小松真一のレビュー一覧

  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    軍属としてフィリピンに配属された技術者が、アルコール製造(燃料として軍用に使った)に奮戦し、米軍上陸により山中に逃れ、捕虜になって日本に帰ってくるまでの日記。戦争中の記録が半分、捕虜になってからの記録が半分といった分量。

    このあいだずっとメモは取っていたそうだが、この形にまとめたのは捕虜になって相当してからとのことなので、2年間くらいの激動をさかのぼって書いていることになる。なかなか驚くべき記憶力だ。

    軍人でないという立ち位置がもたらす観察者的視点のおかげで貴重な記録となっている。個人的には、まず極限的な状況を生き残ったサバイバル記録として読めるのだが、多くの人になにか日本文明論(たしかに

    0
    2020年05月23日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    山本七平氏が絶賛するとおり、この記録が、その当時の状況下で書かれたことに意義があり、そのことが、偽りのない真実をありありとあるいは淡々と伝えることに成功しているのだと思う。私は、左翼の言うことよりも右翼の言うことに賛同してきたが、小松氏の日記を読むと、東南アジア各国あるいは、朝鮮・台湾の反日感情は、かならずしも戦後一部の国によって意図的に作られれただけではないことが理解できる。また、旧軍にも良いところがあったとしきりに言われるが、陸軍の将校たちは、かなり質が悪く、どうしようもなかったことも理解できた。
    その他、植民地や戦場におけるあるいは捕虜収容所における様々なことを知ることができ、極めて有用

    0
    2018年12月08日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    8月恒例の戦争関連本。戦争に関する小説やノンフィクションはたくさんあるが、この本がすごいのは、(ほぼ)リアルタイムで書かれていること。帰国した兵士や、従軍記者が、思い出しながら、権力を意識したり解釈を変えたりして書くのではなく、その日その日の出来事が、科学者である筆者の冷静で客観的で淡々とした観察から記録されている。敗因を考察して「細いことに拘りすぎて大局観を持たない」「不都合なことはなかったことに、また不利なことは起こらないと盲信」「リーダーが自己保身に走り、部下を大事にせず犬死させる」などの指摘があるが、70年以上たった今でも当てはまることがあり、やはり昭和から学ぶことは多い。

    0
    2017年08月25日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    『日本はなぜ敗れるのか』の元ネタ。終戦時の手記の内容がいまだに通じるということは、これからも通じるということ。広く読まれるべきということで、あえて文庫本フォーマットで出版されている。内容的にR18+指定であるが、やはり手元に置いておくべきか。

    0
    2014年08月02日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    とても面白い作品でした。これからも、繰り返し読みたい。

    人間の弱さや統率力、敗因など、その明晰な分析に頭が下がる。

    0
    2013年07月14日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    先の戦争の記録については、数多くの著作が世に出ている。
    本書は、技師である著者が、客観的に記述し、そこに的確な
    主観(実感)を交えて記述されており、
    現在の日本の状況を見ても、教えられることは多い。
    山本七平が絶賛するのもわかる気がする。
    戦争体験記の名著。
    一度は、読んでおきたい本の一冊だと思う。

    0
    2012年11月05日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争中の体験を綴ったノンフィクション作品。著者自身が実際にフィリピンのジャングルでの逃亡生活と捕虜体験を克明に記録したもので、貴重な資料でもある。著者は、台湾製糖株式会社の醸造技術者として、ブタノール生産のためにフィリピンに派遣された。戦線が米軍との戦いに敗れた後、部隊と共に山中に逃げ込み、その間の逃亡生活と捕虜としての体験綴ったを日記である。

    文学的な創作が無い事、著者自身の死後に家族が出版されたものという事で、打算的な思惑が無い事が、装飾なきリアルな記録として価値のあるものだ。

    部隊でコックリさんが流行ったとか、実際に人肉を食わざるを得ない話とか、慰安婦を相手にしただらけきった軍

    0
    2024年06月20日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    本作は、醸造技術をもつ企業人が軍属としてフィリピンへ派遣され、業務を行い(アルコール製造)、終戦を迎え、捕虜として過ごした筆者の、およそ二年ばかりの日記であります。

    ・・・
    類似の作品に、た山本七平氏による『一下級将校の見た帝国陸軍』がありますが、本作はこれとは大きく毛色が異なります。『一下級―』が文字通りの戦中記であり、九死に一生を得るかのごとくの怨讐に満ちた筆致で生死の淵を描くのに対し、本作は後方支援部隊からの視点であり、緊張度は若干低めかもしれません。

    ただし、小松氏の超然とした視点は、女遊びに現を抜かす日本軍兵、その兵士が苦しんでいるジャングル行軍に自分の女とその荷物を運ばせようと

    0
    2022年12月13日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    太平洋戦争終盤のフィリピンが舞台。マッカーサーを追い出した後の日本占領時代から、今度はマッカーサーにジャングルへ追いやられ終戦を迎え捕虜生活を経て帰国するまでの陸軍軍属の日記。著者のぶれない人間性に強さと人柄の良さを感じる。いろんな角度から戦争が見えて面白い。

    0
    2016年06月18日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    戦後のフィリピンで戦後捕虜になった方の手記。

    これを読むと、日露戦争以後、いかに日本社会が虚飾、見栄、特権意識にあふれていて、それに気づいていても口に出してはいけないことになっていたかよく分かる。

    今の自分達からは別物と思いたくなるが、脈々と戦前から持っていた驕りを心の奥底に残している気がしてならない。

    もしかして、こういう話ってタブー?

    0
    2015年01月28日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    「新しい市場」(三宅)に引用。台湾精糖会社の一流の技術者が日本の敗因を冷静に分析。 日本人は不必要に神経質で、化学的に純粋でないと何だか気が済まない。自動車用にも不必要なまでに手をかけて品質の良い精製をする。米人はどうせ自動車用だと品質が悪くても平気でいる。だから彼らが設計した精製工場は素人だけでも運転できるようになっている。

    日本人は計算、暗算、手先の器用さは優れる。資源が無いから、製品の歩留まりを上げるとか物を精製する技術に優れている。しかし、資源が豊富な米国にとって、製品の歩留まりなど悪くても大勢に影響はない。米国の技術者はその面に精力を使わず、新しい研究に力を入れる。一部分だけをみて

    0
    2013年09月15日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    人を殺すとか人に殺されるとか想像できるわけがない現代人に向けて、山本七平とかこの虜人日記とかは良いアプローチで反戦の啓蒙ができてるんじゃないかなーって思ってます。

    0
    2012年02月03日
  • 虜人日記

    Posted by ブクログ

    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    部下の傷病兵に自決を強いて、自分達だけ逃げ廻るような部隊の兵は、命令に従って負傷でもしたら大変と、敵が来れば一発も撃たずに逃げてしまう。ところが、傷病兵をよくいたわり、最後まで世話を見るような部隊は、敵とよく戦い、強い部隊と称賛された。177
    ――――――――――――――――――――――――――――――○
    今度の戦争は、日本は物量で負けた、物量さえあれば米兵等に絶対に負けなかったと大部分の人はいっている。確かにそうであったかもしれんが、物量、物量と簡単に言うが、物量は人間の精神と力によって作られるもので、物量の中には科学者の精神も

    0
    2012年03月21日