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大罷業
大正9年2月、官営八幡製鉄所の一画に突然汽笛の音が鳴り響いた。日本労働運動の戦前の到達点とされる大ストライキを告げる、それが歴史的な闘争の幕開きであった。臨時工から本工になったばかりの20歳の青年・篠原辰吉は、争議の渦中で悩み、疑いながら、闘いに参加する。嫂への思慕と、ときに娼婦への惑溺に揺れつつ、辰吉は自分の生きかたをつきつめてゆく。辰吉の父は戦死し、兄もまた同じ職場で殉職していた。争議の過程で、さまざまな人間関係の軋轢が生じ、一方、警察・暴力団の介入や、朝鮮人臨時工のスト参加など階級関係が明らかにされてゆく。そして辰吉が自らの真実の生きかたを自覚したとき、それは厳寒の洞海湾で「無産者萬歳!」と叫びつつ、生を終える時でもあった。佐木文学の原点ともいうべき、作者24歳の最初の長編力作。戦後労働者文学の感動的な代表作である。 -
ウォーレスの人魚
ダーウィンと同じく〈進化論〉を唱えたイギリスの博物学者ウォーレスは、『香港人魚録』という奇書を残して1913年この世を去る。2012年、セントマリア島を訪ねた雑誌記者のビリーは、海難事故で人魚に遭遇する。マリア一号と名付けられたその人魚は、ジェシーという娘に発情してしまう。2015年、沖縄の海で遭難した大学生が、海底にいたにも拘わらず、3ヵ月後無事生還する。人間はかつて海に住んでいたとする壮大な説を追って、様々な人間達の欲求が渦巻く。進化論を駆使し、今まで読んだことのない人魚伝説を圧倒的なストーリー・テリングで描く渾身作。 -
鬱屈精神科医、占いにすがる
心の医者にとって救済とは? 「わたし」を救ったという「透明な裁縫箱」が数十年をかけて結晶化し、本という姿になって今ここに現れた。 私小説にして哲学書、文学にいざなう力に満ちた、豊かな本だ。 小池昌代(詩人・作家) 精神科医は還暦を迎えて危機を迎えていた。無力感と苛立ちとよるべなさに打ちひしがれる。しかし、同業にかかるわけにもいかない。それならいっそ街の占い師にかかってみようと思い立つ。はたして占いは役に立つのか。幾人もの占い師にあたっていって、やがて見えてきたもの……。人間が“救済”されるとはいったいどういうことなのか。私小説的に綴られる精神科医の痛切なる心の叫び。 -
P+D BOOKS 小児病棟・医療少年院物語
モモ子と凜子、真摯な看護師を描いた2作品。 『小児病棟』は、第1回読売「女性ヒューマン・ドキュメンタリー」大賞優秀賞を受賞し、テレビドラマ化された作品。 主役の看護婦(当時の名称)・モモ子役を桃井かおりが演じ、大きな話題となった。病気や障がいをもった乳幼児の看護に奮闘しながら、次第に子どもたちと心を通わせていくモモ子。ある日、手足を欠損して生まれ、両眼も失ったタロウの担当となる。個人的な感傷は、医療現場では封印すべきなのか――。 『医療少年院物語』は、著者が15年の歳月をかけて取材執筆した渾身の作。現場を訪れては「これは、とても書けない」と何度も挫折しそうになったという。不良仲間との万引きにはじまり、窃盗で捕まりノイローゼとなっていった少年や、テレクラで売春を重ね妊娠した少女など、看護婦と職員が苦悶しながら彼らとの交流をはかっていく。それは、何故彼らが非行に走ったのかという、問題の根源を知ることに繋がっていく。 -
男の貌 夢枕獏短編アンソロジー
プロレス、鮎釣り、そして棋士。それらの王道を歩めなかった男たちはどのような顔をして道を歩くのか。 さまざまな感情を押し隠した男たちの横顔を描く短編小説アンソロジー。 【目次】 真剣勝負・シュート(『仕事師たちの哀歌』より) 暗烏(『鮎師』より) 拳屋・ナックルビジネス(『仕事師たちの哀歌』より) 銀狼(『風果つる街』より) 夕映(『鮎師』より) 私怨(『餓狼伝I』第二章より) 浮熊(『風果つる街』より) 解説 大倉貴之 初出データ 【著者プロフィール】 1951年、神奈川県小田原市生まれ。77年に作家デビュー後、“キマイラ・吼”“魔獣狩り”“闇狩り師”“陰陽師”シリーズ等人気作品を発表し、今日に至る。 89年『上弦の月を喰べる獅子』で、第10回日本SF大賞を、98年『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞を受賞。日本SF作家クラブ会員 -
緑と赤
どうして伝わらないのだろう。こんなに近くにいるのに。2013年夏、大学三年生の金田知英は、友人と夏休みに海外旅行へ行くため、パスポートを取得した。自身が在日韓国人であることは知っていたが、「韓国人であること」を意識しないように育てられた知英は、パスポートの色を見て、改めて自分の国籍を意識した。知英の友人でK-POPが大好きな梓、新大久保のカフェで働く韓国人留学生のジュンミン、ヘイトスピーチに憤り抗議活動に目覚める地方在住の良美、日本に帰化をしたのち韓国で学ぶことを選んだ龍平、そして知英。自分は「なにじん」なのか、自分の居場所はどこにあるのか、隣にいる人とわかり合えないのはなぜなのか。ふたつの国で揺れる知英の葛藤と再生を中心に、五人の男女が悩みながらも立ち上がる姿を描く傑作長編。 「馴染まない。生まれて初めて手にするパスポート。赤や紺ではない、濃い緑色。表には、まったく読めないハングル文字。英語で、REPUBLIC OF KOREAとも書かれている。ページを開くと、まぎれもない自分の顔がそこにあった」――(本文より) -
[超短編シナリオ]を書いて小説とシナリオをものにする本 【言視舎版】
※この電子書籍は固定レイアウト型で配信されております。固定レイアウト型は文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 話題となった映画『武士の家計簿』の脚本家が、小説にシナリオ技術を活用するノウハウを丁寧に解説! 600字書ければ小説もシナリオもOK! 「超短編シナリオ」実践添削レッスンで創作力がいっきに身につく。 本屋さん大賞『告白』ほか多数のベストセラーを書き続けている湊かなえさんは、「超短編シナリオ」を書いて修業していた!シナリオ技術を実際に小説に活かした湊かなえさんと著者との特別対談を収録。 -
走れ、コヨーテ
風戸進介、22歳。バイクに憑かれ、走ることに魅せられ、風を切ることだけに己れのすべてを賭けた青年。高校を3年で中退して以来ひたすらに働き、やっと手に入れた一台のバイクと共に、進介は唯一の友人・高木と連れだち日本を飛び立った。目的は、北米大陸縦断の耐久(エンデユーロ)レースへのエントリーだ。総走行距離1万6000キロ、30日間に及ぶ究極のオフロード・レース。進介は鋼の馬を駆り、地を削り砂塵舞う陽炎の果てをひた走る。太陽が、人々の群像が、進介を通り過ぎてゆく。ゴールの先には、また新たな日々があるかも知れない。けれど、ゴールはまだ見えない――。感動のバイク小説。
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