軍属としてフィリピンに配属された技術者が、アルコール製造(燃料として軍用に使った)に奮戦し、米軍上陸により山中に逃れ、捕虜になって日本に帰ってくるまでの日記。戦争中の記録が半分、捕虜になってからの記録が半分といった分量。
このあいだずっとメモは取っていたそうだが、この形にまとめたのは捕虜になって相
...続きを読む当してからとのことなので、2年間くらいの激動をさかのぼって書いていることになる。なかなか驚くべき記憶力だ。
軍人でないという立ち位置がもたらす観察者的視点のおかげで貴重な記録となっている。個人的には、まず極限的な状況を生き残ったサバイバル記録として読めるのだが、多くの人になにか日本文明論(たしかにそうした記述は多い)として受容されているあたりは日本的ではないか。
かなり悲惨な状況も淡々と描かれるし、そういったことを淡々と受け流せないと生き残れなかったとも思うのだが、最後に名古屋に上陸するとき「何の感激もない」とは言うものの、「レイテ島の○○○○」と大きく書いたのを掲げた婦人を見て、レイテの人で生きている人などいないのに、と泣く。読んでいるほうも、ふっと力が抜ける気がした。