ちくま学芸文庫作品一覧
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4.0イタリア旅行で南欧の植物の多様性に目を見はったゲーテは、仔細に観察し、それらを統べるものへと想像をめぐらせた。メンデルの法則が世に知られる100年以上も前に圧倒的洞察力で、植物のメタモルフォーゼを確信している。「すべては葉である」「花は葉の変形したもの」「地面の下で湿潤だけを吸収する葉を根と呼ぶ」「すぐに拡張する葉は葉柄ないし茎である」。文豪にして偉大な自然科学者の樹立した形態学は、分析と還元を旨とする現代の先端研究者たちに思いがけぬ指針を残していた。「形態学」の真髄とその周辺をていねいに掬い上げた文庫版新訳オリジナル。本書姉妹篇に『動物篇』がある。
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1.0阿弥陀仏の名を称えるだけで、だれでも浄土(安楽)に生まれることができる──。法然や親鸞がその解釈に骨身を砕き、長く日本人に親しまれてきた浄土仏教の最重要経典。煩悩に縛られ、悪行をやめられぬまま、混迷を極めた世の中を生きるごく普通の人々。そうした凡夫を救うために四十八の誓願をたてた法蔵菩薩は、想像を絶する修行を経て阿弥陀仏となり、誓願のすべてを実現する。この阿弥陀仏の物語を、釈迦はいまだ悟りに到達できない阿難に向けて説く。全文の漢訳と読み下し、さらに懇切丁寧に施された解説により、万人のための宗教というその核心が鮮やかに立ち現れる。文庫オリジナル。
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5.0冬の夜、結核療養所で聞こえた奇妙な泣き声。日中衰弱しきって運び込まれた母娘は、朝を待たずに逝った。それを知った著者は、娘の体をさする瀕死の母親のやせた腕を幻視する──「小さきものの実存と歴史のあいだに開いた深淵」、それは著者の原点にして終生のテーマとなった。近代市民社会と前近代が最深部で激突した水俣病闘争と患者を描く「現実と幻のはざま」、石牟礼道子を日本文学に初めて現れた性質の作家と位置付けた三つの論考、大連体験・結核体験に触れた自伝的文章など39編からは、歴史に埋もれた理不尽な死をめぐる著者の道程が一望できる。
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5.0『逝きし世の面影』の著者渡辺京二は、日本近代史の考察に、生活民の意識を対置し、一石を投じてきた思想家である。その眼差しは表層のジャーナリズムが消費する言説の対極にある。本巻には、西欧的な市民社会の論理では割り切ることのできない、大衆の生活意識にわだかまる「ナショナル」なものを追求した「ナショナリズムの暗底」、明治国家への最大の抵抗者としての西郷隆盛を常識的定説から救抜する「逆説としての明治十年戦争」、北一輝と日本近代の基本的逆説の関連を問う「北一輝問題」など、日本近代史を根底から捉え返すことを試みた論考を集成する。
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5.0東京は坂の街。「その名は江戸っ子気質そのままで、単純明快、即興的で要領よく、理屈がなくて、しかもしゃれっ気があふれている」。富士を眺められる坂は「富士見坂」、海を望む坂は「潮見坂」、墓地のそばの坂は「幽霊坂」、赤土の坂は「赤坂」、急な坂は「胸突坂」…。東京の坂道と、その名前を見つめると、江戸庶民の暮らしと心が浮かび上がる。東京中を隈なく歩き、古書や古地図を渉猟して、坂道に織り込まれた歴史を辿る。「坂道」研究というジャンルを確立し、いまなお坂道ファンのバイブルと親しまれる古典的名著。本書を片手に散歩すれば、いまも江戸を垣間見られる。
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3.5紀元前5世紀の古代地中海世界。スパルタ陣営との大激戦、ペロポネソス戦争で疲弊したアテナイでは屍が累々とし、人びとは疫病と困窮のなか、運命の手の弄ばれるままになっていた。この混迷から立ちあがった著者が綴った大戦の長大な記録が、本書『歴史』だ。四半世紀におよぶ激闘で諸国の力がぶつかりあうなか、何が失われ、何が生まれていったのか? 迷信や伝説を典拠としたヘロドトスと異なり、夥しい資料を駆使し、多様な視点を盛り込むことで実証的「歴史学」の礎を築いたとされるトゥキュディデスが、透徹した眼差しで古代地中海の姿を活き活きと記した不朽の名著。
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4.4後悔せずに生きるには、毎日をどう過ごせばよいか。「思索する読書人」兼好が自由な心で書き綴った珠玉の随筆。独創的な断章スタイルは精神の運動を活発にさせ、生きられる時間の短さに警鐘を打ち鳴らす記述と、柔軟でユーモアに富む記述とを自在に往還する。明晰な言語感覚と、全方位に開かれた視界。この世の全てを相対化し、虚無の陥穽から身を翻す兼好。そこから新しい『徒然草』の顔が見えてくる。振舞いと心遺いが文化の本質であり、いまを生きる喜びこそが虚無をも越える最良の手段なのだ。混迷する現代にあって、大人ゆえにいま味わえる人生の達人の文学を、流麗な訳文と新校訂原文で構成。
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4.5
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3.5「呪術師ドン・ファン・シリーズ」の著者、カルロス・カスタネダはその実在すらが疑われ、著作の内容も常に毀誉褒貶にまみれていた。カスタネダとは一体何者だったのか? 著述の内容をつぶさに検証し、仮面の下に潜む素顔とその思想を白日のもとに曝す。カスタネダ神話を脱構築し、新たな相貌の獲得を目論む挑発的な試み。
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3.0天正十五年(1587)、豊臣秀吉は九州平定のため、大軍を率いて出陣。博多に凱旋し、戦勝祝いのさなか、「バテレン追放令」五カ条を発布した。日本でのキリスト教宣教に関する禁令である。キリシタン大名・高山右近を家臣団から排除したことと併せ、イエズス会士たちに強い衝撃を与えた。諸宗派間の平和共存を構想していた秀吉が転回をなすに至った背景には何があったのか。それは日本史上にいかなる反作用をもたらしたか――。イエズス会が支配する教会領長崎で起きた事件と、「バテレン追放令」を記す2つの文書の検証から、日本とヨーロッパの象徴的衝突に迫る。サントリー学芸賞受賞作の改訂増補版。
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4.0
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3.7万葉の昔からはじまり、江戸時代に花開いた日本人の家飲み。当初健康のため、安眠のために飲まれていた「寝酒」は、灯火の発達とともにゆっくり夜を楽しむ「内呑み」へと変わっていく。飲まれていたのは濁酒や清酒、焼酎とみりんをあわせた「本直し」等。肴は枝豆から刺身、鍋と、現代と変わらぬ多彩さ。しかも、振り売りが発達していた江戸の町では、自分で支度しなくても、家に居ながらにして肴を入手することができた。さらに燗酒を売る振り売りまでいたため、家に熱源がなくても燗酒が楽しめた。驚くほど豊かだった日本人の家飲みの歴史を繙く。
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3.0明治7(1874)年、日本の台湾出兵に清国が抗議、北京で二国間交渉がもたれた。大久保はこの北京談判で全責任を負って困難な交渉にあたり、その手腕を発揮して清国の譲歩を勝ち取る。旧友西郷隆盛と対立して朝鮮出兵を封じた大久保が、後に台湾出兵を進めたのはなぜか。北京談判での大久保の冷徹な現状認識、粘り、そして強い責任感と信念。征韓論争から北京談判まで、手紙や日記等豊富な史料をもとに、内政家として語られてきた大久保利通の外交を評価する。「明治の政治家はかつて責任を回避することを知らなかった」。本書には、太平洋戦争下の現実政治に対する、著者の鋭い弾劾が秘められている。
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-長い年月をかけて積み重ねられてきた生活習慣は知らずしらずのうちにわれわれの精神や行動を規制している。家族それぞれの箸や茶碗が決まっており、自分以外はそれを使ってはならないというのはその代表例だろう。高取正男はこの日本人の無意識下にある感覚「ワタクシ」に着目し、現在の社会問題や歴史的事象の背景を探ろうとした。その際高取が重視したのは生活文化の変遷を凝視することであり、民俗調査を行い古老と向き合う中で実際に自分の内部にもひそむ日本的思考に気づくことだった。民俗学と歴史学を取り結び、新しい歴史記述のあり方を模索した記念碑的名著。
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-いつ炸裂するかわからない時限爆弾として映画があるとするならば、ジャン=リュック・ゴダールの作品はいかなる条件のもとにそうであるのか、あるいはそうでないのか。映画批評的/映画史的差異を捉えた者だけに現れる問題が存在する──。最初の長編『勝手にしやがれ』から遺作『イメージの本』まで、稀代の映画作家が置かれ続けた孤独。撮ることと観ることとのいまだ決着のつかない闘争の場に対峙してきた著者は、「映画はもはやゴダールなど必要としていない」と断じる勇気を持てと訴える。新たなる孤独の創造のために。ゴダールへのインタヴューなどを再録増補した決定版論集。
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3.0来たるべき300年後の社会を実行可能な形で構想した画期的試論、ついに文庫化! この複雑な世界を複雑なまま生きることはいかにして可能か――。これが本書の中心にある問いだ。生命の起源から説き起こし、膜と核の問題が社会制度と地続きであることが、最初に示される。社会の〈なめらかさ〉とは、膜の機能を弱め、諸物が連続的なつながりをなすネットワークへと開いていくことにほかならない。それは、情報技術の支援の下、貨幣・投票・法・軍事というコアシステムの変革によって実現される。近代のメジャーバージョンアップだ。巻末には、原著刊行後に顕在化した問題を俯瞰する新論考を付し、本書の現代性と可能性をあらためて照射する。
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4.5太平洋戦争で、日本はなぜ敗れたのか。本書で説く「克己心の欠如、反省力なき事、一人よがりで同情心がない事、思想的に徹底したものがなかった事」など「敗因21カ条」は、今もなお、われわれの内部と社会に巣くう。そして、同じ過ちをくりかえしている。これらを克服しないかぎり、日本はまた必ず敗れる。フィリピンのジャングルでの逃亡生活と抑留体験を、常に一貫した視線で、その時、その場所で、見たままのことを記し、戦友の骨壷に隠して持ち帰った一科学者の比類のない貴重な記録。ここに、戦争の真実と人間の本性の深淵を見極める。第29回毎日出版文化賞受賞の不朽の名著。 ★電子書籍版『虜人日記』では、紙の書籍でモノクロだった挿絵を全てカラーで再現。未公開の写真や挿絵も追加。
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3.3北宋時代とは、士大夫層の形成とともに中国的官僚制が確立した時代である。また、王安石の新法をめぐり、新旧両世代の対立と混乱に彩られた変革期でもあった。朱子学の大成者・朱熹が編纂したという『宋名臣言行録』(『五朝名臣言行録』と『三朝名臣言行録』の総称)は、北宋百五十年における名臣たちの言動を集録したもので、唐代の『貞観政要』と並び立つ書である。本編訳書では、明快な日本語訳と書き下し文に加え、八朝の天子の特色や登場人物の経歴、言行各条の背景を説明することで、北宋時代史としても通覧できる構成を取っている。組織での身の処し方について、名臣たちはいかなる知恵をわれわれに伝えるのか。不朽の古典がここに甦る。
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4.3理論物理学者のロバート・オッペンハイマーは、ロス・アラモス研究所初代所長としてマンハッタン計画を主導し、広島、長崎に災厄をもたらした原子爆弾を生み出した。その結果、「原爆の父」と呼ばれるようになるが、彼自身は名声の陰で原爆のもたらした被害、さらに強力な兵器「水爆」の誕生につながる可能性があることに罪の意識を抱き、その開発に反対の意思を表明していた。本書は、これまでに数多く書かれたオッペンハイマー伝をつぶさに再検討し、その多くに異を唱える。豊富な史料をもとに、彼の足跡を丹念に辿り、政治に翻弄され、欺かれた科学者の実像に迫る。
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5.0
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-20世紀フランスを代表する思想家モーリス・メルロ=ポンティ(1908-61)が死の前年にまとめた論集『シーニュ』。同書には、言語学、絵画論、人類学への言及や、フッサール論、ベルクソン論、マキアヴェッリ論など、おもに中期から晩年にかけて執筆された多彩な論考が収録されており、その多中心的な思想を一望するうえで欠かせない一冊となっている。本書ではそのなかから、ニザンとサルトルとの関わりが美しく綴られた序文のほか、「間接的言語と沈黙の声」「哲学者とその影」など重要論考6本をセレクトし、新訳。清新な訳文と懇切丁寧な注釈・解説により、その真価が明らかとなる。
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4.0権謀術数ひしめく15世紀末のフィレンツェ。マキァヴェッリは軍事・外交を担当する共和国の官僚として活躍したが、イタリア戦争によってメディチ家が権力の座に戻ると職を追われる。しかしそのずば抜けた才能を評価する枢機卿ジューリオは、歴史理解を統治に生かすべく本書の執筆を依頼。マキァヴェッリはそれに応え、晩年のほぼ全てを費やして人びとの心の内面までをも再現した躍動感あふれる歴史絵巻を描き出した。上巻には古代ローマ時代からメディチ家が権力を掌握する15世紀までを収録。政治の現場に身を置き、場数を踏んだ者だけが読み取ることのできる、ほんとうの歴史がここにある。
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4.0河童・濡れ女子のごとき魔物、疫病をつかさどるハヤリ神、人に憑く姿の見えない妖怪ノツゴ、門松・松飾りを焼く正月行事や初田植・穂掛け祝いのような農耕年中行事など―日本の民衆生活に沈殿している信仰の数々。その正体は何なのか、どのような構造で意識の底に堆積しているのか。本書は、柳田國男門下の宗教民俗学者が、日本人の宗教生活に分け入った明快な書である。高度成長期以前の暮らしのなかに多彩な怪異と信仰が蠢いている姿を活写し、日本人の精神的伝統へと踏み込んで、長く読み継がれてきた一冊。
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4.3青山二郎は、小林秀雄、白洲正子の骨董の師匠としてだけでなく、河上徹太郎、中村光夫、宇野千代といった周囲の人たちにも大きな影響を与えた。その青山の信仰とは、知識に依らず、眼を頭から切り離して、純粋に眼に映ったものだけを信じるという「眼の哲学」であった。やきものから学んだ眼力によって、骨董はもちろん、人間の真贋から社会批評まで、ズバリとその本質を言い当てる。青山の文章は、独特な比喩とともに難解なところもあるが、知識ばかりが横溢する現在、もっとも辛辣な文明批評となっている。上巻は、「梅原龍三郎」「北大路魯山人」「小林秀雄と三十年」「贋物と真物について」など、美術と人物に関する文章43篇を収録。
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3.8戦国大名武田信玄、勝頼二代にわたる甲州武士の事績、心構え、軍法、合戦などが記された壮大な歴史パノラマ。戦国時代に形成された武士道の集大成ともいわれ、元和以来、武士の間で広く読まれた。また、講談や歌舞伎狂言などにも翻案され、庶民にも遍く普及し今に伝わっている。本書は、全二十巻五十九品の中から、その白眉と目される山本勘助の物語、信玄一代記、甲州法度など話題に富む十四品を収録。歴史に関心をもつ読者はもとより、広く現代において、組織の上に立つ者の必読の名著。原文に現代語訳を付す。
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4.019世紀、日本をはじめ世界中に圧倒的影響を及ぼしたスペンサーは、20世紀に入ると、社会的ダーウィニズムを唱えた弱肉強食の冷酷な思想家として激しい批判にさらされ、忘却された。しかし、そうした理解は正当だろうか? 否。自由の意味を根源から問うたその議論は、いまこそ再評価されるべきである。本書では、彼の思想の核心を伝える論考を精選して収録。そこからは国家の強制による福祉ではなく、個人の自発的な意志に基づく協力の原理を探究し、社会的弱者への慈悲を説いた姿が浮かび上がる。国家を無視する権利まで容認する、その徹底した自由の理論を詳らかにする。文庫オリジナル編訳。
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3.7紀元66‐70年、パレスチナのユダヤ人たちはローマ帝国と戦った。だが、彼らにとってこの戦争の結末ほど悲劇的なものはなかった。聖性が宿ると信じられた都エルサレムと神殿を失ったにもかかわらず、彼らの神は沈黙したままだったからである。神の沈黙は彼らに神の再解釈を迫り、以後、ユダヤ人たちの運命は大きく変わった。2000年にわたる流浪の始まりとなったのだ。この戦争を克明に記録した本書は、古代キリスト教以来、現代に至るまで西欧社会の必読書であり、イエスの神性を保証するプルーフテクストとして機能してきた。第1巻は、アサモナイオス王朝の盛衰から開戦前夜までを収録。
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3.7
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4.3レヴィ=ストロースが“発見”した親族の基本構造は、まさに現代数学の「群論」そのものであった。それは20世紀の構造主義が、ヨーロッパの正統の流れを、すなわち古代ギリシアにおける思弁と数学の幸福な結合を、現代に“再発見”したことを意味した。そこから見えてくるものは何か。プラトンのイデア数、ライプニッツの予定調和説、カントの認識論、ヘーゲルの解析学/歴史観、ニーチェやオルテガの遠近法主義、フッサールの現象学、さらに、中国周代の易に見る二進法、孟子における階級と関数概念など、精緻な数学的アプローチと該博な知見から生みだされた、ユニークな比較思想史的論考。
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3.0社会学を学ぶ意味とは何だろうか? たとえば、社会の変化が私たちの日常にどう影響するか、あるいは、日々遭遇する困難を根本的に解決するにはどうすればよいか。それを適切に考えるためには、日常を社会や歴史と関連づけて捉える知性が欠かせない。社会学的想像力と呼ばれるこの知性こそ、社会学の最大の効用である。だが、当の社会学者も理論や調査に夢中になるあまり、そのことを忘れつつある──こうした現状を鋭く批判し、社会学的想像力を鍛える学としての意義を高らかに謳いあげる重要古典。今日でも全米の大学で最も多く用いられている社会学文献である本書を、みずみずしい新訳で送る。
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4.1ニュートン力学のあとを受けた18~19世紀は、熱をめぐる世紀となった。なぜ熱だったのか? 本書は、科学者・技術者の実験や論理を丹念に原典から読みとり、思考の核心をえぐり、現代からは見えにくくなった当時の共通認識にまで肉薄する壮大な熱学思想史。迫力ある科学ドキュメントでもある。後世が断ずる「愚かな誤り」が実はいかに精緻であったかがじっくりと語られる。新版ともいえる全面改稿の全3巻。第1巻は、熱の正体をさぐった熱力学前史。化学者ラヴォアジェが熱素説の下で化学の体系化をなしとげ、より解析的に熱を取り扱う道が拓かれるまで。
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4.5「残された作品の画面に何が具体的に見えるか、そしてそのイメージが、見るもののフィルム的感性をどのように刺激するかを論じてみたい。つまり、現実のフィルム体験として生きうる限りの小津安二郎の作品について語ってみたいと思う」(本書序章より)。人々がとらわれている小津的なるものの神話から瞳を解き放ち、その映画の魅力の真の動因に迫る画期的著作。本文庫は、小津の生誕百年(2003年)を機に旧版へ三章を増補した決定版である。名キャメラマン厚田雄春と『美人哀愁』の主演女優井上雪子へのインタヴューほかを併録。
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4.8ラカンを理解する最短ルートは、その理論を歴史的に辿ることだ──。鏡像段階、対象α、想像界・象徴界・現実界など多種多様な概念を駆使し、壮大な理論を構築したラカン。その理論は、精神分析のあり方を劇的に刷新し、人文・社会科学全般に大きな影響を与えた。本書では、その難解な思想を前期・中期・後期に腑分けし、関心の移り変わりや認識の深化に注目しながら、各時期の理論を丹念に比較・検討していく。なぜラカンはこれほどに多彩な概念を創造し、理論的変遷を繰り返したのか。彼が一貫して問い続けてきたこととは何だったのか。その謎に挑んだ好著、『ラカン対ラカン』増補改訂版。
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4.2すべては相対的で、唯一絶対の真理や正しさはない――この相対主義の「論理」を相対主義自身にも適用し、極限まで追いかける。その最果ての地で、どのような風景が目撃されるのか? 本書では、ルイス・キャロルのパラドクス、マクタガートによる時間の非実在性の証明、デイヴィドソンの概念枠批判、クオリア問題等を素材に、「相対化」の問題を哲学する。相対主義を純化し蒸発させることを通して、「私たち」の絶対性を浮き彫りにすると同時に、その「私たち」も到達しえない“他なるもの”の姿を鮮やかに描き出す。ダイナミックな哲学の思考運動が体感できる名著。
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4.2建国から二百数十年、自由と民主主義の理念を体現し、唯一の超大国として世界に関与しつづけるアメリカ合衆国。その歴史をひもとくと、各時代の危機を常に「憲法問題」として乗り越えてきた、この国の特異性が見て取れる。憲法という視点を抜きに、アメリカの真の姿を理解するのは難しい。建国当初の連邦と州の権限争い、南北戦争と奴隷解放、二度の世界大戦、大恐慌とニューディール、冷戦と言論の自由、公民権運動――。アメリカは、最高裁の判決を通じて、こうした困難にどう対峙してきたのか。その歩みを、憲法を糸口にしてあざやかに物語る。第6回読売・吉野作造賞受賞作の完全版!
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4.7「クレオール主義」とは、なによりもまず、言語・民族・国家にたいする自明の帰属関係を解除し、それによって、自分という主体のなかに四つの方位、一日のあらゆる時間、四季、砂漠と密林と海とをひとしくよびこむこと――。混血の理念を実践し、複数の言葉を選択し、意志的な移民となることによってたちあらわれる冒険的ヴィジョンが、ここに精緻に描写される。「わたし」を世界に住まわせる新たな流儀を探りながら、思考の可能性を限りなく押し広げた、しなやかなる文化の混血主義宣言。一大センセーションを巻きおこした本編に、その後の思考の軌跡たる補遺を付した大幅増補版。
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4.8ヴィクトリア女王、エリザベス2世、そしてチャールズ3世まで、イギリスの歴代君主に仕えた君主秘書官たち。多くは君主の青年時代からの側近であった彼らは、国内外の様々な問題を君主に報告し、時に助言も行い、有事に際しては公正中立な立場から君主と政権をつなぐ重要な架け橋でもあった。本書では、彼らが登場した歴史的経緯を踏まえつつ、手紙や日記などの史料を交えて秘書官と君主との物語を描く。貴族政治から大衆民主政治への転換、二度の大戦、王室のスキャンダル……。激動の時代を経てなぜ今も君主制が存続するか。その謎に迫るユニークなイギリス近現代政治史。
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-浅川巧は日本に朝鮮半島の工芸のすばらしさを伝えた先駆者として知られる。ものだけではなく、ものを生み出した民族全体を愛する姿に、民藝の父・柳宗悦は打たれ、生涯の友となった。そして浅川と柳は当時誰からも評価されていなかった李朝工芸に美を見出し、ソウルの景福宮内に「朝鮮民族美術館」を設立する。本書収録の『朝鮮の膳』は膳の歴史や産地、形態、用途、材料、製作法などを紹介したもの。『朝鮮陶磁名考』は器物の本来の名称とその用途などを記録したもの。いずれも90年以上前の著作だが、朝鮮工芸に関する比類なき名著として、日本でも韓国でも読み継がれている。
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-イギリス近代を代表する思想家にして法学者ジェレミー・ベンサム(1748‐1832)。本書は、近体功利主義の創始者として知られる彼の代表作と目される記念碑的著作である。ここでベンサムは、人間の快と苦痛のみに基礎づけられた功利性の原理をもとに個人と共同体のありようを徹底的に解析し、そこから真に普遍的な法体系を導出しようと試みる。その挑戦はわれわれをどこに導くのか? 刊行より200年以上経てもなお倫理学、法哲学、政治思想など広範な分野に圧倒的な影響を与え続けている名著を、このうえなく清新かつ平明な訳文で送る。上巻は「第13章 罰すべきでない場合」まで。文庫オリジナル。
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4.5
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3.0和食の原型は江戸時代に形作られた。そう聞くと江戸の料理は素朴なものだったと思われるかもしれないが、さにあらず。魚は天然、野菜は有機、その上調理方法にも技巧が凝らされており、江戸の食文化はとても豊かだった。例えば刺身一つとってみても今はたいてい醤油を添えるが、江戸時代は魚の種類ごとに煎り酒や生姜酢などの各種調味料を使い分けていた。薬味もわさびだけでなく、からし、おろし大根、蓼など多様だ。本書ではそんな豊かな江戸の料理と食材を季節ごとに紹介し、各種行事食の由来も解き明かす。第一人者による人気連載を初書籍化。江戸時代の図版も約150点収録。
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5.0
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4.0世の中には名だたる経済学の古典がいくつもある。しかしケインズは、経済学者であるからには学術専門書ではなく、パンフレットのようなものを書くべきだと述べた。経済学者は日々変化する経済情勢をつかみ取り、それに対処し続けなければならないと考えたからだ。本書では経済政策の表舞台に立った当のケインズをはじめ、スラッファ、シューマッハー、ミュルダール、セン、ハロッド、都留重人らによって書かれた様々な問題への、今こそ注目すべき処方箋を紹介。あわせて無数に枝分かれした各経済学派の特徴と、その目指すところも解説する。経済学に興味のあるすべての人へ。学芸文庫オリジナル。
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3.0ハプスブルグ帝国の末期に生まれ育ちながら、近代建築の地平を切り拓いた先駆者ロース。その装飾を排した建築作品は、当時のウィーン社会において物議を醸すことになる。文筆活動においても舌鋒鋭くラディカルな文化社会批評を展開したが、本書はそのうち重要な論考を精選した一冊である。有名な「装飾は犯罪である」をはじめとした過激な発言に満ちている一方で、ギリシャ・ローマを範とするような古典主義的な思考も随所に覗く。幅広い交友関係を反映して、シェーンベルクやココシュカなども登場。急速な変化を遂げる激動の世紀末・20世紀初頭のウィーンを中心に、モダニズムの強い息吹に触れることができる。
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4.0戦争は、誰によっておこされ、どのように展開したか――。本書では、1931年の柳条湖事件の謀略に始まり、45年ポツダム宣言受諾と降伏文書調印によって終わった一連の戦争を「十五年戦争」と呼び、その曲折に満ちた過程と全体像を克明に描く。アジア覇権主義を掲げる日本軍部と対米英協調路線の宮中グループとのせめぎ合い、マスコミの報道によって国内で急速に高まる排外主義、アジア太平洋戦争へと向かう御前会議のありよう………。満州事変、華北分離、日中戦争、アジア太平洋戦争で構成される各部には年表、関係地図を付し、制度や組織の変遷、人事の系統図なども適宜配した。長年読み継がれてきた画期的通史。
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4.0現代音楽の最初の出発点を切り拓いた音楽家シェーンベルク。十二音技法の開発を通して無調音楽への扉をひらき、作曲活動はもちろん『和声学』『対位法入門』などの理論書でも知られる彼が、音楽的信念を熱く綴った論集が本書である。ここでは内から突き上げる創作への力を重視し、作曲技法がマニュアルに堕することを批判する。激動のヨーロッパ史、大衆音楽の興隆、グローバリゼーションと民族性の相克などを含めてクラシック音楽が大きな結節点を通り過ぎていくさまを通し、20世紀芸術が経験した思想的葛藤を目の当たりにすることができる。音楽そして芸術を考えるための必読書。
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-小石川後楽園、六義園、浜離宮等、大名家が誇った名園はどのように造られ、そこではどのような社交や饗宴が催されていたのだろうか。自然の地形や植生の利用、潮入りの池のような大泉水、回遊様式など、日本庭園の魅力的な特徴を備えた大名庭園。そこを舞台に繰り広げられた茶事から趣向をこらした酒宴など多様な遊興と社交に、本書は注目する。大名庭園は京の公家文化と武家社会をつなぎ、当時の芸能、芸術全体を取り込んで成立したことが明らかになる。西洋の宮殿庭園とも機能を比較する他に類をみない文化史。
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3.5よく似たしくみをもつもの同士を同じものと見なす「パターン認識」。それは数学的な構造としては20世紀に深化発展した。数や多項式、関数などから、群・環・体などの有用な構造が取り出された。本書は抽象代数の基本概念を、歴史的背景をおりまぜつつ、ていねいな叙述でひもとく。随所に登場する卓抜な比喩は理解を助け、ガロア理論の意味まで望見させる。「体Σ/Kは地上に生えている大木に似ている。……基礎体は木の根に当たる。ガロア群は木を揺さぶる外からの力に比べられる」「秘密を探るのに、まずそれを揺さぶってみる……ここにガロアの理論のもつ射程の大きさがある」と。
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-武蔵国江戸(武江)300年の詳細な記録。「年表」とはいっても、たんに歴史上の事件を年代順に列記した無味乾燥なものではなく、各時期の江戸の地理の沿革、坊間の風俗、事物の権輿、韵士・墨客・伎芸の動向、気象の変化など、その背景とともに生き生きと記録された、壮大な大河小説にも比肩されうる不朽の名著。本書は、斎藤月岑の刊本を底本とし、それに喜多村いん庭、関根只誠、朝倉無声の補訂を加え、さらに、校訂者今井金吾の補注・解説・詳細な索引を付して完璧を期し、全3巻としたものである。歴史や時代小説に関心ある者の必読書。上巻は、天正18年より宝暦13年まで。
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4.0啓蒙主義は、すでに乗り越えられた浅薄な思想なのか。のちの思想家たちから「反省哲学」「過去の思想」という烙印を押されてきたが、はたしてそうか。18世紀啓蒙主義の「明るい鏡」を現代批判の鏡として位置づけ、自らそれとの内面的対決を果たした著者は、批判精神に満ちた鋭い洞察力で、啓蒙主義の思考形式から「美学」の誕生までの諸側面を余すところなく分析し、その統一的結びつきを解明する。哲学者カッシーラーが従来の批判を排し、啓蒙主義思想の再評価を打ち立てた古典的名著。文庫化にあたり全編改訳。上巻は啓蒙主義の思考形式、自然観と自然科学、心理学と認識論、宗教の理念を収録。
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5.0
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3.0現象学の始祖エトムント・フッサールが、『ブリタニカ百科事典』の求めに応じ、「現象学」の項目のために執筆した、ドラマチックな推敲のあとが窺える四つの草稿の集成。変化しつづけたフッサールの思索が成熟した時点で書かれた本書は、まさに“現象学とは何か”その核心を語る。そのため、完成稿(第四草稿)は、始祖自身による最も完備した好適な入門書ともなっている。これら草稿は、ハイデガーとの共同作業を経て完成したが、とくに第二草稿には両者の一致と相違が如実に現れていて、20世紀を主導した両者の現象学的哲学の本質を考えるための重要なヒントもここにある。詳細な訳者解説を付す。
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3.6ある集団のなかでみんなの意思がうまく反映された決定を下すには、どうすればいいだろうか。特に、各人の考えがバラバラで、にもかかわらずそれらを集約して一つの判断を下さなければいけないとき、望ましいきめ方とはどんなものだろうか。これを探究するのが社会的決定理論という分野である。様々な投票方式が生み出す矛盾から、アローの一般可能性定理、さらにはセンの自由主義のパラドックスやゲーム理論まで、この理論が含みもつ広範な内容をかみ砕いて丁寧に解説。社会的決定における「公正さ」「倫理性」とはどのようなものか検討する。最良の入門書として長年親しまれてきた比類なき名著。
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4.3
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4.7差別はどこから生まれてくるのだろうか? ヨーロッパにも職業差別・身分差別は存在したのだろうか? 本書は、『ハーメルンの笛吹き男』で西洋中世の被差別民の存在に初めて光をあてた著者が、賎視と身分差別の問題に正面から取り組んだ、阿部史学の代表的著作である。西洋中世において、キリスト教の浸透による時空観念の一元化と死生観の転換によって、畏怖の対象であった職業を賎視するようになる過程を考察する。「ヨーロッパ中世賎民成立論」のほか「ヨーロッパ・原点への旅」「死者の社会史」等も収め、“小宇宙”と“大宇宙”をキーワードに西洋中世の人々の心的構造の核に迫る。
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3.0「“全般経済学”とは、生産よりも富の“消費”(つまり“蕩尽”)のほうを、重要な対象とする経済学のことである。」経済合理性の範疇に収まらない蕩尽・祝祭・宗教・エロス・芸術は、人間の喜びの本質が有用性の原理に拠って立つ生産・蓄積過程にあるのではなく、消費・蕩尽にあることを示す。本書は人間が不可避的に内包せざるを得なかった「過剰」を考察の対象にして人間存在の根源に迫り、生を真に充実させるために、蕩尽・神聖・恍惚に代表されるこの「呪われた部分」の再考を鋭く強く促す。意識の「コペルニクス的転回」に賭けたバタイユ作品の新訳。巻末に先駆的重要論文「消費の概念」を収録。
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3.0
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4.5ヨーロッパのキリスト教徒や知識人たちにもっとも広く読まれてきた『ユダヤ古代誌』。天地創造から説き起こし、紀元後66年のユダヤ戦争直前までの記述で終わる全20巻は、ヨセフスが敗軍の指揮官のひとりとしてローマに降ったのち、皇帝の厚遇のもとに書かれた。政治的には親ローマ派であり、思想的にはユダヤ教、ユダヤ文化の弁護者であったヨセフスの大著は、ユダヤ史を知るうえできわめて貴重な史料であるばかりでなく、イエスと同時代の散逸した記述を数多く含む文献として、キリスト教徒たちの関心をひきつけてきた。原著1~4巻までを収める文庫版第1巻は、天地創造からアブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフをへてモーセの事蹟に言及する。
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-中国は儒教の国ではない! 道教こそが今でも生き生きと脈打ち、人々から篤い信仰を得ている。「道教がわかれば、中国のことはまるごとわかる」と魯迅は言ったが、中国人の精神構造を知るための鍵は道教なのである。では道教とはなにか? この問いに対する答えは単純ではない。なぜなら、道教は教理、哲学、経典を中心にした宗教体系ではなく、呪術、儀礼、戒律を基礎とした民族宗教であって、文献・資料からだけではその全貌を窺い知ることができないからである。本書では文献による歴史的理解は当然のこととして、東南アジアの華人街の現地調査も踏まえ、中国人のこころの拠りどころとしての「気の宗教」の本質を紹介する。冒頭に初学者のための「道教をめぐるQ&A」を付す。
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4.3ベクトル解析は、電磁気学・流体力学などを学ぶ学生に必須の課程で、しばしば工学・物理系の応用数学とみなされがちである。しかし見方をかえて、基礎的な「1次元の線形代数学」から多次元への発展、「1変数の微積分」から多変数関数の微積分への発展、の段階の解析学と考えれば、大学教養課程の結節点ともみなしうる。それはより抽象度の高い、多様体へのゆるやかな第一歩である。本書では、そのような展開性のある位置づけのもとに、森一刀斎が「ベクトル解析のココロ」を開陳する。最終章に新たに、教育的側面を明らかにした「なぜベクトル解析なのか」を加えた。
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4.0遠くヨーロッパ中世、市井の人びとは何を思い、どのように暮らしていたのだろうか。本書から聞こえてくるのは、たとえば石、星、橋、暦、鐘、あるいは驢馬、狼など、人びとの日常生活をとりまく具体的な“もの”との間にかわされた交感の遠いこだまである。兄弟団、賎民、ユダヤ人、煙突掃除人など被差別者へ向けられた著者の温かい眼差しを通して見えてくるのは、彼らの間の強い絆である。「民衆史を中心に据えた社会史」探究の軌跡は、私たちの社会を照らし出す鏡ともなっている。ヨーロッパ中世史研究の泰斗が遺した、珠玉の論集。
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3.9現在、私たちを取り巻く「知」の数々は、20世紀以降の世界がおかれた4つの状況から発生する。本書ではそれを、ポスト・グーテンベルク状況、ポスト・モダン状況、ポスト・ナショナル状況、ポスト・ヒューマン状況と名づける。そして、そこから浮かび上がってくる「イメージと記号論」「情報とメディアの思想」「ナショナリズムと国家」など、15個のトピックスに切り分け、ソシュール、レヴィ=ストロース、フーコーという巨人たちの思想を読みなおしていく。ありきたりの哲学教科書では学ぶことのできない、現代思想における全ての最重要論点を、一から平明に解く15章の徹底講義。
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4.2知的創造は形式的な模倣ではなく、その根本まで突き詰めることで初めて可能になる──。そんな明快な観点に立ち、一世を風靡した名テキストが遂に復活! まずは、計画の立て方、発想法、モチベーション管理といった知的生産に欠かせない土壌づくりからスタート。そのうえで、実際的な文章の書き方、読み方から批判的思考の秘訣にまで踏み込んでいく。さらに、付録としてフロイトやボルヘスなど偉大な先達が用いた手法をまとめ、自分なりの思考法を磨けるように構成した。文庫化に際しては、定評ある旧版の内容をさらに精選し、新たにコラムも増補。知的生産のすべてをこの一冊に!