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福沢諭吉は、西洋文明との対比のなかで、日本文明の特質を根源的に考察し、国家の発展には何が必要かを問い続けた。そして、脈々たる熱情をもって人々に精神の変革を訴えかけた。本書は、中津藩時代から晩年まで、因習に挑み、明治国家建設に邁進した生涯を描いたものである。『学問のすゝめ』『文明論之概略』の論評や朝鮮問題の再検討など、随所に示される著者の見解は、国家の歩みとともにあった人物の統一的把握をもたらすだろう。福沢の思想の真髄を明快に伝える最良の評伝。
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Posted by ブクログ
福沢諭吉の生涯の全体をたどった評伝です。 巻末に収録されている「福沢諭吉と伊藤博文」は、著者の講演内容をまとめたものですが、そのなかで著者は、思想史の研究者による従来の福沢研究では「あるときの福沢の主張が現実の政治でどういう意味を持っていたのかとか、どういう状況のなかでどう判断したのかということが...続きを読む、やや見えにくい」と指摘しています。そして、「長らく批判されておりました福沢の朝鮮中国に対する外交論にしても、私などから見ると、かなり自然な無理のない主張であったように思えるのです」と語っています。著者自身は、岡義武のもとで学んだ日本外交史研究の専門家であり、本書では従来の福沢研究の死角になっている論点をとりあげて、あらためて福沢の評価をおこなっています。 また著者は、これまで大学の授業でくり返し福沢の『文明論之概略』や『学問のすゝめ』をとりあげてきたといい、その理由として「維新の変革を理解するために格好の本であるからであり、また日本政治の特質を見事に描きだした本であるからであった」としつつ、「しかしそれ以外に、福沢の生き方それ自体を、学生諸君に知ってほしいと思ったからである」と述べています。 かつて丸山眞男は、「福沢惚れ」によっては福沢は理解できないという服部之総のことばを受けて、逆に「福沢惚れ」によってはじめて理解することのできるような福沢像をえがき出しました。本書もまた、一人の「福沢惚れ」によって書かれた、すぐれた評伝ではないかと思います。
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北岡伸一
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