、残酷で、夢、ブラック・ユーモアの奇妙な世界20篇。 短篇集『七頭目の馬』の戯曲を除く全篇に、「砂の駱駝」「グレゴリー氏の蝿」「ジェミマと狼」を付加し、抄録の「石の扉」を完全版とした日本版オリジナル編集。13篇は本邦初紹介。読み応えある詳細解説65頁、キャリントンの挿絵5葉添え。 -
【国会図書館所蔵図書】【西洋旅案内、西洋事情】福沢諭吉著作集 2 6冊セット
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 福沢諭吉の著作「西洋旅案内」は、通訳として渡米した福沢が帰国後に記した西洋旅行のための実践的な案内書である。 当時大変な人気を博し、そのため数多くの偽版が出回ったほどである。 福沢諭吉が自らの渡米・渡欧経験をもとに当時の欧米の政治や科学技術、インフラを紹介した「西洋事情」は維新期の日本人に多大な影響を与え、日本が近代化を進める上で重要な役割を果たした。1868年(明治元年)に出版され、当時のベストセラーとなった1冊。 -
イレナ・レイの消滅
ブッカー国際賞受賞の翻訳家が仕掛ける罠 国際ブッカー賞受賞、 ノーベル文学賞受賞作家を手がける 世界的な文芸翻訳家による言語と翻訳と陰謀の物語。 クロフトの書きぶりには傑出した力強さがある。 ──オルガ・トカルチュク(ノーベル文学賞受賞作家) いくつもの言語を手なずける言語の匠にしか書けない。 ──ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー『フライデー・ブラック』 ノーベル文学賞の有力候補であるポーランドの作家イレナ・レイが新作長編を書き上げたという報に、彼女の作品を担当してきた各言語の翻訳者たちがポーランドの森に集まった。この森の村に、作家の住処があり、そこで合宿をしながら新作を翻訳するためである。 英語、スペイン語、スロヴェニア語、セルビア語、ドイツ語、ウクライナ語、フランス語、そして初参加のスウェーデン語。各言語の翻訳者たちはお互いの名前も知らず、ただイレナ・レイの作品の崇拝者として、これから一つ屋根の下で暮らすことになる。いつものように。 しかし今回はどこかおかしかった。イレナの夫の姿はなく、イレナ本人の言動もどこか奇妙で、やがて「開封禁止」という謎のメールをよこした直後、イレナは忽然と姿を消した── 恐慌に陥る八人の翻訳者たち。手がかりは新作の原稿の中にあるのか。あるいはイレナの家の中にあるのか。イレナ・レイが隠してきた秘密とは何なのか? 翻訳者としてオルガ・トカルチュクらの世界文学を手がけ、国際ブッカー賞を受賞したジェニファー・クロフトが、ヴィトルド・ゴンブローヴィッチにインスパイアされて紡ぎ出した、言葉と創作と翻訳、謎と森と菌類をめぐる長編小説。 -
牡猫ムルの人生観
猫のムルは生まれたての子猫の時、稀代の知識人にして奇術師アブラハム氏によって、橋の下から拾いあげられ、大切に育てられた。アブラハム氏の家にいるあいだにムルは、氏が書き物をするそば近くに陣取って、読み書きを習得したのだった。そして、自らの人生を回想する原稿を書き始めたが、羽根ペンで書いては、近くにあった一冊の本、『楽長ヨハネス・クライスラーの伝記』のページをちぎり、吸取紙や下敷きとして原稿にはさんだのだった。いざ、原稿を出版する運びとなった折、印刷所が、はさまれた『クライスラー伝』をうっかりそのまま組み込んで印刷してしまったというのが、本書である。つまり、牡猫ムルが自らの人生を語っている文章のそこここに、音楽家クライスラーの伝記が、はさみ込まれているという二重構造の物語(二重小説)なのである。猫が主人公の動物小説であり、怪奇小説であり、犯罪小説であり恋愛小説でもあるという贅沢なこの物語は、当初は全三巻を予定していたのだが、著者ホフマンの死によって、第二巻で未完のまま終わっている。 -
ライフ・アフター・ライフ
1910年の大雪の晩、アーシュラ・ベレスフォード・トッドは生まれた。が、臍の緒が巻きついて息がなかった。医師は大雪のため到着が遅れ、間に合わなかった。しかし、アーシュラは、同じ晩に再び生まれなおす。今度は医師が間に合い、無事生を受ける。同様に、アーシュラは以後も、スペイン風邪で、海で溺れて、フューラーと呼ばれる男の暗殺を企てて、ロンドン大空襲で……、何度も何度も生まれては死亡する、やりなおしの繰り返し。かすかなデジャヴュをどこかで感じながら、幾度もの人生を生きるひとりの女性の物語。ウィットと慈しみに満ち、圧倒的な独創性に驚かされる比類なき傑作。コスタ賞受賞作。 -
雲
出張先のメキシコで、突然の雨を逃れて入った古書店。そこで見つけた一冊の書物には19世紀に、スコットランドのある町で起きた黒曜石雲という謎の雲にまつわる奇怪な出来事が書かれていた。驚いたことに、かつて、若かった私はその町を訪れたことがあり、そこで出会ったある女性との愛と、その後の彼女の裏切りが、重く苦しい記憶となっていたのだった。書物を読み、自らの魂の奥底に辿り着き、自らの亡霊にめぐり会う。ひとは他者にとって、自分自身にとって、いかに謎に満ちた存在であることか……。幻想小説、ミステリ、そしてゴシック小説の魅力を併せ持つ、マコーマック・ワールドの集大成とも言うべき一冊。 -
1999展 存在しないあの日の記憶
1999年、「世界は滅びる」とノストラダムスは予言した。 私たちはその”滅びなかった未来”をいま生きている。 だが、本当に「あの日」世界は終わらなかったのだろうか? あなたはいま、1999年の訪れなかった「あの日」を目撃する。 ――世界の終わりを見にいきませんか?―― 『近畿地方のある場所について』著者の背筋、カルト的な人気を誇るホラーゲーム『SIREN』脚本家・佐藤直子、新進気鋭の若手ホラー映画監督・西山将貴の3名によるホラークリエイターユニット「バミューダ3」が手掛けた『世界の終わり』をテーマとする空間・映像・音響を駆使したホラー体験型の展覧会『1999展―存在しないあの日の記憶―』を書籍化。 展示物のビジュアル&解説、そして背筋による書き下ろし短編小説を収録。 -
溺れる少女
絵画「溺れる少女」に瓜二つの女性に魅入られた主人公は、精神に異常をきたす。怪談、都市伝説、人魚、人狼、カルト宗教……。信頼できない語り手による傑作サイコロジカル・ホラー。 ★ブラム・ストーカー賞受賞作 ★ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞受賞作 ★世界幻想文学大賞最終候補作 ★英国幻想文学大賞最終候補作 ★ネビュラ賞最終候補作 ★ローカス賞最優秀ファンタジー小説賞最終候補作 ★シャーリイ・ジャクスン賞最終候補作 ニューヨーク・タイムズはじめ各紙誌絶賛! ローカス賞、世界幻想文学大賞受賞作家の最高傑作! 驚異的な文学作品 ──ピーター・ストラウブ 読者を瞬く間に深淵に引きずりこむ ──ブライアン・エヴンソン 【あらすじ】 狂気を宿した母ローズマリーと祖母キャロラインの記憶をたずさえて生きる、画家兼小説家のインプ。ある日、町で出会ったゲームライターのアバリンと恋をするが、ドライブ中の路上で裸の女性エヴァと出会い、物語が反転していく。11歳のときにはじめて見た絵画『溺れる少女』、セーヌ河で溺れた名なしの少女、赤ずきんちゃん、ルイス・キャロル、ブラック・ダリア、ウラジーミル・ナボコフ、ジェヴォーダンの獣、セイレーン……。エヴァに出会ったのは、夏の夜のルート122か、秋の夜のウルフ・デン・ロードか。真実と事実が入りまじる、新たなゴースト・ストーリー。ローカス賞、世界幻想文学大賞受賞作家の最高傑作。 【著者略歴】 1964年アイルランド・ダブリン生まれ。アメリカに移住し、大学で地質学と古生物学を学ぶ。92年頃から小説の執筆を始め、人気コミック『サンドマン』スピンオフ作品のシナリオも手がけた。ホラー、ダークファンタジーの優れた書き手として高い評価を得ており、98年、長篇『Silk』で国際ホラーギルド賞第一作部門を受賞。2012年には本作でブラム・ストーカー賞、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞(現アザーワイズ賞)を受賞。また24年には「縫い針の道」でローカス賞短篇部門を受賞したほか、世界幻想文学大賞など受賞多数。また、古生物学者として研究を続けるほか、音楽活動も行なっていた。邦訳に、『ベオウルフ 呪われし勇者』など。 -
ジョージ・エリオットのリアリズムと道徳観
ジョージ・エリオットのリアリズムの進展と作者自身の道徳観の成熟の関係を探る。ジョージ・エリオットは道徳の基礎にシンパシー(共感)を置き、彼女のリアリズムの目的は、読者の登場人物への理解とシンパシーを高めて「人類の団結」を図ることであった。本書は「リアリズム」を、「登場人物の心理や外部事実の合理的で詳細な記述があること」と「物語中の出来事の蓋然性が高いこと」という基本的要件で捉える。そして物語中のシンパシーに乏しい人間の描き方のリアリズムの進展に焦点を当て、その背後にある作者自身のシンパシーの対象が拡大していることを読み取る。作品のリアリズムの進展は作品から見て取ることができ、また作者のシンパシーの対象の広がりはシンパシーに乏しい人間の描写に顕著に表れるからである。エリオット作品のリアリズムを通時的に論じる場合、初期作品はリアリズムに沿っているが中期作品以降は「道徳的寓話」であると見なすのが、エリオット存命の時代から20世紀半ばまでの定説であった。1948年に発表されたF・R・リーヴィス『偉大なる伝統』以降は、エリオットの後期作品が19世紀イギリスのリアリズム小説の傑作と見なされるようになった。しかし作品に登場するシンパシーに乏しい人物は、相変わらず個人もしくは社会にとって一律に有害であると考えられ、彼らの被害者的心理や、個人もしくは社会に対する影響の吟味はなされなかった。本書は従来の見方とは異なり、シンパシーに乏しい人物が、家族や社会にとって有害で追放されるか改悛させられねばならない存在から、後期作品においてシンパシーに乏しいままで家族をより大きな絶望から救うという肯定的価値をもつ存在へ、あるいはその被害者的心理も描かれる存在へと変化しているというリアリズムの進展をテキストの「描写」および「物語の時代背景」から検証する。このことは同時に、作者のシンパシーの対象の拡大を示している。 目次 第1章 エリオットの小説のリアリズム 第2章 エリオットの道徳観とシンパシーとリアリズム ──「ジャネットの悔悟」の比喩表現を例として 第3章 語り手の心の鏡に映らないヘティ ──『アダム・ビード』のリアリズム再考 第4章 洪水の結末とシンパセティックなトム ──『フロス河畔の水車場』におけるリアリズムの進展 第5章 シンパシーとシンパシーの欠如の交差 ──『ミドルマーチ』における道徳観の成熟とリアリズムの進展 第6章 『ダニエル・デロンダ』におけるモダニズム的手法の採用 ──人間の根本的善性への信頼の揺らぎ -
アメリカ文学における終末論的想像力 アメリカ例外主義の展開とその方向性
米文学史は植民地時代を含め、アメリカ例外主義と絡み合い、それに立ち向かってきた。アメリカ例外主義とは、米国は神に選ばれた自由と民主主義を標榜する大洋に挟まれた例外的な近代国家であり、世界の民主化を主導する義務がある、という考え方である。それはプロテスタントの教義によって強化され、国家の根幹をなし、黙示録的な終末を演じることで米国を帝国化してきた。マサチューセッツ植民地の形成から独立戦争、メキシコ戦争、そして南北戦争と世界の終末を思わせるレトリックで政治家や説教師、ジャーナリストらが差し迫った危機を語り、国民の団結を呼びかけてきた。20世紀以降も二つの大戦に、大恐慌、ベトナム戦争、そして9・11の攻撃、イラク戦争など大きな危機に遭遇する度に、民主主義の伝播、善悪の戦い、対テロの戦いなど、多くの言説が用いられ国民を方向づけていた。現代においてこの終末論的想像力は、第三次世界大戦という用語により世界に拡散され、プロバガンダとして大いに利用され、世界的パンデミックの不安と恐怖までもが後押しする形で、国民は将来の見通しを立てることができないような強迫的な寄る辺なさに苛まれることになってしまっている。トランプ政権において露わになることとなったアメリカ例外主義への反発からは、自国優先の政策に舵を切ることを望む人々も多く出てきている。そして、トランプの支持基盤であった極右集団QAnonは、トランプを世界の終末を阻止するためにやって来た救世主として扱っているのである。今を生きる我々が、この事態、現実を、乗り越える手立てを見出すことは容易ではない。本書は、米国が体験してきた不安や恐怖、それらを克服する過程を、作家たちがいかに描いてきたかを読み解き、そうした危機的状況やそれに乗じた終末論的プロパガンダ、それと絡み合うアメリカ例外主義の展開と分裂を視野に入れ、文学作品が、いかなる意義を生成してきたのかを読み取ろうと試みるものである。 目次 寄稿「アメリカ大統領と終末論的想像力」(巽孝之・慶應義塾NY 学院長) 「〈風景〉とマニフェスト・デスティニー」(成田雅彦・専修大学教授) 「わたしたちはどう生きるか―エマソンの『自己信頼』におけるヴァルネラビリティの倫理」(生田和也・長崎県立大学准教授) 「独身女性が書く家事手引書―キャサリン・ビーチャーのベストセラー改訂版」(秋好礼子・福岡大学准教授) 「反時代的考察者としてのヘンリー・アダムズ」(砂川典子・北海道教育大学准教授) 「絶滅という思想―十九世紀アメリカにおける環境終末論」(高橋勤・九州大学名誉教授) 「『大理石の牧神』における絵画と身体」(川下剛・京都産業大学講師) 「『ハックルベリー・フィンの冒険』とその批評的冒険にみる(非)ヘーゲル的精神の冒険」(吉津京平・北九州市立大学非常勤講師) 「『船乗りビリー・バッド』における黙示録的運命」(竹内勝徳・鹿児島大学教授) 「ポストアポカリプス的想像力とデモクラシーの「未来」」(渡邉克昭・名古屋外国語大学教授) 「彼らの夢は実現したのか——トウェインとフィッツジェラルドに見る夢の迷走」(江頭理江・福岡教育大学教授) 「『怒りの葡萄』の終末描写に見るスタインベックのアメリカ像」(前田譲治・北九州市立大学教授) 「「丘の上の町」は安住の地か」(綱智子・佐賀大学・久留米大学 非常勤講師) 「「終わり」のない旅―スティーヴン・キングのダーク・タワーの先に」(宮内妃奈・福岡女学院大学教授) -
Illuminating Meiji Literature:The World of Frontispieces and Illustrations
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 Exploring the Relationship Between Fiction and Its Illustrations in the Meiji and Taisho Periods This book explores the creation and printing of illustrations and frontispieces in newspapers, magazines, and books, bringing to light their intricate relationship with the fiction they accompanied. Investigating everything from the artistry behind striking polychrome woodblock frontispieces to the tensions between image and text in the fast-paced production of periodicals, over 150 full-color illustrations from the historical periods investigated are showcased. By examining how literary giants like Tsubouchi Shōyō, Ozaki Kōyō, Higuchi Ichiyō, Shimazaki Tōson, and Izumi Kyōka collaborated with highly skilled artists such as Watanabe Seitei, Kaburaki Kiyokata, Kuroda Seiki, and Hirezaki Eihō, this pioneering study reveals little-known dimensions of modern Japanese literature, illuminating the vibrant and complex linkages between words and pictures. -
ゆめはるか吉屋信子
歴史に戦争に女同士の恋愛に……大好きな作家の人生を辿るおせいさんのまなざしが熱く、やさしい。 ――柚木麻子(上巻帯より) 男性中心の文壇に挑み続けた二人の女性作家。信子と聖子の「出会い」から生まれた奇跡のような評伝。 ――斎藤美奈子(中巻帯より) 大正、昭和と絶大な人気をほこった小説家・吉屋信子を敬愛してやまない著者が、その真の姿を描き尽くす。 栃木女子高校時代から頭角を現した吉屋信子は、竹久夢二の誘いで上京し、生きる道を模索する。『花物語』の連載から、やがて本格的な長編小説の執筆、そして流行作家へ。長谷川時雨、林芙美子、宇野千代ら作家や、生涯のパートナー門馬千代など、同時代に生きた女性達の姿も活き活きと描かれる。 吉屋信子の本格評伝にして、近代女性文壇史。さらには作家・田辺聖子が、男性中心の文壇で軽視されがちだった信子の作品に光を当てるフェミニズム文学批評の書。 〈解説〉上野千鶴子 -
英米文学、多彩な文学解釈への誘い
これほど刺激的な学問の領域があったのだろうか…? 個性豊かな書き手により、文学を中心に、歴史、宗教、音楽、演劇等を 縦横無尽に論じる新しい試み。 本書の白眉となるものは、ケンブリッジ大学のモウズリー博士の夏期講座の 講義録、シェイクスピアの「恋人たちの死」の論考である。 また、古典的名作といわれるシドニーの『アーケイディア』の成立、構造、 語りを精緻に論じた論考も含まれよう。 そして、今論集で注目にあたいするといえるものは、新進気鋭の 中堅・若手研究者たちによる詩論である。 ハーバートの詩におけるシンボルのメカニズムを 論証した詩論、トマスの詩とイェイツとの関係を探求した論文や キャロル・アン・ダフィの五番目の詩集についての詩論。さらには1960年代の リヴァプール詩における代表的な詩人の音楽活動との関係に論及したもの、 現代詩人のR・S・トマスの詩を「否定神学」の観点から論じたもの等である。 それらに加え、コンラッドの「勝利」論、マードック『ブルーの夢』、 H・D・ソローの「住まい」、トウェインの実像をめぐる論考ほか、 J・D・パソスにおけるスペイン内戦、シェパードのアイルランドと演劇、 アトウッド『またの名をグレイス』を論じたものまで、様々な論点をさらに 切り開こうとする意欲的な論考に溢れた論集が本書ということになる。 【収録内容】 Ⅰ イギリス文学編 第1章 講義:世界を変えるシェイクスピアの二組の恋人たちの死 チャールズ・モウズリー(伊澤東一訳) 第2章 子供の反逆・『恋の骨折り損』と『御意のままに』 杉浦裕子 第3章 シドニーの『アーケイディア』 村里好俊 第4章 ジョージ・ハーバートと聖なる贈物のパラドックス 山根正弘 第5章 コンラッドの『勝利』論 吉岡栄一 第6章 アイリス・マードックの『ブルーノの夢』論 山本長一 第7章 ディラン・トマスの「言葉に彩り」とW・B・イェイツ 太田直也 第8章 キャロル・アン・ダフィの『ザ・ワールズ・ワイフ』における 女性の詩人たち 石田由希 第9章 リヴァプール詩、音楽、そしてリリー・ザ・ピンク 木村聡雄 第10章 R・S・トマスの主題の変遷と神の存在証明 永田喜文 Ⅱ アメリカ・カナダ文学編 第1章 H・D・ソローの小屋あるいは住まい 奥田穣一 第2章 『マーク・トウェイン 完全なる自伝』に探るトウェインの実像 有馬容子 第3章 ジョン・ドス・パソスの一九三〇年代の戦い・スペイン内戦体験 川成洋 第4章 サム・シェパードのアイルランドでの再生 古山みゆき 第5章 アトウッド『またの名をグレイス』における知の体得の意味 塚田英博 -
マカオ黒帯団
地下組織から誹謗の真犯人の《自殺》を明かされた。広州支部への期待が膨らむも天候不順を予感する。薩摩の漂流民・謝五郎はいかに身を処するのか… 1757(乾隆22)年以降、西洋貿易は広州一港に制限された。茶、生糸、絹の輸出は莫大な利益をもたらし、公行は独占の代償として清朝に独占料を支払った。行商たちに大班と呼ばれた「英東インド会社貿易委員会委員長」が貿易窓口。互いに民間の独占組織同士の貿易である。これを「広東貿易体制」と呼ぶ。一方マカオでは鴉片禍が深刻化。英東インド会社が貿易赤字(茶、絹を銀で購入)を埋めるため、インドで鴉片の卸売り(銀との交換)を行い、自由商人らがマカオや広州に密輸入した結果である。米宣教師が月刊誌『チャイニーズ・リポジタリー』を刊行したのは1832年5月。西洋社会に警鐘を鳴らし、中国の革命を叫ぶ論説も掲載。中心にはアメリカン・ボード(会衆派海外宣教師派遣団)のイライジャ・ブリッジマン牧師がいた。独人宣教師カール・ギュツラフや英人牧師ロバート・モリソン等の協力者たちの多くが献身的な活動を展開。ポルトガル領のマカオは雑多な人びとの住む半島。1839年6月20日(貿易閑散期)の発表では清国人が7033人。白人男性2164人、白人女性2350人。加えて男奴隷471名、女奴隷627名。英国は1833年、本国における奴隷制度を正式に廃止。だが植民地においては黙認状態がつづいた。マカオはルソン島(現フィリピン)とおなじく避難民の受け皿ともなった。邦人関係では桃山時代末から徳川時代初期にかけてキリシタンの亡命者が渡り、海難漂流者も居住が許された。マカオに定住した薩摩の漂流民・謝五郎は空腹に苛まれる。6年後の1833年、日系有力者の援助で孤児院を設立。道教の道士に己の立ち位置を悟らされる。風評、疫病、放火未遂等に遭うも、西洋人らとの交流で一部解決に向い、広州に支部設立を思いつく。阿片禍の深刻化で西洋列強の牙を痛感、清国の制度にも違和感を覚える。廃船の払下げをうけ「青龍汗」と命名。女児の批判を凌ぎつつ、孤児らに独立独歩を覚悟させた。脱藩武士も雇用。青龍汗は焼討されたが英人女性の望外な助力が得られ、運営は自分一人でないと再認識したのであった。 -
シャギー・ベイン
デビュー作にして、英国最高の文学賞ブッカー賞を受賞。英語圏で100万部突破の話題作。 1980年代、英国グラスゴー。“男らしさ"を求める時代に馴染めない少年シャギーにとって、自分を認めてくれる母アグネスの存在は彼の全てだった。アグネスは、エリザベス・テイラー似の美女。誇り高く、いつも周囲を魅了していた。貧しさが国全体を覆っていくなか、彼女は家族をまとめようと必死だった。しかし、浮気性の夫がアグネスを捨ててから、彼女は酒に溺れていき、唯一の収入である給付金さえも酒代に費やしてしまう。共に住む姉兄は、母を見限って家を離れていくが、まだ幼いシャギーはひとり必死にアグネスに寄り添い──。 けっして生きる誇りを忘れなかった母子の絆を描く、 デビュー作にして、英米の文学界を席巻したブッカー賞受賞作。 -
自叙伝 キャスリン・ジェインウェイ
デルタ宇宙域から7年をかけて地球へ奇跡の帰還を果したヴォイジャー艦長、キャスリン・ジェインウェイ初の自叙伝! 誰よりも遙かな宇宙を旅した 宇宙艦隊艦長の記録 妹との確執、初恋、愛する父の死、 結婚か退役か――最新鋭艦ヴォイジャー艦長就任、そして遥か75,000光年の彼方へ…… 想像を絶する彼方からへ如何にして地球へと帰還を果したのか―― 〈U.S.S ヴォイジャー〉の艦長として、遥か75,000光年の彼方のデルタ宇宙域から地球へと帰還を果したキャスリン・ジェインウェイ。 惑星連邦でもその名を知らぬ偉大なる女性の人生が、いま初めて自らの手であきらかにされる。 『自叙伝 キャスリン・ジェインウェイ』は、艦隊史上でももっとも困難ともいえる事象に立ち向かった艦長が、宇宙艦隊で築いてきたキャリアを振り返る。 艦隊士官の父と作家である母のもとに生まれたキャスリンは、幼き日から宇宙へと夢を馳せていた。父親似のキャスリンと対照的に母親似の妹との子供時代の確執。愛する父親の突然の訃報。若き日にそりの合わない艦長から受けた屈辱と如何にしてそれを克服したか。プロポーズとと共に訪れた最新鋭艦への艦長就任――伝説的なデルタ宇宙域の旅。故郷から離れ、人跡未踏の宇宙の果てを旅し、未知の世界、未知の種族との出会いを重ねた偉大なる女性の真実がここにある。 宇宙艦隊とマキ双方のクルーをひとつにまとめ、銀河に散らばる様々な種族との同盟を結び、敵意に満ちた最果ての宇宙域にて、宇宙艦隊最大の脅威・ボーグを〈U.S.S.ヴォイジャー〉ただ一隻で打ち破った真相が今、明かされる。セブン・オブ・ナイン、腹心の友トゥヴォック、新参者ニーリックス、副官チャコティら、主要クルーへのジェインウェイの胸の裡が今明かされる。 「コースをセット、故郷へ」 ──キャスリン・ジェインウェイ -
オスカー・ワイルド書簡集 新編 獄中記 悲哀の道化師の物語
没後120年。スキャンダルを経てなおキザを貫いた世紀末の鬼才、その大きすぎた代償とは――。 近年刊行された『オスカー・ワイルド全書簡』をもとに、ワイルドが投獄されるきっかけとなった事件の発端から、同性愛裁判、獄中の真実、そして出獄後の放浪、死までを、訳者の詳細な解説と註とともに、一篇の小説のように再構成する。 恋人との愛憎・確執、事件の顛末などが明らかになることにより、独自の芸術論、迫真のキリスト論と人間的な弱さが一体となった「悲哀の道化師」ワイルドのほんとうの姿が浮かび上がる。 目次より 前説――ワイルドの前半生と 事件に至るまでのあらまし 第一章 三度の裁判 第二章 深き淵より 第三章 新たな牢獄 終章 ワイルドの亡霊 -
大江健三郎全小説全解説
新聞記者として長年大江健三郎を取材してきた著者による、わかりやすい大江健三郎入門書。『大江健三郎全小説』(全15巻)を通して書かれた解説を一冊にまとめる。大江健三郎全小説のあらすじから説き起こしつつ、個々の作品発表当時の文芸批評家による主要評論に言及、その作品がどのように受容されてきたかを論じる。またときに作家へのインタビューを引用しながら作品の意義を明らかにする。大江文学がどのように生まれ、どのように読まれ、さらにこれからどのような研究課題がありえるのかを総合的・俯瞰的に論じた大江評論の決定版。 目次 はじめに よろしい、僕は地獄に行こう! 惨憺たる青年たち 封印は解かれ、ここから新たに始まる 復元された父の肖像 神話としての「個人的な体験」 知と懐かしさの容れ物として ノーベル賞はいかにしてもたらされたか 果てしなく多義的な偽史をめざす アメリカの影が差す女性たち 予戒としての近未来SF 青年の夢想と酷たらしさ 世紀末に集中した「魂のこと」 再びの「カラマーゾフ万歳!」 永遠のモラリスト、伊丹十三 「晩年のスタイル」こそ苛烈に 大江健三郎年譜 『大江健三郎全小説』収録作リスト 文献一覧 索引 -
人間とは何か 偏愛的フランス文学作家論
文学がすべてを教えてくれた。 サド、ボードレール、フローベール、ランボー、プルースト、カミュ……。 自身の文学遍歴=「文学による感情教育」を語りつつ、フランス文学史を彩る31名を通して、人間精神の多彩な運動の軌跡を描き出すエッセイ的評論。 〈目次〉 1 サド――悪について 2 ラクロ――心のメカニズムについて 3 カザノヴァ――自由について 4 コンスタン――愛の不可能性について 5 スタンダール――誠実さについて 6 バルザック――誘惑について 7 メリメ――情熱について 8 ボードレール――自意識について 9 フローベール――夢想について 10 ロートレアモン――反抗について 11 ヴェルレーヌ――感傷について 12 ランボー――自己の超越について 13 ヴェルヌ――冒険について 14 バルベー・ドールヴィイ――文学的欲望について 15 ゾラ――食について 16 モーパッサン――恐怖について 17 ユイスマンス――デカダンスについて 18 リラダン――観念について 19 プルースト――人生と芸術について 20 コクトー――虚偽について 21 ジッド――小説について 22 ラディゲ――倫理について 23 セリーヌ――絶望について 24 アルトー――狂気について 25 ブルトン――ユーモアについて 26 バタイユ――エロティシズムについて 27 カミュ――不条理について 28 ジュネ――言葉の魔術について 29 マンディアルグ――幻想について 30 ヴィアン――反人間主義について 31 マンシェット――ニヒリズムについて -
源氏物語 上
恋に生き、切なさに、嫉妬に、美しさに涙する―― 日本文学最大の傑作が、明瞭な完全新訳で甦る! <原文に沿いながらも現代的な自然な訳文で、もっとも読みやすく美しい角田訳の誕生。 上巻には、第一帖「桐壺」から第二十一帖「少女」まで、たっぷり二十一帖分を収録!> 解題=藤原克己(国文学 東京大学) 解説=池澤夏樹 月報=瀬戸内寂聴 大和和紀 -
地球紀行
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 知られざるトウェインの魅力を満載した貴重な未発表品集! 本邦初訳の『地球紀行』は、ほぼ年代順に編集されている点で、トウェインの作家人生を辿る道しるべとなっている。初の渡英経験をもとに書いた「忘れられない真夜中の経験」をはじめ、中期のヨーロッパ紀行文を経て、宗教や政治を批判した作品にいたる時、読者は、トウェインの作家としての生涯を一足飛びに駆け抜けることが出来るであろう。収録内容/マーク・トウェインの二つの社説/禁酒運動と女性の権利/ローヌ川下り/ロスト・ナポレオン/ヴィクトリア女王の祝典/サタンへの手紙/リンチ王国、アメリカ合衆国/暗がりに座る人へ/宣教師を批評する人々へ/イスラムの修道僧と気にさわる異国人/エデンでのあの日/イヴの話し/聖書の教えと宗教の慣習/出兵の祈り/南部の世論 ほか -
【合本版】 野崎まど新装版
異色の青春ミステリ! 『[映]アムリタ』 財閥の遺産とその正体をめぐる伝奇ミステリ! 『舞面真面とお面の女』 生と死の概念に挑む異色ミステリ! 『死なない生徒殺人事件 ~識別組子とさまよえる不死~』 “この世で一番面白い小説”とは――。 『小説家の作り方』 「友達とはなんですか?」少女達の不思議な友情物語。 『パーフェクトフレンド 新装版』 「究極の創作」に挑む怪作! 『2』 ※本電子書籍は「野崎まど新装版シリーズ 全6作」を1冊にまとめた合本版です。 ※本商品は1冊に全巻を収録した合本形式での配信となります。あらかじめご了承ください。 -
【合本版】百鬼夜行とご縁組
「このホテルを守るため、僕と結婚してくれませんか」 結婚願望0%、仕事一筋の花籠あやね27歳。上司とのいざこざから、まさかの無職となったあやねを待っていたのは、なんと眉目秀麗な超一流ホテルの御曹司・太白からの“契約結婚”申し込みだった! しかも彼の正体は、仙台の地を治める大妖怪!? 次々に訪れる妖怪客たちを、あやねは太白と力を合わせて無事おもてなしできるのか――!? 杜の都・仙台で巻き起こる、契約夫婦のホテル奮闘記!全6巻の合本版で登場! ※本電子書籍は、『百鬼夜行とご縁組』全6巻を1冊にまとめた合本版です。 -
中世王朝物語全集
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 あきぎり(あきぎり)福田百合子[校訂・訳注]荒れた三条邸に住む姫君と契りを結んだ三位中将だが、妻の母や乳母の祈祷によって訪れが絶えてしまう。両親とも亡くして流浪する三条の姫君は、密かに三位中将との間の姫君を出産。やがて東宮に入内し、即位に伴って中宮に上る。三位中将は失意の中に病死する。男女の明暗の対照を鮮やかに描き出す、新出の孤本の初の注釈書。浅茅が露(あさぢがつゆ)鈴木一雄 伊藤博 石埜敬子[校訂・訳注]日月の光にも譬えられる二位中将と三位中将。色好みの二位中将は、帝の姫君に失恋し、失意の中、面ざしの通う姫君と方違え先で契る。その姫君は義父の邪恋から逃れて身を隠し、密かに二位中将の男子を出産するが、息絶える。一方、道心あつい三位中将は、偶然、二人の形見の男子を見出だし、しかも蘇生した姫君とも出会う。多様な人間模様を謎解きふうの構想に織り込めた魅惑的な物語。 -
ジンタルス RED AMBER
19世紀、弾圧的な帝政下のロシアで画業と詩作を志す農奴ミーシャ。13世紀、北方十字軍に故郷と家族を奪われ復讐を誓うジンタルス。自由とは、表現とは、生とは。時代と国を超えて描く圧巻の歴史長篇! 皆川博子でしか描き得ない世界がここにある。 希望と物語の歓びに満ちた傑作長篇、堂々刊行! 19世紀ロシア。伯爵に仕えながら絵画を学ぶ農奴のミーシャ。館で「亡霊(プリーズラク)」と呼ばれている青年ステンカとの出会いから、ペテルブルクで画才と文才を磨く道が開けるが―― 13世紀バルト。北方十字軍に故郷リヴォニアを侵略され、家族を失った少年ジンタルス。貴族の息子マクシミリアンの従者として遍歴の旅に出るが、復讐の念は彼を修羅の道へと導く。 圧政と戦乱――二人の青年が辿り着いた、自由とは、表現とは、生きるとは。 ミーシャの物語と、ミーシャが記したジンタルスの物語。 二つの物語を交錯させ、時代も国も越えて贈る、最新長篇にして最高傑作! -
赤頭巾ちゃん気をつけて 四部作(全)
【1】「赤頭巾ちゃん気をつけて」(第61回芥川賞受賞作) 柔軟な少年の語り口を通じて描かれた、さまよえる若い魂の行方。 機知とユーモアにあふれた青春文学の永遠の名作。 【2】「さよなら快傑黒頭巾」 みんなを幸福にするために、強くやさしく勇気ある男になるために、薫クンはいま何をなすべきか。 シリーズ第二作。 【3】「白鳥の歌なんか聞えない」 死にゆくもの滅びゆくものを前に、ふとたじろぐ若い魂。早春のきらめきの中に揺れる、切ないほど静かで不思議に激しい恋の物語。 シリーズ第三作。 【4】「ぼくの大好きな青髭」 若者の夢が世界を動かす時代は終ったのか。 月ロケット成功の熱気渦巻く新宿を舞台に、現代の青春の運命を鮮かに描く四部作完結編。 -
バットマン レザレクション
『バットマン』と『バットマン リターンズ』-- ふたつのミッシングリンクをつなぐオフィシャル小説が待望の日本上陸!! 忌まわしき道化師の悪夢が蘇り、ゴッサム・シティは再び漆黒の底に沈む。 ■あらすじ ジョーカーの死から半年--。いまだ不吉な夢見に苛まれるブルース・ウェインを本当の悪夢に陥れる事件が起こる。 護送車から脱走したジョーカーの手下ローレンスと崇拝者がジョーカーこと、ジャック・ネーピアの墓を盗掘。埋葬されていたのが別人であることが発覚したのだ。ジョーカーは死んでいなかったのか……? 不安は現実のものとなり、ジョーカーが再び現れる。テレビ電波をジャックした彼は銀行襲撃を予告。ゴッサム・シティを深い闇が吞み込んでいく。 ■マイケル・E・ウスラン絶賛!! 「ティム・バートンとマイケル・キートンが「バットマン」を三部作で作っていたらどうなっていただろう? 誰もが一度は、そんな風に想像したことがあるでしょう。しかし、これ以上考える必要はありません! ベストセラー作家のジョン・ジャクソン・ミラーは、監督のティム・バートンと脚本家のサム・ハムの想像力を深く掘り下げ、巧みなプロットで『バットマン』(1989年)と『バットマン リターンズ』(1992年)のミッシングリンクを埋める小説を完成させました。この新しい小説は、まぎれもなく幻の三部作の第二部です!」 --マイケル・E・ウスラン(『バットマン』『バットマン リターンズ』のエグゼクティブ・プロデューサー) -
ライトノベル大全
ラノベ半世紀の歴史 目利きが選んだ500作品が勢ぞろい! 目利きが選んだラノベを500もの作品を、出版界や社会への影響と共に紹介した完全保存版。 『クラッシャージョウ』(1977年)から始まる、とされるライトノベル(ラノベ)誕生。 その約半世紀にわたるラノベの歴史がわかる本。 〈執筆協力〉 秋津冴・荒川澄・飯田一史・池澤春菜・石井ぜんじ・うつぶせくん・海法紀光・熊谷茂太・堺三保・嵯峨景子・沙藤克広・さやわか・鈴木力・代島正樹・高島雄哉・立花圭一・朱鷺田祐介・七木香枝・HAta @小松菜屋・前島賢・前田久・森瀬繚・雪野宮竜胆・ゆずはらとしゆき 《紹介作品》 クラッシャージョウ/機動戦士ガンダム/妖精作戦/ロードス島戦記/風の大陸/スレイヤーズ/MAZE☆爆熱時空/魔術士オーフェン/ブギーポップ/フルメタル・パニック! /キノの旅-the Beautiful World-/イリヤの空、UFOの夏/戯言/涼宮ハルヒ/とある魔術の禁書目録/デュラララ!!/ゼロの使い魔/空の境界/生徒会の一存/俺の妹がこんなに可愛いわけがない/ソードアート・オンライン/僕は友達が少ない/やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/カゲロウデイズ/謙虚、堅実をモットーに生きております!/Re:ゼロから始める異世界生活/無職転生/転生したらスライムだった件/薬屋のひとりごと/本好きの下剋上/ようこそ実力至上主義の教室へ/りゅうおうのおしごと!/蜘蛛ですが、なにか?/ゴブリンスレイヤー/弱キャラ友崎くん/シャングリラ・フロンティア/ひげを剃る。そして女子高生を拾う。/陰の実力者になりたくて!/千歳くんはラムネ瓶のなか/探偵はもう、死んでいる。/わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)/ユア・フォルマ/サイレント・ウィッチ/負けヒロインが多すぎる!/誰が勇者を殺したか/……他 -
朝に俗銭を得て 夕に詩をつくる 木下夕爾随筆集成
児童詩「ひばりのす」で知られる、広島・福山で活躍した読売文学賞受賞の詩人・木下夕爾。再評価進む著者の、入手可能な随筆を初めて集成。 《ひばりのす/みつけた/まだだれもしらない》という詩句に、抒情や感傷を超えた根源的なものを感じた。半世紀以上の時を経て、その詩人木下夕爾が、芥川の掌編、朔太郎の俳句、万太郎の添削などなど、人と表現について豊かに語る声を、今、差し向かいで聞けたようで、たまらなくうれしい。 ――北村薫 【目次】 Ⅰ 随筆 第一章 旅と日常 第二章 詩歌考 第三章 師と詩友 第四章 木靴と春雷ほか Ⅱ 俳句と詩 俳句十五選/詩十五選 木下夕爾を語る 井伏鱒二/堀口大學/宮崎晶子/安住敦/永瀬清子 解説 藤井基二 初出一覧/年譜 -
田中小実昌哲学小説集成
田中小実昌 生誕100年記念刊行 『ポロポロ』から『アメン父』へ――。 幼少期、従軍、復員ののち東大哲学科入学。 米軍基地のアルバイトで暮らし、翻訳家、小説家となって後も、コミさんは哲学に関心を持ち続けた。 映画館への途中で、バスの旅で。カバンに忍ばせた文庫本に、文句と注釈をつけながらも読み続ける。 そんな日々が、いつしか「小説」となる……。 「哲学」「宗教」「小説」の三位一体のかんけいの謎を追究し、著者晩年の代表的シリーズとなった「哲学小説」を初集成(全三巻)。 第Ⅰ巻は『カント節』『モナドは窓がない』。 巻末に対談を付す。 (刊行予定) 2025年1月 第Ⅱ巻(『なやまない』『ないものの存在』) *第Ⅰ巻と同時刊行 2025年3月 第Ⅲ巻(単行本未収録短篇集) -
螢草
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 「縁側近くの庭先で泰山木が咲いている。梅雨曇りの思い空を支えて、木蓮に似た盃状のこの大きな白い花は、軒先から程遠からぬところで豊かな幅の広い花びらをひらいているが、匂いは溢れて、部屋の真中にぽつねんと坐っている私の皮膚にまで深くしみてくる。 木斛や松などと一緒に、東向きの縁側に沿ってならんでいるのだが、ここで花を見るのは始めてである。家へ入るのに、隣の家の向う横についている細い貝殻道を通って迂廻して来なければならない。その隣の家の門あたりまでくると、花の匂いはもう私に呼びかけてきた。 ・・・ 戦争中でもこのように穏やかだったのだろうか、と思った。 この内海の、平凡な、単調な風景は、自分の家の池のように親しいのであったが、長い戦争の歳月は、苛立たしいほどの空白を私に押しつけてくる。それはあまりにかたくなで、眼前のこの内海に対する私の感覚が、屡々錯覚であるかのような戸惑った思いを抱かせる。私は、なにやら違った歳月の中を歩いてきた旅人のように、遠慮深い眼で、久しぶりの海の青さに見とれていた。」(「序の章」より) 【目次】 序の章 轉身 螢草 柿ノ木坂 落落の章 あとがき ※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、タブレットサイズの端末での閲読を推奨します。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能も使用できません。 -
傷痍軍人と文学の日本近代
戦争によって傷ついた兵士や軍人である傷痍軍人を、文学はどのように描いてきたのか。作品は傷痍軍人をいかに語り、読者にどのように読まれてきたのか。 日清・日露戦争を起点に、アジア太平洋戦争、そして戦後までを対象にして、傷痍軍人を描く文学の歴史的な見取り図を提示する。具体的には、山田美妙や江戸川乱歩、井伏鱒二、直井潔たちの文学作品のほか、美談集や童話、文芸作品集などを取り上げ、新聞や雑誌などのマスメディアでの議論も肉付けして、傷痍軍人表象の変遷を跡づける。 当初は戦争での傷病による苦しみを抱えた人々として、アジア太平洋戦争期には「傷」を抱えるヒーローとして、戦後には様々な戦争の記憶と交差しながら反戦を体現する存在として、様々に描かれた傷痍軍人の表象から、彼らを取り巻く時代の諸相や力学を浮き彫りにして、戦争と文学の緊張関係に迫る。 -
自叙伝パトリック・スチュワート
舞台の名優にして、「スター・トレック」のピカード艦長、「X-MEN」のプロフェッサーXことチャールズ・エクゼビアで知られるサー・パトリック・スチチュワート初の自叙伝! 舞台・映画・テレビ──様々なフィールドで愛される俳優、そして生きた伝説、サー・パトリック・スチュワートが自らの人生を綴る。 〈ニューヨーク・タイムズ〉〈USAトゥデイ〉でベストセラーリスト入り 数多くの舞台で称賛され、『スタートレック』や『X-MEN』シリーズでの伝説的な映像作品まで、サー・パトリック・スチュワートは、舞台とスクリーンでの印象的な演技力で、世界中の観客の心を捕らえ、複数の世代にわたって人々を魅了してきました。本書は、サー・パトリック・スチュワートの驚くべき人生を描いたもの。彼の謙虚な起源から始まり、ハリウッドの頂点と世界的な称賛へと至るまでの物語は、著者自身と同様に躍動的であり感動的なものです。 ★著名な俳優からの賛辞の数々 「サー・パトリックはディケンズを地で行くような幼少期を過ごし、家庭内暴力と貧困にあえぎながらもチャンスと人々の善意に恵まれ、世界中から賞賛と愛を集める俳優へと成長した。演技と同様、彼は深い洞察と真実と情熱をもって文をつづる。またしても、スチュワートの快挙だ!」 ─サー・イアン・マッケラン 「サー・パトリックには長所がたくさんある。素晴らしい俳優にして見栄えもよく、すこぶる愉快で広い懐の持ち主。優しくて……情にあつく繊細で……。けれど本書を読めばわかるように、彼の人となりの最大の長所は、頭のてっぺんからつま先まで、どうしようもなく彼自身であることだ」 ─ウーピー・ゴールドバーグ 「読んでいるあいだ、驚異の念に打たれどおしだった。精妙なさじ加減のストーリーテラーとして、鋭い観察者としての著者の才能はもとより、それ以外の才能─知性、感性、機知、閃き、自己分析と胆力のすべてを惜しげなく、これほど長きにわたって鮮やかにわれわれに分け与えてくれたことに対して。読み終えたときはパトリックの才能、そして彼という贈りものに深い感謝の念を覚えた」 ─マイケル・シェイボン 「なんとも輝かしい回想録をサー・パトリック・スチュワートはものしてくれた。筆致はエレガントで美しく、ダイヤモンドのように澄みきって的確だ。彼の追憶する人生は優しさ、洞察、誠実さと熱意に満ちている。偉大な俳優としてわれわれを喜ばすのにこれほど多忙でなければ、偉大な作家になっていたに違いない。そして、本書でそうなった」 ─ジョナサン・エイミス -
たまたま、この世界に生まれて
運命、この文学的なるもの 「運命とは、あえて大きくいうならば、人間の弱さと創造性に基づいた、本質的に文学的な観念なのだ」(本書より)──『存在の耐えられない軽さ』などの小説作品で知られ、長年ノーベル文学賞の有力候補に名を連ねながら惜しくも世を去った作家ミラン・クンデラ(1929–2023)。東と西、政治と文学、歴史と現在、偶然と必然のあいだを揺れ動く人間の運命を見つめ続けた作家の仕事を読み解く本格評論。第4回東京大学而立賞を受賞した博士論文を大幅改稿。 【目次】 序論 運命の星座 第1章 歴史の終わり、運命の終わり――『冗談』におけるメランコリー 第2章 成熟と小説――『生は彼方に』における自己批判 第3章 運命の皮肉、歴史の怪物――『ジャックとその主人』におけるアイロニー 第4章 世界と亡命――『笑いと忘却の書』における語りの視差 第5章 運命の様相――『存在の耐えられない軽さ』における偶然性 第6章 身振りと根拠――『不滅』における悲劇の散文化 第7章 「軽さ」を祝う――『無意味の祝祭』における反出生主義との対峙 結論 スターリンと天使 あとがき 参考文献 索引 【著者】 須藤輝彦(すどう・てるひこ) 1988年生まれ。日本学術振興会特別研究員(PD)。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。ミラン・クンデラを中心として、チェコと中央ヨーロッパおよび啓蒙期の文学・思想を研究している。学部時代はヴェネツィアに、修士時代はプラハに、博士時代はパリに留学。学術論文のほか、一般読者向けの読み物として、ルポルタージュ「燃えるノートルダム」(集英社新書プラス)、「あいまいなチェコの小説家」(webゲンロン)、「批評の復習」(『文学+』WEB版)など。訳書に、モラヴィア美術館編『美術館って、おもしろい!』、アンナ・ツィマ『シブヤで目覚めて』(いずれも河出書房新社、阿部賢一との共訳)。
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