レビューを拝読して読みたくなり、手に取った作品。
映画公開までに読み終えたくて…
上巻を読み終えるのにすごく時間がかかってしまったけれど、間に合いました( 'ᵕ' ; )
米軍基地を襲撃した夜、故郷いちばんの英雄が消えた。彼が手にしていたという「戦果」とは?彼が命を懸けた「秘密」とは?
うちなーぐちの語りが、とても心地良い。
所々、単語の隣にうちなーぐちのルビがふってあって、興味深かった。
()を使って語られる、登場人物たちへの共感、ツッコミ、励ましなども思わずクスッとしてしまう箇所もあり、好きだった。
消えた英雄の謎を追う3人と並行して描かれる、米軍統治下の沖縄の20年間。
想像を絶する出来事が次々語られ、苦しくて、胸が詰まって、涙なしでは読めなかったし、米軍や本土に対しては怒りの感情がふつふつと湧き上がってきた。
記録に残っていない出来事もあるようで…。
沖縄の歴史について無知だった私にとって、また一つ勉強になった。
苦しいこと、辛いことがあっても、打ちのめされそうになっても、何度でも立ち上がり前を向いて生きていくヤマコの強さ、島民たちの絆の強さに胸を打たれた。
苦しい時、辛い時こそ、人は一人では生きられないな、と思うし、人との繋がりの大切さを改めて感じた。
ウタの中にレイの姿が見えるようになってからは、ハラハラしたり、切なくなったりー…終盤の展開にはめちゃくちゃ泣いた。
ある言葉が蘇ってジーンとした。
あぁ、あきさみよう!(言ってみたかった)
私のように沖縄の歴史を知らない方が増えている今、この作品を通じて米軍統治下の沖縄について、沖縄本土復帰について、多くの方に知られてほしいな、と思った。
歴史を知ること。
それこそが、きっと沖縄の方の願いなのではないかな、と勝手ながら思った。
✎︎____________
おためごかし、空約束、口からでまかせ。
それらをテーブルに並べて、沖縄を裏切ってきたのが日本だ。
アメリカに追従するばかりで、不都合な真実にふたをしてきたのが日本だ。
これじゃあ本土復帰の旗も振れない──
「ずっとそうだった。飛行機が堕ちようが、娘たちが米兵の慰みものになろうが知らんぷり。毒ガスが持ちこまれようが見て見ぬふり。なにもかも本土の政府にとっては対岸の火事さ。自国の領土なら大騒ぎすることでもこの島で起きたらやりすごす。肝心なのはわれら沖縄人の安全や尊厳やあらん。アメリカーの機嫌を損ねずに自分たちの繁栄を守ることさ。残念ながらこの島はもうずっと日本列島には勘定されておらん」(pp.91~92)
ずっと故郷で運動をやってきたものは、みんなどこかで気がつかされるのさ。アメリカから日本に施政権が移ったところで、大事なことは変わらないんじゃないかとな。わたしはそこで離脱したくちだが、さんざん日本のふるまいに落胆や幻滅をおぼえてそれでも運動をやめんものは正真正銘の愛郷者さ。ああいう女があきらめずに声を上げてくれているだけでも、この世はまだ捨てたものではないと思える。最後まで〝核ぬき・本土なみ〟の望みを信じてみたくもなるさ(p.95)
勘弁してくれ、もう勘弁してくれ。この島の人たちはみんな、理不尽な運命にあらがう処世術を、身のよじれるような悲嘆や憎悪からの自衛手段を教えられて、いまもそれを次の世代へと引き継いでいる。そんな営みをいつまでつづけなくちゃならないのか、この島がふたたび日本になって毒ガスも兵器も基地もなくなったら、もっとまともな知恵を継いでいけるのか?(p.102)
基地の問題はうやむやにされて、核や毒ガスもなくならない。戦闘機は堕ちつづけて、娼婦の子は慰みものにされる。この返還で喜べるのはうしろめたさに恰好のついた日本人だけさ(p.108)
あのね、それは⋯⋯忘れなきゃ生きていけなかったから。それだけの目に遭ってきたから。宴会にも占いにもなんにでもすがって、過去をふっきろうとして、そのうえで出てきた〝なんくるないさ〟はただの〝なんくるないさ〟じゃないんだよ(p.119)
あんたも知ってるさ、戦果アギヤー。すきっ腹でまともな家もなくて、それでも生きる糧をもぎとるためにこの基地にもしのびこんで、米兵に追っかけられても走って走って走りぬいた英雄がいたのさ。死んでもかまわんなんて言うのは男やあらん。陰で闘志を燃やしながら、生きる道を探すのが男さぁね(p.139)
ここから返還の日までは、新しい時代を迎えるまでは、どれだけの人を愛せるかの勝負だ。この世を存続させてきた愛の正体を知るものがいるとしたら、それはおれたちだ。ここはまぎれもなく沖縄の土地、戦果アギヤーが数えきれない愛を配ってきた土地だ。だからここでおれたちが全滅したって、戦果アギヤーは何度でもよみがえる。魂のなかの英雄が転生をくりかえす。アメリカーも日本人もそのことをいずれ思い知るだろう。この島の人たちだけが正真正銘の英雄を知って、愛を与えるものになれるのさ。(p.219)