作品一覧

  • 敵前の森で
    4.0
    1巻1,870円 (税込)
    「あなたには、捕虜の処刑および民間人に対する虐待の容疑がかけられています」戦後まもなく、インパール作戦の日本人指揮官にかけられた嫌疑。偽りを述べたら殺すと言い放ち、腹を探るような問いを続ける英人大尉。北原はしだいに違和感を覚える。この尋問には別の目的があるのではないか? 戦場の「真実」を炙り出してゆく傑作長編。
  • ビルマに見た夢
    3.5
    1巻770円 (税込)
    第二次世界大戦下、軍曹の西隈はビルマで現地の労務者をまとめる任務に就く。その一環としてペストの予防接種を勧めるが、部落の長老は頑なに拒む。対して、軍医見習士官はあまりに辛辣な演説を打つ/「仏道に反して」。肉体労働に適さない腰巻きのような民族衣装のロンジーを穿き、昼寝を欠かさぬビルマ人。非難した西隈に、部落長が放った言葉とは?/「ロンジーの教え」。シビアな軍務と、安穏に暮らすビルマ人との狭間で、日本軍が達した境地を描く五編。「戦場」を舞台にした文化人類学小説。
  • いくさの底
    3.6
    1巻968円 (税込)
    「そうです。賀川少尉を殺したのはわたしです」第二次世界大戦のビルマ北部。日本軍警備隊が駐屯することになったある山村で、一人の将校が殺害される。村人には死因を伏せたまま、連隊本部から副官が派遣され事態収拾が始まるが、第2の殺人が起きてしまう。通訳を務める日本人商社員、依井の視点から描かれる正体不明の殺人者と協力者とは? 第71回「毎日出版文化賞」「日本推理作家協会賞」(長編部門)W受賞作! 「戦場」という閉鎖空間の山村を舞台に、重厚繊細に描かれた戦争ミステリの名作!
  • 生き残り
    4.5
    1巻1,760円 (税込)
    北ビルマでの米支軍との戦いは、退路を断たれ、苦戦を余儀なくされた。 独歩患者は中隊から切り離され、経験のとぼしい見習士官を付けられて分進隊として転進する羽目に陥る。 イラワジ河をにわかづくりの筏で下る際、敵機に襲われ、すさまじい火力で河面が叩かれる。 各自中州までようよう泳ぎ着くが、そのさなか、伍長が胸の一突きで殺される。 あの極限状態のさなかで、いったい誰が? 大河の両岸には百姓ゲリラが控え、中州からの脱出もままならない。 籠城はできても3日。日本兵たちはやがて、一人、またひとりと命を落とす――。 中州を脱出してひとり安全圏の渡河点にたどりついた兵隊から転進の行程を聞いた下士官は、話に違和感を覚え、兵隊に銃をつきつける。 「お前、足手まといになった連れをひとり残らず殺して転進して来ただろう」――転進の道で鬼とならざるを得なかった人間の弱さ、優しさ、哀しさ。 人間存在のままならなさを静かに深く掘り下げた、サスペンスフルな戦争小説!
  • 中尉
    3.5
    現地民と歩兵の心の闇、緊迫する心理戦、知られざる真実――敗戦間近の英国領ビルマを舞台に、ペスト罹患者の封じ込めにやっきになる村に派遣されてきた日本人の中尉と、その警備にあたる軍曹の心理を描いた戦争小説。
  • 死んでも負けない
    4.0
    1巻473円 (税込)
    祖父はビルマ戦の帰還兵で、戦争中の武勇伝を得意満面に語る。何百回と繰り返される話だが、聞かないと鉄槌が下るのだ。その祖父が入院した。そこで僕は信じられない光景を目の当たりにする…。戦争帰りの偏屈な老人に翻弄される一家をコミカルに描いた家族小説。著者の知られざるユーモアセンスが冴え渡る会心作!
  • 線

    -
    1巻759円 (税込)
    飢えとマラリア、過酷な山越えのための想像を絶する疲労の中、困難な道を進む兵隊たち。摩耗する心と体。俺はこのニューギニアの地に捨てて行かれるのか――。味方同士で疑心暗鬼に陥る隊では不信が不正を招き、不正が荒廃をはびこらせる。そんな極限状態で人間が人間らしくあることは果たして可能なのか。第二次大戦の兵站線上から名もなき兵隊たちの人間ドラマを冷徹なリアリズムであぶりだす傑作小説。

ユーザーレビュー

  • 敵前の森で

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    第2次世界大戦の末期、日本の戦況がかなり悪くなってからインドとビルマの国境で行われたインパール作戦での話。
    一人の若い日本人の少尉が、悪い戦況の中で次々に下さなければいけない決断についてや、対戦相手のイギリス軍との駆け引き、自分より年上の部下との関係などについて、悩んだり、後悔したりした当時の状況を、戦後、捕虜になり、呼び出しを受けたイギリス軍の語学将校からの質問への受け答えの中で明らかにしていく。
    この本を借りた理由は忘れてしまったが、このような本と巡り合うことができて良かった。

    0
    2024年02月26日
  • 敵前の森で

    Posted by ブクログ

     著者のビルマ戦線ものの一作。本作の舞台は捕虜収容所。イギリス人諜報将校の尋問を受ける若いポツダム少尉の記憶を通じて、インパール作戦撤収時の日本軍兵士とビルマの民間人との黙契が明らかにされていく、という物語。
     見習士官として初めて戦場に立った北原の視点から、そのときは気づけなかった日本軍の下士官や兵士の「真の思い」が浮かび上がる仕掛けはさすがという感じだが、描かれる日本軍兵士が揃って理性的で思慮深い人物と描かれるのがとても気になる。北原を尋問する諜報将校がビルマの再植民地化を目論むイギリスの象徴的な人物として形象化されていることを考えると、本作では、著者の従来の作品以上に、日本―ビルマ―イギ

    0
    2023年07月08日
  • 敵前の森で

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     ここのところ、古処誠二さんの戦争小説の舞台はビルマが続いている。最新刊の舞台もビルマだが、一つとして同じ物語はない。部隊の数だけ人間模様があり、兵士の数だけ苦悩がある。本作はいわゆるインパール作戦の失敗後という局面を描く。

     終戦後、英国の俘虜となって尋問を受ける、見習士官の北原。英国人大尉は言い放つ。ひとつでも偽りを述べたら私はあなたを殺す。質問の真意を慎重に探りつつ、記憶を呼び起こす北原。物語は回想形式で進む。あのとき何を考えていたのか?

     主に後方支援を担っていたが、戦況の悪化により前線に放り込まれた北原。歩兵たちは、階級は上でも経験の浅い北原に、侮蔑を隠さない。北原が率いる部隊の

    0
    2023年05月19日
  • 生き残り

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     前作『いくさの底』は、ミステリーとしても高く評価された。古処誠二さんの新刊は、今回もミステリー的要素を含むが、軍隊・戦場における価値観や、それらに基づく現場の苦悩を、より深く抉っている点に注目したい。

     北ビルマの戦いで、独歩患者は分進隊として切り離される。要するに、怪我人は厄介払いされる。丸江と戸湊伍長の2人も、そんな分進隊の生き残りであった。彼らは、イラワジ河の渡河点で、1人の奇妙な兵隊に出会った。

     その兵隊と行動をともにしながら、1人になった経緯を尋ねる戸湊伍長。何やら疑いを持っているらしい。その兵隊の転進中の経験が、並行して語られる趣向である。経験の乏しい見習士官に、侮蔑を隠さ

    0
    2018年08月09日
  • 敵前の森で

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    すごく衝撃を受ける本だった。戦地で戦った人たちのイメージは,やりたい放題ひどいことやった(ごめんなさい)→『日本軍兵士』のイメージが加わる,まで来てたのだけど,この本みたいな発想は全くなかった。実際はそうだったのでは,と思う。
    とはいえ私には難しすぎて,1回目は正直さっぱり分からず(大枠だけは分かって衝撃を受ける限度),2回目読んで大体は理解できたけど理解できていないところ複数残ってるな,という感じ。古処誠二はなぜ直木賞をとっていないのかと書かれた記事を読んだけど,もう少し読んで分かる人の対象を広げてくれたらな有り難いです,と思う。

    0
    2023年10月03日

新規会員限定 70%OFFクーポンプレゼント!