あらすじ
「本格シーンの次世代を担う逸材だ。確かな論理と刺激的な結末をご堪能あれ!」(東川篤哉)/「彼が狙っているのは強行突破だ。しかし、そこにこそ快楽がある。」(石持浅海)/この謎を解いたら、もう子どもではいられない。Z世代による、これが本格ミステリのネクストステージ!
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めちゃくちゃ面白い。本格ミステリの構造的な部分を揺さぶってくるのが好みだった。
光文社による本格ミステリ作家の新人発掘プロジェクト〈カッパ・ツー〉第三弾作品。警察官の父親を持つ双子の小学生探偵が事件の謎を解く全6編の連作ミステリ。
特筆すべきは、主人公である双子の対照的なキャラ造形。論理的思考を重視し、時に冷酷とも取れる推理をする兄・圭司と、人間心理や感情に寄り添い、優しさをもって事件に向き合う弟・有人。この二人の対比が、各話の謎解きに厚みを出しており、より物語的な仕掛けにも多角的な視点を与えている。全編を通じて二人の推理対決(のような構造)がそのまま双子の関係性や、成長、探偵としての在り方を映し出している。
物語の構成は、日常の些細な謎から始まり、双子の成長に合わせて徐々に殺人事件のような重い展開へと移行していく。タイトルも示唆するような幼年期の終わりを感じさせるテーマを、連作という形を通して読者に追体験させる構造が巧みだ。
本格ミステリとしての完成度も非常に高く、満足感がある。全編ロジカルでクラシックな本格モノの要素を持ちながらもどこか独自性のあるプロットになっているのが楽しい。正直、解けるかというと怪しいレベルで捻った論理構造をしている気がしていて、その点は麻耶雄嵩のロジックの難しさを思わせる。
僕は個人的には気にならないが、小学生らしからぬ知識や言動と、小学生らしい行動原理が、どちらも見られるのがやや妙な拗れになってしまっているきらいはある。例えば名探偵コナンなどでは大人の行動原理が基本にあり、必要に応じて子供らしさを演じるという構造になるが、本作では実際に子供で、子供らしい部分がありながらも、大人のような振る舞いをする場面がどうしても発生するため、気になる人はいるだろうと思う。
個人的には、本格ミステリの良さの一つは「時に小説であること以上に本格ミステリであること」だと思っている。小説である以上、物語の面白さや自然さが必要だという一般論は理解できるが、「本格ミステリ」という細部化された道の果てには、物語としては歪な「人工感」や「緻密すぎる謎」や「メタ的な構造美」のようなものに良さを求める視線があっても良いのではないか。本作には、そういう本格ミステリの良さも詰まっている。
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麻坂家の双子の小学生・圭司と有人は一見そっくりだが、性格は正反対。論理を重んじ傍若無人で辛辣な圭司と、人間の心理を重んじる優しさを持った有人は、それぞれの観点から事件の解決に挑む。なんとも言えない読み心地の連作ミステリです。
小学生が主体のミステリなので、穏やかな日常の謎ミステリだろうな、と思っていました。実際最初の二話はそうなんですよね。日常の謎だし、解決してからもほっこりゆったり。ところが三話の「サンタクロースのいる世界」では、なんと殺人が起こってしまいます。だけどこの解決はある意味優しさを持っていました。「時限爆弾」として真相を残すところがとっても素敵です。
ただ、その後も人死にが続く……しかもどんどん不穏な雰囲気に突入していくのは気のせいではないですよね。圭司の冷酷な推理も、それに対抗しながら見守る有人も、とにかく危うい。そしてラストの「ダイイングメッセージ」では……なんてこったい、としか言いようがありません。もう誰も、サンタクロースを信じていた無邪気な時代には戻れないのですね。その意味でこの本のタイトルが刺さりました。
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双子の小学生のロジカルぶりに驚愕! 二重三重にも展開される濃密ミステリ #バイバイ、サンタクロース
■きっと読みたくなるレビュー
双子の小学生である圭司と有人が中心となり、学校の友人たちと日常の謎や事件を解決していく連作短編集。学園モノのふんわりとしたミステリーと思いきや、ロジックガチガチの超本格モノです。
館、密室、死体消失、ダイイングメッセージ、雪の足跡など、ミステリー好きが泣いて喜ぶ素材もたっぷり。特に双子の主人公の議論のやり取りは、多重推理を思わせるほどの論理展開です。
謎解き以外では、やはりキャラクターが推しどころ。小学生とは全く思えないほどの推理がエグいんですが、性格や特徴が違うところが面白いところなんです。特に最終話のプロットは想像以上だったし、作家先生のチャレンジ精神を感じました。
まだ20代前半の若手先生で、これだけの作品を書かれると、今後も期待せずにはいられませんね。
●最後の数千葉
入院している同級生、病気を不安に思う彼女とクラスメイト達の物語。
日常の謎ミステリーで、ありがちなストーリーかと思いきや、ガッツリ本格です。ロジカルな圭司と、人の行動心理の洞察が深い有人、この二人の特徴がめっちゃでてる!
●消えたペガサスの謎
教室から消えたフィギュア、転校生の犯行と思われるが果たして…
ロジックも凄いけど、短編なのにこのレベルで物語を成立させますか。ちょっとスゴイ。転校生が男前すぎてカッコイイですね~、私もこんな小学生だったらモテてただろうな。
●サンタクロースのいる世界
サンタクロースの存在証明と雪の足跡の謎。
物語は一気にリアルな殺人事件になってくる。雪の足跡トリックは、これまで様々なパターンがありましたが、本作は目から鱗でしたね。そして小学生とは思えない圭司のセリフにひっくり返りました。
●黒い密室
館ものミステリー、元サッカー部メンバーとマネージャーたちが久しぶりに会って…
結構無茶なことになりますが、発想力に感服しました。伏線もしっかりしてるし、ヤラレタ感が満載。
●誰が金魚を殺したのか
理科室で起こった出来事、死体消失の謎が解けるか?
おもろいけど、これも結構無茶なことになります。読んで驚いてください。有人の優しさに、少しだけ救われる作品でした。
●ダイイングメッセージ
最終話、これまで以上に無茶なことになります。相変わらず謎解きは面白い。詳しく書けないので、ぜひ読んで欲しいのですが、今まで何を読んできたのか迷子になること請け合いです。
■ぜっさん推しポイント
本作のイチ推しポイントは、プロット、条件設定、トリックの発想が新しい点なんです。古き良き本格ミステリーの題材を用いつつも、スパっとこんな短編つくりましたけど。てなかんじで、提示されるんですよね。特に最後2作はプロットは、想像の斜め上を行ってて痺れました。
この発想力と論理展開を読むと、いつか本格ミステリーでTOPをとるのではないかと思えてなりません。次回作も楽しみに待っています~
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小学生の圭司と有人の双子の兄弟。頭が良く、父親は刑事で身近に起こる謎を解決することを楽しんでいる。小学校で起こる出来事に込められた謎から殺人事件まで。勝ち気で誰に対しても遠慮しない圭司と、周りを見て冷静に優しく振る舞う有人。この真逆のコンビがとても面白い。少し強引な展開もないわけではないけれど、謎解きの面白さと事件に対して小学生が受け止めることとかこの作品ならではのような物があるのもいい。ラストの事件は特に興味深く最後まで気を抜けない。この先が楽しみな作家さん。
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6話の連作短編集です。小学生の双子が主人公で、舞台は学校や彼らの生活圏とくれば、ほんわか日常の謎的なやつを想像していたのですが、普通に人死ぬんだ!という…。個人的には兄の圭司に全く感情移入できなかったし、ラストも好きではない。うーん、期待しすぎたのが良くなかったのかなぁ。次作積読してるけど、しばらく読まないかも。
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【収録作品】
最後の数千葉
消えたペガサスの謎
サンタクロースのいる世界
黒い密室
誰が金魚を殺したのか
ダイイングメッセージ
双子の小学生探偵ということで、ほのぼの系…… というわけではない。小学校低学年の俺様探偵にはついていけないなと読むのがしんどくなる。内容もだんだん鬱々としていき、どんな事件が起こるかはわからなくても結末が予想できてしまう。
双子の関係性や圭司の態度、ダークな内容は、麻耶雄嵩を思い起こさせるが、こっちはなぜか読みづらかった。
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登場人物がみんな大人っぽい。小学生とは思えない。
双子探偵は特にすごい。キレッキレの頭脳にはコナンくんもびっくりすると思う。
最終話『ダイイングメッセージ』がいきなり物騒な話で驚いた。
Posted by ブクログ
双子の兄弟探偵が主役の連作短編小説です!
各章当たり外れありますが、終わりに近くなればなるほど面白かったです!!
ビターな読後感は麻耶雄嵩作品に通ずるものがありますね〜!!