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ボルティモア郊外でコンピューターの出張修理をしながら、一人暮らす40代のマイカ。人付き合いを避け、決まった日課を堅持し平穏に過ごす彼の元を、マイカの息子だと名乗る青年が訪れ──孤独な中年男性のやり直しを、タイラー独特のユーモアを交えて描く長篇
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Posted by ブクログ
面白かった。笑うというのではなくて。 ユーモアのある会話ができる人、憧れる。アガサの「春にして君を離れ」よりも優しい(あれは本当に衝撃的な怖さを含んだナイフのように鋭さであった)。 短い話だったのだけど、整頓された中にも受け入れてくれる緩さがあって、やっぱり「優しい」という印象。許しがあると言うのか...続きを読む。
ランニングをしてシャワーを浴びて朝食、掃除…仕事をして。と、決まった日常を過ごしている40代独身男性の生活に、予想外のことが連鎖式に起こって… いつもと違うことに主人公マイカの内面が揺さぶられて、人との距離感をぱっと詰めたり、自分の感情に気づかされて行動に出たり… この感じを何気ない文章にできる...続きを読むの、熟練の技…!
『マイカ・モーティマーのような男は、何を考えて生きているのかわからない。……』 という最初のセンテンスだけを思いついてこの話を書きはじめたそうだ。 一言で言えば、まあ堅物の人付き合いの上手くできない人マイカ。 アパートの管理と、パソコンなどの技術サービスをしている。 運転しているときは、『交通監...続きを読む視システム』に、制限速度を守り、ウィンカーを出し、静かなブレーキ操作をすることをしっかり評価されていると空想しながら。 彼女とはなにかチグハグでうまくいかず、そこに大学時代のガールフレンドの息子がやってくる… そこから色々なことが起き、そのガールフレンドにも何か言われ… 少しずつ人の心がわかってくるのか、1人が寂しいと思うのか、ちょっとだけ進んだように話は終わる。 ふだんの話がそのまま綴られていて、それでも少し変化がある感じがアン・タイラーらしい。 やっぱりアン・タイラーはいいなと思う。もう80歳を過ぎたらしいけれど、まだまだ書いて欲しい。
石に刻んだように決まりきった毎日を過ごす43歳のマイカ・モーティマー。 なんだか…わりといそうだよね、こういう人、っていう感じ。「完璧」な暮らしをしていて、自分は何も悪くないと思っていて、なのになぜかうまくいかないことが多くて、人生なんてこんなものって思い込んで、暴れるでもなくヤケになるでもなく静か...続きを読むに暮らす中年男性。まるで自分の父親を見ているかのような気持ちにもなる。 主人公マイカの人生はよくあるごく普通の話だし、しかもこんな地味な中年男性。だけど、物語には彩りがある。なんてことはないのに、目が離せなくてどんどん読み進めたくなってしまう。 ちょっと眉をひそめてしまいそうなマイカの家族の話も、そこにはごく普通の日常と確かな愛が溢れていて、そのシーンを読み終えると愛おしいものになってしまうのだ。 特に後半部分では、マイカの行動の変化にドギマギしてしまって、これから何かが起こることを期待しつつページをめくる。 ほんの少しのことだけど、完璧だったマイカの行動を少し変えるだけで読み手を不安にさせる手腕に、すごいなぁと思った。 タイトルも素晴らしい。途中で「あ、なるほど!これがタイトルか!」と気づくのだけど、本当に全てが素晴らしいと思って感激してしまった。 他の作品も読んでみたい。
じんわりと読む。なんかよくわからないタイトルだなと思っていたけど、そういうことだったのね。書き出しがよい。”交通の神”がよい。「つらい心を抱えた人」そういうことだ。
波乱万丈でなんだかいろいろとめんどくさいことになるよりは、「ていねいな暮らし」と言えなくもない決まったルーティンをこなして、淡々と生活する方が平穏に過ごせる。波風なんてたくさん。 そんなことを思って暮らしていくうち、本来なら一回こっきりの錯覚(「アレ」を赤毛の人かと見間違うこと)までもが毎回の「お約...続きを読む束」になり、そのうち思考もがっちりと型にはまったものになり、いよいよ人生そのものが型通りになる。128ページのこのくだりにハッとさせられる。 どんなに規則正しく生きていたって、およそもらい事故みたいな他人絡みの厄介事に心ならずも関わることはある。それは自分のあずかり知らないこと。完璧を期するなんてもうヤメだ。 そんな「つらい心を抱えた人」になって、かつての恋人に会いに行くラストシーンが素敵だ。
あー、ものすごくよくわかる、この感覚。 どんなに用心して、どんなに計画して、どんなに予定通りに実行しようとしても、それを阻むようなことが次々とやって来きて、なかなか思い通りにはならない。 でも、全て予定通りに進んでいくと、ある日、なんだかつまらなくなったことに気がつく。 できることしか、やらなく...続きを読むたっていたから……。 自分で用意した小さな箱の中で安心していると、ある日突然それから先がわからなくなる。 朝のランニング途中で「この道の先に、いつもの赤毛」を見ていた毎日から、突然違う道に投げ出された、中年独身男性の物語でした〜。 面白かった。
社会規範を外れること なんてありえない─ 判で押した日々を送る 四十路の主人公。 いつものことばかりの 生活に、 いつもとは違う出来事 が飛び込んできて、 彼の内に波紋を投じる。 そしてその波紋はいつ しか彼の行動を、 やがては人生を変える。 現状を変えることには 失敗のリスクを伴うし...続きを読む、 えてして多大な労力も 払わなければいけない。 現状維持を選択すれば、 失敗のリスクを負わず 労力も払わなくて済む。 だからこそ、私たちは いまのままじゃダメだ、 うん、変わなくちゃ! と思ってもけっきょく、 無意識の内に現状維持 を選択しちゃうんです よね。 いつもと違う出来事は 往々にして招かれざる 客ですが、 本当は変わりたい!と 思っている私を導きに きた、 運命のつかいなのかも しれませんね。
「ボルティモア郊外で、コンピューターの便利屋をしながら独り暮らす43歳のマイカ・モーティマー。人付き合いの少ない彼は、毎朝7:15になるとランニングに出かけ、その後シャワー、朝食、掃除……というように決まった日課を守って毎日を過ごしている。 そんなある日、マイカの息子だと名乗る青年が彼の元を訪れる。...続きを読むさらに、恋仲の女性には、とあるすれ違いで別れを告げられ──。 予想外の出来事が続き、日常のテンポがズレ始めたマイカの行き着く先とは」(早川書房HP紹介文より) まずマイカ、という名で男性というのが飲み込むのに時間がかかった。些細なことだけど、外国文学を読むとこういうことがある。 マイカはきっちりしてて病的なくらい自分のペースを守る。なんとなく引きこもりっぽくて、見た目は冴えないのでは、と考えてしまうが女性には人気があるようで、その辺りも馴染むのに時間がかかった。 彼なりの温かさというか、独特の感覚に馴染むと、読んでいて心地よく、また彼を応援する気持ちになってくる。自分も歳を取った証拠かもしれない。 読みやすくて、現代的な、それなのにポジティブな世界に浸れる良い小説であった。
彼のような男は何をするかわからない。 こんな書き出しで形容されることは、彼にとって不本意なことだろう。平凡だが、関西でいうところの、ヘンコかもしれない。 朝のジョギングから始まるスローライフは “今時” だ。途中見かける消火栓を赤毛の女性に(違いない)見てしまう面白がり方は、成熟しきれない...続きを読む面も残している。無頼を気取った部分もあるだろう。しかし、突然現れた学生時代の彼女の子供を観察するにつれ、知らぬ間にずいぶん大人になってしまった自分自身に気づかされたことだろう。 現在の彼女とのぎくしゃくした関係をきっかけに、弱気を見せる主人公。残りの人生を数えるような年齢になってしまったおっさんの僕にはメルヘンの要素も感じるが、なんとも鮮やかな人間描写に映る。 社会が望むような大人になりたくないと思って生きていても、人は必ず大人になってしまうんだな。
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