麻坂家の双子の小学生・圭司と有人は一見そっくりだが、性格は正反対。論理を重んじ傍若無人で辛辣な圭司と、人間の心理を重んじる優しさを持った有人は、それぞれの観点から事件の解決に挑む。なんとも言えない読み心地の連作ミステリです。
小学生が主体のミステリなので、穏やかな日常の謎ミステリだろうな、と思ってい
...続きを読むました。実際最初の二話はそうなんですよね。日常の謎だし、解決してからもほっこりゆったり。ところが三話の「サンタクロースのいる世界」では、なんと殺人が起こってしまいます。だけどこの解決はある意味優しさを持っていました。「時限爆弾」として真相を残すところがとっても素敵です。
ただ、その後も人死にが続く……しかもどんどん不穏な雰囲気に突入していくのは気のせいではないですよね。圭司の冷酷な推理も、それに対抗しながら見守る有人も、とにかく危うい。そしてラストの「ダイイングメッセージ」では……なんてこったい、としか言いようがありません。もう誰も、サンタクロースを信じていた無邪気な時代には戻れないのですね。その意味でこの本のタイトルが刺さりました。