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噺家ものがたり
大学生の千野願は、寝過ごしてしまった就職の最終面接へ向かうタクシーの中で、カーラジオから流れてきた一本の落語に心を打たれる。その感動から就職はもちろん、大学も辞め、希代の天才落語家・創風亭破楽への弟子入りを決意。 何度断られても粘りを見せ、前座見習いとなるも、自らの才能のなさに落ち込む千野願だったが、ある日、初めて人を笑わせる快感を覚える。道が開けたように思えたそのとき、入門前から何くれとなく世話を焼いてくれた兄弟子・猫太郎が突然――。 -
話し言葉で読める「方丈記」
日本人なら一度は読んでおきたい古典文学がある。『源氏物語』『枕草子』『奥の細道』など。それに、冒頭の「行く河の流れはたえずして、しかももとの水にあらず」の有名な一節で始まる、鴨長明の『方丈記』だ。冒頭部分は知っていても、現在の文庫本に直して数十ページしかないこの短い名随筆を、いったいどれほどの日本人が読んでいるだろう。古語の難しさ、文法の難しさのまえに、ほとんど読まれていないのが実際のところだろう。ならばいっそのこと、もし我々が普段使っている現代語で、鴨長明が『方丈記』を書いたなら、きっとこんな具合に書いただろうという、大胆な発想で「リライト」(?)したのが、本書である。読みやすさはいうまでもないが、長尾剛さんが設定した鴨長明の性格を反映した文章は、まさに傑作。「訳」ではなく「リライト」といった意味をご理解いただけると思う。無常観を述べた『方丈記」だが、それが実感できる画期的一冊。 -
話の終わり
書くことをめぐる無二の長編 「翻訳の仕事をしていると、たまに「自分が今までに訳したものの中で一冊だけ自分が書いたことにできるなら何か」と質問されることがある。そんなとき、私はいつだって「『話の終わり』!」と即答してきた。それくらい私にとっては愛着の深い作品だ」(本書「訳者あとがき」より) 語り手の〈私〉は12歳年下の恋人と別れて何年も経ってから、交際していた数か月間の出来事を記憶の中から掘り起こし、かつての恋愛の一部始終を再現しようと試みる。だが記憶はそこここでぼやけ、歪み、欠落し、捏造される。正確に記そうとすればするほど事実は指先からこぼれ落ち、物語に嵌めこまれるのを拒む――「アメリカ文学の静かな巨人」デイヴィスの、代表作との呼び声高い長編。 -
花園を荒す者は誰だ
渋谷のハチ公前に一人の貧しい青年がいた。古雑誌を売って今晩のおかず代にしようとして。そこにケーキの宣伝カーが現れ、美人のキャンペーン・ガールが登場した……。新しい時代には、金がものを言うことを今さらながら感じた青年は、犯罪に手を染めてでも……。アプレな戦後成長期の日本、そこでもがく若者たちを描いた傑作。戦争中に「糞尿譚」で芥川賞を受賞した作家の手による戦後の作品。 -
花とアリス殺人事件
乙一×岩井俊二。伝説のノベライズ文庫化。 石ノ森学園中学校に転校してきた有栖川徹子(通称:アリス)は、転校早々クラスメイトから嫌がらせを受けるようになる。どうやら彼女の席には呪われた噂があるようだ。 そんなある日、アリスは、自分の隣の家が「花屋敷」と呼ばれ、話題にのぼっていることを知った。彼女は、ある目的をもって花屋敷に潜入する。家のなかには、長期不登校中のクラスメイト・荒井花(通称:花)がいた。そこで花はアリスに、驚くべきことを口にする。 ※この作品は過去に単行本として配信されていた『花とアリス殺人事件』の文庫版となります。 -
花と散りにし 保元の乱を詠む
■内容紹介 平安末期、国を二分する戦いが起こった。それは保元の乱と呼ばれる戦乱であり、古代から中世へと、貴族政治から武家政治へと時代を切り拓いていく端緒となった。ここでは、この乱の原因である天皇家と藤原摂関家の内紛から崇徳院の配流という結末までの経緯を、雅やかに詠まれた創作短歌で克明に描く。 ■著者紹介 松下 正樹(まつした まさき) 1939年、鹿児島県種子島に生まれる。1968年、東京教育大学(現・筑波大学)大学院、農学研究科修了。2004年3月まで板橋区役所勤務。著書『歌集秋津島逍遥』(幻冬舎ルネッサンス、2010)、『歌集北へ漕ぐ舟』(幻冬舎ルネッサンス、2012)。 -
花とハーブに囲まれたイギリスの物語
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 15編の物語に出てくる植物に焦点を当て、お話のストーリーを楽しむとともに、咲き誇る花やハーブの知識を得るのに最適な本! 中学生の高学年ぐらいから大人まで、眼で見て楽しめるよう編集し、イギリスの物語の世界を知るだけでなく、そこにある美しい自然や庭園、花の世界を共に味わう〈ちょっと変わった〉案内書。 ▶各作品の編集項目◀①あらすじ ②注目したいセリフと描写 ③関連コラム(花、ハーブ他) 目次 はじめに ■パート 1 ゆっくり読みたい物語 1 ピーターラビットのおはなし 2 秘密の花園 3 不思議の国のアリス 4 幻のスパイス売り 5 小川のほとりで(『のばらの村のものがたり』シリーズより) 6 トムは真夜中の庭で 7 グレイラビットのたんじょう会 8 さくら通りのメアリー・ポピンズ 9 プー横丁にたった家 10 床下の小人たち 11 あかつきのパン笛(『たのしい川べ』より) 12 時の旅人 ■パート2 短くてかわいいお話 1 小さいお嬢さまのバラ 2 うさぎのフローレンス はじめてのダンスパーティ 3 チューリップ畑 ■この本で扱った作品の作者紹介 ◉ビアトリクス・ポター ◉フランシス・ホジソン・バーネット◉ルイス・キャロル ◉アリソン・アトリー ◉ジル・バークレム ◉アン・フィリッパ・ピアス◉P・L・トラヴァース◉A・A・ミルン◉メアリー・ノートン◉ケネス・グレーアム ◉エリナー・ファージョン◉リス・ノートン ◉イギリスの昔話より ■注目したいイギリスのイラストレーター 1 シシリー・メアリー・パーカー 2 バーナデット・ワッツ 3 ケイト・グリーナウェイ ■あとがき/主な参考文献 -
花と緑の歳時記365日
※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 コロナ禍がつづく今だからこそ、季節の移りかわりをしっかり感じたい。そんな需要が高まる中、日本の四季に密着した文芸・俳句のたのしみをビギナーに向けて丁寧にガイドする歳時記。「俳句あるふぁ」連載の連載をもとに、編集部による解説を追加して書籍化。歳時記は現在も数多く刊行されているが、本書は365日を一日ごとに区切り、古典から現代までのさまざなま俳句、季節の植物を美しい写真で紹介する。句によまれた草花の実際の姿を目で見ることで、俳句鑑賞の助けに。 ※こちらの作品は過去に他出版社より配信していた内容と同様となります。重複購入にはお気を付けください -
花とメイドと宮廷画家
専属メイドのエイミーの主は、美貌の宮廷画家レイ。人嫌いだが完全記憶能力を持ち、アカデミーを主席で卒業した彼は、異例の若さで女王陛下に認められた天才だ。 レイの初めての展覧会が迫るなか、彼の師の初期作「乙女と四季」が盗まれる。容疑をかけられたレイと、彼を助けたいエイミーは独自調査を開始。二人は消えた「乙女」を追ううちに、ある秘められた恋の話へとたどり着く。 ――華やかな宮廷を舞台に繰り広げられる絵画の謎、そして恋物語。 魔法のiらんど大賞2020小説大賞 ファンタジー・歴史小説部門〈特別賞〉受賞作! -
花と夜盗
英娘鏖 はなさいてみのらぬむすめみなごろし 現世(うつしよ)のカオスにひそむ言葉の華麗な万華鏡(ミクロコスモス) ────谷川俊太郎 『いつかたこぶねになる日』などエッセイでも活躍する俳人・小津夜景。 田中裕明賞を受賞した『フラワーズ・カンフー』に続く6年ぶりの第二句集。 【収録句より】 漣が笑ふいそぎんちやくの朝 蟬生(あ)れて死んで愛してゐた時間 莨火(たばこび)を消して裸足の身を焦がす 香水のちがふ白河夜船かな パピルスや死後千年の音階図 君の瞳(め)を泳ぐおらんだししがしら かささぎのこぼす涙をおつまみに 露実るメガロポリスよ胸も髪も 逃げ去りし夜ほど匂ふ水はなく 後朝のキリマンジャロの深さかな 【目次】 一 四季の卵 春はまぼろし 駒鳥の隣人 ルネ・マグリット式 カフェとワイン ポータブルな休日 狂風忍者伝 冬の落書き 花と夜盗 胸にフォークを 二 昔日の庭 陳商に贈る 貝殻集 今はなき少年のための AQUA ALLEGORIA 研ぎし日のまま サンチョ・パンサの枯野道 三 言葉と渚 水をわたる夜 夢擬的月花的(ゆめもどきてきつきはなてき) 白百合の船出 【著者】 小津夜景 1973年北海道生まれ。2013年「出アバラヤ記」で第2回攝津幸彦賞準賞、2017年句集『フラワーズ・カンフー』で第8回田中裕明賞を受賞。その他、著作に漢詩翻訳つきの随筆集『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者・須藤岳史との共著『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』などがある。 -
花贄さまの初恋
シリーズ累計33万部突破!「龍に恋う」著者のやさしさ満載の最新作。 皇都から離れた、緑豊かな花森村。 草花を自由に咲かせる能力をもつ霜子は、その異能ゆえに身内に蔑まれ、ついには陸軍中尉・晴晃との婚約を強いられてしまう。しかし予想に反して、晴晃は快活な青年だった! 二人が徐々に距離を縮める中、不穏な“惑い花”の呪いが村を蝕み始め――。 瑞々しく美しい和風恋愛ファンタジーの開幕! ■ 登場人物紹介 鹿屋野霜子(かやの・そうこ) 16歳のときに、神から見出されて異能を開花した。現在は「花贄」として村で孤独に暮らす。 丹羽晴晃(にわ・はるあき) 陸軍中尉。見た目に反して快活で素直。霜子の婚約者としてやってきたが、その目的は……? -
華に影 令嬢は帝都に謎を追う
明治三十九年、帝都東京。千武男爵家の令嬢・斗輝子は、書生の影森怜司を供に、政府重鎮の黒塚伯爵家で行われた夜会に当主である祖父の名代として出席した。しかし夜会の最中に黒塚伯爵が何者かに毒殺されてしまう。不当な疑いをかけられた千武家の名誉のため、斗輝子と怜司は事件の真相を調べ始める。だが、その裏には身分に縛られ、ままならぬ生き方を余儀なくされる人々の大きな秘密があった。すべての真実を知ったとき、斗輝子は――。勝ち気な華族令嬢と怜悧な書生、対照的な二人による明治謎解き譚。 ※本書は2014年、幻冬舎文庫より刊行された『帝都東京華族少女』を改題し、大幅に加筆修正したものです。 -
花に誓う
紡いだ物語への夢 四編の作品集 収められた四作には、どの一編にもそれとなく作者自身の影が映っていて興味深いが、読み込むと、それらが繋がって自ずからもう一つの隠れた物語を形成している。それはあたかも美しいレース編みを見るようで、私は何度も感嘆させられた。思うに、これは純真な少女時代に紡いだ物語への夢を曲げることなく育ててきた作者の情熱の賜物であろう。(文芸評論家 勝又 浩) 【目次】 花に誓う そよ風に乗って めぐり会い 高原のル・スタージュ 【著者】 葉山 弥世 1941年 台湾花蓮市生まれ 1964年 広島大学文学部史学科卒業 1985年 中国新聞主催「第17回新人登壇」入賞 1986年 北日本新聞主催「第20回北日本文学賞」選奨入賞 1996年 作品「遥かなるサザンクロス」が中央公論社主催、平成8年度女流新人賞の候補作となる。 2000年 広島女学院中・高等学校退職 「水流」同人(広島市)「広島文藝派」同人(広島県廿日市市) 日本文藝家協会会員 -
花のある静かな日
見えない所にも花は咲いてる、静かに 『花のある静かな日』と題された角川文庫を底本にしたが、 全部で21もの掌編が収められている。 掌編同士は、まったく関連性がないようにも思えるし、 しかしところどころ、同じ名前の人物が現れたりもして さてこれを「全体」としてどう把握したものか、困惑してしまう。 それぞれの掌編の空間に、「花」という語彙とともに咲いているものもあるが しかしそのことには触れていない掌編のほうが多いのも不思議である。 それでいて、確かにどこかに花が咲いている、と気配で思わせる この静けさのトーンはいったいなにか? 【目次】 桟橋にて 午後二時三十分、会議。四時三十分まで 水を飲むだけ 空の青さ 恐怖小説の発端 あの美しいグリーンを見てほしい 雨の彼方からの手紙 男性がふたりに、女性がひとりの場合 コーヒー一杯だけ 結婚して三年 結婚することになりました、と彼は言う 私たち五人 彼女との会いかた ブルーベリーが落ちる 一杯の紅茶の、ずっとむこう ブラックベリーの冬 現在は否定されざるを得ない D・ホックニーのプール 防波堤で会話する ふたりの湖面標高 なにか気になること 【著者】 片岡義男 1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始め、74年『白い波の荒野へ』で作家デビュー。75年『スローなブギにしてくれ』で野生時代新人賞を受賞。ほか代表作に『ロンサム・カウボーイ』『ボビーに首ったけ』『彼のオートバイ、彼女の島』など多数。http://kataokayoshio.com/ -
花のお江戸で粗茶一服
弓、剣、茶の「三道」を伝える〈坂東巴流〉の嫡男・友衛遊馬、二十歳。 家出先の京都から帰還するも、家元でさえ副業しなければ家族を養えない貧乏流派ゆえ、働き口を探してこいと言われてしまう。冴えない日々の中、曲者ぞろいの茶人武人にやりこめられながら、遊馬は自分の進むべき道をぐるぐると探しつづける。明日が見えないあなたに贈る、笑えて泣けて元気になれる物語! -
花の佳音
知っていますか? あなたが笑ったり泣いたりしているときに、すぐ横に寄り添って、一緒に微笑んだり涙を流してくれる存在がいることを。 それは……美しくも儚い 「花」 たち。彼らは、いつでも人間を温かく見守り、心の底から祈っています。 あなたが幸せでありますように―― と。 これは、そんな花たちの声を聞くことができる不思議な青年・草介と、心優しい花たちの、切なくも心温まる物語。 ほら、花たちに耳を近づけてみてください。思いがけない、嬉しい囁きが聞こえてくるかもしれませんよ? -
花乃香町のオオカミ花屋
触れた人の心の痛みを感じる力を持つ大学生の咲彩は、ある日不思議な三兄弟と出会う。手が触れても何も伝わってこない彼らは実は「狼混じり」という、狼に姿を変えることができる者たちだった。町の片隅でひっそりと花屋を営む彼らの正体を知ってしまった咲彩は、ひょんなことから花屋を手伝うことになる。しかし花屋を訪れるのは、困りごとを抱えた人たちで――。 -
はなのことのは ものがたり 庭草編 かたばみのおもひ
花が大好きでちょっと不思議な男の子・優凪。 ある日、太陽と月のように正反対な二人の少女が、彼に恋をする。 可憐な美桜と端麗な梨花。違った輝きを放つ二輪の花と出会い、運命の花時計が動き出す。 初めての恋、すれ違う気持ち、そして大切な人との別れ。 抜け殻のようになった優凪を支え、隣にいてくれたのは美桜だった。 しかし、少しずつ前を向き成長していく優凪の前に、梨花そっくりの女性が現れる。 いままで抱えていた本心と向き合い、優凪が下した決断とは――。 美しい花々に彩られた、淡くて切ない恋の物語。 <目次> 第一 雑歌の章その一 鵲の橋 第二 雑歌の章その二 誰そ彼 第三 雑歌の章その三 花の顔 第四 相聞の章上その一 夢人 第五 相聞の章上その二 玉響 第六章 相聞の章上その三 影法師 第七 相聞の章上その四 蛍火 第八 相聞の章上その五 水鞠 第九 挽歌の章その一 恋の淵 第十 挽歌の章その二 泡沫人 第十一 挽歌の章その三 華美 第十二 相聞の章下その一 心恋 第十三 相聞の章下その二 心の占 第十四 相聞の章下その三 終日 第十五 相聞の章下その四 花の言の葉 第十六 相聞の章下その五 二人綾 第十七 相聞の章下その六 比翼の鳥 <著者紹介> なるかみの いかづち 明治時代の思想家であり評論家でもある先人、高山樗牛の残してくれた言の葉、『天にありては星、地にありては花、人にありては愛。これ世に美はしきものの最ならずや』に心を委ね、『天雲の八重雲隠り鳴る神の音のみにやも聞き渡りなむ』と万葉集に詠まれている如く、八重雲に隠れたまま音だけを微かに響かせて、この物語を描き鳴らしているのが作者のなるかみのいかづちの私である。 -
ハナの婚活事情
28歳の小泉ハナは28歳にもなって、彼氏もいない。合コンに参加するが今日も不発。そんなハナの相談相手はハムスターの「ジャン」だけ。そんなジャンが望みをかなえてくれるという。特訓により変身したハナは望み通りのイケメンの恋人ができるのだが……。 ●著者プロフィール● マイマイ 関西在住。中学校の教師、塾教室長を経てフリーのライターに。女性を主人公にした官能系、恋愛系の小説を手掛ける。男女のからみの描写で読者のイメージを掻き立てるのが得意。著書に「禁じられても愛しくて」「恋愛迷路で危険な香り」「濡れちゃう秘密のアルバイト」「特命OL暴かれた秘蜜」「淫欲の鎖に繋がれて」「淫獄に堕ちた女たち」「修羅の花嫁」「恥虐の罠」「女教師アンナ」などがある。 -
花の旅路
どんどん焼きやの小母さん。今ではしがない暮らしではあったが、たった一つ、人の知らない宝ものがあった。 どんどん焼きやの小母さんは、村の人から「おあな」だの「あな婆さん」だのと軽べつしたような調子で呼ばれていた。それは小母さんがどんどん焼きをしている土間のすぐうしろの部屋で寝ている平吉じいさんが、障子ごしにおあな、おあなと呼び続け、それが買い物客に筒抜けだから。「おあな、おあな、と仲のええことじゃのう」と冷やかす客もいるが「あれが阿波屋の娘のなれのはてかい」と感慨を新たにする者もある。今ではしがない暮らしのお花さんではありますが、たった一つ、お花さんには人の知らない宝ものがありました。 【著者】 壺井栄 小説家 1899年 - 1967年 香川県小豆郡坂手村(現内海町坂手)生まれ。 坂手郵便局や役場勤務後、同郷の壺井繁治を頼り1925年に上京。 以後東京。 1941(昭和16年)『暦』が第4回新潮社文芸賞を受賞。 1955(昭和30年)『風』で第7回女流文学者賞を受賞。 『母のない子と子のない母と』で第2回芸術選奨文部大臣賞を受賞。 1954(昭和29年)映画「二十四の瞳」(木下恵介監督、高峰秀子主演)が公開され、全国的ヒットとなり、小豆島と壺井栄の名が一躍クローズアップされる。 -
花のたましい
映画『花まんま』の世界を広げるスピンオフ 直木賞受賞作『花まんま』から20年、映画から魂を吹き込まれた新たな感動作! 本書は映画『花まんま』(2025年4月25日公開予定)のサイドストーリー。 登場人物の背景にある「もうひとつの物語」を、 原作者ならではの視点で描き出し、映画のその先の世界へと、 読者をいざないます。 ~映画から生まれた4つの物語~ 「花のたましい」 … 見えない明日を懸命に生きる駒子と智美。はかなくも美しい友情の行く末。 「百舌鳥乃宮十六夜詣」 … 幼少期の不思議な体験を昭和の世相に重ねて描くノスタルジック・ホラー。 「アネキ台風」 … こわれかけた家族をパワー全開で再生しようとする肝っ玉アネキの奮闘記。 「初恋忌」 … 人生の終わりを予感した男の身に起こる、小さな奇跡。感涙必至の好篇! 泣いて、笑って、幸せに。 -
花野に眠る
れんげ野原のまんなかにある秋葉図書館。ゆったりした時間が流れるのどかなこの図書館でも、季節はうつろい、新人司書・文子の仕事ぶりも板についてきた。そんななか、図書館のお隣の日向山から驚くようなものが発見され、大騒ぎになる。なんでここに埋められていたの? 気になって仕方ない文子は、真相究明に乗り出す。だけど、謎はそればかりではない。図書館の利用者が持ち込むちょっとした謎は、絵本にお菓子に料理に……と実にさまざま。本の力、そして頼もしい先輩司書たちの力を借りて、文子はすっきり解決! となるのやら。すべての本好き、図書館好きに捧げるやさしいミステリ。/解説=青井夏海 -
華の人
明治大正に生きた名門窯元夫人の鮮烈人生。 有田焼が誕生してから2016年で400年目。その節目を前に、名門窯元に嫁いだ女性の鮮烈な生き方を描く。 東京の女学校に通うモダンガールが大恋愛の末に嫁いだ先は皇室御用達の名門窯元だった……。 大正13年に佐賀県有田町の駅に降り立った一人のモダンガール。手にはバイオリンを携え真っ赤な薔薇のコサージュをつけた幅広の帽子をかぶっていた。 「それはまるで天使が降り立ったようだった」 と町の人は噂した。 旭川の実業家の家に生まれ、東京の女学校で学ぶ敏子。恋に落ちた相手はパリ万博で金賞の栄誉に輝いた名門窯・深川製磁の2代目だった。女学生の身で妊娠。そして21歳で有田の深川家に。自由奔放な生き方を愛する彼女と激動の時代ゆえの試練。薔薇のように華麗に生きた彼女の31年の生涯を感動的に綴った小説。 人気エッセイスト伊藤緋紗子氏が執筆した初の小説作品。
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